デヴィッド・レイ・グリフィン博士 (911陰謀論)
デヴィッド(デイビッド、デイヴィッド)・レイ・グリフィン博士(David Ray Griffin)は「911真相究明運動」の扇動者の一人である。「真相」とはいうものの、グリフィン博士の主張は自作自演説そのものであり、911テロ否定論(9/11 denialism)と呼ばれることもある。
グリフィン博士がノーベル賞にノミネートされた?!
そんなグリフィン博士が、2008年度ノーベル平和賞にノミネートされたという情報が、2008年度の受賞者発表前に一部で流れた。 (文献1,2) このように自分から「わたしはノーベル賞にノミネートされた!」と主張する人はたびたび現れる。こうした話はどの程度信憑性があるのだろう?
ノーベル賞公式サイトの「Nomination Facts」を見てみると、以下のように書かれている。
9月にはそれぞれのノーベル委員会が、次の年の候補者の名前を挙げるよう、数千人の適任者に依頼する。複数の人に一人の候補が推薦されることがあるので、だいたい200〜300人の名前が集まる。候補者の名前は50年後まで明かされることはない。
ノーベル賞は他薦なので、ノーベル委員会が認めた推薦人に選んでもらえれば、誰でも候補者にはなれる。旧ソビエトのスターリンも推薦されたことがあるようだ。さらに 「世界中で流れる、今年のノーベル賞にだれそれがノミネートされたという噂はどうなの?」という質問に対しては、つぎのように回答している。
それはただの噂か、依頼された推薦人が情報をリークしたのでしょう。推薦は50年間秘密にされるので、本当のことがわかるにはそれまで待たないといけません。
今回のグリフィン博士に関しての情報のソースは以下のブログのようだ。
- 「Dr. David Ray Griffin. Nobel Peace Prize Nominee. Dublin Tonight 8pm」」:911Blogger.com, Submitted by Somebigguy on Mon, 09/10/2007 - 8:51pm
- 「9/11 Truth Norway: 9/11 Truth nominated for the Nobel Peace Prize 2008」:911Blogger.com, Submitted by Reprehensor on Sun, 10/05/2008 - 12:39pm
ノルウェーの10人の教授または現・元議員による支持があったらしい。グリフィン博士自身によると、元議会のメンバーだったノルウェーの女性が推薦してくれたとのことが、これらが誰だかは明確にされていない様子である。
ノーベル賞の候補者は、50年後までは公表されないというのであれば、自分から「推薦された」と言い出すことにどんな意味があるのだろう?「自作自演」の陰謀論は、今のところ、荒唐無稽な「風説の流布」にすぎない。911陰謀に加担した実行犯や首謀者が逮捕されてその全容が解明された! となれば話は別だろうが、2008年度のノーベル賞を期待するのは無理がある。
実際に2008年度平和賞を受賞したのは、フィンランドのマルッティ・アハティサーリ(Martti Ahtisaari)前大統領であった。
グリフィン博士は2008年11月3日に開催される「第2回911真相究明国際会議」に出席するため来日した。10月28日に開かれた記者会見の様子を30日付の東京スポーツが報じた。(文献3) この記事でもグリフィン博士は2008年度ノーベル平和賞の候補だったことが述べられ、「火災で鋼鉄が解けるなんてことがあるのでしょうか。爆薬を使わなければ絶対に無理です」と、博士の意見が紹介されている。(ふつう爆薬は鋼鉄を溶かしたりはしない)
911真相究明フォーラム総括
2008年11月15日の人民新聞に11月1日に大阪で開催された「911真相究明フォーラム in OSAKA」を総括する記事が掲載された。(文献4) その一部を以下のサイトで読むことができる。
- 「911の真相はあやうい仮説の積み重ねでは究明できない」 人民新聞、更新日:2008/12/29(月)
- 「山田洋一/911真相究明フォーラム総括」 人民新聞、更新日:2008/12/29(月)
こちらでは全文読むことができるが、いつまで公開されているかはわからない。
- 「人民新聞 2008年11月15日」その1
- 「人民新聞 2008年11月15日」その2
- 「人民新聞 2008年11月15日」その3
このフォーラムには来日したグリフィン博士も参加しており、グリフィン博士の主張と、それへの批判が直接対決する日本で初めての機会となった。人民新聞で指摘されたグリフィン博士ら911真相究明運動側の主張の問題点は以下のようなものである。
