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江戸しぐさ

江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書)」 原田 実, 講談社 (2014/8/26)

内容紹介

「江戸しぐさ」とは、現実逃避から生まれた架空の伝統である

本書は、「江戸しぐさ」を徹底的に検証したものだ。「江戸しぐさ」は、そのネーミングとは裏腹に、一九八〇年代に芝三光という反骨の知識人によって生み出されたものである。そのため、そこで述べられるマナーは、実際の江戸時代の風俗からかけ離れたものとなっている。芝の没後に繰り広げられた越川禮子を中心とする普及活動、桐山勝の助力による「NPO法人設立」を経て、現在では教育現場で道徳教育の教材として用いられるまでになってしまった。しかし、「江戸しぐさ」は偽史であり、オカルトであり、現実逃避の産物として生み出されたものである。我々は、偽りを子供たちに教えないためにも、「江戸しぐさ」の正体を見極めねばならないのだ。

江戸しぐさの終焉 (星海社新書)」 原田 実, 星海社 (2016/2/26)

内容紹介

日本の教育をむしばんだ「江戸しぐさ」を終わらせるために

「江戸しぐさ」は、芝三光という人物が、一九七〇年代以降に“創作”したマナー集とでもいうべきものである。そのネーミングとは裏腹に、実際の江戸時代の風俗とはまったく関わりがなく、西洋風マナーの焼き直しや、軍国主義教育の残滓まで含んだ紛いものである。その「江戸しぐさ」は今や、芝の系譜を引く普及団体のコントロール下を離れ、文部科学省や学校教育までも汚染してしまった。我々はどうして、この「作られた伝統」の普及を許してしまったのか。果たして、社会の隅々に拡散してしまった「江戸しぐさ」を終わらせることは可能なのか。本書では、「江戸しぐさ」の普及史を辿りつつ、その「終焉」に至る道筋を提示する。

最近の動き

 何かの間違いで、バカなお話が教科書に採用されてしまうこと自体は、よくあるミスのひとつと考えれば、特段に嘆き悲しむべき出来事ではない。ミスは、気づいた時点で、その都度改めて行けば良い。大切なのは、ミスを犯さない完全さではなくて、ミスを改める柔軟さだからだ。

 

 が、ミスが発見されてなお、それが改められないのだとすれば、それは単なるミスではない。ミスよりももっと根の深い、教育にとって死に近い何かの現れだ。

 

 事実関係をめぐる議論は、既に決着している。

 前出の原田実氏による『江戸しぐさの正体』および、その続編として出版された『江戸しぐさの終焉』が、最も代表的な仕事だが、原田氏の一連の活動以外にも、この何年かの間に、各種メディア上で「江戸しぐさ」のインチキさ加減に言及した人の数は少なくない。

 

 一方、「江戸しぐさ」を擁護し、その存在の正しさを立証する目的で書かれた記事は、私の観察範囲の商業誌の中では確認できていない。あるいは、私の知らないメディアで、江戸しぐさの存在を強くアピールする記事が書かれていたのかもしれないが、だとしても、その記事がたいして話題になっていないことはたしかだろう。

 

 要するに、「江戸しぐさ」は、この5年ほどの間に、徹底的かつ全面的にその存在を否定されたのである。

 

 にもかかわらず、小中学校では、いまだにその「江戸しぐさ」を教材としてに、道徳が論じられ、日本の敬うべき伝統が語られ、江戸商人の真心の美しさが喧伝されている。

こうした状況の中、改訂作業を進めるも、差し替えなかったのが文科省だ。ここまで批判が強い、江戸しぐさをなぜ残すのか。担当する教育課程課に聞いてみた。

――江戸しぐさには批判も強い。なんでわざわざ取り上げるのでしょうか?

担当係長「時と場をわきまえて、礼儀ただしく真心をもって接することを考える教材として取り上げています」

――江戸しぐさ自体が創作物だという批判がありますが。

「批判があることは知っていますが、今回の改訂では教材に追加する部分を議論しています。基本的に、既存部分はそれまでと変えていません」

――教材を読むと、江戸しぐさそのものが事実であるとしか読めないように描かれています。批判があることを知っているなら、このような書き方をすべきではないのでは?

「道徳の教材は江戸しぐさの真偽を教えるものではない。正しいか間違っているかではなく、礼儀について考えてもらうのが趣旨だ」

――見直すべきではないでしょうか?

