ホメオパシー
ホメオパシーは「水に溶けているどんなものよりも、何も溶けていない水のほうがよく効く」という矛盾を孕んでいる。(文献29) Samuel Hahnemann(1755年 - 1843年)がホメオパシーを創始したとき、まだ物質の基本構成要素としての分子や原子の存在は確認されていなかった。よって、希釈を繰り返していけば、いつかは成分分子が1つも存在しない状態になるとは考えてもいなかったのだろう。「水の記憶」などといった話は、その後付け加えられた根拠のないアドホックな仮説にすぎない。
ホメオパシーの理論は既存の物理や化学の法則と整合性がないこと、および、その効果を明確に示すことができていないことを忘れてはならない。
まず以下のサイト等を参考にしてください。
Skepticism is beautiful: ホメオパシーに関する簡単なFAQ(よくある質問)
- 「ホメオパシーFAQ」
- 「ホメオパシーFAQ 2」
- 「ホメオパシーFAQ 3」
- 「ホメオパシーFAQ 4」
- 「ホメオパシーFAQ 5」
忘却からの帰還
- 「ホメオパシー薬品で自殺未遂か?」 2009年12月09日
- 「ホメオパレメディショップ取扱商品で、もしかすると...」 2009年12月05日
- 「読者欄でもホメオパシーが効かないことを広報するGuardian」 2009年12月03日
- 「混ざっているレメディ」 2009年12月02日
- 「プラセボ程度の副作用があるホメパシー」 2009年11月30日
- 「ホメオパシーレメディは効くからではなく、売れるから売っているという英国大手チェーン店」 2009年11月28日
- 「米国FDAは、いんちきインフルエンザ対策商品を看過しない」 2009年11月09日
- 「何も証明しないホメオパシーのProving」 2009年11月23日
- 「Wall Street JournalもホメオパがH1N1に効かないという記事を掲載」 2009年11月17日
- 「オーストラリアのホメオパシーワクチン容認姿勢への批判」 2009年10月14日
- 「ビリーバーに届く言葉?」 2009年10月11日
- 「「ホメオパシーで娘を死なせたホメオパス」に反応したホメオパス団体」 2009年10月04日
- 「ホメオパシーで娘を死なせたホメオパスに判決」 2009年10月01日
- 「論拠行方不明な宣伝で売られるインフルエンザを予防すると称するホメオパシーレメディ」 2009年09月16日
- 「メモ: スペインインフルエンザとホメオパシーとアスピリン」 2009年09月15日
- 「ホメオパスたちは自らホメオパシーの未来を閉ざす(2)」 2009年09月14日
- 「ホメオパスたちは自らホメオパシーの未来を閉ざす(1)」 2009年09月13日
- 「インドのニセ医者たち」 2009年08月22日
- 「ホメオパシーで娘を死なせたホメオパスは第2子を通常医療にゆだねていた」 2009年08月19日
- 「存在感のないホメオパス団体・専門職業人賠償責任保険・ホメオパシー死亡事件」 2009年07月26日
- 「治療効果はないというホメオパシー・プルトニウム・レメディ」 2009年07月14日
- 「出エジプト記を根拠にモーセは最初のホメオパスだと言うアフォ」 2009年07月05日
- 「(Joke) ホメオパシー病院」 2009年07月04日
- 「渇きを癒すホメオパシー 効果は確実」 2009年07月02日
- 「ラジウムレメディ」 2009年06月25日
- 「Zicam以外にも危ういホメオパシーレメディがある by The Associated Press」 2009年06月19日
- 「嗅覚喪失という副作用のあるホメオパシーレメディに対してFDAが警告・消費者に使用停止と破棄を勧告」 2009年06月18日
- 「ホメオパシーレメディは「効果もないが副作用もない」という保証はない。」 2009年06月18日
- 「生後9か月の娘を死なせたホメオパシー医に有罪の陪審評決」 2009年06月07日
- 「自分の生後9か月の娘を死なせたホメオパシー医」 2009年06月01日
NATROMの日記
- 「ホメオパシー治療によるヒ素中毒」 2009-12-04
- 「良心的なホメオパシー」 2009-11-30
- 「B型肝炎ワクチンとホメオパシー」 2009-10-17
- 「JBpress(日本ビジネスプレス)のホメオパシーの記事について」 2009-09-09
- 「ナイチンゲール曰く、「ホメオパシー療法は根本的な改善をもたらした」 2009-08-10
- 「治療にホメオパシーを用いる化学物質過敏症の権威」 2009-06-24
- 「波動測定器の有効性を検証した論文を読んでみた」 2009-06-09
- 「ホメオパシージャパンが販売する波動機器 クォンタム・ゼイロイド」 2009-06-05
- 「喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー」 2009-02-01
- 「教育医事新聞にホメオパシージャパンの記事が載ったようです」 2008-11-27
- 「ホメオパシー大百科事典は読み物として面白い」 2008-09-18
- 「マヤズムについて簡単に調べてみた」 2008-09-08
- 「ホメオパシーと医療ネグレクト」 2008-05-16
助産院は安全?
