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ホメオパシーに否定的・懐疑的な論文

ホメオパシー

  • ホメオパシーに否定的・懐疑的な論文

2005年のThe Lancetの論文

Are the clinical effects of homoeopathy placebo effects? Comparative study of placebo-controlled trials of homoeopathy and allopathy

(ホメオパシーの臨床効果はプラセボか?ホメオパシーとアロパシー(対症療法)のプラセボ対照試験の比較研究) Shang A, Huwiler-Muntener K, Nartey L, Juni P, Dorig S, Sterne JA, Pewsner D, Egger M., The Lancet, Volume 366, Issue 9487 , 27 August 2005-2 September 2005, Pages 726-732

上記の論文では、文献検索によって得られた110報のホメオパシーの試験と、それと同等な110報の一般的な医療の試験が分析された。大規模で良質の試験よりも、小規模の試験や質の低い試験ほど有益な治療効果を示すことより、方法論的な欠陥やバイアスの存在が示唆された。大規模で良質の試験に限定すると、ホメオパシーの効果の根拠は薄弱になるのに対し、一般的な療法には重要な効果があることに変化はない。結論は「ホメオパシーはプラセボ効果であるという見解と矛盾しない」である。

注意すべきは、この論文の最後で、著者のシャン(Shang)らも「陰性であることを証明するのは不可能である」と認めていることである。試験数が少ない場合、メタ解析でもバイアスを検出することは難しい。たとえば、この論文の解析にも含まれている、上部呼吸器系急性感染症のレメディに関する8例の試験は、総合的に十分に有益な効果を示唆している。しかし、この論文の最終結論は、こうした小規模の調査結果は信用できないということである。

重要なのは、ホメオパシーについて出版ずみのプラセボ対照試験のほとんどすべてを、この論文は網羅しているということだ。その結果、ホメオパシーの効果は、「プラセボであるという仮説と矛盾しない」という結論が導かれた。これが「The end of homeopathy」と言われる由縁である。

なお、アロパシーは辞書では「対症療法」になるが、ホメオパシーの創始者であるサミュエル・ハーネマンはこの言葉をホメオパシーの対義語としており、広義にはホメオパシー以外の療法を指す。ところが、18世紀後半の治療法に対して定義された言葉なので、その概念をそのまま現代の医療に当てはめると論理的に破綻する。この論文では「一般医療」のことを指していると思われるが、通常医療の方法は対症療法だけには限らない。

この論文に関しては以下のリンクも参照。

The end of homeopathy

  • The end of homeopathy」 Editorial, Volume 366, Issue 9487, 27 August 2005-2 September 2005, Page 690

シャンらの論文の発表にともない、ランセットは「ホメオパシーの終焉」という論説を公表した。この論説の最後には以下のように述べられている。

選択的分析、バイアスのかかった報告、ホメオパシー対アロパシーの論争を続けるための研究への投資の時はたしかに過ぎ去った。今、医者は勇気をもって誠実にならなければならない。患者に対しては、ホメオパシーに有効性がないことについて、自分自身には、患者の個人的な介護の必要性に現代医学が取り組むことができなかったことについて。

日本ホメオパシー医学協会の反論

日本ホメオパシー医学協会はこの論文に対して、以下のように反論している。

まず、標題にある『ホメオパシーはプラシーボ以下』というのは間違いである。論文著者のシャンらも「陰性であることを証明するのは不可能である」と認めている通り、ランセットの論文の結論は「ホメオパシーはプラセボ効果であるという見解と矛盾しない」である。

ここでは、マイケル・ブルックス著「まだ科学で解けない13の謎」(草思社、2010年)を引用して以下のように述べている。

この本の中で、ブルックス氏は、ベルン大学のシャン氏とその研究チームが<ランセット>で発表した上記論文については、ホメオパシー共鳴者でないクラウス・リンデとウェイン・ジョナスなど、複数の科学者が欠陥論文であると指摘していることを書いており<ランセット>ともあろうものが、この手の「不備のある」調査結果を掲載したことに愕然としていたことに触れている。

