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ビタミンK事件(その2)

この項目はビタミンK不投与事件のつづきです。長くなりそうなので、分けました。

助産師側が請求棄却

 助産師がビタミンKを与えなかったのが原因で生後2カ月の長女が出血症で死亡したとして、山口市の母親(33)が同市の助産師に約5640万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。助産師側は請求棄却を求め答弁書を提出した。

 

 訴状によると、母親は09年8月女児を出産。生後1カ月ごろ発熱や嘔吐(おうと)などを起こし急性硬膜下血腫(けっしゅ)が見つかった。入院先の病院はビタミンK欠乏性出血症と診断、呼吸不全による心機能停止のため、10月に亡くなった。

 

 厚生労働省の研究班は新生児の血液を固まりやすくするためビタミンKの投与を促している。

 

〔下関版〕

「日本助産師会」は実態調査に乗り出した

 「ホメオパシー」と呼ばれる代替療法が助産師の間で広がり、トラブルも起きている。乳児が死亡したのは、ホメオパシーを使う助産師が適切な助産業務を怠ったからだとして、損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。自然なお産ブームと呼応するように、「自然治癒力が高まる」との触れ込みで人気が高まるが、科学的根拠ははっきりしない。社団法人「日本助産師会」は実態調査に乗り出した。

 

 新生児はビタミンK2が欠乏すると頭蓋(ずがい)内出血を起こす危険があり、生後1カ月までの間に3回、ビタミンK2シロップを与えるのが一般的だ。これに対し、ホメオパシーを取り入れている助産師の一部は、自然治癒力を高めるとして、シロップの代わりに、レメディーと呼ぶ特殊な砂糖玉を飲ませている。

 

 約8500人の助産師が加入する日本助産師会の地方支部では、東京、神奈川、大阪、兵庫、和歌山、広島など各地で、この療法を好意的に取り上げる講演会を企画。2008年の日本助産学会学術集会のランチョンセミナーでも、推進団体の日本ホメオパシー医学協会の会長が講演をした。同協会のホームページでは、提携先として11の助産院が紹介されている。

 

 日本助産師会は「問題がないか、実態を把握する必要がある」として、47支部を対象に、会員のホメオパシー実施状況やビタミンK2使用の有無をアンケートして、8月中に結果をまとめるという。

 

 また、通常の医療の否定につながらないよう、年内にも「助産師業務ガイドライン」を改定し、ビタミンK2の投与と予防接種の必要性について記載する考えだ。日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。

 

 助産師会の岡本喜代子専務理事は「ホメオパシーを全面的には否定しないが、ビタミンK2の使用や予防接種を否定するなどの行為は問題があり、対応に苦慮している」と話している。

 

 助産師は全国に約2万8千人。医療の介入を嫌う「自然なお産ブーム」もあり、年々増えている。主に助産師が立ち会うお産は、年間約4万5千件に上る。

 

 テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた。

 

 取材に応じた神谷理事は「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを使っていた。K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半がレメディーを選んだという。

 

 一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディーを使っているという。

 

 ホメオパシーをめぐっては英国の議会下院委員会が2月、「国民保健サービスの適用をやめるべきだ。根拠無しに効能を表示することも認めるべきではない」などとする勧告をまとめた。薬が効いていなくても心理的な効果で改善する「偽薬効果」以上の効能がある証拠がないからという。一方、同国政府は7月、科学的根拠の乏しさは認めつつ、地域医療では需要があることなどをあげて、この勧告を退ける方針を示している。

 

 日本では、長妻昭厚生労働相が1月の参院予算委で、代替医療について、自然療法、ハーブ療法などとともにホメオパシーにもふれ、「効果も含めた研究に取り組んでいきたい」と述べ、厚労省がプロジェクトチームを立ち上げている。(福井悠介、岡崎明子)

 

 ◇

 

