ストロンチウム (東日本大震災)
東日本大震災・デマ・風評被害・陰謀論
「福島第1原発:ストロンチウム、10都県で最大値以上」
毎日新聞 2012年07月24日 19時47分(最終更新 07月25日 01時08分)
文部科学省は24日、東京電力福島第1原発事故で放出された放射性ストロンチウム90(半減期約29年)の全国規模の飛散調査結果を公表した。事故後、土壌から検出された宮城、福島両県以外に、関東・東北の10都県の値が、2000年〜事故前の最大値以上となった。これ以外では事故の影響は確認されなかった。
ストロンチウムは口から摂取すると骨に蓄積しやすいが、今回の検出量はごくわずかで、健康影響の恐れはないという。
過去の最大値は、米ソによる大気圏核実験の影響が強く表れた1963年6月に宮城県で観測された1平方メートル当たり358ベクレル。2000年以降では06年2月、北海道の同0.3ベクレル。今回、茨城県で同6ベクレルを観測し北海道での値を超えたほか、群馬、山形、栃木、埼玉、東京、岩手、神奈川、千葉、秋田でも、値が00年以降の最大値と同じか上回った。【野田武】
横浜のストロンチウム
- 「横浜などで検出 ストロンチウム 核実験の灰 黄砂が運ぶ?」 東京新聞、2011年12月3日 07時04分
大気圏核実験は五〇〜六〇年代に盛んになり、中国が八〇年に行ったのが最後。ストロンチウムの濃度は大気圏核実験のたびに上昇し、八六年のチェルノブイリ原発事故でも高い値が観測された。それ以後、大気圏核実験や大きな原発事故はないが、不検出にまでは下がらず、微量ながら今も降り注いでいる。
二〇〇九年の調査では、月間累積量で一平方メートルあたり最高〇・一二を観測。横浜市のマンションは築年数が浅いが、広瀬勝己・上智大客員教授(環境放射能学)は「このレベルのストロンチウムが、マンションの屋上に数年間降り積もれば、泥などに含まれる濃度が一キログラムあたり数になることは十分あり得る」と指摘する。
広瀬客員教授によると、日本に降るストロンチウムは核実験後、数十年間にわたって大気中を漂い続けたのではなく、地表に降り注いだものが風で再び舞い上げられていると考えられる。
放射性降下物の研究に取り組む気象庁気象研究所によると、元は中国など東アジアの砂漠地帯の可能性が高い。砂漠には、米ソや中国などの核実験で放出されたストロンチウムが比較的多く地表にとどまっている。これが「黄砂」に付着し、西風に乗って運ばれる。
同研究所の五十嵐康人研究室長は「ストロンチウムは春先に多く検出されるなど、黄砂の飛来量と相関性がある」と解説する。
ストロンチウムは核分裂によって生成されるが、「新鮮さ」の目安になるのが半減期約五十日のストロンチウム89の有無だ。横浜市で検出されたのは半減期二十九年の同90のみ。これが、「核実験由来」と文科省が判断した根拠となった。
- 「横浜のストロンチウム、福島由来を否定 文科省が再調査」 asahi.com, 2011年11月24日23時7分
横浜市港北区の道路側溝付近の堆積(たいせき)物から放射性ストロンチウムが検出された問題で、文部科学省は24日、「東京電力福島第一原発事故で、新たに沈着したものとは言えない」などとする再調査結果を発表した。
堆積物からは、ストロンチウム89と90の合計が1キロあたり最大129ベクレル検出されたと横浜市が発表。これに対し、文科省が周辺を含めた4カ所を再調査した結果、半減期が50日と短いストロンチウム89がいずれも検出されず、同90も最大1.1ベクレルで、事故前の全国調査の最大値30ベクレルを下回った。過去に行われた大気圏核実験による降下物とみられるという。
文科省は横浜市との食い違いについて、横浜市が測定を依頼した民間の分析機関・同位体研究所が「ストロンチウムのほか、天然核種を含めて測定している可能性がある」と指摘する。文科省の検討会の専門家によると、同研究所が用いた測定法は、通常は1カ月ほどかかるストロンチウムの検出が1日で可能とされるが、ラジウムや鉛などの核種も含まれるという。
- 「ストロンチウム 「横浜は原発と関連なし」」 東京新聞、2011年11月25日 朝刊
横浜市港北区の泥などから放射性ストロンチウムが検出された問題で、文部科学省は二十四日、「福島第一原発事故とは関連がない」との見解を発表した。市から送られた泥などの分析で、半減期が約五十日と短いストロンチウム89が検出されなかったことなどから、「過去の核実験の影響とみられる」と結論付けた。
また、東京・霞が関の経済産業省前など都内三カ所の路上で検出された放射性ストロンチウムについても、同様の見方を示した。
文科省は、同区大倉山の道路側溝と同区新横浜の横浜アリーナ近くの噴水底部から採取した堆積物を分析。福島第一から飛来したなら含まれるはずのストロンチウム89は検出されず、半減期が約二十九年と長い同90が一キログラムあたり最大一・一ベクレル検出されただけだった。
文科省は原発事故前から毎年、全国各地でストロンチウム濃度を測定。今回の値は、これまでの測定値(最大三〇ベクレル)の範囲内だった。
横浜市が民間検査会社に委託した分析では、二種類のストロンチウムを合わせて最大一二九ベクレルを検出していたが、文科省の再測定で、濃度は百分の一以下だったことになる。
