ヒマワリで放射能除去? (東日本大震災)
東日本大震災・デマ・風評被害・陰謀論
まだヒマワリにこだわり続けている人
- 「福島第1原発:事故29カ月 「ヒマワリ除染」信じて」 毎日新聞 2013年08月18日 14時12分(最終更新 08月18日 23時41分)
東京電力福島第1原発事故のあった古里の福島県で、ヒマワリ栽培による除染にこだわり続ける人がいる。日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の職員で、かつて福島第2原発にも勤務した千葉県白井市の天野治さん(63)。ヒマワリの除染は国が一昨年に実施した実験で「効果なし」との結論が出されたが、しっかりとした実証方法があるわけでもない。汚染土の除染作業も遅々として進まない中で、何とか古里の再生に貢献したい。それが原発に携わった者の被災者への「罪滅ぼし」だ。【神保圭作】
しかし、国が一昨年の実験後に出した結論は「効果なし」。ただ、実験の詳しい手法が分からず、ふに落ちなかった。実は研究者の間でも、確立された実験方法がないのだ。それなら自分で証明しようと、昨夏、自費で南相馬の水田を借り、種をまいた。大きくなったヒマワリの幹や根、花などを測ったところ、幹から最大1キロ当たり2万ベクレルの放射性セシウムを検出。目を見張った。
さて、富岡町での実験結果は−−。茎や葉を入れた測定器のモニターは「ND」と出た。検出限界値未満だ。今月10日の実験でも茎や葉からは検出されなかったが、根は4万ベクレルだった。「今回も根からはかなり高い値が出るはずだ」と天野さん。ヒマワリの部位や天候によっても吸収率は大きく左右されるようだ。
ヒマワリは実用的ではない
農林水産省による試験結果が公表されました。
- 「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)について」 平成23年9月14日、農林水産省
・単位面積当たりの吸収量は、作付け時の土壌の放射性セシウムの約1/2000であり、効果は小さい。
・現時点では、除染に利用可能な高吸収植物の候補が得られていないため、現場への普及の段階にない。
- 「【別添4】各技術についての解説(PDF:2,590KB)」の14ページ
試験している全ての植物の結果が出てないので、確定的ではないが、ヒマワリについては、吸収率が低く除染に極めて長い時間がかかるため、実用的ではない」
- 「セシウム汚染:ヒマワリ栽培は効果小 農水省が実証実験」 毎日新聞 2011年9月14日 20時54分(最終更新 9月14日 22時22分)
農林水産省は14日、福島県飯舘村などで5月から行っていた農地の放射性物質を除去する実証実験結果を発表した。農地の表面を3〜4センチ削った場合はセシウムを7〜9割減らせることが確認された。一方、放射性物質を取り込みやすいとされるヒマワリを植えてセシウムを吸収させる実験は効果が小さく、同省は「現時点での実用化は困難」とした。
同省によると、5月に飯舘村で植えたヒマワリが吸収していたセシウムは1キロ当たり52ベクレル程度。1平方メートル当たりで10キロのヒマワリが育つとすると、現地の土壌中にあるセシウムのうち約2000分の1しか吸収できていない計算になるという。
一方で、表面4センチを削った農地では1キロ当たり1万370ベクレルから2599ベクレルまで減少。薬剤で土を固めてから表面(3センチ)をはぎ取ったり、芝や牧草がある農地で網目状に張った根ごと表面(同)をはぎ取るなど工夫すると82〜97%も減った。
ただし、これらの方式では10アール当たり30〜40トンの廃棄土砂が出る見込み。1キロ当たり5000ベクレルを超える農地は福島県内に約8300ヘクタールあると推計され、土砂は単純計算で約350万トン(東京ドーム2個分)に上り、処理方法が大きな課題となる。【曽田拓】
根の方が放射線量が多い?