ペンタゴンに突入した77便の残骸について
77便の機体の残骸はインターネット上でいくらでも写真を見ることができる。ところがグリフィン博士は、これらの残骸はアメリカ政府側の人間が置いた「ニセの物証」だとしている。しかし、これは仮説を前提とした推論であり、具体的な証拠は示されなかった。このような主張がまかり通るようであれば、事実確認作業そのものが無意味になる。
ペンタゴンの穴
911真相究明運動側は従来「ペンタゴンの外壁に開いた穴は直径約5メートルであり、旅客機と比べて小さすぎる」と主張してきた。ところが、この穴とされるものは2階部分に開いたもので、一階部分は消防車の放水により隠れて見えなかったので、この主張は初期の間違いとして、グリフィン博士は取り下げた。
3階のモニター
突入現場近くの2階と3階においてあった木製の机やパソコンモニターが損傷してないのはおかしい、と911真相究明運動側は従来主張してきたが、本当は4階と5階であったことが判明している。ペンタゴンの穴もそうだが、こうした間違いは以前から指摘されていた。真相究明と言いつつやっていることは、写真を見て適当なことを言っているだけだということがわかる。フォーラム当日も人民新聞編集部が指摘するまで、真相究明側からこれらの間違いについてなんの説明もなかった。
人民新聞編集長山田洋一氏の言葉を一部引用しておく。
真相究明派は、公式発表の矛盾点を突き、批判するレベルでは、「正しい」のだが、「何が起こったのか?」を言い出した途端に、無理な推論や解釈をせざるをえず、真相運動批判派からの批判に晒され、自ら墓穴を掘りつつあるとの印象を持った。事実の調査と説明責任は米政府にこそある。真相究明派は、わからないことは「わからない」と率直に表明する方が、信頼を得られるのではないか。
そして最後に次のように述べている。
最後に今回のイベントを通して、私は、真相究明派の主張のすべてを自信を持って紹介することはできなくなったことを率直に表明したい。
ジョン・ロジャース氏の寄稿記事
ロジャース氏はフォーラムにおいてグリフィン博士に質問をした人物である。彼とグリフィン博士との対決は海外でも報告されている。
- ブログ「Screw Loose Change」より
- 「Confronting David Ray Griffin in Osaka」 Sunday, November 02, 2008
- 「David Ray Griffin Wa Baka Da」 Tuesday, November 04, 2008
- 「David Ray Griffin: Pearl Harbor Denier」 Wednesday, November 05, 2008
- 「David Ray Griffin "Explains" the Bodies」 Wednesday, November 05, 2008
- 「Super-duper-uber-magico-nano-therm*te」 Friday, November 07, 2008
- 「David Ray Griffin in Japan」 Monday, January 05, 2009
- 「David Ray Griffin Changes Minds In Japan」 Thursday, January 29, 2009
- 「JREF Forum」より
- 「David Ray Griffin in Japan (appearing with anti-semites and UFO believers)」 adversity1, 1st October 2008, 12:14 PM
- 「After David Ray Griffin visits Japan, leading left newspaper abandons 9/11 truth 」 adversity1, 26th January 2009, 05:48 PM
グリフィン博士は、以下のようなトンデモ論をフォーラムで展開した。
- WTCの制御解体にはナノテクノロジーを応用した「スーパーサーメイト」が使用された。
- ペンタゴンに突入したのは77便ではない。乗員乗客の遺体はペンタゴンでは発見されていない。
- ハイジャック機からかかってきた電話はすべて音声合成技術によって捏造されたものである。
