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プラズマクラスター・ナノイーイオン

プラズマクラスターイオン

 2012年11月、シャープのプラズマクラスター掃除機が消費者庁から景品表示法に違反するとして措置命令を受けた。掃除機の性能に問題があったわけではない。搭載されたプラズマクラスターイオン発生機に関するカタログやウェブサイトの表示が、一般消費者に「著しく優良」と思わせるものと判断されたのだ。消費者庁からは、景品表示法違反について消費者に周知徹底し、再発防止を講じるなどの命令を受けている。

 最初は滝周辺の大気中に存在する「マイナスに帯電したイオン」が「健康にいい」という話が出てきた。さらにはトルマリンなどの鉱物からも「マイナスイオン」は発生すると言われるようになる。すぐさま「いったい何のイオンなのか?」「どのような効果をもたらすのか?」などの疑問が研究者たちから投げかけられたものの、テレビや雑誌などのメディアを通じて、お茶の間へ広まっていった。

 むしろ、イオン式空気清浄機は、欧米ではオゾンを発生するものとして規制の対象になることもある。アメリカではシャーパー・イメージ社のイオン式空気清浄機「イオニック・ブリーズ」がベストセラー商品となったが、生活情報誌「コンシューマー・レポート」がイオンに効果がない上、有害なオゾンを発生させると報じたことで売れ行きも激減、08年に倒産するという騒動も起こった。

シャープやパナソニックがどんなに批判されようと、空気清浄機も、掃除機も、エアコンも、複合プリンターも、性能自体は悪くない。むしろ、これだけの製品を開発できるポテンシャルは評価されてしかるべきだ。イオン発生機を搭載することにこだわることを除けば。これまで、多くの科学者・研究者から、狭い閉鎖空間で見られる効果は実生活空間並みの広さでは確認できない、第三者による実証データが乏しい、などの指摘もされてきた。さらに、効果そのものが、イオンよりもオゾンによるものではないかという異論も出て来ている。この状況は、マイナスイオンのブームが起きた10年以上も前とあまり変わらない。こうした疑問に対し、なかなか納得できる答えが出されないまま、製品が売られ続けているのだ。

 消費者庁から措置命令を受けたシャープは、すでにカタログやウェブの表示を修正しているが、11月28日の自社ニュースリリースでは、問題は「カタログ等での表示に関するもの」であり、「プラズマクラスター搭載製品の性能について、問題とされているものではありません」と明記している。

http://www.sharp.co.jp/corporate/news/121128-b.html

 だが、消費者庁の措置命令に関するニュースリリースにも、はっきりこう記されている。

「対象商品は、その排気口付近から放出されるイオンによって、対象商品を使用した室内の空気中に浮遊するダニ由来のアレルギーの原因となる物質を、アレルギーの原因とならない物質に分解又は除去する性能を有するものではなかった」

 消費者庁が指摘しているのは、確かに「カタログ等での表示に関するもの」だが、同庁では専門家のヒアリングや実証試験などを行った上でこの結論に至ったものであり、かなり慎重に検討した結果であるとみていい。

 以前からマイナスイオン関連について厳しい批判を繰り返してきた研究者の一人は、「消費者庁もプラズマクラスターそのものの是非に踏み込んでほしかった」と話す。

 その試験のデータなどが公表されれば、問題はクリアになるはずだ。しかし、消費者庁の担当者は、措置命令を受けた業者が異議申し立てをして提訴しない限り、実際に検証したデータは公表しないという。

(文=六本木博之/フリーライター)

 だが、大阪大学の菊池誠教授(物理学)は、「ウイルスよりもはるかに大きい花粉を不活化させるという説明はわかりづらい。除去じゃなくて不活化という主張なら、花粉症の抗原そのものが破壊されるという第三者による検証がなければ、効果があるとはいえません」と指摘する。

 

 さらに、本当に部屋中の浮遊物質を酸化させるほどの活性酸素が出ているなら、人体への影響も懸念されていいはずだ。言うまでもなく、活性酸素とは老化やさまざまな病気の原因になるとされる物質。ところがメーカーのカタログでは、活性酸素のリスクについて触れられていない。

 

 ただし、イオンによって発生するOHラジカルは、それほど気にする必要はないという見方もできる。そもそもイオン式空気清浄機から発生するイオンは、空気中の分子の数に比べれば、きわめてわずかな割合でしかない。