 〈ホメオパシー〉 約200年前にドイツで生まれた療法。「症状を起こす毒」として昆虫や植物、鉱物などを溶かして水で薄め、激しく振る作業を繰り返したものを、砂糖玉にしみこませて飲む。この玉を「レメディー」と呼んでいる。100倍に薄めることを30回繰り返すなど、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない。推進団体は、この砂糖玉を飲めば、有効成分の「記憶」が症状を引き出し、自然治癒力を高めると説明している。がんやうつ病、アトピー性皮膚炎などに効くとうたう団体もある。一方で、科学的な根拠を否定する報告も相次いでいる。豪州では、重い皮膚病の娘をレメディーのみの治療で死なせたとして親が有罪となった例や、大腸がんの女性が標準的な治療を拒否して亡くなった例などが報道されている。

上記の朝日新聞の記事によると、ビタミンK不投与事件の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であったことを受け、社団法人「日本助産師会」がホメオパシーの実態調査に乗り出した。

日本助産師会は、日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。ただし、岡本喜代子専務理事は「ホメオパシーを全面的には否定しない」とも話しており、危機意識が低いことがわかる。

また、NHKの番組に登場したこともある「カリスマ助産師」神谷整子氏が、自身も効き目のないK2レメディーを与えていたことを認めている

ところが、神谷氏も「K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」と、まるで他人事のようだ。神谷氏が登場したNHKの番組については以下のリンクを参照。

ブログ「鼬、キーボードを叩く」の以下のエントリで、平成18〜20年のあいだに、助産師会で開催されたホメオパシーの講演会や研修会について見ることができる。

日本ホメオパシー医学協会の反応

ホメオパシージャパン(株)からリンクされている日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)のページ「朝日新聞等のマスコミによるホメオパシー一連の報道について その1」を参照。いくつか注目すべき点を引用しておく。

助産師の所属する団体

新聞報道では助産師は、どのホメオパシー団体に所属しているか、明らかでなかったのに対し、ここでは以下のようにJPHMA会員であることを認めてしまっている。

この山口地裁の訴訟については、昨日(8/4)、第1回の口頭弁論があり、JPHMA会員の助産師側は、損害賠償請求の棄却を求めています。

さらに、以下のようにも述べている。

ホメオパシーは200年前から世界的に膨大な治療実績がある治療法であり、日本ホメオパシー医学協会が認定するホメオパスは、プロの基準を満たしているので、ホメオパシー治療を職業とするのに何の問題ないというわけです。

それならば、なぜ「プロの基準を満たしている」はずのJPHMA会員が今回のような事件を起こしてしまったのだろう?裁判で経緯が解明されることを期待する。

ビタミンK不投与事件について

また、本件に関連したマスコミ報道の中で、あたかも乳児死亡がホメオパシーに原因があるかのあるかのような印象を与える記事を見かけますが、そもそもホメオパシーレメディーをとって死亡することはありえません。

と、あくまで「レメディは死亡原因ではない」という主張のようだ。しかし、今回の事件では、本来飲ますべきビタミンK2シロップを飲ませず、効果のないレメディを代わりに飲ませたのが直接の原因なのは明白である。

ワクチンについて

JPHMAは、法律的に義務化されていない限り、国民1人1人がワクチンやクスリの害と効用をしっかりと知り、選択すべきものであると認識しています。当然、ワクチンを打つなとか、薬を飲むななど主張する立場でもなく、そのような主張を行っているという事実も全くありません。国民1人1人が判断する材料として、ホメオパシーの考え方や臨床経験から情報提供しているのみです。

しかし、JPHMAの由井寅子会長は自著「予防接種トンデモ論」(ホメオパシー出版、2008年)の序章で以下のように語っている。

予防接種によって多くの子どもたちが苦しみ、人々の免疫が低下し続けている。もう手の施しようがなくなってしまう前に、事実を見てきた私たちホメオパスが、その事実を話さなければならない。ホメオパスは、予防接種による医原病を治癒へと導く術をもち、予防接種に代わる予防の術をもち、感染症にかかった場合でも治癒へと導く術をもち、さらに、予防接種がいかに悪影響を及ぼすものであるかを証明できる臨床経験ももっているではないか。私たちホメオパスが予防接種に反対しないで誰がやるのだろうか、率先してやらなければならない

太字はSkeptic's Wikiによる。また、JPHMAのサイトには「1918年のスペイン風邪の伝染は予防接種が原因だった!」などというページもあり、「スペイン風邪に対する予防接種が、大流行と死亡率を高めたことを窺わせる証言をもとに書かれた本がありますので、紹介することにします」などとしている。その一部を引用しておく。

