ホメオパシーの記事と報道
ホメオパシー
- ホメオパシーの記事と報道
ホメオパシーダイエットについて注意喚起
- 「hCGホメオパシーダイエットについて注意喚起」 「健康食品」の安全性・有効性情報、 2011/02/28
- 「‘Beware quick-fix diets’ - NZ nutrition experts」 Posted in Science Alert: Experts Respond on December 16th, 2010.
- 「Homeopathic hCG (human chorionic gonadotrophin) being promoted as an aid to help weight loss」 Medicines regulatory news, 21 February 2011
■注意喚起および解説
国内外で流行の兆しがあるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホメオパシーダイエットについて、ニュージーランド栄養士会や英国MHRAが注意喚起。日本ではhCGは医薬品であるため、食品に添加することはできないが、ホメオパシーと謳って微量のhCGが添加された製品がインターネット通信販売や個人輸入などで流通している可能性がある。hCGの経口摂取についても、ホメオパシーについても、痩身に対する科学的根拠は明らかでなく、またこのダイエット方法が極端なカロリー制限を伴うものであるため、注意が必要である。ニュージーランド栄養士会では、効果的な痩身には、食事と運動のコントロールが必要であり、「簡単ダイエット」「魔法のダイエット」といった言葉に惑わされてはならない、との声明を発表している。
「サイゾー」2010年11月号
月刊誌「サイゾー」11月号に「人はなぜ、代替医療に魅せられるのか?」(p.103-111)というホメオパシーに関する特集が掲載された。肯定・否定派の両論併記の形になっており、疑似科学批判の活動を「バッシング」という言葉で表現している部分もある。また、代替医療のことを「生理学的に治療効果があるとは考えにくい医療」を指すとしているが、代替医療って、そんな意味だっけ?
この記事には以下のような人物が寄稿している。それぞれの意見を要約しておく。
菊地誠教授(大阪大学)
この記事では「ホメオパシー批判の急先鋒」として紹介されている。『代替医療のリスクや現代医療の必要性を説明せず、代替医療の効果を期待させる情報だけを与えて「選択の自由」を言うのではずるい』と菊池教授は批判。
なお、菊地教授は「症状に効くという物質の成分は1分子も残っていません」としているが、p.104の脚注「ホメオパシー」には、『問題の症状と同様の症状を引き起こす物質をレメディとして少量投与する』と書かれてあり、記者がアボガドロ数の概念を正しく理解しているかは不明。
板村論子(「帯津三敬塾クリニック」院長)
日本ホメオパシー医学会系の人なので、「欧米諸国と同じように医薬品として認可され管理されることが必要だ」との意見。「朝日新聞の一連の報道は、ホメオパシーへの偏った理解がベースにある」とのこと。「現代の科学では、ホメオパシーの作用機序が解明されていない」としているが、単なる「おまじない」に作用機序もへったくれもないだろう。そもそも科学で解明されるようなものではない。報道の中でよく使われる「好転反応」という言葉は間違いで、本来は「アグラベーション(悪化)」と言うとしているが、なんか漢字をカタカナに変えただけのような感じもする。実際の診療では、これが起こらないように努めるとのこと。
紀藤正樹弁護士
1994年に53人が集団無理心中を起こした「太陽寺院」(Order of the Solar Temple)というカルト教団の広告塔だった医師が、ホメオパシーを推奨していたという事例を紹介し、説明に嘘があると言う部分でカルトに似ている、としている。レメディを飲んで病気が治ったと感じた時、その経験を絶対視することが問題とのこと。熱が出るのは好転反応だといっても、子供やお年寄りは死ぬかもしれない。薬を処方しないと死ぬ人がいるということに理解がなく、治らない人がいることにも理解がなく、自分の経験知を絶対視する「傲慢な考え方」が問題であるとしている。
横野恵(早稲田大学専任講師)
医師免許を持たない人が、レメディに治療効果があるという説明をして渡しているのなら、医師法に触れる可能性がある。国が、薬事法や医師法を積極的にホメオパシーに適用して規制していく可能性はあるが、ホメオパシー自体に対して、法で規制する可能性は低い。
ビタミンK不投与事件の裁判では、助産師の説明ルール違反について損害賠償を認める可能性はあるが、投与しなかったことと死亡の因果関係については立証が難しい問題である。「あかつき問題」で死亡した女性に関しては、ホメオパシー診療士の保護責任者遺棄致死や業務上過失致死といった刑事上の責任が問われる可能性がある、としている。
