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ヨウ素 (東日本大震災)

東日本大震災・デマ・風評被害・陰謀論


 忘れてはいけないのは、安定ヨウ素剤は被曝の万能薬ではないことだ。セシウムなど、ヨウ素以外の放射性物質による体への影響は防げない。ヨウ素過敏症など、服用できない人もいる。吐き気や下痢などの副作用も報告されており、避難時に1回のみ服用することになっている。

 

 ヨウ素の入ったうがい薬や消毒薬に予防効果があると誤解されているが、効果がないばかりか、飲むと体に有害な成分が含まれている恐れもある。ワカメや昆布にもヨウ素は含まれているが、含有量が一定ではなく、十分な効果は得られない。(吉田昌史、本間雅江) 

うがい薬について

・うがい薬などの市販品は内服薬ではありません。これにはヨウ素以外の成分が多く含まれ、体に有害な作用を及ぼす可能性のある物質も含まれます。

・たとえ飲んだとしても、ヨウ素含有量が少なく、放射性ヨウ素が集まるのを抑制する効果がありません。

うがい薬として有名な「イソジンガーグル」の主成分は、「ポビドンヨード」(povidone iodine)である。中毒データベース検索システムの「ポビドンヨード(うがい薬)」の項目も参照。消毒液の「ヨードチンキ」は、ヨウ素ヨウ化カリウムを含む70%エタノール混合溶液である。その副作用や致死量などに関しては、丸石製薬(株)の「ヨードチンキ、希ヨードチンキ」を参照。

沸点について

ヨウ素やセシウムの沸点については、専門家の間でも混乱が見られる。

Q 煮沸したら放射性物質を飛ばせるのか

 

A ヨウ素の沸点は約184度。100度近くにまで温度が上がると多少は飛びやすくなる。セシウムの沸点は600度以上。水を沸騰させても意味はない

このQ&Aに書かれてあることは、あまり参考にはならない。まず、約184度というのは純粋なヨウ素の沸点であって、ヨウ素がどのような化合物として水に溶けているか不明な場合は、その沸点も不明である。単体の(純粋な)ヨウ素の水への溶解度は極めて低いため、イオンとして溶けている可能性もある。

また、純粋なセシウムの沸点は約678℃であるが、セシウムは反応性が高く、常温でも空気中でただちに酸化される。また、水とも爆発的に反応して水素を発生し、水酸化セシウムとなる。よって、セシウムが純粋な状態で、大気中や水中に存在するとは考えられない。

Q 浄水器や煮沸は効果があるの?

 

A 浄水場では活性炭で放射性物質を減らしているが、家庭用浄水器でも減らせるという確実な証拠はない。煮沸についてはかえって放射性物質の濃度が上がるのでよくないという専門家もいる。

また、東大病院放射線治療チーム(@team_nakagawa)はTwitter(3月24日)で次のように述べている。

ある方にお願いして、煮沸によるヨウ素の濃度変化を検証する実験を、水道水中に含まれるI-131を対象に行いました。その結果、水道水を煮沸すればするほど水蒸気だけが飛んで、I-131が濃縮されました。もし、煮沸しようとされている方がいれば、直ちにやめるようお伝え願います。

いづれにせよ、農作物の放射線基準値はきわめて厳格に決められているので、基準値以下の場合は、よほど煮詰めなければ大丈夫だろう。(ヨウ素化合物がまったく飛ばないと仮定すると、半分に煮詰めれば濃度は約2倍になる) また、逆に蒸留すれば、ヨウ素を取り除けるかもしれないが、詳細は今のところ不明である。

なお、原子力百科事典ATOMICAの「ヨウ素モニタ (09-04-03-10)」の項目によると、空気中に浮遊する放射性ヨウ素は、種々の原因によって物理化学形態の異なった形で存在し、元素状ヨウ素(I2)、次亜ヨウ素酸(HOI)、ヨウ化メチル(CH3I)および粉塵にヨウ素が吸着した粒子状ヨウ素の、4種類のヨウ素種で代表されることが多いとのこと。

また、文献1のp.30によると、ヨウ素は反応性の高い元素であるため、同じ核分裂生成物として多量に存在するセシウムと化合して、ヨウ化セシウムとなり、水に溶け込むとのこと。「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」の36ページにも『燃料ペレットから放出されたヨウ素やセシウムは、格納容器の外部へと拡散し、マイクロメートルサイズのヨウ化セシウムの微粒子の形態で大気中を拡散したと見られている』との記述がある。