その流行病は、当時の医師たちが、症状を抑圧しようとしてさらに投与した有毒な薬物によって勢いが保たれ、2年間にわたって続きました。私が知り得た限りでは、予防接種を受けたことのある人しかそのスペイン風邪に罹らなかった。予防接種を拒んだ人たちは罹らなかった。私の家族はすべての予防接種を拒んだため、その流行病の間ずっと元気だった。私たちはグラハム、トレール、ティルデンらの健康についての教えから、体内を毒物で汚染することが必ずや病気につながっていくことを知っていたのだ。

菊池誠教授のコメントについて

大阪大学サイバーメディアセンター菊池誠教授のコメントについては、

大阪大の菊池氏の発言として掲載されていますが、もしこれが事実としたら、研究もせずに、自分の持つ価値観、自分が学んだ範囲でのみ考えて結論を出し、頭から否定するというのは、科学者として頭が固すぎるといわざるを得ません。過去の歴史からも、未知のものを既知としていくところにこれまでの発見があり、発展があるということを学ぶことができるのに、そのことさえも認識されていません。

とのことで、どういうわけか「科学的な根拠に関して」として、以下の「体験談」にリンクされている。

菊池教授の反論としては、kikulogの以下のエントリを参照。一部を引用しておく。

水と砂糖は水と砂糖ですから、水と砂糖としての効果しか持ちません。特に実験だの研究だのをする必要はありません。あまりにもナンセンスな話はいちいち反証だの実験だのをせずに否定してかまわないし、そうするべきですよ。

レメディは食品である

ホメオパシーのレメディーは、薬ではなく食品となっており、レメディーを与えることは医療行為に当たりません。レメディーがあたかも薬であるかのような表現をすることは、事実誤認であり、多くの人に誤解を与える表現です。

ホメオパシーのレメディは、薬ではなく食品だそうな。食品を扱っているのであれば、「医学協会」ではなく「日本ホメオパシー食品協会」とでも名乗ったほうが誤解が少なくてすむのではないか?レメディは砂糖玉なので、「日本ホメオパシー製菓」というのもいいかもしれない。

川嶋朗准教授とは誰か?

JPHMAの反論記事には「川嶋」氏という名前が10回程度登場する。これは東京女子医科大学付属青山自然医療研究クリニックの川嶋朗准教授のことである。asahi.comにはないが、新聞記事には以下のような川嶋准教授の発言が掲載されていたようだ。

  1. 「ワクチンを打つなとか、薬を飲むななどと主張する過激なホメオパシーグループも存在する。」
  2. 「レメディーを投与するのは医療行為である。」
  3. 「薬の処方権がある人以外がホメオパシーを使うのは大きな問題だ。」

JPHMAはこうした川嶋准教授の主張に真っ向から反論しているが、川嶋准教授もホメオパシーを治療に取り入れている人物であり、日本ホメオパシー医学会理事、日本波動医学協会会長、I.H.M.国際波動友の会インストラクター、気の医学会世話人等の肩書をもっている。同じホメオパス同士なら仲もいいのかと思えば、そうでもないようだ。レメディを「食品」とみなし、一般人にホメオパスとしての認定を行ったり、レメディを販売しているJPHMAやホメオパシージャパン(株)は、どうやら川嶋准教授の「レメディを投与するのは医療行為」という主張がお気に召さないようだ。

以下の記事で川嶋准教授の発言を読むことができる。

その他

この件については、以下のブログのエントリも参照。

日本ホメオパシー振興会の反応

今回の事件が、あたかも「ホメオパシーそのもの」によって起こったことのように報じられています。前回の見解でも述べましたように、VK2シロップの代替として「ホメオパシーレメディーVK2」なるものを投与すること自体、「本来のホメオパシー」ではありません。日本ホメオパシー振興会が普及しております「本来のホメオパシー」においては、そのような無意味かつ危険な行為はありえないことです。