グリフィンの講演は「9/11 Truth Hits Japan」(The Corbett Report, 03 November, 2008)でダウンロードできる。「David Ray Griffin - Afternoon Lecture」(mp3)の58分30秒ぐらいのところから、グリフィン博士のスーパーサーメイト(super thermate)に関する説明を聞くことができる。「thermate」(サーマイト、テルミット)と「thermite」(サーメイト)は別物。グリフィン博士によるとサーメイトには、『鉄の融点を下げるために硫黄が混ぜてある』とのこと。ナノテクノロジーによって微粒子状にされたスーパーサーメイトだと、通常のサーメイトの10倍くらい威力が増す(グリフィン博士もよく知らない)とのこと。
こうしたグリフィン博士の主張に対して聴衆から笑いが起こり、司会兼通訳のきくちゆみ氏が『なぜ笑うんですか? あなたたち、専門家ですか?!だけど、笑うのは失礼じゃないですか!』と怒り出す様子も録音されている。「犠牲者に失礼でしょう!」という聴衆(?)の声も録音されている。
1時間4分あたりのグリフィン博士の発言によると、スーパーサーメイトはゾル・ゲル状でペンキのように薄く鉄骨に塗ることができるらしい。もともとは液体で乾燥すれば、いつでも点火できるとのこと。なんとも都合のいい話だ。
グリフィン博士の主張がいかにバカバカしいものか、はっきりわかる。スーパーサーメイトなどという実在するかどうかもわからない超兵器が使われたというのは、純粋小型水爆が使われたと主張するのと同程度に信憑性がない。
ロジャース氏はペンタゴンから77便の乗客の遺体も見つかっていることを問いつめると、グリフィン博士は呆れたことに「病理センターに遺体が現われたが、どこから運ばれたかは不明だ」との見解を述べた。
さらにロジャース氏が「Firefight」の373ページを引用し、座席にシートベルトで繋がったままの遺体がペンタゴンで目撃されていることを示すと、それでもグリフィン博士は、たった二人の証言なので信用できない、とした。もし、グリフィン博士の主張が正しいとすると、77便の乗客はペンタゴンとは別の場所で殺され、しかもその遺体は航空機事故で死亡したように見せかけるため損壊・加工して検死官のもとに運ばれてきたことになる。これが事実だとすると恐ろしいことだが、その根拠は一切示されていない。
乗客からかかってきた電話が音声合成技術により捏造されたというのもばかげた主張である。電話はハイジャックされた旅客機4機すべてからかかってきているので、かなり大規模な電話捏造部隊が存在したことになる。グリフィン博士は自著「Debunking 9/11 Debunking」の中で、音響スタジオのような施設で音声の捏造が行われたとしているが、そうした施設が実在したという証拠は一切ない。
音声合成をするにしても、本人の音声サンプルが必要になるだろうし、リアルタイムで通話中にそうした合成が可能かどうかも不明だ。さらに、捏造だということが肉親にもばれないように、プライベートな事柄まで事前に調査しておかなければならないだろう。
乗客からの電話はその肉親が聞くことのできた最後の言葉だったのである。グリフィン博士はそれをろくな根拠もなしにデタラメだったと主張している。つまり、その時、彼らが感じたことや、その行動のすべてを否定しているのである。
犠牲者の遺族と911真相究明運動
ロジャース氏によると、911テロ事件犠牲者の遺族が作った組織は、少なくとも7つあり、これらの組織の働きかけが911独立調査委員会の設立を後押しした。その中で、ジャージーガールズ(Jersey Girls)のような、陰謀があったと疑う人たちは確かに存在した。しかし、911委員会やNISTの最終報告書などが発表されると、陰謀論を擁護する家族の組織は減り続けた。(文献5) 例えば、「9/11 Family Steering Committee」のサイトには次のように書かれてある。
委員会がその調査を終了したとき、我が国の安全を高めるための41の勧告を含む報告書を発行した。報告書は我々のすべての疑問には答えていないが、諜報活動、外交政策、安全保障および、その他の失敗に関する綿密な分析、そしてこれらに基づく改善のための勧告は、われわれも納得できる更生であった。
9/11 Family Steering Committeeは、世界貿易センターでの12人の犠牲者の親族からなる組織で、911独立調査委員会の活動を監視するために作られた。ジャージーガールズもそのメンバーであった。このCommitteeは、2005年1月11日に活動を終止している。(文献6)
しかし、ジャージーガールズは911委員会の報告書にも批判的であり、その後も真相究明運動の活動を続けた。ツインタワーに関するNISTの最終報告書が提出された後、公式見解に疑問を持つ遺族はほとんどいなくなり、ジャージーガールズやボブ・ミック・イルベン(Bob McIlvaine)氏はさらに少数派となった。