経産省前などでの検出については、文科省は分析していないが、同じ民間検査会社が同じ手法で測定していることから、文科省は「誤って、実際より高い濃度を出してしまったのではないか」と推測している。民間検査会社は「測定には自信を持っているが、百倍も違う結果で戸惑っている。なぜ差が出たのか調べたい」としている。
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文科省の見解を受け、横浜市の担当者は二十四日、「ストロンチウムは市の調査よりも微量だったが、今後もストロンチウムなどの調査範囲の拡大を求めていくことに変わりはない」と述べた。
- 「放射性ストロンチウム・・低バックグラウンドα/β線測定」 同位体研究所
世田谷のストロンチウム
- 「世田谷で原発由来ストロンチウム89…3月採取」 2011年12月26日16時06分 読売新聞
東京都世田谷区で今年3月に採取された大気中から、東京電力福島第一原子力発電所の事故で飛散したとみられる放射性物質のストロンチウム89が検出されたことが26日、都への取材でわかった。
文部科学省によると、ストロンチウム89が検出されるのは関東地方では初めて。
都は3月15日に同区の都立産業技術研究センターで大気を採取し、浮遊物質の詳細検査を実施。その結果、1立方メートルあたり0・1ベクレルの微量のストロンチウム89を検出したという。ストロンチウム89は半減期が50日と短いため、原発事故由来とみられる。半減期が約30年のストロンチウム90は、すでに都内や横浜市で微量ながら検出されていた。ストロンチウムは体内に取り込まれると骨に蓄積されやすいが、都は「ごく微量なので人体への影響はない」としている。
その他
◇原発汚染水浄化に活用めざす
山梨大学医学部(中央市)などの研究グループは、福島第1原発で汚染水の浄化に使われている鉱物「ゼオライト」より新種の藻類「バイノス」の方が、放射性ストロンチウムとヨウ素の吸収効率が高いことを実証した。同原発での実用化に向け大手プラントメーカーと交渉中で、今月末に放射性物質で汚染された土壌処理にバイノスを活用するデモンストレーションを福島県伊達市で実施する予定だ。【岡田悟】
バイノスは筑波大系のベンチャー企業「日本バイオマス研究所」(千葉県柏市)が既に汚泥浄化用として製品化しており、放射性物質汚染にも対応できないか北里研究所(東京都港区)などと共同研究していた。
山梨大医学部第3内科で甲状腺疾患などを研究している志村浩己助教が、福島県浪江町の側溝などにたまっていた汚染水で4月〜7月、実証実験を実施。その結果、放射性セシウム137とストロンチウム各2メガベクレル、放射性ヨウ素3メガベクレルがそれぞれ入った水1リットルにバイノス100グラムを入れて遠心分離器にかけると、10分間でストロンチウムは8割程度、セシウム137は4割程度を除去できた。ヨウ素も24時間で4割程度減った。ゼオライトと比較実験したところ、ヨウ素についてはゼオライトは全く吸収しなかった。ストロンチウムについては約1時間で、ゼオライトは約6割しか吸収しなかったのに対し、バイノスは95%吸収した。
バイノスは藻のため、光と炭酸ガスがあれば容易に増やせる。乾燥させると重量が20分の1になるため、吸収後の処理の簡略化も期待できるという。
デモンストレーションは、日本バイオマス研究所など複数企業が行う。除染後に生じた汚染土壌をバイノスで無害化し、使用後のバイノスを1次保管するまでの作業を公開で実施する。=一部地域既報
- 「福島の土壌から微量ストロンチウム 水溶性の放射性物質」 asahi.com, 2011年4月12日23時16分
発表によると、土壌のサンプルは3月16、17日に浪江町で2点、飯舘村で1点が採取され、分析された。この結果、ストロンチウム90は最大で土壌1キロあたり32ベクレルだった。半減期が約50日のストロンチウム89は最大で260ベクレル。同時に分析されたセシウム137は1キロ当たり5万1千ベクレルで、ストロンチウム90の値は、この0.06%の量だった。
農業環境技術研究所によると、1960年代の核実験などの影響で、通常でもストロンチウム90は土壌1キロあたり平均1.2ベクレル程度、検出されるという。
葉物野菜は3月19日、大玉村や本宮市などで採取された4点が分析された。ストロンチウム90は最大で1キロあたり5.9ベクレル検出された。これもセシウム137に比べて、0.007%の量だった。いずれも食品の扱いではなく、洗わずに試料として分析された。
米国の食品基準はストロンチウム90で1キロあたり160ベクレル、欧州連合(EU)は1キロあたり750ベクレル。今回はいずれの基準も大きく下回っている。
ストロンチウム90は、化学的性質がカルシウムと似ていて水に溶けやすく、人体では骨にたまる傾向がある。土壌では深い場所まで届き、植物に吸収されやすい。海に放出されると、魚の骨などに取り込まれ蓄積する可能性がある。
この結果について、農業環境技術研究所の谷山一郎研究コーディネータは「今回の数値はかなり低い。農作物に吸収される割合はセシウムより高いが、この程度の値なら、問題ないだろう」と話している。