トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

その他 (911陰謀論)

最近の動向

もう完全に下火になってしまった911真相究明運動だが、それでもときどき動きはあるので、そういうのをここに集めておく。

ほんとにしょーもない記事。「公式見解に疑義を唱えた人や真相究明の鍵を握っていたとみられる人が多く不審な死を遂げている」という内容の記事なんだけど、時間が経てば、人間は自然に死ぬんだよ、というだけの話。そりゃ16年も経てば、死亡する人の数も増えるだろう。同時多発テロ事件関連の人なんて、何千人もいるだろうから、誰か死んでも何一つ不思議じゃない。
 
最後のページに、

彼らの死は、9・11テロとは無関係なのかもしれない。しかし本当にそうかどうかは、真相を確かめない限りわからない。

とある。わからないんだったら、書くな!典型的な裏を取らないダメなジャーナリズム。

ウィキリークス

ウィキリークスの創設者も911陰謀論を否定

上記の記事によると、数々のアメリカ機密文書を公開してきたウィキリークスWikiLeaks)の創設者Julian Assange氏も、911陰謀論には否定的だ。

権力を持つ人々が秘密の計画をたてるとき、彼らは陰謀を企てているのだ。だから、陰謀はそこらじゅうにある。もちろん、おかしな陰謀論も存在する。これら2つを混同しないことが重要だ。一般に、陰謀について十分な事実がある場合、我々は単純にそれをニュースと呼ぶ。

とするAssange氏は、911陰謀論について聞かれると、以下のように答えた。

9/11のようなウソの陰謀に人々が惑わされることに、私はいつもイライラさせられる。我々は多方面にわたり、戦争や大規模な金融詐欺といった現実の陰謀の証拠を提供しているというのに。

いずれにせよ、ウィキリークスでどのような情報が漏えいされるかにより、自作自演説の信憑性を問うことができるだろう。よって、今後もウィキリークスに注目していきたい。なお、当然のことだが、ウィキリークスが自作自演の根拠をもたらさなかった場合、一部の陰謀論者らは「ウィキリークスも陰謀の一部だ!」と言い出すことが予想される。

以下のエントリも参照。

ウィキリークスがもたらした情報

アメリカにおける動向

陰謀論の支持派は「陰謀論者」(conspiracy theorist)と呼ばれることを嫌い、911事件の真相を究明する者の意味で、自らをトゥルーサー(truther)と名乗ったりするが、否定派からはtrooferなどと揶揄されている。また、彼らの言う真相(truth)は真相ではないので、本当の真相と区別するため、わざわざTruthとTを大文字にして書かれる場合もある。さらに911陰謀論を支持することは、ホロコースト否定論(Holocaust denial)と同列に考え、911否定論者(9/11 denialist)と呼ばれることもある。アメリカにおいては、自国に関することなので愛国心とも絡み、911陰謀論をめぐる議論はどうしても感情的になる場合がある。

上記の記事によると、911陰謀論はアメリカではだいぶ沈静化しているようだ。この記事の日本語訳をブログ「ABYSSの空間」の「懐疑論者はいかにして911陰謀論と向き合うか」(2008/11/22)で読むことができる。

911テロ否定運動はアメリカ国内ではすでに人気がなくなりつつある。2008年アメリカ大統領選挙で民主党候補のバラク・オバマが当選したことによりさらに下火になるだろう。よって、911陰謀論業界はアメリカ以外の国(たとえば日本)に目を向けようとしている。アジアにしろヨーロッパにしろ、アメリカを嫌う人間はいるわけで、ある程度の需要は期待できるのだろう。

アメリカにおける911陰謀論の終焉

2013年の世論調査

2013年の世論調査によると、「米国政府が9.11テロを黙認した」と思っているアメリカの有権者は、全体の11%しかいなくなった。なお、これは消極的関与説(LIHOP ("Let it happen on purpose") )に相当し、積極的関与説(MIHOP ("Make/Made it happen on purpose")いわゆる自作自演説)ではない。

なお、まだ28%の有権者がサダム・フセインが9.11テロに関与したと考えている。

「Who still believes in 9/11 conspiracies?」

(911陰謀論をまだ信じてるのは誰か?) by Scott Sommers, Skeptic Magazine, Vol. 16(2) 13-16 (2011)