上記の別添4の13ページ下を見ると、「茎葉で52 Bq/kg、根で148 Bq/kgであった」と、根の方が放射線量が3倍弱多い。別添4では地上部のみを刈り取った場合を想定しているようだが、両方合わせても除染効果は小さい。もし仮に地上部と根の重量が同じだとすると、単純計算で放射線量は4倍となり、2000分の1(0.05 %)が500分の1(0.2 %)になるだけである。(実際には根のほうが地上部よりも重量的には少ないのかな?)
『3.11東日本大震災後の日本』による解説
ブログ「3.11東日本大震災後の日本」におけるヒマワリ関連のエントリを以下にまとめ、その一部を引用した。
- 「ファイトレメディエーション(Phytoremediation)って何?Csをなくせるの?」 6/4
- 「ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。」 6/12
- 「農水省が発表した農地土壌の除染技術評価−ヒマワリは使えない!」 2011/09/14(水) 22:49
- 「HOPE-Japanのヒマワリのデータと「除染効果についての検証」の解説」 2011/09/19(月) 22:09
長くなりましたが、まとめです。
1.農水省の出した結論と、HOPE-Japanのデータを比較してみると、データそのものは大きな違いはないことが確認できました(ただし、根への移行率については異なっています)。
2.出てきたデータの解釈において、農水省は根を計算に入れないというような不思議な方法を採っているところに疑問があります。一方、HOPE-Japanのデータの解釈も、移行係数と単位面積あたりの放射能吸収量を同じ「移行係数」と表現するとか、考え方に混乱が見られます。
3.移行係数としては、ヒマワリの移行係数は0.0067〜0.052と今年の小麦と比べても特別高いわけではありません。単位面積あたりの放射能吸収量は、農水省の計算方法では、農水省のデータで1/2000、HOPE-Japanのデータでもその8倍にすぎません。ヒマワリの植え方をもっと密にしたとしても1%行くかどうかというレベルでしょう。
4.以上のことから、表土の削り取りなどと比較して現時点では実用化のレベルにないと判断した農水省の結論は、(データの解釈に恣意的な要素を感じる部分もあるものの)妥当な判断だというのが私の見解です。
- 「福島県農業総合センターのヒマワリのデータが公開されました。」 2011/09/22(木) 23:35
- 「HOPE-Japanのヒマワリのデータ検証の続き」 2011/09/25(日) 13:04
これまで発表されているデータを元に考えると以下のようなことが言えると思います。
1.単にヒマワリを土壌に植えても、土壌中の放射性セシウムを単位面積あたり1−2%しか吸収できない。表土をはぎ取る方が75%除去できるので実用的(これはHOPE-Japanも確認済み)。
2.表土をはぎ取って一ヶ所に集め、そこにヒマワリやアマランサスを植えると効率よく放射性セシウムを吸収させられる可能性がある。また、表土をはぎ取ったあとの土壌は汚染されていない土壌として使用できる。
3.植物を用いて除染を行う場合は、最後にその植物をどう処理するのかまで考える必要がある。最終的に処分する時の体積や放射性セシウム濃度を考慮して、表土のはぎ取りと比較しても効率よい方法でない限りは安易に実行しない方がよい。今後もし行政の体制が整って無料(あるいは低コスト)で引き取ってくれるならば、はぎ取った表層の土壌はそこにヒマワリを植えたりせずに廃棄した方がよい。
ただし、現実には放射性セシウム濃度の高い下水汚泥の処理などで困っているのが実態ですので、行政がなんとかしてくれるという期待はあまり持てません。そういう意味では、表土をはぎ取って一ヶ所に集めておき、除染効率のよい植物が見つかればそれを植えるというのは意味があると思います。総除去率が10%あれば10回でほぼ除去できますので、最低でもそれくらいの効率は欲しいと思います。1−2%しかないのであれば、その後の廃棄処理を考えるとやらない方がいいと思います。
なお、「総除去率が10%あれば10回でほぼ除去」というのはなんかおかしい気がする。毎回10%が減るのであれば、毎回90%が残るわけで、0.9の10乗から10回でも35%近くが残るのではないか?
