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ディーン・ラディン(Dean Radin)

  • Dean Radin」 From Wikipedia, the free encyclopedia

イリノイ大学Urbana-Champaign校で教育心理学の博士号を取得している。IONS(純粋理性研究所, Institute of Noetic Sciences)の主任研究員。超心理学の研究(テレパシー、透視、予知、死後の世界等)を行っており、メタ解析meta-analysis)を専門としている。超心理学国際会議で最多の4回にわたって議長を務めた人物。(文献16) 

ただし、インチキ療法を監視する団体「Quackwatch」は信用できないウェブサイトのリストにIONSを含めている。これはおそらくIONSが「祈祷療法」に肯定的だからだろう。

上記のLas Vegas Sun誌の記事によると、1997年の9月にネバダ大学ラスベガス校(UNLV)のHarry Reid環境研究センターを解雇された。彼の著書「The Conscious Universe」(文献15)が出版されて3週間も経たない時のことである。彼は「超心理現象の歴史と科学的研究」と題する授業を行う予定だったが、これもキャンセルされた。UNLV学長のDouglas Ferraro氏は「彼の研究分野は有益だと証明されてはいない」と述べている。

石川幹人氏は自著「超心理学 封印された超常現象の科学」(紀伊國屋書店、2012/8/29)の中で『超心理学実験で安定して肯定的結果が出るのは、能力をもった一部の超心理学者に偏る』と述べており(352ページ)、そうした超心理学者としてホノートン、シュリッツ、ラディンを挙げている(202ページ)。超心理学から見るとラディンは能力者なのかもしれないが、懐疑派から見れば、単に超能力肯定に偏ったバイアスのかかった研究をしている可能性が高いというだけのことで、これは科学の論理ではない。「実験結果の不均一性」まで超能力のせいにするのはダメだということ。

この石川氏の発言は極めて重大だが、超心理学肯定派はこのことについてあまりに無頓着なので、あらためて指摘しておく。バイアスのかかった一部の人間ばかり実験結果を発表し、否定派が研究発表しなければ、結果として超能力肯定の統計有意性は向上するだろう。ただし、その結論は超能力が実在するということを必ずしも示唆しない。ただ単にバイアスを見ているだけの可能性がある。

結局、第3者による再現実験(追試)が成功しなければ、信頼性は向上しないということである。

ブリザリアン・カルトの宣伝映画に登場。

ブリザリアン・カルトの宣伝映画のトレーラー見てたら、ディーン・ラディンが出てきて、びっくりした。いったいなにを意図しているのかわからないが、こんなんではダメだと思う。ほんと超心理学者はデタラメばかりだな。もうラディンはトンデモさん確定でいいと思う。「ブリザリアン(不食の人)」を参照。ちなみに、この映画に触発されて、不食を試み、餓死した女性がいたりなんかする。

ラディンの著書

Supernormal: Science, Yoga, and the Evidence for Extraordinary Psychic Abilities」 

Dean Radin (2013/7/16)

ラディンの新著。Deepak Chopraが序文を書いている。題名を直訳すると、「超通常:科学、ヨガ、そして超常的サイキック能力の証拠」。ヨガによって超能力が身に付くというのだろうか?超心理学の研究でもそんな根拠は見いだせていないと思うが?

以下の書評も参照。

量子の宇宙でからみあう心たち―超能力研究最前線

ディーン ラディン (著), 石川 幹人 (翻訳) 徳間書店 (2007/08)

この本の書評については「書評:「量子の宇宙でからみあう心たち―超能力研究最前線」」の項目を参照。

The Conscious Universe: The Scientific Truth of Psychic Phenomena」 

Dean Radin, HarperOne (1997/7/18)

この本の書評については「書評:The Conscious Universe」の項目を参照。

ラディン氏の研究

ラディン氏が行っている研究の一部。

パソコンによる予知能力の実験

これについては「パソコンによる予知能力の実験」を参照。

「水伝」との共同研究

これについては「水は答えを知っている」の項目を参照。

「心と食品の相互作用」の研究

YouTubeの「Intentional Chocolate」によると、すぐれた黙想家が「よい意志」を注入したチョコレートに関する2重盲検の実験も行っている。このチョコレートを食べた人は、普通のチョコレートに比べて67%もその日の気分が改善されたそうだ。ラディン自身が共同編集長を務めるジャンク・ジャーナルExploreに以下の論文が発表されている。

