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マイナスイオン

プラズマクラスター・ナノイーイオン」も参照。


「大気イオン」は大気電気学において普通に使われている言葉であるが、マイナスイオンは和製英語なので、学術用語としては使えない。日本でのみ通用する「俗称」であり、正しい英語としてはnegative air ionやair anion(負の大気イオン)といったものが考えられる。現時点でマイナスイオンについてわかっていることは次のようなことだろう。

  1. マイナスイオンを浴びたり、吸引したりしたからといって、特に健康によいということはない。ましてや何かの治療ができると主張すれば、薬事法違反により処分されることもある。
  2. そもそもマイナスイオンの実態(組成や分量)や効果の範囲などがはっきりしない。いったい何がどの程度あれば何に「効く」のか、定量的なことがほとんど論じられていない。
  3. トルマリンからマイナスイオンは発生しない。
  4. 放電型のマイナスイオン発生装置は「集塵器」としては使える。
  5. 一部のマイナスイオンドライヤーには確かに効果があるようだが、それはドライヤーとしての総合的な性能が良いからであって、必ずしもマイナスイオンのおかげではないようだ。

マイナスイオンに対する懐疑的意見を積極的に発信しているサイトとしては、以下の2つがある。

また、大阪大学サイバーメディアセンターの菊池誠教授のブログ「kikulog」でも関連したエントリがあるので、ここで紹介しておく。

市民のための環境学ガイド」については、「話題別の読むところ」のトップに2000年から2002年までのマイナスイオンに関する記事のリストもあるが、それ以外の記事は、このサイトの中に分散している。そこで、その中からいくつか重要と思われるものをピックアップして、次に紹介しておく。

「市民のための環境学ガイド」ガイド

高校の先生のために書いたマイナスイオン 08.31.2003

ここが一番簡潔にわかりやすく説明されているので、まずは必見。

似非科学撲滅マイナスイオン編 03.08.2003

マイナスイオンが批判される最大の原因の1つはその濃度の低さにある。薄いもので100個/cc、濃いもので50万個/ccといった濃度のものがあるが、これは化学の常識から考えると、ゼロに等しい。化学において取り扱う原子や分子、イオンの量は通常アボガドロ数(6.0221415×10^23)程度なので、50万個(5×10^5)という量であっても極めて微量な部類に入り、薬理効果が本当にあるのか疑わしい。このことについて分かりやすく解説してあります。

最初のあるある大事典 12.09.2000

この記事より、マイナスイオンブームを煽ったのは、捏造問題で番組が打ち切られた「あるある大辞典II」の前身の「あるある大辞典」であったことがわかる。その内容に安井先生はかなり頭にきているようで、次のように厳しく批判している。

今回の「あるある大事典」による「マイナスイオン」は、単なる迷信ならまだまし。むしろ、詐欺まがいなのではないか。「あるある大事典」を見た影響で詐欺に巻き込まれる人が増えるとしたら、フジテレビは詐欺幇助罪(大体、そんな罪があるのか?)にならないのだろうか。 一度、告訴してみようか。

あるある大事典第1回のマイナスイオンを批判 12.09.2000

こちらを見てみると、当時「あるある」でどのようなことが言われていたか、うかがい知る事が出来る。どうやら「静電気がたまる体質の人は血液ドロドロで不健康なので、マイナスイオンで中和しないといけない」という論理らしい。血液のドロドロ感はその粘度に依存する。粘度が高ければドロドロ、低ければサラサラになるだろう。血液の粘度を下げる手っ取り早い方法は、水を飲んで血液中の水分量を上げることだろう。マイナスイオンを浴びて静電気を中和しても効果はないと思われる。

なお、ここで批判されているのは、2000年12月2日の『静電気』というタイトルの放送であるが、「あるある」に批判的なサイト「教養ドキュメントファンクラブ」や「発掘?あるあるトンデモ大実験」などを見てみると、2002年1月27日にも『マイナスイオン』というタイトルの放送があり、「あるある」ではマイナスイオンが2回ほど取り上げられたことがわかる。