この点を指摘したところ、ブログの管理人さんから以下のような返信があり、30%に訂正された。
(2011/11/23(水) 11:53)ながぴいさん
おっしゃるとおりですね。計算ミスです。ご指摘ありがとうございました。
20%の除去率として、残りの0.8の10乗が0.107
30%の除去率として、残りの0.7の10乗が0.028
なので、10回でほぼ除去するには30%くらい必要ですね。30%に直しておきます。
ただし、10%というのは仮に出した数値なので、ここは話の本質とは関係ないと思っています。
その他
- 「ヒマワリ栽培による放射能汚染土壌の浄化は可能か-------- 土壌浄化に対する見解-------」(pdf) 2011年8月17日, チェルノブイリ救援・中部
- 「ヒマワリにセシウム吸収期待できず」 ナショナルジオグラフィック ニュース, September 15, 2011
9月15日以降
- 「放射能除染騒動につけ込んだ怪しいビジネスが横行」 日刊SPA!, 2011.10.18
種植えのときは、笑顔で『刈り入れ時期にまた会いましょう!』と言って別れたボランティアの人たちと連絡が取れないんです」
福島県内でひまわりの種を植えるプロジェクトを運営していたNPO関係者は、肩を落とす。
汚染された土壌の放射性セシウムを吸収する植物として、注目を浴びたひまわり。だが、9月15日に農水省は「ひまわりによる除染効果は低い」という調査結果を発表した。そのため、被災地に植えられたひまわり畑の中には刈り取られることなく、“希望の花”から“雑草”になってしまったものも多い。
なおこの記事では、民間稲作研究所の稲葉光國氏によると「収穫時期や場所を変えて調査したところ、農水省が発表した吸収率の10倍の数値が出出ました」とのことだが、1/2000の10倍の1/200でもなかなか厳しいだろう。
むやみに花を植えてはいけない。
- 「東日本大震災:被災地に花植え支援、固有種脅かす恐れ 識者らから懸念の声」 毎日新聞 2012年3月29日 東京夕刊
東日本大震災の被災者を励まそうとボランティアらが花などを移植する活動に、東北大の河田雅圭教授(進化生態学)が警鐘を鳴らしている。植物の種類や植え方によっては、その土地の固有種を脅かす恐れがあるからだという。河田教授は「善意からの移植で、被災者も喜ぶ。でも注意を呼びかけておかないと、意図せず生態系を壊してしまう可能性がある」と話している。【春増翔太】
宮城県塩釜市の沖合に浮かぶ桂島。島内にある二つの集落を結ぶ道路の脇に昨秋、約1万5000株のニホンズイセンの球根が植えられた。山梨県の園芸家らが、早春に咲くニホンズイセンを植えたのは「一足早い春を被災者に感じてほしい」と願ったからだ。
ただ、桂島など浦戸諸島の動植物を研究している河田教授は、こう指摘する。「ニホンズイセンを含むスイセンは東北には本来、自生していない。移植されたスイセンは桂島では外来種になる」
ニホンズイセンの移植を進めた園芸家は「スイセンは全国に数百万株植えられていると聞く。桂島に移植しても現地の動植物に影響することはないと判断した」と話し、生態系への影響も検討した結果、移植したという。
しかし河田教授によれば、桂島にはシャリンバイやオオシマザクラといった希少植物が多く、「外来種」が入り込むと、島本来の植生を乱す恐れがあるという。
植生学会会長を務める東京農工大の福嶋司教授は「一般的に、人為的に移した動植物は人の思惑から離れていってしまうことがある」と話す。
福嶋教授は生態系を守りながら植物で被災地を支援する方法として、外来種になる場合はプランターや鉢を贈ったり、花壇に花を植えたりする方法を提案する。その土地に直接植える場合には「そこに元々生えている植物から採った種や苗を使うのが望ましい」とアドバイスしている。
むやみにヒマワリを植えてはいけない
- 「広まるヒマワリ作戦、間違えれば汚染拡散も」 2011年7月17日15時23分 読売新聞