浄水器

この記事によると、浄水器協会の事務局長は以下のように述べている。

  • 「そもそも水道水に入っている前提がないので、試験の方法はなく、データもありません」
  • 「活性炭でヨウ素が取れる、という予測を立てることはできます」

問い合わせには、「放射性物質には対応していません」と答えるしかなく、セシウム137については「活性炭では取れません」とのこと。

ただし、中空糸膜はある程度はろ過できるかもしれない、逆浸透膜付きのRO浄水器なら確実に取れる可能性があるとのこと。

韓国メーカーのコーウェイでは、ほぼ純水になるというRO浄水器を取り扱っており、ウランやラジウムについては、99%ろ過できるとのデータがあるが、ヨウ素やセシウムについてのデータはない、とのこと。

以下のリンクも参照。

逆浸透膜ろ過については以下のページを参照。

【弊社の見解】

 

今回の測定に用いた原水には、最大値で暫定規制値の2倍の放射性ヨウ素131(600Bq/kg)と、暫定規制値を下回る放射性セシウム(32Bq/kg)が含まれていましたが、ECOAでろ過した試料からはいずれの放射性物質も検出されませんでした。ECOAによって最適に制御された原水の水圧と水流が逆浸透膜(RO)のろ過機能を効果的に引き出し、放射性ヨウ素と放射性セシウムの除去に著しい効果があったと考えられます。

半減期の間違った解釈

ただ、ヨウ素131の半減期はもう過ぎているので、問題にする必要がない。

なぜか、政府まで勘違いしてるので、繰り返し書くが、今飛んでいる放射性ヨウ素(ヨウ素131)は、福島第一原発が臨界中、つまり通常運転していた時に核分裂でそれまでに生成されたもの。地震と同時に全ての発電機は停止、つまり臨界状態ではないので、その後ヨウ素131は生成されてはいない。だから、漏れたヨウ素131は既に半減期を超えており、放射線量は指数関数的に一気に下がっているので、昨日の計測で基準値を数倍というレベル越えて検出されたとしても、流通して皆さんが口にする頃には、基準値以下までベータ崩壊は進んでいるはずだ。

上記の苫米地英人氏による寄稿記事はデタラメなので、決して相手にしてはいけない。半減期の解釈が間違っている。半減期は賞味期限ではない。

半減期とは、放射性物質の量が半分に減る時間のことであり、物質によって異なる。放射性物質は、核分裂により放射線を放出して崩壊し、別の安定物質に変化する。よって、事故が起こってからの日数ではなく、実際のそのときの放射線量で、その危険度を判断しなくてはならない。たとえば、基準値の100倍の濃度のヨウ素131があったとすると、その濃度は8日後には基準値の50倍になるだけである。16日後には25倍、24日後でもまだ12.5倍もある。

もしその段階でまだ基準値を超えていたとしても、摂取後体内でも指数関数的に放射線量はどんどん下がる。

さらにこの発想は間違っているだけでなく、危険である。体内に取り込んだ放射性物質は崩壊する際に、放射線を放射する。つまり、内部被曝してしまう可能性がある。苫米地氏の言うことを決して信用してはいけない。「原発業界御用学者リスト@ウィキ」においてさえ、苫米地英人氏は「無知っぽい学者・文化人」に分類されちゃっていたりなんかする。

なお、苫米地氏は自著「[あなたは常識に洗脳されている|]http://www.amazon.co.jp/dp/4479792996」(大和書房 (2010/8/21))の中で、『東京都内の酸素濃度は、13%くらいしかない可能性さえあります』と書いたこともあるが、これはあり得ない。人間は酸素濃度18%未満だと酸素欠乏症になる危険がある。以下のエントリを参照。

苫米地氏は科学的知識に乏しいと考えられるので、こういうことに関しては、その言説を信用しないほうがいい。なお、苫米地氏は以下のエントリによると「緊縛」について、ちょっとは詳しいようだ。

また、読売新聞2011年3月26日30面の「魚介類ほとんど蓄積せず」という記事を見てみたら、「ヨウ素131は放射線を出す能力(放射能)が8日で半減する」と書いてあったが、これも誤解を招きやすい表現。半減するのはヨウ素131の量であって、その能力ではない

何日前のヨウ素131だろうと、その放射能は変わっていないわけで、多量にあれば危険であることに変わりはない。あくまで放射線量で判断するべきである。

奥州市で検出された放射性ヨウ素

脱水汚泥ケーキより検出された放射性ヨウ素131については、有識者の見解等により放射性セシウムが高い値を示していないことから、福島原子力発電所事故の影響によるものではなく、放射性ヨウ素131を使用した医療行為を受けた患者さんから、排出されたことが原因ではないかと考えております。

この騒動の発端は以下のzakzakの記事のようだ。

上記の記事によると、岩手県奥州市だけでなく、東京都の東部スラッジプラント(江東区新砂)や清瀬水再生センター(清瀬市下宿)でもヨウ素131の濃度が上がり、150ベクレルを記録したらしい。