「あるある」がどうして打ち切られてしまったかは、「「発掘!あるある大辞典II」捏造事件」を参照。

マイナスイオンで非難 07.08.2003

日本機能性イオン協会のHPにて、山田副会長が安井氏を批判していたことがあったが、それに対する反論。なお、機能性イオン協会のHPにはもう山田副会長の批判文は残っていない。御茶ノ水大学大学院富永研究室の「水商売ウォッチング」というサイト内でも山田副会長の批判に対する反論「日本機能性イオン協会の山田氏投稿に関するコメント(2003/03/26)」を読むことができる。

マイナスイオンの終焉 12.03.2006

これがおそらく最新の記事。マイナスイオンも20年以上の歴史があり、100年以上続いているニセ科学や迷信もたくさんあるわけで、これで終焉するかどうかはわからない。『本HPの読者諸氏へ。まだまだ否定的な記事が足らない。是非とも増やして欲しい』とのこと。

空気イオン効果

マイナスイオンは和製英語なので日本でしか通用しないが、その原型である「空気イオン効果」は海外で昔から研究されていた。有名な研究としては、滝による水滴破砕でマイナスイオンが発生するという「レナード効果」があるが、この論文「Uber die Electricitat der Wasserfalle」(文献15)は1892年のもので相当古い。もっと近代の研究の総説としてはScience誌(1976年)の「空気小イオンの生物学的インパクト」(文献7)がある。しかし、マイナスイオン批判を行っている科学者のサイトでも、この内容について詳しく議論しているところはない。そこで、この総説の内容をここに要約しておく。

Science誌の論文「空気小イオンの生物学的インパクト」(文献7)

この総説には、2000年代初頭における日本でのマイナスイオンブームのエッセンスのほとんどが含まれている。ただし、「マイナスイオンで静電気を中和すれば血液サラサラ」のようなムチャクチャな話は出てこない。Science誌に掲載されただけあって、それなりにまともな論文である。結論として、空気イオンには生体に対して以下のような効果があることが主張されている。

  1. 固体表面における細菌や菌類の発育を阻害する。
  2. 水に広がった植物状態の細菌に対し、イオンと細胞が接触する機会があれば、致死的な効果をもたらす。
  3. 成長可能な細菌由来のエアロゾルを減少させることができる。

これらの結論が「マイナスイオンには滅菌効果がある」という話の根拠となったのだろう。また、強力な神経ホルモンであるセロトニンに対して、負の空気イオンには抑制効果がある可能性も述べられている。その結果、不安抑制効果や鎮静作用があるらしい。おそらくこれが「マイナスイオンには爽快感がある」という主張の根拠のようだ。

ただし、こうした実験には以下のような欠点があることも述べられている。

  1. イオン源のコロナ放電によるオゾンや窒素酸化物の発生を無視している。
  2. イオン密度、温度、湿度をきちんと測定し制御できていない。
  3. 微粒子や気体の汚染物質を含む空気を空気イオンと混ぜることによって、小イオン密度を大きく変動させてしまっている。
  4. 実験体を接地電圧に保っていなかったため、その表面が高い静電電荷を帯びてしまい、接近してくる空気イオンを反発してしまった。

さらに1950年代半ばには、空気イオンの治癒効果が誇張して宣伝されてしまったため、米国連邦食品医薬品局(Food and Drug Administration)が医療的応用にかかわる販売を禁止したことも述べられている。また、当時から空気イオンの濃度の低さが問題だったようで、ある種の蛾は1立方センチメートルに200分子以下の濃度のフェロモンに反応するとか、網膜は1個の光子を検出することができるなどの例を挙げ、濃度の低さが否定の根拠にはならないことを強調している。しかし、これは単なる比喩で、「あれがそうだったから、これもそうなる」と必ずしも言えるわけではない。