日本ホメオパシー医学協会
書面での回答のみだが、さすが由井寅子会長だけあって、一番ぶっ飛んだ内容になっている。なんでも、効果を肯定するケースや論文は多数あるので、ホメオパシーの有効性は十分証明されており、今さら有効性検証のための統計的データは不要との考えを表明している。ホメオパシーの有効性が、科学的に示されているにもかかわらず、日本学術会議が一方的に否定的な声明を発表したのは異常なことであり、この異常性が(報道としての)正規の手続きを踏んでいないことを物語っているとして、「権益団体と一部のマスコミが手を組み、世論を誘導するやり方で、ホメオパシー潰しを行っている」という陰謀論を匂わせている。
以下のリンクも参照。
- 「オカルトか? 奇跡の医療か? ホメオパシー事件と代替医療の正当性」 サイゾー 12月3日(金)17時37分配信 (Yahoo!ニュース)
Japan Business Press(JBP)の記事
JBPなるサイトに以下のようなホメオパシーに肯定的な記事が掲載された。これらの記事では、日本ホメオパシー医学会に所属する小池弘人医師(小池統合医療クリニック院長)なる人物に取材している。
- 「自然治癒力を高める「ホメオパシー」」 JBPress, 2009年09月02日(Wed) 長野 修
- 「何のためのホメオパシーか」 JBPress, 2009年09月09日(Wed) 長野 修
最初の記事はもともと「世界で最も安全な医療」というタイトルだったが、2009年9月8日には「自然治癒力を高めるホメオパシー」というタイトルに変更された。読めばわかることだが、この記事は全体にわたって矛盾だらけだと言える。
まず第一に、データを定量的に分析した痕跡がない。タイトルからしてホメオパシーが「自然治癒力を高める」というのであれば、ホメオパシーが使用されていない場合に比べて、使用された場合に「自然治癒力」が何倍に高められたか示すべきである。しかし、そういった記述はまったく見当たらない。
例えば、100分の1に薄められた原液を、さらに同じ方法で12回希釈していくと、分子レベルでは分析しても検出されなくなる。
つまり、物理的な作用はない。薬のように体内に物質を注入して、その物質が体内で化学反応を引き起こして体に変化を起こすというものでは全くないのだ。
「分子レベルでは検出」されず、しかも「物理的作用はない」というのであれば、いったいなにが作用しているのだろうか?
そして面白いことに、薄めれば薄めるほど効果は高くなるという。
本当に「薄めれば薄めるほど効果は高く」なるというのであれば、たしかに「面白い」話だが、その根拠は示されていない。もしこれが事実だとすると、治療には医薬品などほとんどいらないという、とてもおめでたい話になる。しかし、どの程度薄めると効果がどのくらい高くなるか、具体的な数字はまったく記述されていない。
セントジョーンズワートというハーブは通常、気持ちのアップダウンを調整するので鬱に有効なのですが、ホメオパシーのレメディーとして用いると、指を挟んだ時の痛みに効果があります。
なぜ「指を挟んだ時の痛み」限定なのだろう? 足の小指をたんすの角にぶつけた時の痛みには効果がないとすれば、とても残念な話だ。
「ただ、ホメオパシーでは元の物質が限りなくゼロになるので、物質そのものが変化を与えているわけではないので、そこの部分が西洋医学的な考え方では理解しづらい部分ですね」
現代科学はこうした考え方を「理解しづらい」のではなく、完全に否定していると言ったほうが適切だろう。常識的に考えても「薄めれば薄めるほど効果は高くなる」などという主張は「理解しづらい」。
編集部注:この治療法に関しては古くから世界中でその効果について様々な議論がなされてきました。一部では科学的根拠が欠如している点から呪術的治療法と攻撃されることさえありました。
まるで、ホメオパシーを批判する者が悪者のような扱いだが、まさにホメオパシーは科学的根拠のない「呪術的治療法」だからこそ批判されているのである。
2番目の記事は若干押さえた感じになっており、
「事故や、インフルエンザなどの感染症、脳梗塞や心筋梗塞など緊急を要するもの、治療方法が明確なものは、現代医学を最優先すべきです」
「アグラベーションやプルービングという言葉は、安易に用いるべきではないと思います。その症状が、アグラベーションでもプルービングでもなく、ただの症状の悪化だった場合、安易にこの言葉を使っていると、症状を放置して悪化させる危険性があるからです。その見極めはかなり難しいので、やはり医学的な判断が重要です」
などと、一応ホメオパシーの問題点を指摘し、通常の医療との併用を勧めている。しかし、
特に、近年になってようやく知られ始めた日本では、ホメオパシーに対して激しい拒絶反応を示すケースも少なくない。
西洋の迷信を日本で広めることにいったいどういうメリットがあるというのだろう?
