バリー・ジェニングス氏 (911陰謀論)
バリー・ジェニングス(Barry Jennings)氏とマイケル・ヘス(Michael Hess)氏はWTC7から救助された、おそらく最後の人物。ジェニングス氏の証言はWTC7内でなんらかの爆発があったことを示唆するものだとして、陰謀論者はよく引用する。しかし、これは混乱していたジェニングス氏の記憶違いによるものだと考えられる。
バリー・ジェニングス氏の証言
NISTのFAQで取り上げられている、WTC7の6階と8階の間で大きな爆発音を聞いたという人物は、おそらくニューヨーク市住宅局緊急サービス部副部長のバリー・ジェニングス氏とGiuliani Partners有限会社取締役のマイケル・ヘス氏のことであろう。ジェニングス氏はBBCの「Conspiracy Files: 9/11 - The Third Tower」にも登場している。
WTC1への旅客機の最初の衝突のあと、二人はWTC7の23階にある市長の緊急司令室に向かった。しかし、彼らが着いた時にはそこには誰もおらず、その後、電気も消えたので二人は階段を降りて避難しようとする。しかし、6階あたりまで来たところで大きな爆発が起こったため、8階まで逃げ上り、濃い煙と暗闇の中、そこに閉じ込められていた。ジェニングス氏らは火災も目撃している。その後、窓を割って救助を呼び、12時10分から15分の間に消防隊に助けられた。(文献1)
ジェニングス氏の証言(文献2〜6)によると、ツインタワーの倒壊以前にWTC7内外で複数の爆発があったとのことだが、緊急司令室の撤退が完了したのは9時半のことであり、WTC2は9時59分、WTC1は10時28分に倒壊している。よって彼らが経験したのは、ツインタワーが倒壊した際に生じた衝撃と考えるのが妥当だ。(文献7,8)
さらにジェニングス氏は、消防官に連れられて1階まで下りると、そこのロビーは完全に破壊され、死体(複数)の上を歩いたと証言している。(文献2、5) これはWTC1の破片による被害だと考えることができるが、WTC7で犠牲者は出ていないので、この証言は矛盾している。ジェニングス氏は「Conspiracy Files」(47分6秒〜)で、死体の目撃は否定し、死体を踏みつけるのを感じただけだと述べている。さらに米国政府が自国民を虐殺するような陰謀を実行するとは思えないと述べている。
そもそも、WTC7の倒壊は午後5時20分のことであり、ジェニングス氏は帰宅後、テレビで倒壊のことを初めて知ったと証言している。(文献6) もしなんらかの爆発が午前中に本当に起こっていたとしても、それがWTC7の爆破解体とどう関係しているのだろうか?
ジェニングス氏死去
なお、「NYCHA Employee Bulletin」の2008年8月Vol.4 No.5(PDF)は、2008年8月19日にジェニングス氏が他界したことを伝えている。これはNISTのWTC7に関する報告書が発表される数か月前だったこともあり、陰謀論者のあいだにさまざまな憶測を呼んだ。
マイケル・ヘス氏の証言
バリー・ジェニングス氏と一緒にいたマイケル・ヘス氏もBBCにインタビューを受けているが、「Conspiracy Files」では放送されなかった。そのインタビューを「Trapped in the 'Third Tower'」で見ることができる。
ヘス氏によると、WTC7から脱出しようとして6階まで下りて来た時、非常灯が消えて真っ暗になった。さらに大量の煙と埃で階段はいっぱいになり息ができなくなった。そしてスプリンクラーが突然働き出し、建物が地震のように揺れだした。その時、ヘス氏は地下で爆発が起こったと思ったが、現在では崩れ落ちてきたWTC1の北側がWTC7の南側に当たったためだということを知っている、と述べている。
ジェニングス氏とヘス氏の証言のまとめ
YouTubeの「Barry Jennings and Michael Hess: WTC7 accounts」(by alienentity)で二人の証言をまとめたものを見ることができる。
ジェニングス氏は仕事に向かう途中で、最初の飛行機が突入したとの電話を受けたと証言してる。11便がWTC1に突入したのは8時46分のことなので、ジェニングス氏が電話を受けたのはそのあとのことだろう。