- 「K2シロップを何故、投与する必要があるのか」 2009-10-26
- 「お子さんが亡くなってしまいました」 2009-10-22
- 「『反医療』の現実とホメオパシーの問題」 2009-10-19
- 「小さな命の味方」 2009-10-18
- 「ホメオパシーを勧める助産師に問います」 2009-10-16
- 「K2シロップ、レメディの問題から学んだこと」 2009-10-14
- 「K2シロップ>質問です」 2009-10-10
- 「K2シロップ」 2009-10-05
- 「ホメオパシー、レメディの問題>K2シロップの件」 2009-09-29
kikulog
- 「助産院とホメオパシーなど」 2009/10/16
- 「ホメオパシーは世界で最も安全な医療?」 2009/9/2
- 「さらにインフルエンザとホメオパシー」 2009/5/10
- 「ホメオパシーはインフルエンザに効きません(追記あり5/6)」 2009/4/29
- 「報道ステーションでホメオパシー」 2009/1/23
- 「スペイン風邪とホメオパシー(また浜六郎氏と「やっばり危ないタミフル」)」 2008/3/13
- 「ホメオパシー」 2006/11/22
ウィキペディアのホメオパシーの項目
英語版wikipediaのHomeopathyの項目
「Homeowatch」
Your Skeptical Guide to Homeopathic History, Theories, and Current Practices
「Homeowatch」はホメオパシーに極めて懐疑的なサイトであり、その基本的な考え方は以下のようなものである。
ホメオパシーの”レメディ”自体は無害であるが、それに付随する間違った考えは無害ではない。健康な時に人が何を信じるかはあまり問題にならないかも知れない。しかし、深刻な病気に襲われた時、間違った信念は大惨事に繋がることもある。
ホメオパシーに批判的な著書
- 「Homeopathy: How It Really Works」 Jay W. Shelton, Prometheus Books (2004/01)
- 「Trick or Treatment?: Alternative Medicine on Trial」 Simon Singh and Edzard Ernst, Corgi (2009/6/1)
- 「代替医療のトリック 」 サイモン シン (著), エツァート エルンスト (著), 青木 薫 (翻訳), 新潮社 (2010/1/30):「Trick or Treatment?」の邦訳。
各項目
ホメオパシーに否定的・懐疑的な論文
ホメオパシーの海外事情
ホメオパシーの根拠
ホメオパシーの学位に対する批判
ホメオパシーはインフルエンザには効かない。
- 「ホメオパシーはインフルエンザに効きません」 kikulog, 2009/4/29
- 「さらにインフルエンザとホメオパシー」 kikulog, 2009/5/10
- 「Wall Street JournalもホメオパがH1N1に効かないという記事を掲載」 忘却からの帰還、2009年11月17日
- 「論拠行方不明な宣伝で売られるインフルエンザを予防すると称するホメオパシーレメディ」 忘却からの帰還、2009年09月16日
- 「メモ: スペインインフルエンザとホメオパシーとアスピリン」 忘却からの帰還2009年09月15日
2009年4月の新型インフルエンザの発生に伴い、これに便乗する形でホメオパシー関連の記事が書かれている。しかし、ホメオパシーに科学的根拠はない。また、ワクチン接種や通常の薬剤の使用を否定することは、感染の拡大や症状の悪化を招く危険性があることを認識すべきである。
今回の新型インフルエンザの死亡者は、そのほとんどがメキシコで発生しているが、その原因には諸説ある。発生初期のころは、新型インフルエンザだという情報がなく、ただの風邪だと思って放置し、症状が重くなるまで何日間も医療機関で受診しなかったのが原因なのかもしれない。The New York Timesの記事「First Flu Death Provides Clues to Mexico Toll」(文献36)は以下のように述べている。