東京電力福島第一原発事故による周辺土壌の汚染を解消しようと、放射性物質を吸収するとされるヒマワリの種まきが、福島県内で進められていることに対し、「方法を間違えると汚染拡大の恐れもある」と、専門家から慎重な対応を求める声が起きている。
現時点で処分場所も種まきに際してのマニュアルもなく、同省は「(緊急時避難準備区域の)30キロ圏内などでは、実験結果が出るまで行わない方が良いのでは」としている。
新潟大の野中昌法教授(土壌環境学)によると、吸収した放射性物質はヒマワリに蓄積され、いずれ処分しなければならない。ただ、焼却すれば放射性物質が飛散する恐れがあり、種まきの際に土を耕すと地表の放射性物質が土壌深くに混ざってしまう。
汚染を拡散させる危険性があり、「種まきは将来的な処理方法を考えた上で、正しい知識を持って行う必要がある」と指摘する。
- 「良くある質問」 ひまわり作戦、4月 27日
Q1.今すぐに種を蒔きたいのです。
A1.ひまわり作戦に参加するための種まきはお控えください。現在、処理を含めた出口戦略が固まっておりません。福島県内外を問わず、一般の方に参加をお願いすることは難しい状況です。
控えていただきたい理由
・屋外で安全に作業を行うための手段及びマニュアルができていない
・ひまわりがどれだけセシウムなどの放射性物質を含有するか分かっていない
・刈り取ったひまわりの処理方法は検討しているが、現時点では施設がない
ことの発端
- 「原子炉事故とヒマワリ」 呼吸発電、2011年03月23日
3月21日に原子力事故に関連して、Twitter上で気懸りな出来事がありました。
ヒマワリを植えて、放射性物質を取り除こうという呼びかけがあったのです。
この呼びかけは、誤解を招く危険があると思いました。
生物の体内に、放射性物質が蓄積する事があるのは知られています。
しかし、生物が放射性物質を分解することは出来ません。
上記の呼びかけで、放射性物質が分解除去されるというイメージが広がる危険があると思いました。
当日の内に、Twitter上の発起人に修正を求め、一応の終息を見ました。
「寒地土木研究所月報646 2007年3月号解説「ファイトレメディエーション(植物を用いた地盤の浄化法)について」の補足について」
独立行政法人土木研究所 寒地土木研究所
平成23年(2011年)福島第一・第二原子力発電所事故に関連して、ファイトレメディエーション(地盤浄化)に関する当所の資料「解説 ファイトレメディエーション(植物を用いた地盤の浄化法)について(寒地土木研究所月報第646号)」を引用される方が増えております。
このことに関して、資料の内容について補足を行いましたのでお知らせします。
当該箇所は、植物による土壌中の放射性物質の吸収の研究事例を紹介したものです。
ここで紹介した事例は、植物が一部の放射性物質を土壌から吸収して、その植物の体内に蓄積させることを除去と表現したものであり、放射性物質を分解したり消滅させたりするものではありません。空気中や根の届かない範囲の放射性物質に対する効果は期待できませんし、全ての放射性物質に効果があるかどうかも不明です。
繰り返しになりますが、紹介した事例は、放射性物質を土壌中から吸収して植物体内に蓄積されるものであり、放射性物質を消滅させるものではありません。また、土壌の浄化には、植物の除去・運搬などの処理を行う必要があります。植物を植えたから問題が解決するというものではなく、その処理まで含めた対応が必要であることに御留意いただきますようお願いします。
「ファイトレメディエーション」とは、「Phytoremediation」のこと。ここで問題にされている資料は以下のものである。
- 「ファイトレメディエーション(植物を用いた地盤の浄化法)について」(pdf) 寒地土木研究所月報第646号
これを見てみると、放射性物質に関して述べているのは以下の一文のみである。
上記の5種類以外にも放射性物質を吸収する能力も研究されている例があり、それによるとヒマワリの根を用いた水耕栽培試験によりセシウム、ストロンチウムを蓄積することが判明した内容である。