JPHMAはこの本がだいぶ気に入ったようで、以下のページでも引用している。

しかし、これは一般向けの書籍なので、査読付の国際的な学術論文への反論としては意味がない。これで信者を納得させることはできるかもしれないが、日本学術会議等のプロ集団の批判に対する反論にはなっていない。

もちろん、この本はホメオパシーには好意的であるが、全面的に肯定しているわけではない。第13章のむすびの言葉は以下のようなものである。

ホメオパシーが科学的精査のきびしい現実の中で生き残り、矜持を守りぬけるかどうかは、皮肉なことだが、身を捨てる覚悟を固められるかどうかにかかっていると言えるだろう。

なお、JPHMAのページでは、リンデとジョナス(Wayne Jonas)を「ホメオパシー共鳴者でない」としているが、後述するように、彼らは1997年に「ホメオパシーは完全にプラセボだとは言い切れない」とする論文を発表しており、ジョナス博士は、「Healing With Homeopathy: The Complete Guide」という著書を出している。ジョナス博士については、「わたしたちはなぜ科学にだまされるのか」(ロバート・L. パーク 著、主婦の友社、2001年)でも、その荒唐無稽のホメオパシー理論が、「これではまるで心霊治療か魔術ではないか?」と批判されている。少なくともジョナスは「ホメオパシーを信じない側の人間」ではないようだ。

また、「まだ科学で解けない13の謎」によると、リンデとジョナスも「ホメオパシーがきわめて理に合わないことと、プラシーボ比較試験が確固たる結果を残していないことについては、われわれも認めるところである」としており、彼らも「ホメオパシーが効く」という証拠を持ち合わせているわけではないことがわかる。

リンデとジョナスの批判に対するシャンらの反論

ランセットの論文に対するリンデとジョナスの批判というのは、ランセットの「投稿欄」に投稿された1ページに満たない短い文章のことである。

この投稿欄には同時にシャンらの反論も掲載されているが、「まだ科学で解けない13の謎」は、そのことに触れていない。疑似科学の世界において、都合のいいことだけ言及し、都合の悪いことを無視するというのは、よくあることである。

リンデとジョナスの批判と、それに対するシャンらの反論をまとめると、以下のようになる。

1.シャンらのメタ解析は、一般に認められている指針に従っていない。検討した試験の大部分について、詳細を記しておらず、具体的なデータを除外している。

反論:我々のメタ解析は、10未満の試験に関する一般的なメタ解析やコクラン・レビューではない。ホメオパシーのプラセボ対照試験110例と、それと注意深く一致させた通常医療の110例の試験の大規模比較研究である。このような状況では、注目すべきすべての自由度について報告するのは困難である。

我々は、一致基準を明確に表明しており、すべての引用文献はウェブ・アペンディクスで公開している。ウェブ・テーブルで結論の補足的な情報も提供している。(「Web Extra Materia」を参照) 除外された研究のリストと、含まれた研究の詳細は「The Lancet, August 27, 2005: Homoeopathy」から入手できる。

2.研究結果の中に、異なる効果を測る試験の集積データが含まれているため、分析全体が無効になる。統計値をゆがめて、偽陰性が生じるリスクを著しく高めている。

反論:ホメオパシーが、すべてではなく一部の症状にのみ効くのであれば、我々の分析は偽陰性の結果を生じうると言うが、この議論を支持する証拠はない。そのようなことが本当に起こるというのであれば、なぜ、通常医療については偽陰性の結果が出なかったのか?

我々の分析では、多様な症状を網羅している。治療効果が臨床の種類に依存して変化するという証拠は脆弱である。我々の研究が重要で強力なのは、注意深く一致させた通常医療の試験を取り入れたことである。

3.最終的にこのメタ解析は、8例の臨床試験に関する研究になっている。集積データがここまで小さいと、結果は「偶然の産物という域を出ない」。

反論:我々の結論が「8つの匿名の試験」に基づいているという見解は、強く否定する。110例の試験の分析に基づき、確認できる最大の試験について、治療効果の推定を行っている。より高い水準の8つの大規模試験に分析を限定すると、我々は、ホメオパシーがプラセボ効果よりも優性である、という確実な証拠を見つけることはできなかった。