その後、WTC7に着き、マイケル・ヘス氏といっしょにエレベーターで23階まで行ったと証言。しかし、どういうわけか中に入れず1階に戻り、もう一度23階まで登ったようだ。
緊急司令室についた時には、もうそこには誰もいなかった。9時45分にはWTC7からの退避命令が出ているので、23階に着いたのはその直後だったのだろう。食べかけのサンドイッチやまだ湯気の出てるコーヒーが置いてあったとジェニングス氏は証言してる。
そのとき23階にいたのはジェニングス氏とヘス氏だけで、そこから何人かに電話をかけたら「すぐそこから出ろ」と言われたそうだ。ヘス氏は23階にいるときに停電が起きたと証言しているが、9時59分にWTC2が崩壊したとき、WTC7の電力は落ちている。ジェニングス氏は緊急司令室のモニターには何も映ってなかったと証言している。よって、この二人が23階にいる時にWTC2の崩壊が起こり、それをこの二人が見ることはなかった。
ジェニングス氏によると6階まで下りて来た時、爆発があって床が抜けたとのこと。8階まで登って戻らねばならなかった。ヘス氏によると非常灯が消え、階段が以前にも増して埃や煙で階段がいっぱいになり、スプリンクラーが作動した。さらに建物がまるで地震のように揺れ始めた。しかし、そのとき、爆発音のようなものは聞こえず、ものすごい風とサイレンの音を聞いたとのこと。おそらくこれがWTC1が倒壊した10時28分ごろのこと。
ジェニングス氏は消化器で窓を割ったと証言している。外を見ると下で車が燃えているのが見えた。ヘス氏によると北と西を見ていたので、南にあるツインタワーは見えなかったとのこと。
このあたりからジェニングス氏の証言は混乱してくる。消防官がやって来て「そんなことをするな!」と言い残して逃げ去ったとのこと。何が起こっているのか、ジェニングス氏にはわからなかったが、そのとき最初のタワーが倒壊したと証言している。そして、消防官は戻ってきたが、また逃げ出し、その時に2番目のタワーが倒壊したと証言している。つまり、ジェニングス氏は消防官の行動を見てその時ツインタワーが倒壊したと思っただけで、実際はそれ以前にツインタワーは倒壊していたと考えるのが妥当なようだ。
WTC78階から助けを求めるヘス氏の映像
- 「WTC 7 Burning」 C911STUDIES さんが 2010/08/30 にアップロード, YouTube
この映像を見ると、ヘス氏がWTC7の8階から助けを求めているとき、周りの状況からしてツインタワー(の少なくともどちらか)はすでに倒壊していたと考えるのが妥当だろう。
参考文献
- 「12:10 p.m.-12:15 p.m. September 11, 2001: Firefighters Rescue Three People Trapped in WTC 7」 History Commons
- 「Emergency Official Witnessed Dead Bodies In WTC 7」 Paul Joseph Watson, Prison Planet, Monday, June 23, 2008
- 「WTC witnesses, BBC Newsnight, 9/11/2001」 YouTube
- 「Barry Jennings, 2nd half interview, WABC, 12:52, 9/11」 YouTube
- 「Barry Jennings - 9/11 WTC7 Full Uncut Interview - 1 of 2」 YouTube
- 「Barry Jennings - 9/11 WTC7 Full Uncut Interview - 2 of 2」 YouTube
- 「我々の時がやってくる」 分解『911 ボーイングを捜せ』
- 「On Debunking 9/11 Debunking Examining Dr. David Ray Griffin’s Latest Criticism of the NIST World Trade Center nvestigation」 Ryan Mackey, Version 2.0, 21 January 2008, Original Release 31 August 2007