ここで引用されているのは以下の論文。
- 「Removal of Uranium from Water Using Terrestrial Plants」(地上の植物を使用した水からのウランの除去) Slavik Dushenkov, Dev Vasudev, Yoram Kapulnik, Doloressa Gleba, David Fleisher, K. C. Ting, and Burt Ensley, Environ. Sci. Technol., 1997, 31(12), pp 3468-3474
論文のタイトルからもわかるように、一番濃縮効果があったのは、ウランである。最大で3万倍程度の濃縮効果があった。論文の図3を参照。750mlの水溶液で濃度600μg/lのウランが1時間で63μg/lに減り、48時間後には10μg/lで平衡状態に達したとのこと。ウランのほとんどは根に蓄積するとのこと。つまり、ヒマワリを処分する場合には、根を地中から丁寧に掘り出して処分しないと、汚染除去にはならないかもしれない。
セシウムとストロンチウムについては、200μg/lあったものが、セシウムは24時間で3μg/l、ストロンチウムは48時間で35μg/lに減り、さらに二日後には1μg/lになった。(図3参照)
ただし、実験はすべて水耕栽培で行われている。土壌に植えた場合、放射性物質が土壌そのものに吸着し、ヒマワリによる吸収が阻害される可能性がある。
「【臨時】植物のセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)集積に関する研究」
上記は、北海道大学大学院農学研究院助教の渡部敏裕氏の個人的ページであるが、植物を使った放射能除去の難しさについても書かれてあるので、それらを箇条書きに列挙してみた。
- セシウムは同族元素であるカリウムやナトリウムと、「どちらかといえば排他的関係」にある。つまり、カリウムが抱負な土壌ではセシウムの植物による吸収は阻害される。これについては、土壌肥料学会のHP「放射性セシウムに関する一般の方むけのQ&Aによる解説」も参照。
Q7. 土から作物への吸収を少なくする方法はありますか?
A7. 土のカリウムの濃度が高いほど、セシウム137が作物へ吸収される量が少なくなるという研究事例があります。
土には、チッ素(N)、リン(P)、カリウム(K)の肥料が必要とされます。この3つの肥料のうち、カリウムを与えないと作物が吸収するセシウム137の量が増え、堆肥を畑に入れると減るという報告があります。このような研究から、作物への吸収をより少なくするような農耕地の肥培管理のできる可能性があります。
- セシウムは土壌と非常に強く吸着する性質があるようだ。(つまり、植物による吸収が阻害される) これも、土壌肥料学会のHP「放射性セシウムに関する一般の方むけのQ&Aによる解説」を参照。
Q4. セシウム137は土に入るとどうなりますか?
A4. セシウム137は、土に強く保持される特徴があります。
化学のお話になりますが、元素の周期律表をみるとセシウムは、ナトリウム(Na)やカリウム(K)と同じアルカリ金属に分類され、これらの元素と同じようにふるまうことがわかっています。土に入ってきたセシウムはカリウムと同じ様にプラスの手(荷電)をひとつもった陽イオンとしてふるまいます。一方、土はマイナスの手(荷電)を持っているため、プラスの陽イオンを引きつけてとどめる性質があります。さらに、土の中の粘土に含まれる鉱物(粘土鉱物)には色々な種類がありますが、その中には、セシウムを閉じ込めるのにちょうどいい大きさの穴を持つものがあります。このため、セシウムは他の陽イオンに比べ、土にしっかり保持されて、離れにくくなります。土に降ったセシウム137の70%が、粘土鉱物に強く保持されるという研究結果も報告されています。
Q6. 土の中にあるセシウム137は、作物に吸収されますか?