また、フェーン現象で発生する暖かい乾燥した風や、sharav(これはイスラエルで吹く、アラビア地方の砂漠からの痛烈に熱くて乾燥した風のことらしい)が、気候に敏感な人に病気をもたらすのは、空気中の正イオンの増加のせいだとしている。空気正イオンはセロトニンの分泌を増進し病的症状を悪化させるので、これに対抗するには空気負イオンがいいそうだ。しかし、この主張には否定的な意見もあることが次に述べるハインズ博士の本に書かれてある。

ハインズ博士による批判

ハインズ博士「超科学」をきる」(文献3)に「空気イオン効果」に対する批判が掲載されている。「水商売ウォッチング」の「ハインズ博士の空気イオンの話(2003/04/03)」で、この記事の全文を読むことができる。ここでもその全文を引用しておく。

大気中のイオンの量が気象条件によって変動して,とくに熱い乾いた風と関係があるとされる正イオンの増加が起きると,犯罪とか自殺とかさまざまな社会的に好ましくない事態が増加すると考えられている。(文献8と9) 実験によって,チャリーとホーキンシャーは,空気中の正イオンのレベルがあがると気分が沈滞して反応が遅くなり,生理活性や運動機能が低くなることをつきとめた。ところが,こうした変化は実験を受けた個々の人間には見つからず,正イオンの有害な効果を受けやすい人とそうでない人の個人差はかなり大きいものであった。正イオンの性別による効果の複雑な違いも発見されている。

 少なくとも影響を受けやすいタイプの人間が,正イオンの空気に接して行動が鈍り気分が落ち込むのであれば,反対に負イオンの空気を流せば気分もよくなり,活動的になると考えて当然であろう。実際,負イオン空気製造機を制作販売している業者は,そういう意見のもち主である。ところが,負イオン空気の実際の効果を研究してみたところ,まったく異なる事態が判明した。負イオン空気は確かに人間の行動に対して効果を持つのだが,その規模はきわめて小さくまた複雑であり,常に好ましいものともいえないのだ。バッカルーとリズートは,三時間から六時間負イオン空気に被験者をさらして実験を行ったが,認識機能や生理状態をいろいろ測定してもこれといった効果はないことをつきとめた。(文献10) バロンの実験研究では,負イオン空気が認識能力の一部に効果を与えはするものの,決してすべての面ではないことがわかっている。(文献11) 一部の事例では,負イオンのレベルをあげると行動性の増す被験者がいたが,反対に活発でなくなる被験者も結構いたのだ。

 この分野の研究結果をまとめると,空気イオンのレベルの変化は,それが正イオンであれ負イオンであれ,人間の行動に影響を与えることが入念に統制群をおいた実験から判明した。この効果はたしかに理論的な興味をそそるし,何か意味があることだろう。しかしながら,その効果の規模はかなり小さく,実際何かに応用することはほとんど無理なのだ。もちろん,わざわざ負イオン製造機を購入する必要などまったくないのである。

なお、この空気イオン効果への批判は日本語版と1988年に出た原書の初版本には掲載されているが、2003年の第二版には掲載されていない。

Penn State College of Engineeringの「室内環境センター」の見解

より最近の研究としては、Penn State College of Engineeringの「室内環境センター」の「Negative Air Ionization」(文献6)のページで、その一部を見ることができる。ここで認められている負イオンの効果は「集塵効果」である。以下にその結論を引用し、翻訳しておく。

負の空気イオン化は空中に浮遊する微生物の濃度を減少させる可能性がある。その効果は、生物的エアロゾルや微生物の付着した塵粒子のイオン化により、その沈降が加速されるためと思われる。沈着は一般にイオン化装置近傍の水平な面(特に金属表面)において起こる傾向にある。イオン化は凝集を促進し、小さな粒子から大きな粒子を作り出し、沈降速度を速めているようだ。イオン化された粒子とアースされた表面との引力も生じているらしい。