(この訳はkikulogのnakanishiさんによるものです)しかし、重要な要因のひとつに、メキシコでの医療や健康管理の混沌とした現状があるのかもしれない。メキシコでは、抗生物質を自分で処方する人がたくさんいるかと思えば、ホメオパシー薬しか飲まない人や、或いは、怪しげなビタミン注射に頼る人さえ少なくない。多くの人にとっては、医者にかかるというのは、万策尽きた最後の手段でしかないのだ。その医者でさえ、頼りにならないことがしばしばあるのだが。
以下のリンクによると、米国食品医薬品局(FDA)は、2009 H1N1 インフルエンザウィルスに有効だと宣伝されている詐欺的商品の販売業者に警告文書を送るとともに、それらのウェブサイトリストを公表したそうだ。また、米国疾病管理予防センター(CDC)によると「ハーブ療法やホメオパシーや民間療法がインフルエンザに対して効果があるという科学的証拠は存在しない」とのこと。
- 「米国FDAは、いんちきインフルエンザ対策商品を看過しない」 忘却からの帰還、2009年11月09日
- 「Home Flu Cures: Bad Medicine?」 By MELINDA BECK, The Wall Street Journal, NOVEMBER 3, 2009
- 「Fraudulent 2009 H1N1 Influenza Products List」 FDA
オーストラリアでホメオパシー絡みの幼児虐待死裁判
- 「オーストラリアでのホメオパシーが絡んだ裁判」 「鼬、キーボードを叩く」(2009/5/21)
- 「自分の生後9か月の娘を死なせたホメオパシー医」 「忘却からの帰還」、2009年06月01日
- 「生後9か月の娘を死なせたホメオパシー医に有罪の陪審評決」 「忘却からの帰還」、2009年06月07日
- 「ホメオパシーで娘を死なせたホメオパスは第2子を通常医療にゆだねていた」 「忘却からの帰還」、2009年08月19日
などによると、シドニーに住むホメオパスのThomas Sam(42)とその妻Manju Sam(36)は、医者の忠告を無視して皮膚病を患っている生後8ヶ月の娘Gloria Thomasを連れて2週間半のインド旅行に出かけた。彼らはホメオパシーを信じていたために、従来の医療を拒み続け、シドニーに帰国後も治療を受けさせなかった。旅行から1ヵ月後の2002年5月、彼らの娘は敗血症のため、シドニーで息を引き取った。その結果、この夫婦は重過失による殺人の嫌疑をうけ、オーストラリアの最高裁判所で公判が開かれているそうだ。帰国後すぐに適切な治療を受けていたならば、Gloria は一命をとりとめていた可能性もあると公訴官Mark Tedeschi氏は述べている。
判決は9月18日の予定。(文献44)
9月28日、トーマス・サム(42)と妻のマンジュ(37)の両被告は、故殺罪で有罪となった。トーマス被告は最低6年最高8年、マンジュ被告は最高5年4か月、4年間保釈なしの量刑。トーマス被告は、ホメオパシー(同種療法)の効果を信じ、手遅れになるまで娘グロリア・メアリー(当時9か月)に医師の治療を受けさせなかった。
- 「ホメオパシーの両親有罪」 25today.com, 司法 - 2009年9月28日
- 「ホメオパシーで娘を死なせたホメオパスに判決」 「忘却からの帰還」、2009年10月01日
- 「Parents failed Gloria, jailed for 'cruelty'」 KIM ARLINGTON, The Sydney Morning Herald, September 29, 2009
以下の文献も参照。
- 「Too busy to care for dying baby: QC」 Harriet Alexander Court Reporter, The Sydney Morning Herald, May 6, 2009
- 「Baby Gloria: pediatrician blamed for 'fatal turning point'」 Harriet Alexander, The Sydney Morning Herald, May 6, 2009
- 「Court told of sick baby's visit to doctor in India」 The Sydney Morning Herald, May 12, 2009