A6. 根から吸収されますが、土に入ったセシウムの大部分が粘土鉱物に強く保持されるため、作物が吸収するセシウムの量は、土に入ってからの経過日数とともに減っていくことが報告されています。
土に入ったセシウム137は、土の中の粘土鉱物などに強く保持されます(Q4に対する答えをご覧下さい)。そのため、土から水に溶け出すセシウム137の量は時間とともに減っていきます。作物は根から主に、水に溶けている養分を吸収するので、作物が吸収するセシウムの量も、同時に減っていきます。また、土から作物へ吸収されるセシウム137の量は、作物の種類によっても大きく異なります。
- ヒマワリの葉におけるセシウムの集積量は決して高くない。
- ヒマワリの30倍近く高い含有率を示す植物もあるが、バイオマスが小さかったり、栽培が難しかったり、逆に繁殖力が強すぎて環境に悪影響を与えるかもしれない。よって、ここではそれらの植物の名前は明らかにされていない。
- セシウムの土壌内の空間分布の仕方によって、植物の根の張り方(深根性、浅根性など)も吸収に影響するだろう。
その他
- 「ひまわりレメディエーションについての覚書」 うさうさメモ, 2011-09-15
- 「放射性物質除去にヒマワリ?」 花を増やそう!みつばち百花, 2011年04月01日
- 「「原子炉事故とヒマワリ」早とちり情報拡散中です(更新)」 ときめく在宅ダーリン、いいかっこしよう。2011-03-27 22:27
- 「ヒマワリは20日間で土壌の95%の放射性物質を除去できるという話がウソくさい件」 OS/2使いのSassy, March 23, 2011 11:50:11
- 「Phytoremediation of Radiocesium-Contaminated Soil in the Vicinity of Chernobyl, Ukraine」 Slavik Dushenkov, Alexander Mikheev, Alexei Prokhnevsky, Michael Ruchko, and Boris Sorochinsky, Environ. Sci. Technol., 1999, 33 (3), pp 469–475
ヒマワリ作戦
- 「汚染土壌浄化「ヒマワリ作戦」…復興の象徴にも」 2011年4月22日14時49分 読売新聞
こちらの記事によると、宇宙航空研究開発機構の山下雅道専任教授ら宇宙農業に取り組む研究者有志が、汚染された土壌の放射性物質をヒマワリに吸収させ、細菌で少量化する計画を進めているそうだ。
ただし、収穫したヒマワリは、焼却処分すると煙が出て放射性物質が拡散する恐れがあるため、「高温好気堆肥菌」による分解で、ヒマワリの体積を1%程度にして、『放射性廃棄物の量を減らすことができる』としている。注意しなくてはいけないのは、ここで「減らすことができる」と言っているのは「ヒマワリの体積」であって、放射性物質の量ではない。「高温好気堆肥菌」を使うことにそれほど意味があるどうかは不明。
「ヒマワリ作戦」については以下のリンクも参照。
以下のpdfファイルが詳しい。
- 「原発事故で放射能汚染された大地をヒマワリで埋めよう」(pdf) 山下雅道 宇宙農業サロン、宮川照男 NPO法人ASE・東海大学、加藤浩 三重大学、金澤晋二郎 九州大学、大江俊昭 東海大学、石川洋二 大林組、富田(横谷)香織 筑波大学、山路恵子 筑波大学、藤井義晴 農業環境技術研究
このファイルでは以下の論文が引用されている。
- 「Caesium and strontium accumulation in shoots of Arabidopsis thaliana: genetic and physiological aspects」(シロイヌナズナのセシウムとストロンチウムの若枝への蓄積:遺伝的、生理学的側面) Ulrike Kanter, Andreas Hauser, Bernhard Michalke, Stephan Dräxl and Anton R. Schäffner, J. Exp. Bot. (2010), doi: 10.1093/jxb/erq213, First published online: July 11, 2010