 

 むしろイオンと同時にできるオゾンのほうが、はるかに量は多い。オゾンも酸化力の強い物質で、広義の活性酸素に数えられる。以前から空気清浄機には使われてきたが、高濃度になると人体に有害となるため、現在ではJIS規格でオゾン濃度の上限が定められている。

 

 さらに、昨年には、イオン式空気清浄機の除菌効果は、むしろオゾンによるものだとする第三者の検証試験結果が発表されているのだ。

 カタログに掲載されているデータは、あくまでメーカー側が実施した試験結果。しかも、見落としそうな小さな文字で、「1立方メートルのボックス」や「45リットルの容器」での試験と書かれているものがほとんどだ。

 

 多くの空気清浄機の性能試験を行ってきた室内環境の専門家は、「1立方メートルの箱の中での結果が、そのまま8畳の部屋にも当てはまるとは言いきれない」という。花粉に関する検証試験ではないが、ウイルスの不活性化や除菌性能を検証した試験では、人が暮らす部屋の広さと同じ程度の試験場となると、ほとんど効き目が見られなくなってしまうのだ。実際、カタログには小さく「試験室内での効果であり、実使用空間での効果ではありません」などと記されている。これが空気清浄機の現実かもしれない。

 

 それでも実際に使ってみると、花粉症の症状が軽減することはある。だがそれは、フィルターによるところが大きい。室内の空気を循環させるだけの風量があり、HEPAやULPAといった高性能フィルターを使用していれば、室内の浮遊物質はほとんど除去できる。もちろんイオン式空気清浄機でも、大手メーカーのほとんどの機種は、この条件をクリアしている。むしろそのほうが、イオンで「アレル物質を抑制」するよりも確実だといえる。

 

 だとすれば、わざわざ効果も不確かな上に、人体に有害になりかねない物質を放出する必要があるのだろうか?

 

 結局のところ、「イオンの効果」というイメージを与えるためだけの機能でしかないといえるだろう。

(文=六本木博之/フリーライター)

大手電機メーカーの「シャープ」が製造、販売した、イオンを発生させる装置を組み込んだ掃除機について、消費者庁は、カタログなどにアレルギーの原因となる物質を分解、除去するなどと表示していたにもかかわらず、実際に室内で使用した場合、その性能はなかったとして、「シャープ」に、景品表示法に基づいて再発防止を命じる方針を固めました。

 

「シャープ」は、おととしからことしにかけて、「プラズマクラスター」という、イオンを発生させ空気を浄化するという装置を組み込んだ掃除機について、カタログやホームページで「ダニのふん・死がいの浮遊アレル物質のタンパク質を分解・除去」などと表示していました。

この掃除機について、消費者庁が研究機関に実験を依頼したところ、実際に室内で使用した場合、表示のような性能はなかったということです。

カタログなどでは、「1立方メートルのボックス内での実験結果」などと注釈がつけられていましたが、消費者庁は、室内で掃除機を使用した際の性能だと消費者に誤解を与える表示だとして、「シャープ」に対し、景品表示法に基づき、再発防止を命じる方針を固めました。

「シャープ」は、「コメントできない」としています。

消費者庁は、本日、シャープ株式会社(以下「シャープ」という。)に対し、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令(別添参照)を行いました。シャープが供給する「プラズマクラスター」と称するイオン(以下「イオン」という。)を放出する機器を搭載した電気掃除機に係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第4条第1項第1号(優良誤認)に該当)が認められました。

弊社は本日、消費者庁から、弊社が供給した電気掃除機(以下「掃除機」)に係る広告の一部が、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」)第4条第1項第1号に違反するとして、同法第6条に基づき措置命令を受けました。

 

対象となる掃除機をご利用頂いているお客様をはじめ、株主の皆様、お取引先様、その他関係者の皆様にご迷惑をおかけすることになりましたことを、お詫び申し上げます。

 

措置命令を受けるに至った原因は、弊社掃除機(対象機種: EC-AX120 / PX120 / VX220 / AX200 / PX200 / VX300 / WX300)に係る広告表現です。プラズマクラスターの効果の訴求が、掃除機の実使用において、部屋全体に同等の効果があるように消費者の皆様に誤解を与える表現になっていたことによるものです。