以上のように、日本ホメオパシー振興会の立場は今回の事件は「本来のホメオパシー」が起こしたのではないといったものだ。さらに、

当該助産師が所属する「ホメオパシー普及団体」の行っていることが、あたかも通常のホメオパシーであるかのような記事内容ですが、その団体は、日本国内でホメオパシーを標榜する1団体にすぎません。しかもその団体が行っていることは、上述のように、「本来のホメオパシー」とはかけ離れており、「ホメオパシーレメディーを使うけれど『本来のホメパシー』ではないまったく別の極めて特殊な療法」です。

と述べて、当該助産師が所属する「ホメオパシー普及団体」を真っ向から批判している。日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)はHPで、当該助産師がJPHMA会員であることを認めているので、この場合、批判されているのはJPHMAということになる。

実際にはホメオパシーは高度な科学性と芸術性を併せ持っている医療です。ホメオパシーの科学性を正しく論じるためには、「狭義の科学的手法」だけではなく、科学の本質とパラダイムシフトの歴史、統計学の本質、二重盲検法の本質、そして人間の本質についての深い教養と、謙虚で真摯な科学的態度が必要です。日本ホメオパシー振興会では今後もひき続き、ホメオパシーの科学性に迫る研究を支援し、邁進してまいります。

とのことなので、ホメオパシーは科学という立場のようだ。(この場合、芸術性がどう関係してくるのかよくわからないが…) しかし、ホメオパシーを科学だとするには相当な無理がある。なぜなら、ホメオパシーとは、おおざっぱに言って、

  1. ホメオパシーの原理は「似たものが似たものを治す」という根拠薄弱なものなので、謳われるような薬効が本当にその原料にあるかどうかも疑わしい。
  2. もともとの原料成分が1分子も残らないほど、水で希釈する。
  3. レメディとして用いられるのは、その希釈溶液をかけた砂糖玉であり、患者に処方されるときには、その水分はほぼ蒸発している。

といったものだからだ。これは科学というよりは、どちらかというとオカルトに近い。

ところが、琉球大学理学部大瀧丈二(松本丈二)准教授という人物がホメオパシー肯定派の科学者として、日本ホメオパシー振興会代表の永松昌泰氏と対談したようである。今後、大瀧准教授がホメオパシーについて、どのような研究成果を(査読制のある国際学術誌に)発表していくか注目していきたい。

大瀧氏については、以下のリンクも参照。

J-CASTニュースの記事

上記のような記事がJ-CASTニュースにされたが、「医師免許がなくても治療できるというのは、本当のことなのか」のように、ちょっと論点がずれてしまっている。これに対し、さっそく日本ホメオパシー医学協会が反論している。

周産期・新生児医学会が緊急声明

 日本周産期・新生児医学会(理事長=田村正徳・埼玉医科大総合医療センター教授)は5日、新生児の頭蓋(ずがい)内出血を防ぐため、ビタミンK2シロップ投与の重要性を再確認するよう、会員の産婦人科医や小児科医、助産師らに求める緊急声明を出した。代替療法「ホメオパシー」を実践する一部の助産師が、シロップの代わりに「レメディー」と呼ばれる砂糖玉を渡し、新生児が死亡し訴訟になったことを受けた。緊急声明は長妻昭・厚生労働相にも提出、厚労省として積極的に指導するよう求めた。

以下がその声明。

助産師会の機関誌で代替医療特集

(社)日本助産師会の機関誌「助産師」の64巻3号(2010年8月1日発行)に、「産科における代替医療を考える」という特集が組まれ、「ホメオパシー」(渡辺愛、渡辺助産所)というタイトルの記事が掲載された。

この特集の冒頭には、(社)日本助産師会 安全対策室長 岡本喜代子氏の以下のような発言があり、この特集がビタミンK不投与事件がきっかけだったということがわかる。

 残念ながら、昨年、ホメオパシー療法で事故が起きた。ビタミンK2投与が実施されず、児は、1ヶ月健診後にビタミンK2不足が原因と思われる頭蓋内出血で死亡した。

 これを機に、助産業務と代替医療の活用範囲に関する検討が急務であると考え、今回の特集を組むことにした。

しかし、あわてて組まれたせいか、この特集はどこか的外れなものとなっている。これに関しては、以下のブログ「助産院は安全?」のエントリを参照。

ここではこの特集の記事をいくつか紹介していきたいと思う。

補完代替医療とリスクマネジメント

大野智 埼玉医科大学国際医療センター, p.8-13

これは、この特集の最初の記事であり、代替医療について以下のように述べている。

科学的根拠がない補完代替医療を、科学的根拠がある標準的な医療の代わりに、病気の治療や予防として利用することは、決して許されるべきではありません。

もっともな意見だが、そもそも、標準的な医療の代わりにはならないものが、なぜ、「代替医療」と呼ばれるのであろうか?