- 「Homeopathy. What's the harm?」 YouTube
- 「Homeopath Thomas Sam guilty of daughter Gloria's death」 The Daily Telegraph June 05, 2009 12:00AM
- 「Gloria Thomas's eczema death 'was parents' fault'」 By Margaret Scheikowski, AAP, May 04, 2009 06:45pm
- 「'Homeopath Dad' Confesses To Failing to Treat His Eczema Afflicted Baby」 Med India, Friday, May 08, 2009 at 8:03:25 AM
- 「Death of baby Gloria sparks hunt for truth」 Geesche Jacobsen, The Sydney Morning Herald, November 6, 2007
- 「Baby death father Thomas Sam accused of threatening lawyers, judge」 LiveNews.com, Thursday, 2 July 2009 2:12 PM
- 「Homeopath learned from baby's death: QC」 9News, 17:49 AEST Thu Aug 13 2009
マラリアには効果なし
「ホメオパシーはマラリア対策には有効ではないかも知れない」 という報告(文献3)を見つけたので紹介しておく。この報告の内容は、 毎年熱帯地方でバカンスを楽しむ女性(40歳)がマラリア対策にホメオパシー薬を処方してもらったけど効かなかった、という話。
処方してもらったホメオパシー薬は2種類。
Ledum palustre 5 CH: これはフランスの薬局で普通に購入できる。
Malaria officinalis 4 CH: これはフランスの薬局では購入できないので、メールオーダーで購入した。
Ledum palustre 5 CHは毎日1粒飲むように指示され、Malaria officinalis 4 CHは出発の前日に一回分服用したらしい。Malaria officinalis 4 CHの原料がすごい。「藻、植物、蚊の抜け殻、その幼虫と卵といった不純物を含むアフリカの沼の水」!さらに「製造元はこの薬に関してなんら臨床試験を施していないので、その利用については全ての責任を拒否する」との注意書きが書いてあったようだ。
この女性はフランスにもどってから五日後に発熱(39℃)。その後、ホメオパシー薬とビタミンを取り続けたが、結局十日後に熱は41℃に上昇し、病院に行くことになる。さらに4日後に神経疾患(neurological disorders)により集中治療室に入ることになる。さらに多臓器組織不全(multiple organ system failure)を併発し2ヶ月にわたり集中治療を受けることになった。
同様な問題は英国BBC放送のニュース「マラリアについての助言は「命の危険」」でも取り上げられた。(文献4)
このニュースによると、去年アフリカ等のマラリア発生地帯を旅行した後にイギリスに帰国後、20人程度の人がマラリアで死亡したが、その主な原因は適正な予防をしていなかったからだ。そのうちどの程度の人がホメオパシー薬を利用していたかはわからないが、有効であることがわかっている抗マラリヤ薬があるにもかかわらず、ホメオパスがマラリアに無効なホメオパシー薬を客に薦めることが問題になっており、隠しカメラを使った潜入レポートをやっている。この件に関しては王立ロンドンホメオパシー病院理事のPeter Fisher氏も次のように述べている。
私は非常に怒っている。なぜなら、人々がマラリアにかかってしまうからだ。ホメオパシーがマラリアの予防に効くなどと考える理由はまったくない。どのホメオパシーの教科書やジャーナルを見てもそんなことは書いてない。そのような助言に従えば、マラリヤにかかってしまい、死亡する場合もあるだろう。
注意!