書評:「まだ科学で解けない13の謎」 (マイケル・ブルックス著、草思社、2010年)

はっきり言って、ホメオパシーを「13の謎」に入れてしまう時点でセンスが悪すぎる。さらにこの本では恣意的な情報操作が行われており、明らかにウソだとわかる記述もある。著者の誠実さが感じられない。科学啓蒙書としては失格、ダメである。

この本の第13章には以下のような問題がある。

  • 前述の通り、リンデとジョナスの批判に対するシャンらの反論がこの本には掲載されていない。 都合のいいことだけ言及し、都合の悪いことを無視するというのは、疑似科学のやることである。
  • さらに、この批判が公平なものであると印象付けるために、リンデとジョナスを「ホメオパシーを信じない側の人間」であると紹介しているが、これはウソである。少なくともジョナス博士はホメオパシーの信奉者である。
  • 「ホメオパシーの無効性を立証できなかった。またしても」(p.307)などという記述もおかしい。裁判においては、有罪であることを証明できれば、無罪であることを証明する必要はない。同様に、ホメオパシーが有効であると証明すればいいだけの話であり、無効性を証明する必要などない。
  • 「ホメオパシーの処方では、その分子が存在しないのだ」ということに対して、「けれどもこのことは、ホメオパシーの始祖サミュエル・ハイネマンも承知していた」(p.290)と書いてあるが、これもウソである。 Samuel Hahnemann(1755年-1843年)の時代には、まだ物質の基本構成要素としての分子や原子の存在は確認されていなかった。

原子や分子の存在がきちんと証明されたのは、20世紀になってから、アインシュタインのブラウン運動の理論がジャン・ペランによって実験的に検証されてからである。

さらに、ブルックス氏は、レメディの「製造元」であるヘリオス社を訪ね、デタラメなレメディが棚に陳列してあるのを見てもなお、ホメオパシーの非科学性に気が付いていない。その態度には理解しがたいものがある。

世界中で信じられていることが、その科学的信憑性を保証するわけではない。世界中で、さまざまな迷信や占い、宗教が信じられているが、特にそれらに科学的根拠があるわけではない。

論文による反論

2005年のランセットの論文はホメオパシー産業に深刻な打撃を与えかねないため、大きな反発があった。当然のように反論の論文も出版されている。ただし、疑似科学業界においては、すでに結論の出ている問題に対して、いい加減な論文を連発し、あたかもまだ議論が続いているかのように偽装する場合もあるので、注意が必要である。

ホメオパシーの臨床試験の結果にはばらつきがあるため、解析の仕方によっては有意な結果が出るというだけのことである。つまり、もし仮に効果があったとしても、その有意性はプラセボと間違えるほど弱く、大きな効果は本質的に期待できないということである。

The conclusions on the effectiveness of homeopathy highly depend on the set of analyzed trials」 

Ludtke R, Rutten ALB., Journal of Clinical Epidemiology. 2008, 61(12), 1197-204.

この論文のデバンキング情報については以下のリンクを参照。

The 2005 meta-analysis of homeopathy: the importance of post-publication data」 

Rutten ALB, Stolper CF., Homeopathy. 2008 Oct;97(4):169-77.

この論文は、「Homeopathy」というタイトルの雑誌に出版されている。内容は推して知るべし。疑似科学業界には権威づけのためにいい加減な論文を発表できるジャンク・ジャーナルがちゃんと用意されているのである。デバンキング情報については以下のリンクを参照。

コクラン共同計画

コクラン共同計画(The Cochran Collaboration)は、1992年にイギリスの国民保健サービス(National Health Service: NHS)の一環として始まり、現在、世界的に急速に展開している治療、予防に関する医療テクノロジーアセスメントのプロジェクトである。無作為化比較試験(randomized controlled trial: RCT)を中心に、世界中のclinical trialのシステマティック・レビュー(sytematic review; 収集し、質評価を行い、統計学的に統合する)を行い、その結果を、医療関係者や医療政策決定者、さらには消費者に届け、合理的な意思決定に供することを目的としている。Evidence-based medicine (EBM)の情報インフラストラクチャーと呼ばれている。

Homeopathy: what does the “best” evidence tell us?