つまり、荷電した塵の粒子が凝集すると、重くなって下に落ちるという理屈だ。ただし、負電荷ばかりだとクーロン反発によって凝集は促進されそうもないので、この場合、プラスとマイナスイオンの両方があったほうがよさそうな気がする。

家禽屋におけるNewcastle病の予防に利用すると経済的であるという論文がある。(文献12) ニワトリなどを飼っている小屋では埃っぽくなりやすく、細菌が付着した塵を沈降させると予防効果があるらしい。また、歯科医院における研究では、イオン化により空中に浮遊している微生物の量が32〜52%削減したとのこと。(文献13) また、垂直に置かれたプレートよりも水平におかれたもののほうから、多くの微生物を回収することができたので、荷電粒子の沈降を強く支持する結果となった。

マイナスイオン発生器の「集塵効果」は大阪大学サイバーメディアセンターの菊池誠教授のブログでも議論されている。(文献14) 菊池教授は『コロナ放電は集塵や除電には使えるので、「マイナスイオン」という言葉を使うことの是非は別として、「コロナ放電式マイナスイオン発生器」に集塵や除電の効果はあってよいはずです』と述べている。

「忘却からの帰還」の「Negative Air Ion」関連エントリ

トルマリン

水商売ウォッチング

マイナスイオンブームに付随してトルマリンも売られていたが、マイナスイオンがトルマリンから発生するという根拠はない。また、微弱な電流を常に発しているということもない。トルマリンに関してはお茶大の「水商売ウォッチング」内の「マイナスイオン関連」のページが詳しい。

ここでは電気石(トルマリン)に関する「電気石が作る水の界面活性」(文献16)という論文に対する批判的解説を読むことができる。この論文は、静電現象と電池などの電源とを混同するという初歩的な間違いを犯したらしい。水の電気分解を考えるのではなく、電気石から成分の一部が溶出したと考えても十分説明できるし、その方がずっと妥当だろうと結論している。

ここではトルマリンにも色々種類があり、焦電性も異なるということが書いてある。一般に売られている黒色のトルマリンは宝石としての価値が低いうえ、焦電性も低い可能性が指摘されている。焦電性によりマイナスイオンが発生しているというのであれば、ちゃんと焦電性を測定して品質管理して販売するべきであると結論している。

今更トルマリン

「新商品のシャワーヘッドは、鉱石のトルマリンの作用で水を通せば殺菌できる」。こんなメーカーのうたい文句を紹介した朝日新聞の記事に、ネット上で疑問や批判の声が相次いでいる。

記事では、福岡県のあるメーカーが開発したシャワーヘッドが紹介されている。この商品では、「ヘッドの内部に鉱石の『トルマリン』が組み込まれている。同社によると、通った水が電気分解される」などとして、レジオネラ菌などを殺菌や滅菌するとメーカー側は説明したとしている。ヘッド内では、気泡や衝撃波も発生し、薬剤を使わずに細菌を破壊できるともいう。価格は、税別で8800円となっている。

一般財団法人「東京顕微鏡院」では、取材に対し、この商品の検査を14年12月に行ったことを営業部の担当者が認めたうえで、次のように説明する。

 

「レジオネラ属菌の何種類かでヘッドの通過試験をしましたが、殺菌効果については確かめていません。通過した後の水に含まれる菌が最初に添加したときより多いかどうかの結果は出しますが、こちらでは、その評価はしないことになっています。メーカー側がそのデータを見て、自社の判断で効果があったと公表されたのだと思います」

朝日の記事については、検査で効果が確かめられたとも読めるとして、「困惑しているところです」と漏らす。そのうえで、東京顕微鏡院のホームページ上で近く、シャワーヘッドの殺菌効果について「評価したものではない」との告知を載せることを明らかにした。朝日側とはまだ連絡を取っていないというが、状況によっては何らかの対応を検討するともしている。