当方はできるだけ正確に翻訳しようとしていますが、医学の専門家ではないので、詳細については原文に直接あたって確かめてください。また、抗マラリア薬の詳細について知りたい方は正式な医療機関等に問い合わせてください。
報道STATIONにホメオパシー登場
2009年1月22日、テレビ朝日系「報道STATION」の「見放された患者と共に闘う"がん難民コーディネーター"」でホメオパシーが取り上げられた。(文献32) 番組にはサトルエネルギー学会会長、日本ホメオパシー医学会理事長、日本ホリスティック医学協会会長など様々な肩書を持つ帯津良一氏が登場した。
番組のナレーションではホメオパシーを以下のように説明している。
このナレーションでは「ごく微量」としか言われていないが、成分分子が一切残っていないほどの無限希釈が実際のホメオパシーでは使用される。科学的に実証されていないのに、何を根拠に「効果が認められている」というのだろうか?世界的に見ると、インドではホメオパシーのみに依存する人々がいる一方、イギリスでは批判が高まっている。(文献28)ホメオパシーとは、病気と直接因果関係が説明できない植物や鉱物を、ごく微量一種類ずつ変えながら一定期間患者に投与することで、免疫の働きを活性化させる。科学的な理論は実証されていないが、効果が認められており、世界的に普及している。
帯津医師は次のように述べている。
理論的なエビデンスがないものは世の中にいっぱいありますよ。だからといって排斥することはないんで。いいところを認めて、それで、それだけでやろうって言うわけじゃないんだから。それをやるのといっしょに西洋医学も中国医学もね、ホメオパシーといっしょに考えていけばいいんですよ。
エビデンスのない曖昧なものを、「がん難民」という報道の中で紹介する必要が本当にあったのだろうか?ホメオパシーは、原理的にありえないし、その治療効果も証明されていないので、医療行為とは言えない。いっしょにやるといっても、健康保険では混合診療は認められていないので、ホメオパシーを併用した場合、健康保険の使える治療にも保険が使えなくなる可能性がある。
さらにナレーションは次のように述べている。
ホメオパシー治療では微熱や眠気の副作用があるものの、数週間で免疫力が上がる効果が期待できる。
この副作用とはいわゆる「好転反応」のことを言っているのかもしれない。しかし、もともとホメオパシーには副作用が起こるほどの濃度の物質は存在しないはずである。なお、プラセボ効果には、副作用的なノーセボ効果を伴う場合もある。
この報道に対して批判的な意見を述べている医師のブログとしては以下のものがある。
- 「がん患者のあきらめない診察室 セカンドオピニオンと最新抗がん剤の治療法」 サイトのトップにリンクしてある。まずサイトを見るにあたり、警告文が表示されるので、その内容をすべて理解・了承したあとに入室する必要がある。(警告文は2回表示される) トップページに入室すると、左側にサイドバーが表示されるので、上から6番目の「臨床医のひとり言」をクリック。『 <報道ステーションで取り上げられた”がん難民コーディネーターなるもの”藤野邦夫氏のデタラメを徹底批判する>』(09/1/30)を参照。
- 『「ホメオパシー」』 梅澤 充医師のブログ、「現在のガン治療の功罪〜抗がん剤治療と免疫治療」 2009_01_30
FDAが副作用のあるレメディに対して警告
「忘却からの帰還」の以下のエントリによると、米国内で販売されていたホメオパシーのレメディ(Zicam)に対して、臭覚がなくなるという副作用があるとして、米国食品医薬品局(FDA)が消費者に使用停止と破棄を勧告した。(文献39〜42)
- 「嗅覚喪失という副作用のあるホメオパシーレメディに対してFDAが警告・消費者に使用停止と破棄を勧告」 2009年06月18日
- 「ホメオパシーレメディは「効果もないが副作用もない」という保証はない。」 2009年06月18日
本来ホメオパシーのレメディはただの水か飴玉であり、副作用があるとは考えにくい。アメリカでは相当インチキな商品も出回っているということなのだろう。鼻腔内に投与するタイプのレメディがあるというのも驚きだ。
なお、Zicamの副作用は前から問題になっていたようで、The New York Timesの記事「F.D.A. Warns Against Use of Popular Cold Remedy」(文献43)によると、販売元のMatrixx Initiatives社は2006年に340件の訴訟に対して1200万ドルを払っており、こうした訴訟は今後も増える見込みだ。ところが、Matrixx社は製品の出荷を停止したが回収は行わず、希望者にのみ代金の返却を行うということとだ。