(ホメオパシー:「ベスト」な証拠は何を我々に伝えているのか?) Edzard Ernst, MJA 2010; 192 (8): 458-460

このMJAの論文の結論は以下のようなものである。

結論: ホメオパシーの研究について、現在入手可能なコクラン・レビューの所見によると、ホメオパシー薬はプラセボを越える効果を示していない。

そこで、実際にコクラン・ライブラリを「ホメオパシー」で検索し、見つかったレビューの結論を以下にまとめておく。たしかにホメオパシーの効果の有意性を確実に支持するレビューはない。

著者らの結論:

このレビューは、放射線治療による激しい皮膚炎予防に関する局所的なcalendulaと、化学療法による口内炎へのうがい薬「Traumeel S」による療法の有効性を支持する予備的なデータを見つけた。これらの試験は再現が必要である。癌療法のその他の副作用に対すホメオパシーの効果について納得のいく証拠はない。さらなる研究が必要である。

著者らの結論:

誘発の方法としてホメオパシーの使用を推奨するには証拠が不足している。代替医療の需要は今後も続くと考えられ、女性が妊娠期間中にホメオパスに助言を求めることも続くだろう。caulophyllumは陣痛誘発に一般的に使用されるホメオパシー治療だが、それを評価した単一の試験の治療方針は、通常のホメオパシー慣例を反映していない可能性がある。陣痛誘発の個人化したホメオパシー療法の厳格な評価が必要である。

レビューア見解:

エビデンスがないため、痴呆の治療におけるホメオパシーの適用についてコメントすることはできない。痴呆患者にホメオパシーが処方される範囲は不明であるため、本分野の試験を実施することの重要性に関するコメントは困難である。

レビューア見解:

喘息でホメオパシーの潜在的な役割を評価する信頼性の高いエビデンスは十分でない。ランダム化試験だけでなく、異なるホメオパシーの処方方法と、患者の反応を記録した観察データが必要である。これは、ホメオパシー介入単独よりむしろ、"ケア・パッケージ"に患者がどの程度反応するかを明らかにする上で役立つ。

著者らの結論:

ADHD治療のためのホメオパシーの効果について、今のところ証拠は少ない。さらなるランダム化対照実験を行う前に最適な治療プロトコルの開発が推奨される。

2002年のエルンストらの論文

A Systematic Review of Systematic Reviews of Homeopathy.

(ホメオパシーの体系的な再調査の体系的な再調査) Ernst, E., British Journal of Clinical Pharmacology. 2002. 54(6):577-82.

上記の論文の結論は「現在までに入手可能なホメオパシーの最良の臨床的証拠であっても、その臨床的な実践に肯定的な推奨を保障しない」である。つまりプラセボ効果以上の効果はないようである。

この論文では1997年に発表された下記のLinde(リンデ)らのメタ解析の論文を批判的に分析している。

Lindeらの論文の結論は以下のようなものであるが、多くのホメオパスは、これがホメオパシーの証明になっていると喧伝している。

我々のメタ解析の結果は、ホメオパシーの臨床的効果は完全にプラセボ効果によるという仮定と矛盾する。しかし、これらの研究から、いかなる病理的症状についても、ホメオパシーが明確に有効であるという十分な証拠は見つけられなかった。厳格で体系的であるあらば、さらなるホメオパシーの研究には正当な理由がある。

この論文では、Lindeらの解析に対して6つの再分析がなされており、データの批判的な評価では、Lindeらの結論は全体的に支持されていないことがわかった。

さらに、11報の独立した体系的な再調査を再調査した結果、全体的に見て、ホメオパシーを強く肯定するような証拠はないことがわかった。よって全ての調査を総合すると、ホメオパシーには臨床的にプラセボ以上の効果があるという明確な証拠はないということになる。この体系的な再調査は、アボガドロ数以下に希釈されたホメオパシーのレメディが生物学的活性を保持し続けるというホメオパシーの主たる仮定に対して、大きな疑いを投げかけている。

