リン・マクタガート (Lynne McTaggart)
ニューエイジ系の啓蒙書「フィールド 響きあう生命・意識・宇宙」の著者であるジャーナリスト。マクタガートは現在、人間の意志が物質に及ぼす影響についての検証実験を、インターネットを通じて行っている。「The Intention Experiment」(意志の実験)というサイトで数万人のボランティアを募り、この種の実験としては史上最大規模のものを目指している。彼女の科学者チームには、ドイツのニースにある生物物理国際研究所のFritz-Albert Popp博士、アリゾナ大学のGary Schwartz博士、Marilyn Schlitz博士、そしてディーン・ラディン博士らが参加している。
なお、この実験に参加するには彼女の著書「The Intention Experiment」(彼女のサイトと同じ題名)を購入しないといけない。(パスワードが毎回必要になる。そのパスワードはこの本の中から出題される)
実験内容については「About The Experiments」で見ることができる。将来的に実施することを目指しているのは、つぎのような実験だそうな。
- ミニガイア計画: 人工的に温度を上げた「ミニガイア」と呼ばれる封鎖空間に参加者の意志をある時刻に集中させ、その温度を下げることができるかどうか検証しようというもの。(どうやらこれは地球温暖化対策の研究らしい……)
- 発芽実験: 人間の意志で大麦の発芽を早めて、健康的に育てることができるか?
- 水の実験: 汚染された水のpHを変えることができるか?
- 人間の感覚の実験: 世界中の数千人の人が送った意志を、身体のいろいろな部分で感じることができるか?
- 犯罪率の実験: 大都市の犯罪率を意志の力で下げることができるか?
- 病院における実験: 病院における死亡率を下げることができるか?
- 意志の不足に関する研究: 子供の集中力を高めることができるか?
すでに終了し解析がすんだ実験結果については「The thoughts heard ‘round the world」で見ることができるが、生データは一切公開されていない。
最初のパイロットテストは、ドイツのPoppの研究所に置かれた4つのターゲットに対して、ロンドンの15人の黙想家(別のページには16人と書いてある)がポジティブな意志を送った。4つのターゲットは、二種類の藻類、ベンケイソウ、そして人間のボランティアであった。10分間隔で意志の送信のオンオフが切り替えられ、バイオフォトンの検出が行われた。Poppらが検証した結果、バイオフォトンの発生にはかなりの異常があったとのこと。
最初の大規模実験は、2007年3月11日にロンドンで開催された会合で行われた。400人の参加者が意志を集中させることで、アリゾナ大学に置かれたゼラニウムの葉をバイオフォトンで「輝かせた」そうな。2007年3月24日にはインターネットを利用し、この実験の再現が行われる予定だったが、約一万人の人がアクセスしようとしたためサーバーがダウンしてしまった。
4月14日には2度目のウェブ実験がサヤインゲンの豆をターゲットとして行われ、今回も意志により「光らせる」ことを目的とした。7000人近くの人が参加し、強い「発光効果」が観測されたが、「輝いた」豆の数が少なかったので、統計的に有為な結果ではなかった。
「フィールド 響きあう生命・意識・宇宙」の書評
この本に対する書評が日本超心理学会の月例会(2005年6月26日(日曜))で読めるが、その結論は次のようなものらしい。
全体として語りたいことに共感を抱かないことはないし、個々の真摯な研究は尊重すべきであるとも思う。しかし、ZPFという概念で結びつけようとした本書の試みは、それが物理的に一定の具体性をもつだけにかなり無理がある。さらに、物理学の門外漢を、あたかも物理学的な裏づけがあるかのように錯覚させる、かなり問題をはらむ著作である。
ここで、ZPFとは「ゼロ・ポイント・フィールド」のことである。
この本には超能力に否定的な情報は掲載されていない。例えば、宇宙飛行士エドガー・ミッチェルが行なったアポロ14号のテレパシー実験は「3000分の1の確率で成功した」としか述べられていない。また、ラッセル・ターグとハロルド・パソフのリモート・ビューイングの研究は大きく取り上げられているが、彼らがユリ・ゲラーの研究も行っていたことはなぜか触れられていない。
当然のことだが、コートニー・ブラウンがリモート・ビューイングにより、火星人やグレイ型宇宙人に会ったという話は登場しないし、ブラウンがヘールボップ彗星に宇宙船がついて来たと主張したことが、UFOカルト「ヘヴンズゲート」の集団自殺の一因になったという話も登場しない。ホメオパシーを科学的に証明したというジャック・ベンベニスト博士は「イグノーベル賞」を史上初めて2回受賞したということも述べられていない。(「「水の記憶」事件」を参照)
なお、超能力を研究するプリンストン変則工学研究所(PEAR)は、2007年に閉鎖が決定している。この研究所のおもな成果は、「人間の思考が機械におよぼす影響を調べたが、それは非常に小さく、1万回に2、3回程度である」というものだった。(文献5と6)
参考文献
- 「フィールド 響きあう生命・意識・宇宙」 リン マクタガート (著)、野中 浩一 (翻訳) 、河出書房新社
- 「The Intention Experiment: Using Your Thoughts to Change the Life and the World」 リン マクタガート (著)、Free Pr
- 英語版ウィキペディアのLynne McTaggartの項目
- 「意思の実験」を呼びかけるリン マクタガートのサイト「The Intention Experiment」
- 「The lab that asked the wrong questions」 Lucy Odling-Smee, Nature 446, 10-11 (1 March 2007).
- 「A Princeton Lab on ESP Plans to Close Its Doors」 By BENEDICT CAREY, Published: February 10, 2007, The New York Times.