という記事がSkeptic Magazineに掲載された。これによるとアメリカにおける911陰謀論の凋落は行き着くところまで行ったようだ。

上記のアンケート調査によると、WTCが制御爆破解体で破壊されたと考えているアメリカ人の割合は15%、93便が打ち落とされたと思っているのも15%、ペンタゴンに飛行機は突入してないと思ってる人は13%、WTCに突入したのも飛行機ではないと思っている人は6%である。

つまり、大多数のアメリカ人が911陰謀論を信じていない。15%という数字は、「オバマ大統領はアメリカで生まれていない」というトンデモ論を信じている人(いわゆるBirtherと呼ばれる人々)と同程度か、ちょっと少ない割合だそうな。

米国人の3分の1以上、幽霊の存在を信じる=調査」(Thomson Reuters, 2010年11月1日)によると、幽霊が存在すると考えているアメリカ人は37%なので、これの半分以下の割合だ。(亡くなった親戚や友人が会いに来たと信じている人は23%なので、これよりも少ない)

予想されたように、バラク・オバマ大統領の当選により、共和党ブッシュ政権に批判的だった民主党支持層や左寄りの人々の多くは911陰謀論に対する興味を失ってしまったらしい。

たとえば、ハリウッド・セレブのバーブラ・ストライサンドとその夫のジョシュ・ブローリンショーン・ペンマイケル・ムーアらは、当初、アメリカ政府の公式見解に疑問を呈していたが、オバマ当選後はそうした発言をしなくなった。

上記のエントリでおちょくられているように、911陰謀論支持の残党は右寄りな人が多く、極右的なトンデモ陰謀論と親和性が高い。つまり、「アメリカ大好き!けど連邦政府は大嫌い。なぜなら、新世界秩序に操られているから」という陰謀論の一部と化している。なお、「新世界秩序」(New World Order)とはプロレス団体のことではなく、平たく言うと、陰で世界を支配し色々と悪さをしているとされる架空の「闇の陰謀組織」のことである。日本では掲示板阿修羅あたりでよく見かけられる類のトンデモ論である。

Scott Sommers氏は、911真相究明運動の団体の1つとして、インターネットを中心に活動している「We Are Change」(WAC)を取り上げており、氏が調査を行った時点では、大人数を動員して路上デモンストレーションなどを行うことのできる唯一の団体だとしている。(AE911Truthのリチャード・ゲイジが行う講演会などについては取り上げていない)

911真相究明運動は2006年を頂点にその後は衰退の一途をたどっている。WACが主催した2009年9月11日と27日にニューヨークで行われたデモンストレーションには、それぞれ100人強の人数が集まったが、そのうち52人は両方のデモに参加しているWACの共通メンバーであることをSommers氏はつきとめている。

もちろんWACも右派の団体であり、「新世界秩序」の陰謀についていろいろと吹聴している。Sommers氏の調査した範囲では、WACのメンバーの多く(70%以上)は若い男性(20代後半)であり、右派の政治思想の持ち主である。ロン・ポールRon Paul)だったり、憲法党(Constitution Party)やリバタリアン党Libertarian Party)の支持者が多い。

911陰謀論の左派の支持者としては、Sander HicksCynthia McKinneyCindy Sheehanなどがいるが、彼らはWACの集会で講演するなど、WACと行動をともにするようになっている。おそらく一緒に活動しないと集客できないのだろう。

民主党のオバマ政権が誕生しても、自作自演説の証拠は出てこなかった。普通の人間なら、これでやはり自作自演はなかったと考えるところだ。つまり、残された911陰謀論の信者は、アメリカ2大政党は両方とも「新世界秩序」の手先だと信じるような、トンデモ思想の持ち主に必然的に限定されることになる

上記の記事によると、連邦政府に敵対し、さまざまな陰謀論を展開するアメリカの極右組織の数は、2009年には512団体と2008年の約3倍に急増したらしい。その一因は、やはりアメリカ初の黒人大統領の誕生があるようだ。

 極右組織の急増の背景には、米国人口における人種構成の変化や、それを体現したとも言える米国初の黒人大統領の誕生、また膨張する国家債務や破たん金融機関に対する救済に対する不満があると指摘している。またそれらの組織は、オバマ政権の一連の政策を「社会主義的」あるいは「ファシスト的」だと主張している。

WACについての補足

  • Meet the 'Patriots'」 Intelligence Report, Summer 2010, Issue Number: 138, Southern Poverty Law Center