この論文の結論は、シロイヌナズナによるセシウムとストロンチウム・イオンの吸収は、カリウムとカルシウム・イオンの濃度増加によって制約されるというものであり、北大農学研究院の渡部敏裕氏の意見とも矛盾しない。
- 「Plant uptake of radiocaesium: a review of mechanisms, regulation and application」(放射性セシウムの植物による吸収:そのメカニズム、調整、応用に関する総説) Y‐G. Zhu and E. Smolders, J. Exp. Bot. (2000) 51 (351): 1635-1645
これは、植物によるセシウムの吸収に関する研究の総説。ここにも、高濃度のカリウムイオンはセシウムの吸収を阻害すると書かれてある。また、ファイトレメディエーションの最大の問題は、浄化に何十年もかかることと、多量の廃棄物が出ることであり、今のところ、実践的な環境浄化テクノロジーではないとしている。たとえば、redroot pigweed(アオビユ)は効果的にセシウムを吸収濃縮するが、土壌浄化には40回以上の刈取りが必要になる場合もある。よって、ファイトレメディエーションを効果的な浄化方法にするには、より一層の改良が必要である。
ただし、他にいい方法がなければ、たとえ非効率的であっても、こうした方法に頼らざるを得ないのかもしれない。
逆に、農作物への吸収を抑制する方向に応用することも可能かもしれない。
- 「農地の浄化、5月にも開始 植物で放射性物質吸収を実証」 asahi.com, 2011年5月7日10時8分
こちらの記事によると、農林水産省もヒマワリやナタネの栽培の実証実験を行い、土を浄化する技術の確立をめざすそうだ。重視するのは「即効性のある技術」。早ければ5月にヒマワリ、秋にはナタネを植える、とのこと。計画的避難区域に指定された福島県飯舘村などが候補地。ただし、ヒマワリやナタネ栽培に「即効性」があるかどうかは疑問。論文を見てみた限りではわりと時間がかかりそう。
- 「農地の除染試験、28日開始=飯舘村でヒマワリなど栽培−農水省」 時事ドットコム、2011/05/24-17:59
農林水産省は24日、東京電力の福島第1原発事故で汚染された農地の放射性物質を除去する技術の開発に向け、28日から実証試験を始めると発表した。放射性物質を吸収するヒマワリの栽培などを福島県飯舘村で行う。8月末をめどに成果をまとめ、本格的な農地の除染事業に生かす。
8月末に成果をまとめるとのことなので、良い結果が出ることを待とう。
- 「ヒマワリ育て土壌除染、飯舘村で実証試験」 (2011年5月29日14時39分 読売新聞)
鹿野農相が視察に訪れる中、農水省の担当者が農家ら約100人を前に計画を説明。表土を削り取ることに加え、放射性セシウムの除去に有効とされるゼオライトなどの吸着剤、ヒマワリなどの植物を使った除染法などを示し、鹿野農相は「研究成果を積み上げ、再びこの地で営農できるよう努めたい」と述べた。
DASH村
- 「山口達也、涙…防護服姿で4カ月ぶりのDASH村「荒れ放題で寂しかった」」 産経ニュース、2011.8.26 08:29
大震災による原発事故の影響で、原発から約25キロ離れたDASH村は計画的避難区域となった。今回立ち入りが実現したのは、6月にJAXA(宇宙航空研究開発機構)から番組側にあった依頼がきっかけだった。
それは「DASH村で放射性物質のデータ採集と実験をしたい」というもの。宇宙での食糧自給自足をテーマに研究しているチームだが、特に「ヒマワリが土壌の放射性セシウムを吸収する」との説の実証実験を行いたいとの意向だった。
今回はTOKIOのメンバーを代表してではなく、山口個人が積極的に進めたプロジェクトで、他のメンバーには村に入る前日に報告。「驚いていたけど、『きちんと様子を見てきて』と言われた。後で村の様子を伝えたら安心していた」という。DASH村入りと実験の様子は、9月11日の同番組で「DASH村〜再生を目指して〜」と題して放送される。
