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ピラミッド:星座編


ベストセラーとなった、グラハム・ハンコックの『神々の指紋』などの本では、ピラミッドの不思議さを強調するエピソードとして、星座との繋がりの話が出てくる。
そしてピラミッドが極度に正確な基準で作られているという前提をもって、設計された年代を推測しているようだ。

ハンコックによれば、3大ピラミッド(クフ、カフラー、メンカウラー)の方向が、オリオン座三ツ星の南中時の角度と一致するのは紀元前10,500年頃であるという。このことから、ピラミッドは紀元前10,500年の設計であると結論付けている。これは、ハンコックの主張する、ピラミッドと超古代文明の関連を示すために必要な年代設定なわけである。

ハンコックは、オリオン座と3大ピラミッドの関係をロバート・ボーヴァルとエイドリアン・ギルバートの著書『オリオン・ミステリー』から借りてきている。
オリオン座がエジプト文明にとって、非常に意味のあるものだったというのは事実だと考えられている。クフ王のピラミッドの南側のシャフトがオリオン座の3つの星の方向に向かっていたということも事実である。

しかし、3大ピラミッドがオリオン座を写し取ったものか?については疑問が生じる。紀元前10,500年頃の設計だということについては、“根拠なし”として問題がない。南中時の角度と一致するといっても、それは、ハンコックが一致する時代を探しただけであり、シャフトがオリオン座を向いている年代と矛盾が生じる。

また、このような角度などを根拠にするには、ピラミッドは色々な意味で正確に作られていることが前提となるが、この考えにも問題がある。

例えば、3大ピラミッドで最も古いクフのピラミッドは、少なくとも建設途中で二回は設計変更されていると、ウィリアム・H・スタイビング教授は『超古代文明謎解き講座』で指摘している[1]

逆にクフのピラミッドは方角や水平度についてかなり正確につくられているが、メンカウラーのピラミッド(3大ピラミッドで最後につくられたもの)は、方角の誤差も大きいうえに、かなり小さいものである。
3番目のピラミッドが、前2つのピラミッドとの直線上に存在せず少しずれていることや大きさが小さいことも、オリオン座の三ツ星と正確に一致すると言われるが、三ツ星を見ると、3番目の星と1,2番目の星の明るさはピラミッドの大きさの比ほど、大きく違うわけではない。

発掘された碑文からオリオンの三ツ星とピラミッドが同一視されていた可能性は比較的高いのだが、それが「驚くほど正確」かと言えばそうでもないというのが事実である。
エジプトでオリオンと一致する“驚異的な正確さ”を求めていた可能性は低いものといわざるを得ない。

色々と情報を集めていくと、言えることは次のようなものだけになる。

  • エジプトではオリオンの“三ツ星”を神聖なものとしていた。
  • 3大ピラミッドはオリオンの三ツ星としてみられることもあった。

『神々の指紋』批判のページオリオン・ミステリーの項目では、ハンコックの主張をさらに詳細に検討している[2]

ハンコックに限らず、超古代文明論を主張する人は紀元前の文明を“原始人”の世界のように描写している。
また、一般の人もブッシュマンに代表されるような未開の地域の原住民に毛が生えた程度に考えている場合が多いようだ。

しかし、実際はそのようなイメージとは全く違い、紀元数世紀付近と比較してもそれほど見劣りしないような文化があった。その辺の認識が正しいものになると、この手の話に騙される可能性は随分減りそうだ。


  • [1]それが理由で、クフのピラミッドは他の二つのピラミッドよりも複雑な内部構造になっていると考えられる。
  • [2]このページではハンコックの不誠実さをかなり赤裸々に暴いている。