なお、リンデ(Linde)らは、1999年にもメタ解析の結果を発表している。

この論文の中で、リンデらは以下のように、1997年の自らの論文がホメオパシーの効果を過大評価していたことを認めている。

バイアスの証拠は、我々の最初のメタ解析の結論を弱める。我々が1995年の論文調査を終了して以来、相当量の新しいホメオパシー試験が発表された。いくつかの新しい高品質の試験で、陰性の結果が出ていること、そして、もっとも「オリジナル」なホメオパシーのサブタイプ(クラシカルまたは個別的ホメオパシー)についての我々の再調査の更新によると、より厳格な試験であるほど、期待されるような結果が出ないという結論を裏付けている。よって、我々のメタ解析は、おそらくホメオパシー療法を過大評価していたようだ。

また、前述のリンデとジョナスの2005年のランセットへの投稿でも、「我々の1997年のメタ解析は、不幸なことに、彼らの療法が実証された証拠であると、ホメオパスに誤用されている」と述べている。

つまり、リンデとジョナスの研究も、シャンらの研究と同様に「ホメオパシーはプラセボ効果であるという見解と矛盾していない」。

また、リンデらの1999年の論文やエルンスト(Ernst)の2002年の論文は、「まだ科学で解けない13の謎」では引用されていない。さらに、JPHMAのサイトで公開されている「ICHの見解」では、リンデらの1997年の論文が「ホメオパシー的立場による多数の研究において、高希釈薬の効果は立証されている」という文献の1つ(Ref. 4)として引用されているが、そのような内容ではないことがわかる。

2000年のCucheratらの論文

Evidence of clinical efficacy of homeopathy. A meta-analysis of clinical trials」 

M. Cucherat, M. C. Haugh, M. Gooch, J. -P. Boissel and for the HMRAG group, JP.Eur J Clin Pharmacol. 2000 Apr;56(1):27-33.

この論文の結論は以下のようなものである。

ホメオパシー療法は、プラセボより効果的であるといういくらかの証拠があるが、試験の方法論的クオリティが低いため、この証拠の強度も弱い。方法論的に高品質の研究は、低品質の研究より否定的な傾向にある。これらの結果を確認するには、より多くの高品質研究が必要である。

つまり、シャンらのランセットの論文(2005年)と同様、品質の高い研究ほどホメオパシーに否定的な結果が出るというもの。ところが、JPHMAの「ICHの見解」では、この論文もホメオパシーの効果を立証している文献の1つ(Ref. 3)として引用されている。さらに、

上記の「忘却からの帰還」のエントリによると、英国下院科学技術委員会のホメオパシーに関する調査に対して、英国ホメオパシー協会(BHA)は以下の文書(2009年11月)を提出した。

ところが、この文書で「ホメオパシーはプラセボではない」と結論したレビュー論文として引用されていた4つの文献が、実際には、そのような内容ではなかったことが指摘され、批判されている。そして、その「インチキな引用」がされていた4つの論文の中に、Cucheratらの論文(2000年)も含まれていたのである。

上記の英国ガーディアンの記事によると、Cucheratらの論文(2000年)の共著者の一人、Jean-Pierre Boisselは、『私のレビューは「ホメオパシーはプラセボではない」などという結論に達していない』と述べ、彼と彼の同僚が実際に発見したのは、結果に相当なバイアスがあることを示す証拠であり、高品質な試験ほどホメオパシーに肯定的ではない結果が出るということであると指摘している。記者がBoissel氏に、彼の仕事がホメオパシーの肯定的な証拠として公然と発表されたことに満足しているか?と聞くと、「もちろん、ノーだ!」と答えた。

さらに、リンデらの論文(1997年)も、ICHの見解とBHAの文書の両方で、同様な引用をされている。これらのことを考え合わせると、ホメオパス団体は根拠とはならない論文を、さもホメオパシーの根拠であるかのように引用し、しかも、その間違いを指摘されても、その引用を続けるという傾向にある。どうも、ホメオパシーの根拠となるような論文を引用したくても、そういった論文があまり存在しない、というのが実情のようだ。