 

今般のご指摘は、弊社掃除機の性能についてのカタログ等での表示に関するものであり、プラズマクラスターの性能自体の問題ではありません。また、対象となる掃除機以外の弊社のプラズマクラスター搭載製品の性能について、問題とされているものではありません。

プラズマクラスターの効果・効能は、これまで国内外の22の第三者機関で実証頂いております。

 

なお、ご指摘を受けた表示については、2012年10月末までに修正済みです。

 

弊社は、今回の措置命令を真摯に受け止め、全ての広告表示について法令等の指針を遵守するよう再徹底すると共に、社内のチェック体制を強化し、再発防止に努めて参ります。

上記のように、シャープは、問題視されたのは『弊社掃除機の性能についてのカタログ等での表示に関するもの』であり、『プラズマクラスターの効果・効能は、これまで国内外の22の第三者機関で実証頂いております』、よって、『プラズマクラスター搭載製品の性能について、問題とされているものではありません』としている。

ところが、以下のような報告もある。

プラズマクラスターイオン・ナノイー・フラッシュストリーマ

 本邦では,空中へ特殊な物質の放出により環境中においてウイルス不活化や殺菌の効果をもたらすとする複数の電気製品が市販されており,寒天培地上に塗布した細菌に対する殺菌効果も謳っている.そこで本研究では,プラズマクラスター,ナノイー,ビオンの3機種について,腸球菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,セレウス菌での追試を試みた.一定数の生菌含有菌液を普通寒天平板上に塗布し,14.4 m3閉鎖空間に対象機器とともに置き,機器を2時間運転させた後培養し,出現するコロニー数を,非運転環境下においた対照のそれと比較した.その結果,調べた3機種,4種の菌のすべての組み合わせで,形成されるコロニーの数は対照のそれと変わらなかった.一方,細菌を塗布した寒天培地を容積0.2 m3の密閉グローブボックス内に置き,同様の実験を行ったところ,3機種すべてが,腸球菌と黄色ブドウ球菌のコロニー形成を,程度の差はあれ対照と比べて有意に減少させ,一方緑膿菌については減少させなかった.前二者に対するコロニー形成抑制/殺菌の機序について,これらの機器が放出するオゾンが原因である可能性を検討した.その結果,殺菌効果は,それらが発生させるイオンや特殊微粒子を除去しても変わらず,一方で発生するオゾンを除去すると激減した.

 

 以上の成績により,調べた電気製品には,1)通常の生活空間のような広い空間における使用では,ほとんど殺菌効果が期待できないこと,しかし,2)きわめて狭い空間における寒天培地上のある種の細菌という限定的な対象に対しては,ある程度の殺菌作用は認められること,だが,3)そうした効果は,一義的には,それらの機器が放出している特殊物質というより,それらが同時に放出しているオゾンによる殺菌効果で十分説明可能であること,が明らかになった.今回対象となった機器のみならず,こうした類の殺菌効果を謳う電気製品については,オゾンの関与を疑う必要があろう.

 プラズマクラスターイオン発生機やナノイー発生機、フラッシュ・ストリーマ放電装置付き空気清浄機など、浮遊ウイルスの抑制あるいは除去を特徴の1つとする新規電気製品では、一部に有意な除去効果が見られる機器があったものの、HEPAフィルター装着空気清浄機の効果には遠く及ばないことが分かった。国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンターの西村秀一氏らの研究で明らかになったもので、成果は感染症学雑誌に発表された。

プラズマクラスターでは,機種の大小にかかわらずコントロールの経時的自然減衰と変わらず(大小それぞれn=5)(Fig. 1a),また,放出されたイオンが効率良くウイルスに衝突できるよう,装置をネブライザーのウイルス放出口直下40cm に設置してウイルス放出と同時に使用しても,結果は同じであった(n=4).ナノイーは,自然減衰にくらべ稼動により回収ウイルス量に若干の低下が認められ(n=7)(Fig. 1a),ストリーマ放電機付き空気清浄機は,それより100 倍近い低下が認められた(Fig. 1a).だが,同機から放電装置を取り外しフィルターのみの空気清浄機(風量2.5m3分)状態にしてみても,結果は同じであった(Fig.1b).結局,空気中のウイルス量の低下は,付加価値として装着したストリーマ放電機ではなく,フィルターろ過によっていたといえる.