上記の南部貧困法律センター(SPLC)の「アメリカ愛国者運動」の活動家リストで、WACの創設者であるLuke Rudkowskiは、「憂国のジャーナリスト」と紹介されている。Rudkowski氏によると、彼らのターゲットはNew World Orderの陰謀ではなく、ビルダーバーグ会議三極委員会であるとのこと。

しかし、2010年9月11日以降、WACが集めた募金をRudkowski氏が使い込んだという疑惑が持ち上がり、Rudkowski氏はWACを離脱。その後、 Craig Fitzgerald氏がWACの新リーダーとなったようだ。

アレックス・ジョーンズ

アレックス・ジョーンズの項目を参照。

その他

  • The 9/11 deniers」 By Farhad Manjoo, Salon.com, Tuesday, Jun 27, 2006 09:00 ET

バン・ジョーンズ特別顧問の辞任

NYC-CANの再調査要求

イスラム圏における陰謀論

イスラム文化圏では「911テロはイスラエルの情報機関モサドMossad)が実行した」という陰謀論(ユダヤ陰謀論)が人気を博している。

上記の書籍によると、911テロ主犯格のモハメド・アタMohammed Atta)の父親モハメド・エルアミール・アタも記者会見で「テロはモサドのしわざに違いない。息子のパスポートを使ってやつらがやったんだ。息子はどこかで監禁されている」と主張した。

2001年9月24日のエジプト週刊紙「アルオスボウア」には「アラブ人とイスラム教徒が無実であることの証拠」というタイトルの記事が載った。この記事の内容は、貿易センタービルに勤務する4千人のユダヤ人が、9月11日には出勤しなかったとか、101人のユダヤ人がハイジャック機への搭乗をキャンセルした、などというユダヤ陰謀論そのものであった。

さらに同紙は12月3日には「事故機は、外部からの信号でコントロールされて世界貿易センターなどに突入していたことが判明した」という特ダネを報じている。

ユダヤ人が事前にテロのことを知っていたというのは、根拠のない噂であり、実際にはユダヤ人の犠牲者も大勢いたことがわかっている。イギリスのBBCの「The Conspiracy Files 911(40分30秒〜)」でもユダヤ陰謀論は否定されている。この番組では実際にサウスタワーで犠牲になったユダヤ人Andrew Zucker氏(文献1)の妹であるCheryl Shames氏が登場して陰謀論を批判している。

9月12日のJerusalem Postに「エルサレムの外務省は今のところ、攻撃の際に世界貿易センターとペンタゴンの地域にいたと考えられる4000人のイスラエル人の名簿を受け取った」という内容の記事が掲載された。

その後、レバノンのヒズボラHezbollah)が運営する衛星テレビ局「Al-Manar」で、4000人のイスラエル人が9/11当日、仕事を休んだという話が報告された。そして、この話は尾ひれがついてイスラム圏で広がり、「4000人のイスラエル人」はいつの間にか「4000人のユダヤ人」にされていた。

実際に911テロの犠牲になったユダヤ人の数はおよそ200人程度だと考えられ、この数字はニューヨーク地域の通勤人口に対するユダヤ人の比率(約10%)に近い。911テロの犠牲になったイスラエル人は5人とされる。(文献2)

この件については「The 4,000 Jews Rumor」(文献3)も参照。

イラン大統領は陰謀論支持

上記の記事によると、イランのアフマディネジャド大統領は、2010/9/23の国連総会の一般演説において、911同時多発テロは米政府の自作自演だとまくし立て、米代表団が一斉に退席するという出来事があった。

 アフマディネジャド大統領は以下のように述べたらしい。

  • 「強力かつ複雑なテロ組織が米国の諜報(ちょうほう)組織や軍に浸透している」
  • 「米政府の一部が、イスラエルを救うために同時テロを実行した。このことは多くの米国人や世界中の人々が同意している」

 米国連代表部は「予想されたことだが、アフマディネジャド氏は善良なイラン国民の代表として発言する代わりに、またしても妄想だらけの陰謀論をまくし立てた」との声明を発表したようだが、相変わらずイスラム圏で911陰謀論は人気のようだ。

その他

911陰謀論に関するアンケート調査

その他


参考文献

  1. 9/11 Heroes and Memories」 by Jonathan Mark, Courtesy of The Jewish Week, Published: Sunday, September 10, 2006
  2. Five Israeli victims remembered in capital」 By GREER FAY CASHMAN, Sep. 11, 2002, Jerusalem Post
  3. The 4,000 Jews Rumor」 Distributed by the Bureau of International Information Programs, U.S. Department of State, 16 November 2007