朝日新聞社の広報部では、記事の記述については、「様々なご指摘をいただいておりますので、適切に対処してまいります」とコメントした。また、「シャワーヘッドを通した水に一定の殺菌・滅菌効果が見られたことは、東京顕微鏡院の検査で客観的に裏付けられたと聞いています。東京顕微鏡院から抗議はありません」ともした。

今更トルマリンかよ!という感じが強いが、こんなつまらない時代遅れトンデモ記事で大炎上するのも珍しい。とにかく朝日新聞だから叩きたいという人がだいぶ混じっているんぢゃなかろうか?

大熊社長によると、ヘッドに組み込んだのはフロー工業製の「フローペレット(トルマリンペレット)」で、3mm程度の粒子状にしたトルマリンにシリカ・アルミナ・特殊ガラスを組み合わせてセラミック化したものだという。大熊社長は「水に触れただけで電気分解の効果は起きるわけではないが、ヘッド内で水流を起こし、キャビテーション(水流で気泡が発生する現象)の原理を組み合わせることで殺菌効果が生じる」と説明している。当機構では科学的根拠の正当性や効果の有無までは判断できない。大熊氏は「新商品の効果には自信があるが、多くの方から疑問を持たれてしまった以上、新商品の発売は当面見送ることにした」と話している。

なぜか発売見送り、どういうわけか、今回は珍しくニセ科学批判の大勝利に終わった? なんでだろう?

漬物容器にタウマリン鉱石

 乳酸菌が増殖し1時間で漬物が出来上がるなどとうたった漬物容器の広告に根拠がないとして、消費者庁は27日、通信販売会社「アクセルクリエィション」(東京都中央区)に対し、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止を求める措置命令を出した。

 消費者庁によると、同社は「浅漬け名人『菜漬器(さいしき)』」と称した漬物容器を、テレビショッピング番組や自社のサイトで販売。「容器に含まれるタウマリン鉱石が遠赤外線を放出することで乳酸菌が6倍以上に増え、1時間ほどで漬けられる」と表示したが、実証データなど合理的な根拠はなかった。

【不具合の内容】

株式会社アクセルクリエィションは、同社が販売した下記の家庭用漬物器において、テレビショッピング番組、ウェブサイト、カタログの表現が消費者に優良と誤認させる内容となっていた為、消費者庁からの措置命令を受けたとして、お詫びとお知らせを発表した。

対象製品の主原料である「タウマリン鉱石」が放出する遠赤外線によって乳酸菌が短時間で著しく増殖し、これにより発酵が促進され、漬物が1時間で出来上がるかのように示す表示をしていたとのこと。

 

「措置命令の内容」

・消費者庁長官の承認する方法にて、一般消費者に周知徹底する。

・今後、本商品又はこれと同種の取引に関し、同様の表示が行われないよう、必要な措置を講じ、社内において周知徹底する。

・今後、本商品又はこれと同種の取引に関し、合理的な根拠を有することなく同様の表示をしない。

 

【対象製品】

製品名:浅漬け名人 菜漬器

「水は変わる」がお茶大を提訴

水は変わる」というサイトを運営する吉岡英介氏(マグローブ株式会社代表取締役会長)が御茶ノ水女子大学を神戸地裁に提訴するという事態が発生した。(第一回期日は2007年7月17日) 同大学富永研究室のHPに設置されたゲストブック兼掲示板に、マグローブ社と吉岡氏個人の名誉を傷つける匿名の投稿が本年2月になされたため、弁護士を通じてお茶大にその削除を要求した。ところが、お茶大がその削除を拒否したため、吉岡氏個人を原告として、その記述の削除を求めてお茶大を提訴し、6月7日に同地裁にて訴状が受理されたとのこと。この件に関しては「水は変わる」のお茶大提訴問題を参照。