Matrixx社の2008年度の売り上げは1億100万ドルに上り、そのうち4000万ドルがZicam製品によるもの。 Matrixx社はZicamをホメオパシー製品だとしているので、事前にFDAの認可を受ける必要がない。
文献41によると、このレメディにはにはグルコン酸亜鉛(zinc gluconate)が含まれていたとのこと。これに関連しては「Field of Joy」の「ホメオパシーと亜鉛」(2009-05-25)も参照。ホメオパシーのレメディはFDAの厳しい審査を受けないにもかかわらず、通常の大衆薬(FDAによる厳しい審査を受ける)と同じ棚に並んでいて、注意しないと間違えて買ってしまうこともある。審査が厳しくないということは、このような健康被害が生じる危険性も高いだろう。Matrixx社はFDAの審査をごまかすために、こうした製品をわざわざホメオパシーのレメディと偽って発売している可能性もある。
Japan Business Press(JBP)の記事
JBPなるサイトに以下のようなホメオパシーに肯定的な記事が掲載された。これらの記事では、日本ホメオパシー医学会に所属する小池弘人医師(小池統合医療クリニック院長)なる人物に取材している。
- 「自然治癒力を高める「ホメオパシー」」 JBPress, 2009年09月02日(Wed) 長野 修
- 「何のためのホメオパシーか」 JBPress, 2009年09月09日(Wed) 長野 修
最初の記事はもともと「世界で最も安全な医療」というタイトルだったが、2009年9月8日には「自然治癒力を高めるホメオパシー」というタイトルに変更された。読めばわかることだが、この記事は全体にわたって矛盾だらけだと言える。
まず第一に、データを定量的に分析した痕跡がない。タイトルからしてホメオパシーが「自然治癒力を高める」というのであれば、ホメオパシーが使用されていない場合に比べて、使用された場合に「自然治癒力」が何倍に高められたか示すべきである。しかし、そういった記述はまったく見当たらない。
例えば、100分の1に薄められた原液を、さらに同じ方法で12回希釈していくと、分子レベルでは分析しても検出されなくなる。
つまり、物理的な作用はない。薬のように体内に物質を注入して、その物質が体内で化学反応を引き起こして体に変化を起こすというものでは全くないのだ。
「分子レベルでは検出」されず、しかも「物理的作用はない」というのであれば、いったいなにが作用しているのだろうか?
そして面白いことに、薄めれば薄めるほど効果は高くなるという。
もしこれが事実だとすると、治療には医薬品などほとんどいらないという、とてもおめでたい話になる。しかし、どの程度薄めると効果がどのくらい高くなるか、具体的な数字はまったく記述されていない。
セントジョーンズワートというハーブは通常、気持ちのアップダウンを調整するので鬱に有効なのですが、ホメオパシーのレメディーとして用いると、指を挟んだ時の痛みに効果があります。
なぜ「指を挟んだ時の痛み」限定なのだろう? 足の小指をたんすの角にぶつけた時の痛みには効果がないとすれば、とても残念な話だ。
「ただ、ホメオパシーでは元の物質が限りなくゼロになるので、物質そのものが変化を与えているわけではないので、そこの部分が西洋医学的な考え方では理解しづらい部分ですね」
現代科学はこうした考え方を「理解しづらい」のではなく、完全に否定していると言ったほうが適切だろう。常識的に考えても「薄めれば薄めるほど効果は高くなる」などという主張は「理解しづらい」。
編集部注:この治療法に関しては古くから世界中でその効果について様々な議論がなされてきました。一部では科学的根拠が欠如している点から呪術的治療法と攻撃されることさえありました。
まるで、ホメオパシーを批判する者が悪者のような扱いだが、まさにホメオパシーは科学的根拠のない「呪術的治療法」だからこそ批判されているのである。
2番目の記事は若干押さえた感じになっており、
「事故や、インフルエンザなどの感染症、脳梗塞や心筋梗塞など緊急を要するもの、治療方法が明確なものは、現代医学を最優先すべきです」
「アグラベーションやプルービングという言葉は、安易に用いるべきではないと思います。その症状が、アグラベーションでもプルービングでもなく、ただの症状の悪化だった場合、安易にこの言葉を使っていると、症状を放置して悪化させる危険性があるからです。その見極めはかなり難しいので、やはり医学的な判断が重要です」
などと、一応ホメオパシーの問題点を指摘し、通常の医療との併用を勧めている。しかし、
特に、近年になってようやく知られ始めた日本では、ホメオパシーに対して激しい拒絶反応を示すケースも少なくない。
西洋の迷信を日本で広めることにいったいどういうメリットがあるというのだろう?