- 「「DASH村」の土、ヒマワリで浄化実験 山口さん参加」 asahi.com, 2011年8月26日6時58分
JAXA(宇宙航空研究開発機構)に所属する研究者が番組に声をかけたのがきっかけ。浪江町の許可を得て先月16日、TOKIOの山口達也さんが研究者らと村へ。草だらけの水田や牧草地を耕して、土の中の放射性物質を吸収するとされるヒマワリの種をまいた。今月22日にも再度赴き、ひざ丈まで育ったヒマワリや周辺の土壌を採取して持ち帰り、放射性物質の量などを調べたという。
- 「「DASH村」のヒマワリ栽培 放射性セシウム吸い上げを期待」 Jcastニュース、2011/8/26 19:39
国内では現在、ヒマワリで放射能に汚染された土壌の浄化につなげようとの動きが活発化している。JAXAの「宇宙農業サロン」は、「ヒマワリ作戦」と称して計画的避難区域の数か所で試験的にヒマワリを栽培している。
ヒマワリまきを推奨する記事・団体
- 「ひまわりが放射能汚染された土壌を浄化! プロジェクトが各地でスタート」 マイスピ、2011.06.24 10:00
夏に咲く花といえば、やはり黄金色に輝く太陽の花「ひまわり」ですが......今この「ひまわり」が、放射能汚染された土壌の浄化に効果があると、大きな注目を集めています!
もともと植物の種類の中には、土壌の放射性物質を吸収するものがあるそうですが、その中でもひまわりが最も吸収効率が高く、土壌の放射性物質の除去に30年以上はかかると言われていた場所でも、わずか20日で95%以上を除去したという記録が残っているそうです。
これが典型的な「ひまわりを蒔こう」の謳い文句。
福島ひまわり里親プロジェクト
- 「放射性物質を吸収 ヒマワリで福島支援 富士河口湖町、町民に協力呼びかけ」 山梨日日新聞、2011年06月28日(火)
町政策局によると、福島県内の若手経営者が、放射性物質を吸収する効果があるとされているヒマワリで、放射能汚染の状況を改善させようと「福島ひまわり里親プロジェクト」を結成した。来年、福島県中にヒマワリを植えるため、今夏は全国の里親にヒマワリの種を販売、育てた種の提供を求めている。取り組みには震災を風化させない、という狙いもある。
- 「ヒマワリを福島に、土壌の浄化目指し種送る活動」 AFP BB2011年06月25日 12:36 発信地:東京
この「福島ひまわり里親プロジェクト」は、放射性物質を吸収するとされるヒマワリを植えて土壌中の放射性物質の除去に役立てようという考えで、5月に福島県の民間人や公務員らが立ち上げた。賛同者たちにヒマワリの種を送ってことし植えてもらい、そのヒマワリからとった種を福島県に送り返し、来年の夏に向けて福島県で植えようという試み。
日本ホメオパシー医学協会
- 「原発周辺の畑にレメディとヒマワリの種とデマを撒き散らそうとするホメオパシー関係者」 Not so open-minded that our brains drop out. 2011-03-26
セシューム137は、3カ月から30年間続くこともあり、農地を被曝からきれいにするためには、対策としてひまわりなど、どんなところにでも生える強い植物を植えて吸い上げさせることです。
その時にRAのレメディーを畑にまくこと、そして、そのひまわりの種は食べないで、全草燃やし、灰にすることです。
日本ホメオパシー医学協会の由井寅子氏は、上記のように述べている。しかし、もしも、ひまわりによる放射性物質の生物濃縮が本当に起こっているとしたら、その灰を安易に廃棄することは、放射性物質を再びばら撒くことになりかねない。由井寅子氏には科学的見識が欠落していると思われるので、その主張を信じるべきではない。
ところが、さすがにJPHMAの誰かがこのことに気づいたようで、「ホメオパシーの手引き放射能より農家へのアドバイス」(ホメオパシーブックス)では『放射性セシウムやストロンチウムを吸い上げたひまわりは、厳重な管理のもとで焼却し、灰は放射能物質としてやはり厳重にタンクで管理し続ける必要があります』という編集部注がついている。