いずれにしても、ホメオパシーをどのように捉えるかは、個々の判断にお任せしたい。
つまり、ホメオパシーを信用してひどい目にあったとしても、それはその個人の責任だ、ということのようだ。2番目の記事には副題として「西洋医学が見放した人を前に、それでもノーと言えるか」と書かれてあるが、科学的根拠がなく、プラセボ以上の効果も認められていないようなモノを、病気で困っている人に本当に勧めるべきなのかどうか、よく考える必要があるだろう。
この記事に対する批判は以下のリンクも参照。
- 「ホメオパシーは世界で最も安全な医療?」 kikulog, 2009/9/2
- 「JBpress(日本ビジネスプレス)のホメオパシーの記事について」 NATROMの日記、2009-09-09
報道STATIONにホメオパシー登場
2009年1月22日、テレビ朝日系「報道STATION」の「見放された患者と共に闘う"がん難民コーディネーター"」でホメオパシーが取り上げられた。番組にはサトルエネルギー学会会長、日本ホメオパシー医学会理事長、日本ホリスティック医学協会会長など様々な肩書を持つ帯津良一氏が登場した。
番組のナレーションではホメオパシーを以下のように説明している。
このナレーションでは「ごく微量」としか言われていないが、成分分子が一切残っていないほどの無限希釈が実際のホメオパシーでは使用される。科学的に実証されていないのに、何を根拠に「効果が認められている」というのだろうか?帯津医師は次のように述べている。ホメオパシーとは、病気と直接因果関係が説明できない植物や鉱物を、ごく微量一種類ずつ変えながら一定期間患者に投与することで、免疫の働きを活性化させる。科学的な理論は実証されていないが、効果が認められており、世界的に普及している。
理論的なエビデンスがないものは世の中にいっぱいありますよ。だからといって排斥することはないんで。いいところを認めて、それで、それだけでやろうって言うわけじゃないんだから。それをやるのといっしょに西洋医学も中国医学もね、ホメオパシーといっしょに考えていけばいいんですよ。
エビデンスのない曖昧なものを、「がん難民」という報道の中で紹介する必要が本当にあったのだろうか?ホメオパシーは、原理的にありえないし、その治療効果も証明されていないので、医療行為とは言えない。いっしょにやるといっても、健康保険では混合診療は認められていないので、ホメオパシーを併用した場合、健康保険の使える治療にも保険が使えなくなる可能性がある。
さらにナレーションは次のように述べている。
ホメオパシー治療では微熱や眠気の副作用があるものの、数週間で免疫力が上がる効果が期待できる。
この副作用とはいわゆる「好転反応」のことを言っているのかもしれない。しかし、もともとホメオパシーには副作用が起こるほどの濃度の物質は存在しないはずである。なお、プラセボ効果には、副作用的なノーセボ効果を伴う場合もある。そもそも「免疫力が上がる効果」が期待できたとして、それがガンに対してどの程度有効なのか、具体的な話は一切ない。
この報道に対して批判的な意見を述べている医師のブログとしては以下のものがある。
- 「がん患者のあきらめない診察室 セカンドオピニオンと最新抗がん剤の治療法」 サイトのトップにリンクしてある。まずサイトを見るにあたり、警告文が表示されるので、その内容をすべて理解・了承したあとに入室する必要がある。(警告文は2回表示される) トップページに入室すると、左側にサイドバーが表示されるので、上から6番目の「臨床医のひとり言」をクリック。『 <報道ステーションで取り上げられた”がん難民コーディネーターなるもの”藤野邦夫氏のデタラメを徹底批判する>』(09/1/30)を参照。
- 『「ホメオパシー」』 梅澤 充医師のブログ、「現在のガン治療の功罪〜抗がん剤治療と免疫治療」 2009_01_30
以下のリンクも参照。
- 「報道ステーションでホメオパシー」 kikulog, 2009/1/23