トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

オリバー君

人とサルの混雑種か?

オリバー君は1976年7月15日に来日し、一週間後の22日には日本テレビの木曜スペシャルに出演したことで注目を集めたサルである。
 この番組では当時、「人間か? 類人猿か? 謎の怪奇人間・オリバー! 世界初公開」、「果たして人間の祖先か? 雪男? 生きた化石?」などといった煽り文句で宣伝され、日本で行った染色体検査は間に合わなかったが、アメリカで行われた検査では人とチンパンジーの中間である47本の染色体が確認されたと宣伝されていた。

やはりサルだった当時の検査結果

番組放送の翌日23日付の『朝日新聞』によれば、オリバーの染色体検査の結果は7月19日の午前までに出ており、同日午後に行われた番組収録までには間に合っていたという。
 この検査では、放射線医学総合研究所の平井百樹研究員(細胞遺伝学)がオリバーの白血球の培養検査を行い、染色体の数がチンパンジーと同じ48本であることを明らかにしている。

ちなみに、このとき行われた検査では全部で30標本が用いられたが、そのうち28標本についてはハッキリと染色体の数が48本であると確認された。しかし残りの2標本については47本だった。これについて平井研究員は「この47本の標本は、おそらく標本を作るときに一部が失われたもので、染色体の異常とはいえない」(『朝日新聞』1976年7月23日付より)と解説している。

またアメリカでの検査で47本という結果が出たことについても、標本作りにミスがあった可能性を指摘している。

またこのほか、京都大学霊長類研究所で行われたオリバーの血清タンパクの検査では、血清タンパクの1つであるトランスフェリンのパターンを調べたところ、チンパンジーと全く同じパターンを示した。
 さらにレントゲンの検査でも、オリバーはチンパンジーと同じ4本の腰椎があり(人間は5本)、骨盤も首のつき方もチンパンジーと同じ特徴を示した。

静岡大学(当時)の平沢弥一郎教授によれば、検査が終わった後にオリバーは、ごく自然に手の甲を地面につけて4本足で歩いたという。どうやら2本足で歩けたのは訓練の結果らしい。

さらにダメ押しの検査結果

96年に行われた検査では、シカゴ大学の遺伝学者デヴィッド・レッドベター博士によってオリバーの染色体が再度調べられ、チンパンジーと同じ48本であることが確認された。

さらに98年には、テキサス衛生科学センター大学のシャーリーン・ムーア博士と、トリニティ大学のジョン・イーリィ博士によってミトコンドリアDNAの鑑定が行われ、母親は中央アフリカのチンパンジーであることが判明した。
 そして2006年には、アリゾナ州立大学の遺伝学者アン・ストーンによって最新のY染色体検査が行われ、父親も中央アフリカのチンパンジーであることが明らかにされた。

やはりオリバー君は、ただのサルだったのである。


参考文献