ロジャース氏によると、2008年8月にNISTのWTC7に関する報告書が発表され、その報告書の結論を受け入れたと見られる宣言を同年9月下旬にジャージーガールズが発表した。この宣言を911Blogger.comの「Statement Of September 11th Advocates Regarding The Release Of The NIST Final Draft Of Collapse Of WTC7」で読むことができる。 (Patty Casazzaの署名あり) その一部を引用しておく。
NISTは一番重要な結論を平易な英語で全米に公表すべきだ。つまり、高層ビルにおける制御不可能な火災は建物を完全な崩壊に至らしめる、ということを。さらに、こうした重大な規則を制定する団体と交渉する場合、NISTはもっと積極的になるべきだ。NISTと規則制定団体の代表者によるトップ会談を通じて情報交換すべきである。
911真相究明運動側から見ると、この宣言は単なる皮肉だということになるが、「NIST: WTC Investigation Leads to Code Changes for Safer Buildings」(IHS, October 13, 2008)によると、NISTの勧告は実際の建築物条例に反映されている。今のところ、こうした新しい条例に対してジャージーガールズは批判を表明していないので、NISTの結論に異議がないのだろうとロジャース氏は指摘する。よって、陰謀説を支持している遺族は、現在ではほとんどいなくなったとロジャース氏は結論している。
- 「Treason in America Conference 3/6/10. Bob McIlvaine Speaks PART 2」 america20xy, 2010年03月08日
Bob McIlvaine氏は2010年3月に開催された「Treason in America Conference」というTrutherの集会でも講演しており、その様子を上記のYouTube動画で見ることができる。7分00秒ぐらいのところから見てみると、McIlvaine氏はどうやら、自分の息子は旅客機がツインタワーに突入する前に死んだ(ウィリアム・ロドリゲス氏の証言に出てくる飛行機突入前の爆発に巻き込まれて死んだ)と信じ込んでいるようだ。犠牲者の遺族にこのようなデタラメを吹き込むのが、「真相究明運動」の真の姿である。
その他
On Debunking 9/11 Debunking
グリフィン博士の著書「Debunking 9/11 Debunking」(Olive Branch Pr; 2007/3/30)に対しては、「911 Guide」のページで公開されているRyan Mackey氏による反論「On Debunking 9/11 Debunking」がある。(by Wordとpdfバージョンがある) この反論は300ページ以上におよぶが、全部で4章ある「Debunking 9/11 Debunking」のうち、第3章のNISTのツインタワーの報告書に関する部分に対する反論のみが書かれてある。
タイッビvsグリフィン
マット・タイッビ氏とデイビッド・レイ・グリフィン氏の誌上討論(By Matt Taibbi and David Ray Griffin, AlterNet. Posted October 6, 2008)を以下のサイトで読むことができる。
- 「The Ultimate 9/11 'Truth' Showdown: David Ray Griffin vs. Matt Taibbi」
- 「The Ultimate 9/11 'Truth' Showdown: David Ray Griffin vs. Matt Taibbi -- Part II」
- 「The Ultimate 9/11 'Truth' Showdown: David Ray Griffin vs. Matt Taibbi -- Part III」
参考文献
- 「グリフィン博士と911真相究明運動がノーベル平和賞にノミネート!」:きくちゆみのブログとポッドキャスト、2008/10/07
- 「ノーベル平和賞」:玄のリモ農園ダイアリー、火曜日, 10月 07, 2008
- 「東京スポーツ 2008年10月30日17ページ」 ハーモニクスライフギャラリー、911関連記事
- 「911真相究明フォーラム@大阪の総括」 kikulog、2009/1/25
- 「117. ジョン・ロジャース: November 5, 2008 @20:11:57」 kikulogのジョン・ロジャース氏の書き込み
- 「9/11 Family Steering Committee」 From Wikipedia, the free encyclopedia