しかし、科学的根拠(エビデンス)がないからといって、補完代替医療が全て否定されるべきではありません。科学的根拠がないと言うことは、「効果がない」ということを意味しているわけではなく、「効果があるのかないのか分からない」という状況を表しています。

「効果があるのかないのか分からない医療」を「標準的な医療よりも効果がある」と勘違いしている人が、現実には大勢いるということが、本質的な問題なのではなかろうか?

EBMの考えに基づくということは、科学的根拠によって確立された治療法がある場合は、まずそれを優先することが前提になります。

まったくその通りだろう。EBM(evidence-based medicine)とは「科学的根拠に基づいた医療」のこと。

補完代替医療に対して否定的な立場を取っている医療者の場合、注意していただきたいのは、頭ごなしに補完代替医療を否定してしても問題の解決には至らないということがあります。

たしかに、これはそうかもしれない。

補完代替医療を積極的に取り入れようとしている医療者の場合、科学的根拠に基づいて確立されている標準的な治療法がある場合、それに替わって科学的根拠のない補完代替医療を用いることは絶対に行ってはいけません。

まったくその通りだろう。この記事は以下の文章で閉められている。

医療の分野では、多様な選択肢の中の一つとして、近年、補完代替医療が注目されています。しかし、補完代替医療の多くは、ヒト臨床試験による科学的根拠が乏しいものが多くを占めています。今後、よく計画されたヒト臨床試験による科学的根拠が蓄積され、多くの不確かなことが補完代替医療の名のもと漫然と継続されることなく、順次、有効・無効、有害・無害が明らかにされていかなければなりません。そして、有効性と安全性が確認された補完代替医療が、医療現場に取り入れられ、患者が満足のいく、より良い医療が提供されることを期待します。

科学的根拠を優先するのであれば、代替医療を「選択肢の中の一つ」とする前に、その科学的根拠を明確にしておくべきであろう。順番が逆であってはならない。

ホメオパシー

渡辺愛 渡辺助産所、p.23-26

この記事の筆者は、夫の英国転勤の際、3年間英国最大のホメオパシー専門学校Center for Homeopathic Educationで勉強したホメオパスである。

ランセットコクランでは、ホメオパシーの効果はプラシーボと差がないと明言しています』や『ホメオパシーは医療の代替にはなりません』などと述べ、ホメオパシーが無効であることをある程度認めているが、今回のVK不投与事件については言及していない。

彼女からレメディを渡されていた妊婦が、妊婦性の貧血を指摘され、医療機関から鉄剤を処方されていたにもかかわらず、服用の有無を確認したところ、まったく服用していなかったという体験談も書かれている。筆者は、かなり厳しくお産の危険性を説明し、錠剤を服用するよう説明して納得してもらったとのこと。

この妊婦は、友人に「鉄剤は子どもの性格に影響する」と言われ、出血時の危険性の話と板挟みになり悩んでいたそうだ。

産科における代替医療を考える

早乙女智子 神奈川県医師会神奈川県立汐見台病院産婦人科、p.27-30

この記事は、現代医療に対してかなり批判的であり、ブログ「助産院は安全?」では「私からすると、結局は病院での分娩台のお産を否定している内容なんですよ」と評されている。

まだ書きかけ。

Vk2投与に関する助産師会の見解

8月10日に、「ビタミンK2投与に関する日本助産師会の見解」(pdfファイル)が公開された。全文を引用しておく。

 助産師は、安全かつ有効な助産行為を行うことを前提に業務を遂行しているものである。安全かつ有効な助産行為とは、現在の医療水準において、科学的な根拠に基づいた医療を実践することである。