吉岡氏との過去のやりとり

吉岡氏は2002年に「市民のための環境学ガイド」のマイナスイオン批判に対して反論したことがあり、その時のやり取りを以下のページで見ることができる。

吉岡氏は2003年に「水商売ウォッチング」にも反論メールを送っており、その時のやりとりは、以下のページで読むことができる。

吉岡氏はこれ以外にも、「水は変わる」において、いわゆる「ニセ科学批判」を行っている大学や研究所の職員をことごとく批判している。吉岡氏の槍玉に挙がっているのは以下の人たちである。

  • 大阪大学サイバーメディアセンター 教授 菊池誠
  • 学習院大学理学部物理学科 教授 田崎晴明
  • 京都女子大学現代社会学部 教授 小波秀雄
  • 同志社女子大学現代社会学部 教授 左巻健男
  • 独立行政法人産業技術総合研究所 柘植明

さらに、マイナスイオンや磁気活水だけでなく、血液型性格判断や「水は答えを知っている」、911同時多発テロ陰謀説についても肯定的な意見を述べて擁護している。

マイナスイオン観光マップ

 「体によい」などと紹介される一方、その根拠があいまいとの批判も多いマイナスイオンについて、八戸大学は今月、3年間続けてきた測定の実習を中止した。大学は「商業用語と科学を混同していた。反省を教育に生かしたい」としている。

 マイナスイオンは、一般に空気中の電気を帯びた物質を指すとされ、インターネットには「自然治癒力を上昇させる」とか、「血液サラサラに」などの説明が多い。2000年前後には、効果をうたう家電製品も多く販売された。

 一方、科学理解を養う科学リテラシーの講義を持つ山形大の天羽優子准教授によると、マイナスイオンという言葉は科学用語に存在せず、健康効果を示す科学論文もほとんど無い。立証されない効果をうたう商品・商法には批判も多く、公正取引委員会から効果をうたうことを禁じる排除命令をうけた商品もある。

 八戸大は三つの高校とともに10年から十和田市の奥入瀬渓流で、市販の測定器を使ったマイナスイオン測定を開始。結果を健康効果の説明と併せ、ネットやパンフレットで紹介してきた。これまで5回、測定会を開き、のべ36人の高校・大学生が参加した。

 大学の担当者は「インターネットなどを使った観光PRの手法を学んでもらう目的だった」と話す。

 10月末、測定会を報じた新聞記事が科学者の間で話題になり、天羽准教授は「効果のはっきりしないものを確定したもののように教えるのは問題」と、電話で八戸大に伝えたという。

 大学は2日、ホームページに「マイナスイオンは明確な定義の無い用語。実習で使ったことをおわびする」との学長名の声明を掲載、実習中止を表明した。今後、参加した学生にも説明するという。

 担当者は「恥ずかしいことだが、当初の検討が不十分で、あいまいなマーケティング用語に踊らされた。学生が同じような失敗をしないように授業などで伝えていきたい」と話す。

(長野剛)

 八戸大などは、十和田八幡平国立公園・奥入瀬渓流のマイナスイオン発生状況をまとめた、観光マップの改訂版の作製に取り組んでいる。19、20の両日は学生らが、雲井の滝など渓流の名所を訪ね、専用の計測器で数値を測定した。

 現行のマップは2009、10年度に作製した。今回は高校生の感性も取り入れようと、光星学院高校と、青森県立十和田西高校観光科の生徒も加え、6人編成でフィールドワークに臨んだ。

 一行は十和田湖畔子ノ口から遊歩道を散策し、滝や流れなどの人気スポットでマイナスイオンの数値を計測、動画も撮影した。

 改訂版は12年度中に完成させ、ホームページなどで公表する予定だ。フェイスブックなどソーシャルメディアにも対応する。(工藤文一)