その他

A systematic review of the quality of homeopathic pathogenetic trials published from 1945 to 1995」 

Dantas F, Fisher P, Walach H, Wieland F, Rastogi DP, Teixeira H, Koster D, Jansen JP, Eizayaga J, Alvarez ME, Marim M, Belon P, Weckx LL, Homeopathy. 2007 Jan;96(1):4-16

CONCLUSIONS: The HPTs were generally of low methodological quality. There is a high incidence of pathogenetic effects in publications and volunteers but this could be attributable to design flaws. Homeopathic medicines, tested in HPTs, appear safe. The central question of whether homeopathic medicines in high dilutions can provoke effects in healthy volunteers has not yet been definitively answered, because of methodological weaknesses of the reports. Improvement of the method and reporting of results of HPTs are required.

Efficacy of homeopathic therapy in cancer treatment

(癌介護におけるホメオパシー療法の有効性) Stefania Milazzo, Nancy Russell, and Edzard Ernst, European Journal of Cancer, Volume 42, Issue 3 , February 2006, Pages 282-289

この論文の結論は「出版されたホメオパシーに関する文献についての我々の分析では、癌介護におけるホメオパシー療法に臨床的有効性があるという十分な証拠を見つけることはできなかった」である。しかし、ここで体系的に再調査した6報の論文のうち、2報は統計的に有意な結果を示していたので、今後さらに大規模な検査の必要性を示唆している。

The truth about homeopathy」 

E. Ernst, Br J Clin Pharmacol., Volume 65, Issue 2, pages 163-164, February 2008

tadano--ryの日記

BHAやICHが引用した論文

その他、BHAやICHがホメオパシーの根拠として引用した文献には、次のようなものもある。

「Critical literature review on the effectiveness of homoeopathy: overview of data from homoeopathic medicine trials.」 

Boissel JP, Cucherat M, Haugh M, Gauthier E, In: Homoeopathic Medicine Research Group, Report of the Commission of the European Communities, Directorate-General XII; Science, Research and Development, Directorate E; RTD Actions: Life Sciences and Technologies; Medical Research, Brussels, Belgium, (1996).

この文献はインターネット検索しても原文は見つからなかった。前述のガーディアン紙によるBoissel氏のインタビューによると、Cucheratらの論文(2000年)と同じ分析に基づいた報告書である。つまり、結論はCucheratらの論文と変わらない。英国下院科学技術委員会のホメオパシーに関する調査に対し、BHAは引用論文数を多く見せるために、同じ分析に基づく文献を2つ引用した。

Clinical trials of homoeopathy」 

J Kleijnen, P Knipschild, and G ter Riet, BMJ. 1991 Feb. 9; 302(6772): 316-323

この論文も、BHAと同様にICHも引用している。発表年は1991年であり、リンデらの1997年の論文よりもさらに古い。その結論は以下のようなものであり、ホメオパシーに肯定的であるが、ほとんどの試験が非常に低品質であったことを認め、出版バイアスの可能性も示唆している。

14例の試験で、いくつかのクラシカル・ホメオパシーの形態が試され、58例の試験で、同じ単一のホメオパシー治療が同一の一般的な診断のある患者に施された。26例の試験で、いくつかのホメオパシー治療の組合せが試された;イソパシーが9例の試験で試された。ほとんどの試験が非常に低い品質のようであったが、例外もたくさんあった。試験の品質や使用されたホメオパシーの種類にかかわらず、結果は陽性の傾向を示した。全体的に、解釈可能な結果をもたらした105例の試験のうち、81例が陽性の結果を示唆し、これに対し、24例の試験でホメオパシーの陽性な効果は見つからなかった。レビューの結果は出版バイアスで複雑になっているかもしれない。特にホメオパシーのような物議を醸す主題の場合は。

Critical Review and Meta-Analysis of Serial Agitated Dilutions in Experimental Toxicology」 

Linde K, Jonas WB, Melchart D, Worku F, Wagner H, Eitel F., Hum Exp Toxicol. 1994 Jul;13(7):481-92.