これについては以下のTogetterを参照

以下も参照。

要約すると、福一原発が発生源だとすると、下水道だけではなくそれ以外の広範囲で観測されないといけない、ヨウ素だけでなくセシウムも上昇しなくてはならない、などといったことから、医療用の放射性ヨウ素である可能性が高い。

ヨウ素131を大量投与された場合、数日間仕事を休まなくてはならないため、八月下旬という休みを取りやすい時期に治療を受ける人が集中したため、全国の下水で検出されたと考えることができる。

上記のブログエントリのように、セシウムはヨウ素と比べ、半減期が長いので、3月に放出されたヨウ素が100万分の1以下になっていても、セシウムの量はほとんど変わっておらず、新たに原子炉からの放出があった場合、セシウムよりもヨウ素のほうが増加量を容易に検出できる、という考察もできる。

しかしこれでは、なぜ下水道だけからしか検出されないのか、ということの説明にはなっていない。

上記のサイトは、きちんと調査をしなければ真相は誰にもわからない、という立場。

上記のブログでは、奥州市で放射線取扱を行う2つの病院、胆沢病院と水沢病院に電話連絡をし、法定基準以上の放射性物質の放出がないことを確認している。

しかし、市内の病院のみに確認しても、市外で日帰り治療を受けた患者が奥州市に戻ってきた可能性は否定できない。

アイソトープ治療については以下のリンクも参照。

その他

甲状腺被ばく87ミリシーベルトも」 

NHKニュース, 2012年3月9日 11時42分

東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、青森県の弘前大学の調査チームが福島県内の住民65人の甲状腺を調べたところ、およそ80%の人から放射性ヨウ素が検出され、甲状腺への被ばく量は最も多い人で87ミリシーベルトだったことが分かりました。

弘前大学被ばく医療総合研究所の調査チームは、去年4月、福島県浪江町の住民や、福島県浜通りから福島市に避難していた、合わせて65人を対象に甲状腺の検査を行いました。

その結果、およそ80%に当たる50人から放射性ヨウ素が検出されたということです。

そして、事故直後の3月12日に放射性ヨウ素を吸い込んだと仮定して、甲状腺への被ばく量を計算したところ、5人が、健康への影響を考慮し予防策をとる必要があるとされる国際的な目安の50ミリシーベルトを超えていたということです。

甲状腺への被ばく量が最も多かったのは、原発事故のあとも浪江町津島地区で2週間以上生活していた成人で、87ミリシーベルトでした。

一方、住民のおよそ半数は10ミリシーベルト以下でした。

調査チームでは、今後、検査を行った住民に対し結果を報告することにしています。

今回の結果について、調査チームの床次眞司教授は「事故の規模からすると住民の被ばくの程度は低いと言えるが、潜在的なリスクを抱えた住民もいると考えられるので、今後も継続的な健康調査を確実に行う必要がある」と話しています。

ヨーロッパ各地でのヨウ素検出(2011年10月下旬)

その他

 弘前大被ばく医療総合研究所の床次真司教授(放射線物理学)らの研究グループは、福島第1原発事故直後に福島県内で行った放射性ヨウ素の測定結果について「大気中濃度は最大でも1立方メートル当たり約10ミリベクレルと低く、吸入による被ばくは無視できる」と発表した。26日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。

 研究グループは2011年3月17〜19日、福島、郡山、いわき市と川俣町の4カ所で、大気中に浮遊する放射性物質のヨウ素131、セシウム134、セシウム137を測定した。

 このうち甲状腺がんの原因となるヨウ素の濃度は、いずれも1立方メートル当たりの平均値で、いわき市約10ミリベクレル、福島市約3ミリベクレル、郡山市約2ミリベクレルだった。川俣町は検出限界を下回った。床次教授は「全てミリ単位であり、被ばく線量も小さいと考えられる。人体に影響を与えるほどではない」と分析した。

 研究グループは、表層土壌と植物、水に含まれる放射性物質についても宮城、福島両県の9市町11カ所(宮城県丸森町、福島、郡山、いわき市など)で測定。被ばく線量推定の指標として、セシウムに対するヨウ素の割合「ヨウ素セシウム比」を出すとほぼ6〜9の範囲内だったが、原発南側のいわき市だけ50〜60程度と高い値となった。

 床次教授は「事故直後、南方に流れた放射性物質を含む雲(放射性プルーム)の組成や性質が、北西方向のプルームとは明らかに違うことを示すデータだ。今後、南部地域の住民の被ばく線量を推定する際の手掛かりになる」と語った。


引用文献

  1. 原子力発電の諸問題」 日本物理学会編、東海大学出版、1988年