プラズマクラスターやナノイーイオン

プラズマクラスターやナノイーイオンについては「プラズマクラスター・ナノイーイオン」を参照。

その他

空気清浄機のイオンやオゾン機能の効果を疑問視

 空気清浄機や室内空気に関する正しい情報の発信を目的とした有識者団体「室内空気向上委員会」は、18日、空気清浄機に関するセミナー「今の空気清浄機は、本当に空気を清浄にしているか?」を、報道関係者向けに開催。この中で、同委員会のメンバーである日本大学 理工学部 建築学科教授の池田耕一教授が、イオンやオゾンなどを放出し空気清浄を謳う機器に対し、否定的な見解を示した。

 「イオンやオゾンなどといったものの中には、空気中に飛んでいる菌や細菌、ウイルスなど微生物を殺すと謳われたものがある。確かにイオンが目的のものにうまく当たれば除去できるかもしれないが、部屋じゅうにたくさんいる微生物すべてに当てるほどイオンやオゾンを出すのであれば、人間も殺すことになる。でも人間が死なないということは、“効果がない”と考えるのが普通ではないか」(池田教授)

ちょっとこの話はピンとこない。人間が死ぬほどの量がないと細菌が死なない、というのは変。致死量は生物種によって異なるだろうから。もっと定量的な議論が必要。

空気中のイオン密度測定方法 JIS規格の制定

平成18年11月20日に「空気中のイオン密度測定方法」が財団法人日本規格協会よりJIS規格(規格番号: JISB9929)として制定された。詳しい規格の内容はJIS検索で検索することができる。この規格は、日本機能性イオン協会の測定法をモデルとして審議されたものらしい。

平成18年11月の東京都の調査

平成18年11月27日付けの報道資料によると、東京都生活文化局では、「マイナスイオンをうたった商品」のインターネット広告について、不当景品類及び不当表示防止法の観点から調査を実施し、表示に関する科学的視点からの検証を行った。
報道発表資料
科学的根拠をうたったネット広告にご注意! "「マイナスイオン商品」表示を科学的視点から検証しました"」 [2006年11月掲載] (同様な文章は東京くらしWEBのサイトの「くらしと表示」のお知らせでも読むことができる)
詳細はこちらを御覧ください。
「マイナスイオンをうたう商品」の表示に関する科学的視点からの検証について』(pdfファイル)

調査検証結果の概要を以下に引用しておく。

(1)マイナスイオンの発生量に関する表示は、当該商品若しくは当該商品の使用実態に即したものではなく、客観的に実証されたものとは認められなかった。

(2)「ホコリや花粉を除去する」「疲労を回復させる」など様々な効果・性能について、提出された資料は、発生するマイナスイオンとの関連性が不明確であり、これら表示内容は、実証された客観的な根拠に基づくものとは認められなかった。

(3)インターネットを利用した販売事業者の中には、取扱商品に関する十分な情報や表示の根拠を持たないまま、表示を行っているものがあった。

毎日新聞「理系白書’07」の記事

毎日新聞の「理系白書’07:第1部 科学と非科学」の4回目に『効果未確認の「マイナスイオン」』としてマイナスイオン関連の記事が掲載された。(2007年2月21日 東京朝刊) この記事には「環境・還元イオン医学研究所」の堀口昇会長が登場しているが、2000年12月2日放送の「発掘!あるある大事典」(第210回)『静電気』でマイナスイオンに関するコメントをしていた人物でもある。堀口氏は自ら開発したマイナスイオン発生装置の仕組みを、電圧をかけるとマイナスイオンが発生する軽石の粉末が詰まったプラスチック製の小箱だと説明している。「これは地球内部と同じ現象を再現している」と堀口氏は述べているが、地球は軽石ばかりでできているわけではないので、この発言は意味不明。「いろんな科学者がここへ来たが、原理が分かった人は一人もいない」とも述べている。