いずれにしても、ホメオパシーをどのように捉えるかは、個々の判断にお任せしたい。
つまり、ホメオパシーを信用してひどい目にあったとしても、それはその個人の責任だ、ということのようだ。2番目の記事には副題として「西洋医学が見放した人を前に、それでもノーと言えるか」と書かれてあるが、科学的根拠がなく、プラセボ以上の効果も認められていないようなモノを、病気で困っている人に本当に勧めるべきなのかどうか、よく考える必要があるだろう。
この記事に対する批判は以下のリンクも参照。
- 「ホメオパシーは世界で最も安全な医療?」 kikulog, 2009/9/2
その他
ホメオパシーとWHO
- 「Homeopathy not a cure, says WHO」 BBC News, Page last updated at 23:04 GMT, Thursday, 20 August 2009 00:04 UK
- 「WHO does not recommend the use of homeopathy for HIV, malaria, TB, influenza and infant diarrhoea」 Sense About Science, 21st August 2009
英国下院科学技術委員会のホメオパシー調査
- 「プラセボ程度の副作用があるホメパシー」 忘却からの帰還、2009年11月30日
- 「ホメオパシーレメディは効くからではなく、売れるから売っているという英国大手チェーン店」 忘却からの帰還、2009年11月28日
- 「Evidence Check: Homeopathy」 HoC Science and Technology Sub-Committee, United Kingdom, Parliament, Thatcher Room, Meeting started on Wednesday 25 November at 9.30am, ended at 11.21am
- 「Homeopathy: MPs on science and technology committee grill experts」 Ian Sample, Science Blog, Guardian, Wednesday 25 November 2009
その他
- 「Is the Popularity of Homeopathy Collapsing?」 The Quackometer, Thursday, November 13, 2008
- 「「英国」を強調する日本における「ホメオパシー」の言語面からの検討、ならびに、その中の人が持っている「学位」について、そしてウェールズ公国(!)」 tnfuk, 2009年06月04日
- 「We Have Posters Too. The R-Rated Version . . .」 Hells News Stand, Monday, April 6, 2009
- 「10^23 Homeopathy: There's nothing in it」 The 10:23 Event
参考文献
- 英語版wikipediaのHomeopathyの項目
- 「日本最大の?ホメオパシー関連リンク集」 志水一夫
- 「Homoeopathy may not be effective in preventing malaria」 Pascal Delaunay, Eric Cua, Philippe Lucas, Pierre Marty, BMJ. 2000 November 18; 321(7271): 1288.
- 「Malaria advice 'risks lives'」 by Meirion Jones, BBC Newsnight
- 「Don't rely on homeopathy to beat malaria, doctors warn」by FIONA MACRAE, Daily Mail, Last updated at 09:22am on 14th July 2006
- 「マラリア予防のためにハーブやホメオパシー医薬品を使用しないように助言」 食品安全情報blog (2006-11-09)
- 「Statement on homeopathic remedies for malaria」 Health Protection Agency (HPA)
- 「A Systematic Review of Systematic Reviews of Homeopathy.」 Ernst, E., British Journal of Clinical Pharmacology. 2002. 54(6):577-82.
- 「Are the clinical effects of homoeopathy placebo effects? A meta-analysis of placebo-controlled trials」 Linde K, Clausius N, Ramirez G, Melchart D, Eitel N, Hedges LV, Jonas, LANCET 350 (9081): 834-843 SEP 20 1997
- 「Efficacy of homeopathic therapy in cancer treatment」 Stefania Milazzo, Nancy Russell, and Edzard Ernst, European Journal of Cancer, Volume 42, Issue 3 , February 2006, Pages 282-289
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- 「Homeowatch」 Your Skeptical Guide to Homeopathic History, Theories, and Current Practices
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