イオン・ドライヤー

 東京都では、イオン機能付きドライヤーの「うるおい・保湿」等の効能効果をうたう根拠として、実証試験が適切に行われているか、家電メーカー4社を対象に調査を行いました。

 調査の結果、消費者の一般的な使用方法とは乖離した試験条件等による実証試験に基づいて効能効果を表示していたことが判明したため、本日、4社に対し、より適切な実証試験を行うよう改善を要請しました。

改善要請を行った実証試験の主な問題点

※詳細は別紙を参照

 

(1) 消費者の一般的な使用方法とは乖離した試験条件(「冷風モードで20〜30分」等)による実証試験であった

 

⇒ 消費者が実際に使用した際に得られる効能効果と比べ、誇大な表示となるおそれがある。

 

(2) 個人差による効果の現れ方の違いについて検証が不十分

 

⇒ 個人差等による誤差が想定されるにもかかわらず、誰でもその効果が得られると誤認させるおそれがある。

 

(3) イオン機能による効果であることの実証が不十分

 

⇒ 「イオン機能付きドライヤー」と「イオン機能なしドライヤー」の差を検証しておらず、当該効能効果がイオン機能に起因することを十分に実証する試験方法ではなかったため、誇大な表示となるおそれがある。

実証試験の問題点は、『イオン機能付きドライヤーの使用後の頭皮皮脂量の変化を測定したのみで、「イオン機能付きドライヤー」と「イオン機能なしドライヤー」の差は検証していなかった』とのこと。

以下の記事によると、東京都生活文化局が景品表示法に基づいて改善を要請した家電メーカー4社とは、パナソニック、シャープ、日立リビングサプライ、東芝ホームアプライアンスとのこと。

●多様化するイオン式ヘアドライヤー

 

 イオン発生機能を搭載した家電といえば、空気清浄機やエアコンなどの空調機器のイメージも強いが、普及度という点から見るとヘアドライヤーのほうが上だろう。11年度の国内販売台数約580万台のうち、7割以上がイオン機能付きの機種だといわれている。普段、気にせずに使っている機種も、よく見るとイオン機能付きかもしれない。

 

 かつてはトルマリン粉末を混ぜただけのものもあったが、最近のイオン発生機は、プラズマ放電や静電霧化といった技術で空気中の水分子を帯電させるなどの改良が加えられている。さらに、メーカーが開発した発生方式を備えた製品に、「ナノイー」(パナソニック)、「プラズマクラスターイオン」(シャープ)、「ピコイオン」(東芝ホームアプライアンス)、「ナノイオン」(日立リビングサプライ)など、独自の名称をつけているところも多い。これらはイオンの名称ではないし、基本的なメカニズムは、マイナスイオンとさほど変わらない。

ナノイーイオン

PM2.5は大気汚染の原因物質の1つである粒子状物質の中でも直径が2.5μm以下のもので、肺に入り込むと体外に排出できなくなるため、喘息や気管支炎のほか、発がんなどのリスクがあるとされている。今回、同社では、PM2.5の含有成分と黄砂付着菌に対して試験を実施し、帯電微粒子水「ナノイー」に以下の効果があることを確認したという。

PM2.5含有成分

 

1.多環芳香族炭化水素(5種) 36Lのボックス内にて、多環芳香族炭化水素(5種)に対し、帯電微粒子水「ナノイー」を曝露。8時間で78%〜97%の分解効果を確認

 

2.アルカン(ヘキサデカン) 6畳空間にて、ナノイーデバイスから1.5m離れた位置にアルカン(ヘキサデカン)を設置し、帯電微粒子水「ナノイー」を曝露。24時間で99%の分解効果を確認

 

3.芳香族カルボン酸(安息香酸) 6畳空間にて、ナノイーデバイスから1.5m離れた位置に芳香族カルボン酸(安息香酸)を設置し、帯電微粒子水「ナノイー」を曝露。8時間で98%の分解効果を確認

黄砂付着真菌

 

・ビルカンデラ菌 6畳空間にて、ナノイーデバイスから1.5m離れた位置にビルカンデラ菌を設置し、帯電微粒子水「ナノイー」を曝露。 8時間で99.0%以上の抑制効果を確認

さて、名誉挽回なるか?