これもリンデとジョナスの論文(1994年)である。ホメオパシーに肯定的な結論ではあるが、調査した実験の多くは低品質であり、更なる研究の必要性を認めている。要旨は以下の通り。

1. 毒素調整における連続振とう希釈(SAD)の保護効果の、すべての実験の文献について、我々は、概観的で定量的なメタ解析を行った。2. 体系的に文献が集められ、前もって定義された方法論的基準に基づき、科学的品質について評価され、そして、妥当性について独立に分析された。3.毒物学的システムについて、SAD調整の効果を調査している105例の文献を、我々は見つけた。 4. これらの研究における証拠の品質は低く、可能な最高品質指数の半分に達したものは、たった43%であり、データを再評価できる形で報告しているものは、たった31%であった。5. 比較可能なモデルを使用して独立に再現されている研究は、非常に少ない。6. 高品質の研究の間では、陰性の効果よりも陽性の効果が、50%多く報告されている。7. メタ解析のための品質と比較可能基準を満たす5例のうち、4例の結果がSAD調整の陽性な効果を示した。8. これらの調整における平均パーセンテージ防御は、コントロールと比較して、19.7 (95%Cl 6.2-33.2)であった。9. 方法論的詳細に特別な注意をはらい、独立した再現による更なる研究が行われるべきである。

Is evidence for homoeopathy reproducible?」 

Reilly D, Taylor MA, Beattie NG, Campbell JH, McSharry C, Aitchison TC, Carter R, Stevenson RD, Lancet. 1994 Dec 10;344(8937):1601-6.

この論文(1994年)は、喘息に対するホメオパシーの免疫療法についての小規模なメタ解析に関するものであり、ホメオパシーに肯定的な結果である。

独立した条件下で、ホメオパシーはプラセボとは異なるという、以前の2つの試験の証拠の再現性を我々は試した。試験モデルは今回もホメオパシーの免疫療法であった。その多くがハウスダストのダニに敏感であるアレルギー性の喘息患者28人が、彼らの基本的なアレルゲンについて、もしくは、同一のプラセボである経口ホメオパシー免疫療法に、ランダムに分配された。試験療法は、彼らの一般療法を変更せずに補足といて与えられた。、全体的な症状の度合いの日常的なVAS(visual analogue scale)が、結果の評価基準であった。ホメオパシー免疫療法に肯定的なVASの差異は、療法開始から一週間以内に現れ、8週間まで持続した(p=0.003)。呼吸機能と気管支反応試験にも同じような傾向があった。3つすべての試験のメタ解析は、ホメオパシーにはプラセボ以上の効果がある証拠を強化する(p=0.0004)。ホメオパシーに肯定的な証拠の再現性は、その効果の証明なのか、それとも臨床試験が偽陽性の結果を出すこともあるという証明なのか?

Large-scale application of highly-diluted bacteria for Leptospirosis epidemic control」 

Bracho G, Varela E, Fernandez R, Ordaz B, Marzoa N, Menendez J, Garcia L, Gilling E, Leyva R, Rufin R, de la Torre R, Solis RL, Batista N, Borrero R, Campa C., Homeopathy, 2010; 99: 156-166.

CONCLUSIONS: The homeoprophylactic approach was associated with a large reduction of disease incidence and control of the epidemic. The results suggest the use of HP as a feasible tool for epidemic control, further research is warranted.

この論文のデバンキング情報については、以下のリンクを参照。

  1. Much ado about nothing」 A canna’ change the laws of physics, Posted by apgaylard on August 8, 2010
  2. Here Is the News」 A canna’ change the laws of physics, Posted by apgaylard on August 12, 2010
  3. Editing reality」 A canna’ change the laws of physics, Posted by apgaylard on August 28, 2010

その他

  • Complementary Medicine The Evidence So Far」(pdf) A documentation of our clinically relevant research 1993 - 2010 (Last updated: January 2011) Complementary Medicine, Peninsula Medical School, Universities of Exeter & Plymouth