堀口氏がかかわる医療機器メーカー「セルミ医療器」は4年前、未承認の医療機器である「マイナスイオン治療器」を製造・販売したことにより、薬事法違反で業務停止処分を受けた。この事件に関しては、「疑似科学批判」内「マイナスイオン批評特集」の「セルミ医療器(堀口昇 代表)、 薬事法違反で業務停止処分」(2003-08-30)のページが詳しいようだ。しかし、その2カ月後、この装置はほぼ同じ機能で「電位治療器」として承認を受けているとのこと。

さらにこの記事では、かつてブームに乗りマイナスイオン商品を販売した大手電機メーカーの現在のスタンスを知ることができる。(以下引用)

  • 松下電器産業の広報担当者は「集じん効率向上など、家電に搭載した効果・効能は実証済み」とした上で「最盛期には『マイナスイオン付きでないものは家電じゃない』と言われた。今は痛しかゆしのところがある」と打ち明けた。
  • 02年にマイナスイオン発生器搭載のパソコンを発売した日立製作所は「『リフレッシュ効果がある』とPRしたが、その実証性が薄いままブームに乗った。研究開発型企業としての責任感が欠如していた。反省している」(広報部)と振り返る。
  • 堀口氏と共同でマイナスイオン発生システムを開発した東芝キヤリアは「今はもうやっていない」と取材を拒んだ。

参考文献

  1. 教養ドキュメントファンクラブ』内の「発掘あるある大事典」のページ
  2. 発掘?あるあるトンデモ大実験』内の「マイナスイオン(1/27放送)」のページ
  3. ハインズ博士「超科学」をきる −真の科学とニセの科学をわけるもの−」 テレンス・ハインズ著,東京化学同人
  4. 疑似科学批判』内の「マイナスイオン批評特集」のページ
  5. ウィキペディアのマイナスイオンの項目
  6. Negative Air Ionization」 Penn State College of Engineeringの「室内環境センター」のサイト中の「空中病原体制御技術」(Airborne Pathogen Control Technologies)のページ
  7. Biological Impact of Small Air Ions」 Krueger, A. P. and E. J. Reed (1976). Science 193(Sep): 1209-1213.
  8. Effects of Atomospheric Electricity on Some Substrates of Disordered Social Behavior」 Charry, J., and Hawkinshire, F. Journal of Personality and Social Psychology, 41, 185-197 (1981)
  9. Geophysical Variables and Behavior: XXXVIII. Effects of Ionized Air on the Performance of a Vigilance Task」 Brown, G., and Kirk, R. Perceptual and Motor Skills, 64, 951-62 (1987)
  10. Negative Air Ion Effects on Human Performance and Physiological Condition」 Buckalew, L., and Rizzuto, A. Aviation, Space, and Environmental Medicine, 55, 731-734 (1984)
  11. Effects of Negative Ions on Cognitive Performance」 Baron, R. Journal of Applied Phychology, 72, 131-137 (1987)
  12. Effect of negative air ionization on airborne transmission of newcastle disease virus」 Mitchell, B. W. Avian Diseases 38: 725-732 (1994)
  13. Effect of ionization on microbial air pollution in the dental clinic」 Gabbay, J. Environ. Res. 52(1) 99 (1990)
  14. kikulogの「マイナスイオン補足」 2006/12/24
  15. Uber die Electricitat der Wasserfalle」 Philipp Lenard, Annalen der Physik und Chemie, Volume 282, Issue 8 , Pages 584-636 (1892)
  16. 「電気石が作る水の界面活性」 久保哲次郎、固体物理 vol.24, No.12 (1989) 1055-1060 この論文はマイナスイオン専門サイト「イオントレーディング」の「電気石が作る水の界面活性」で見ることができる。 
  17. 効果あるの? イマイチ信用できないもの「マイナスイオン」「パワーストーン」「ホメオパシー」」 2010.08.25 18:00:18 by ソル、ガジェット通信