こちらのサイト「IntentionalChocolate.com」でそのチョコレートを購入できる。ラディン氏はこうした「心と食品の相互作用」(mind-food interactions)にも興味があるらしく、今後も研究を続けていくとのこと。

「水伝」もそうだが、これはいったいどういう超能力なのだろう? 心と物質の相互作用だというのなら、これもPKの一種なのだろうか?いったいチョコのなにが変化したのだろう?

遠隔ヒーリング

手かざし療法のように近くにヒーラーがいなくても、別の場所からヒーリング・エネルギーを送ると、治療効果があるという話。

Exploreはラディン自身が共同編集長を務めるジャンク・ジャーナル。

2003年のレビューでは遠隔ヒーリングにプラセボ効果以上のものがないことが判明している。

乱数発生装置を利用した「世界意識計画」

「世界意識計画」(Global Consciousness Project)とは「egg」(卵)と呼ばれる乱数発生装置(RNG)を使った世界規模の実験のことである。なんらかの出来事に、世界中の多くの人の意識が集中すると、それがeggに影響を与え、乱数の発生に異常が生じるだろう、という仮説のもとにこの計画は実行されている。

9/11の同時多発テロ事件が起こったときのeggの反応についても解析している。ラディンの著書「量子の宇宙でからみあう心たち―超能力研究最前線」(徳間書店、2007/08)によると、9・11はその年でもっとも大きい変化だったとのこと。

しかし、ラディン氏の著書の図11-10(272ページ)を見ると、攻撃が実際に始まる前の朝7時くらいにZ値は極大になっており、攻撃と同時にゼロを通過し、今度は負に振れている。ラディン氏はこれを「予知」として説明しているが、批判派を納得させることはできないだろう。また、なぜ正に振れたあとに負に振れるのか(平均すればゼロになる)の説明もない。また、この図はRNG出力のばらつきの幅を見ているようで、1が多く出たか0が多く出たかは示されていない。つまり都合のいいデータのみを選択しているようにも見える。

この件については以下の論文として発表されている。

Correlation of continuous random data with major world events」 Nelson, R. D., Radin, D. I., Shoup, R., and Bancel, P. (2002). Foundations of Physics Letters, 15 (6), 537-550 

ところが、エドウィン・メイらが同じGCPのデータを解析したところ、統計的な異常は認められず、EGGは9.11テロ事件に反応していないという結論の文章を発表している(論文になっているかは不明)。

以下の文献もラディンらの主張に否定的。

米国報道機関の反応は以下のようなもの。

その他

ラディンはジュダイの騎士

ラディン氏のブログ(文献1、2007/5/5)によると、IONS研究所はラディンを「スター・ウォーズ」のジュダイの騎士に見立てたフラッシュアニメを制作した。こちら「Psi Wars」(metacafe.com, 2007年5月22日)でそのアニメを見ることができる。もちろんラディンに敵対する懐疑論者は帝国軍である。

YouTubeで見れるラディン氏の講演

YouTubeの「"Science and the taboo of psi" with Dean Radin 」で、2008年1月15日にシリコンバレーのGoogle headquartersでラディンが行った講演の様子を見ることができる。

一般的な懐疑主義者からラディンはどう見えるか

「SkepticReport」のサイトのClaus Larsen氏の記事「ディーン・ラディンとの夕べ」(文献6)では、2002年9月にLarsen氏がラディンの講演に参加した時の感想を読むことができる。Larsen氏は一般の懐疑主義者であり特に専門的な批判を行っているわけではないが、彼のラディンについての印象は、

ラディンは誠実ではあるが自分の理論に夢中になり過ぎている。明らかにデータの選択をしているが、不正をしようとしているわけではない。人間的には理解できるが、科学的には許容できない。