 山口県で起こったビタミンK2シロップを投与せず児がビタミンK 欠乏性出血症により死亡した事例については、当該助産師が補完代替医療の一つであるホメオパシーによる効果を過大に期待したためと考える。ホメオパシーのレメディはK2シロップに代わりうるものではない。

 日本助産師会はこの件を重く受け止め、全会員に対して、科学的な根拠に基づいた医療を実践するよう勧告する。

 

 2010 年8 月10 日

 社団法人日本助産師会

 会 長 加藤尚美

なお、最初に公開されていた「ビタミンK2投与がなされず、児が死亡した件に関して」(pdfファイル、リンク切れ)という文書は削除されているので、現在は見ることはできない。

その他の被害例

この記事では、ビタミンk不投与事件とは別の「日本ホメオパシー医学協会」が関連した2つの事例を取り上げている。

2010年5月、国立市の女性(当時43)が、ホメオパシーを理由に治療を拒否し、悪性リンパ腫が悪化して死亡した。埼玉でも2009年5月、男児(同生後6カ月)が体重5千グラム前後の低体重のまま死亡した。男児のアトピー性皮膚炎の治療や予防接種を、両親が拒否していたらしい。さいたま市児童相談所は、病院の受診拒否などを虐待と判断し、男児が4月に入院した際、両親が連れ戻さないよう病院に要請していたが、男児は5月2日に死亡した。

記事では、女性や男児の両親が頼った療法家を認定したのは日本ホメオパシー医学協会だとされている。女性の遺族らは「憂慮する会」を設立し、真相解明を求める運動を始めたそうだ。

この件については、「「あかつき」問題を憂慮する会」を参照。 

日本ホメオパシー医学協会の反応

その他

週刊新潮の記事

朝日新聞の8月11日の報道を受けて、週刊新潮(8月26日号)に『死亡者複数という奇妙な「ホメオパシー」にハマっている有名人』(p.48)という1ページに満たないゴシップ記事が掲載された。

この記事では、ジャーナリストの藤倉善郎なる人物の以下のような解説が掲載されている。

病気の原因となる物質を分子すら残らないほど希釈して服用することで、自然治癒力が向上し、さまざまな病気に対応できると言われています。当然、飲んでも毒にも薬にもなりませんが、問題点は病状が悪化しても本来必要な医療を拒否する人がいることです。西洋医療を否定する傾向があり、治療を受け入れずに手遅れとなるケースもあるんです。

さらに、JPHMAが提携しているという山崎クリニック(佐賀県唐津市)の山崎実好院長の以下のような見解も掲載されている。

私は西洋医学の医者ですが、現段階ではアトピー性皮膚炎も喘息もアレルギー性鼻炎も治せない。でもホメオパシーによって、そうした慢性的な病状に苦しむ患者さんの状態が明らかに改善されたんですよ。

なお、アトピー性皮膚炎は、俗に「アトピービジネス」と呼ばれる悪徳商法のターゲットとされる場合があるので、注意が必要である。

JPHMAの反応

この見解では、ホメオパシーを利用しているという、俳優、芸術家、音楽家、文豪、企業家、ヨーロッパ諸国の君主など、多数の「世界の有名人」の名前が挙がっている。

しかし、当然のことかもしれないが、この中に「有名な科学者」のリストは含まれていない。

ジャーナリストの藤倉善郎氏

JPHMAの見解に対して、週刊新潮の記事に登場していた藤倉善郎氏が反論している。

ガリレオはいったい何を唱えたのか?

JPHMAの見解について、「Not so open minded ...」がおもしろい解説をしている。

由井寅子会長の「天動説を唱えたガリレオ」という変な解説がついたホメオパシー出版の新刊「ホメオパシック・レボリューション--世界の有名人・文化人がホメオパシーを選ぶ理由--<仮題>」は9月下旬頃に発売らしいが、そのときには訂正されていることを期待する。

なお、地動説を唱えたのは、コペルニクスである。ガリレオは、自己の天体観測の結果をもとに、地動説を支持していた。また、ケプラーの法則をもとに、ニュートンが万有引力の法則を導出したことにより、ようやく地動説の正しさが説明できるようになった。

その他

こちらアピタルです。

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