「既存の部分は見直す必要がないと判断している」

――事実でない教材で、礼節を教えるのは根本的にダメなのではないでしょうか。

「繰り返しになるが、道徳の時間は江戸しぐさの真偽を教える時間ではない」

江戸しぐさに関する歴史的資料は何もありません。なぜ何もないかといえば、「江戸っ子大虐殺」があって資料が全て焼き払われ失われたと、NPO法人「江戸しぐさ」理事長 越川禮子さんは説明します。資料は失われたけれども、口頭による伝承だと説明します。

 

歴史学者によれば、そんな虐殺が行われた証拠は何もありません。番組としては、江戸しぐさに関して「疑問がある」という少し大人しいスタンスでしたが。

江戸の人々が身につけていたという、「傘かしげ」「肩引き」などの「江戸しぐさ」……。これらはなんと、80年代以降の創作だった! 批判的検証本『江戸しぐさの正体』以降も行われている検証作業を、可能な限りリアルタイムに近い形でお伝えします!

原田実氏の

「当時の生活ではありえない状況ばかりを想定している」

といった指摘に加えて、「NPO法人江戸しぐさ」が主張する「江戸っ子狩り」や、同法人名誉会長・越川禮子氏の

「史料がないというが、私は学者ではない」

という江戸しぐさ側の反論も合わせて紹介し、「江戸しぐさ」の信憑性に関する疑問を提示しています。

また、ネット上では以前からその存在が疑問視されていたものの、

「アカデミズムの無関心」(原田実氏)

などから一般的には注目されていなかった状況に触れ

「江戸しぐさのようなとんでもない話が一般の人に受け入れられることはないと油断していた」(立正大学・高尾善希非常勤講師)

「文部科学省が歴史的な事実をろくに調べずに道徳教育で江戸しぐさの記述を許した背景には、日本の伝統のように見えれば何でも良いという軽率な考えもあったのではないか」(ジャーナリストの斎藤貴男氏)

といった専門家のコメントも掲載しています。

 「江戸しぐさ」なるものが、小学校の道徳教育や自治体の市民講座でもてはやされている。江戸時代の商人たちが人間関係を円滑にするために培ってきた生活マナーらしいが、その存在を裏付ける史料は存在しておらず、本当の江戸とのつながりは定かではない。歴史研究家は「ニセの歴史」などと指弾する。発信源を探ってみると、その名もずばり、NPO法人「江戸しぐさ」にたどり着く。国や自治体はこの主張に乗っかっていた。 (林啓太)

学校の授業に取り入れられる江戸しぐさ

 「思いやりのある自立した青年に成長してほしい」と、守谷市教育委員会と守谷しぐさ推進委員会(委員長・吉成行夫市立黒内小校長)は、市内の小中学生を対象にした道徳冊子「わたしたちの守谷しぐさ」を作製した。守谷市民としてふさわしい生活行動や立ち居振る舞いを学ぶのが目的で、平成27年度から市内の小中学校で授業に取り入れる

 冊子はA4判で、カラー48ページ。「訪問マナー」や「あいづちしぐさ」「思いやり歩き」といった身近な生活でのマナーに加え、近年、社会問題化している「ネットマナー」など、21項目の「しぐさ」を掲載。各項目ごとに掲載されているイラストは、教諭ら女性2人が描いた。

「ネットマナー」は江戸しぐさとは関係なさそう。

 27年度は1千部を作製し、市内13小中学校に児童・生徒用として各40冊を配布。常勤の全教諭にも配布して、学級活動や道徳の時間で活用する。

「私たちの道徳 小学五・六年生」(文部科学省)がトンデモ本大賞2015受賞

今月25日に東京・新宿ロフトプラスワンで開催された「と学会」のイベントで、「江戸しぐさ」を正面から大マジメに扱ったことで有名な文部科学省発行の道徳教育用教材『私たちの道徳 小学五・六年生』(廣済堂あかつき株式会社)が「トンデモ本大賞2015」を受賞したことが発表され、注目を集めています。

7月25日開催「トンデモ本大賞2015」投票総数76(推定投票率60%前後)で過半数の47票を集め『私たちの道徳 小学五・六年生』が見事大賞を受賞しました。著作権者の文部科学省ならびに下村博文文部科学大臣様、おめでとうございます(すみません、また誤字訂正の上再ツィート;)

私たちの道徳 5・6年(54ページ〜71ページ)」(PDF:3222KB)のp.58, 59を参照。