というものである。もちろんLarsen氏はこの印象が間違っている可能性もあるとしているが、超能力に懐疑的ならば、同様な印象を受ける人も多いだろう。


参考文献

  1. Dean Radinのブログ「Entangled Minds Dean Radin's blog
  2. Dean RadinのHP「DeanRadin.com
  3. 英語版ウィキペディアのDean Radinの項目
  4. Double-Blind Test of the Effects of Distant Intention on Water Crystal Formation 」 Dean Radin, Gail Hayssen, Masaru Emoto, Takashige Kizu, Explore: The Journal of Science and Healing, Volume 2, Issue 5, Pages 408-411 (September 2006)
  5. UNLV researcher baffled over his recent dismissal」 by Debra Bass, Las Vegas Sun, September 16, 1997
  6. An Evening with Dean Radin 」 by Claus Larsen, SkepticReport
  7. わたしたちはなぜ科学にだまされるのか―インチキ!ブードゥー・サイエンス」 ロバート・L. パーク (著)、栗木 さつき (翻訳)、主婦の友社
  8. フィールド 響きあう生命・意識・宇宙」リン マクタガート (著)、野中 浩一 (翻訳) 、河出書房新社
  9. 「WHERE HAS THE BILLION TRILLION GONE?」 I.J. Good, Nature, Volume 389 October 23, 806-807 (1997). この書評はNICK HERBERT氏のサイトで読むことができる。
  10. Teaching physics mysteries versus pseudoscience」 Fred Kuttner and Bruce Rosenblumm, Physics Today, November 2006, page 14,
  11. SkepticReport」の「Book Review: The Conscious Universe」 by Morten Monrad Pedersen.
  12. イグ・ノーベル賞」 マーク・エイブラハムズ著 阪急コミュニケーションズ
  13. The Conscious Universe: Book Review」by Morten Monrad Pedersen, SkepticReport.
  14. The Truth about Uri Geller」 James Randi著、Prometheus Books
  15. The Conscious Universe: The Scientific Truth of Psychic Phenomena」 Dean I. Radin (著) 、Harpercollins; 1版 (1997/08)
  16. 量子の宇宙でからみあう心たち―超能力研究最前線」 ディーン・ラディン (著), 竹内 薫 監修、石川 幹人 訳、徳間書店 (2007/08)
  17. 「Skeptic's Dictionary」の「What if Dean Radin is right?」 by Robert Todd Carroll (Last updated 12/11/07)
  18. ASIOSのサイトの「おすすめ本レビューの上級編」の「量子の宇宙でからみあう心たち」のレビュー
  19. Skeptic's Dictionaryの「The Princeton Engineering Anomalies Research (PEAR)」の項目
  20. Correlation of continuous random data with major world events」 Nelson, R. D., Radin, D. I., Shoup, R., and Bancel, P. (2002). Foundations of Physics Letters, 15 (6), 537-550
  21. Effects of Intentionally Enhanced Chocolate on Mood」 Dean Radin, Gail Hayssen, James Walsh, Explore: The Journal of Science and Healing, Volume 3, Issue 5, pages 485-492
  22. PATHOLOGICAL SCIENCE」 I. Langmuir (Colloquium at The Knolls Research Laboratory, December 18, 1953) Transcribed and edited by R. N. Hall
  23. Skeptic's Dictionaryの「file-drawer effect
  24. Skeptic's Dictionaryの「meta-analysis
  25. Apparatus and method for distinguishing events which collectively exceed chance expectations and thereby controlling an output」 United States Patent 5830064
  26. Apparatus and method for distinguishing events which collectively exceed chance expectations and thereby controlling an output」US Patent Issued on November 3, 1998, Patent Storm
  27. Publication Bias in Meta-analysis: Prevention, Assessment And Adjustments」 Alexander J. Sutton, Hannah R. Rothstein, Michael Borenstein, A. J. Sutton John Wiley & Sons Inc (2005/11/11)
  28. Publication Bias: The “File-Drawer” Problem in Scientific Inference」 JEFFREY D. SCARGLE Journal of Scientific Exploration, Vol. 14, No. 1, pp. 91–106, 2000
  29. The Search for Psychic Power: Esp & Parapsychology Revisited」 by C. E. M. Hansel (Author) Prometheus Books; 3Rev Ed edition (August 1989)