トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

常温核融合

この項目はちっとも更新していません。

常温核融合」(Cold fusion)の初期の研究(1995年まで)に対する批判は、以下の文献によくまとめられている。まずはこれを読むこと。

1989年3月23日、マーティン・フライシュマン(Martin Fleischmann)教授とスタンレイ・ポンス(Stanley Pons)教授がソルトレーク市で記者会見を開いたのが、いわゆる「常温核融合」(Cold fusion)騒動の始まりであった。彼らは1ワットの入力エネルギーで4ワットのエネルギーが得られ、中性子、トリチウム、ガンマ線が検出されたと発表した。

科学研究の成果が記者会見で最初に公表されるのは異例のことであり、他の科学者は実験条件に関する詳しい情報がなかったため再現実験もうまく行えず、科学界に大きな混乱をもたらした。

彼らの最初の論文が同年4月10日に発表されたが、この論文もかなりいいかげんなものであり、すぐ訂正が出された。また、発表されたのが、核融合とは本来無縁の電気化学に関する専門誌だったため、さらに混乱に拍車をかける形になった。

つづいてブリガム・ヤング大学のスティーブン・ジョーンズ(Steven E. Jones)博士がNature誌に論文を発表した。この論文は極めて低レベルの中性子の発生を報告するものであり、これはエネルギーに換算すると、フライシュマンとポンズが主張した熱の10の12乗分の1に相当するごく微量なものでしかなかった。

つまり、フライシュマン・ポンズの実験結果は常温核融合が新しいエネルギー源になりうるという驚くべきものだったのに対し、ジョーンズの結果は必ずしもそれを支持する結果ではなかった。この2つの実験を同一視して議論すべきではない。

アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)エネルギー研究諮問委員会(ERAB)の常温核融合調査委員会は、1989年10月末に最終報告書をまとめ、常温核融合を否定している。しかし、常温核融合の研究はその後も続けられ、現在にいたっている。

たとえば、大阪大学名誉教授の荒田吉明氏の研究が日本では有名だが、荒田氏は金属工学者であり、核物理学の専門家ではない。

この項目はまだ書きかけです。

最近の常温核融合

アメリカ化学会の会誌に掲載されたので、何事かと思ったら、ランダル・ミルズの話だった。こりゃダメだ。ACSが話題にするような内容ではない

「放射能除去」関連

この項目をちっとも更新しないうちに、「常温核融合で放射能除去」という話が出てきてしまいました。

平野:脱原発に関しては、私から紹介したい技術があるんですよ。昔、似非科学といわれた低温核融合が、実証実験で成功しつつあるんです。セシウム137の半減期は30年なんですが、この技術でそれを2か月ぐらいに短縮できる可能性がある。核廃棄物を無害化して別のエネルギーに転換できるんです。この1月か2月には学術論文が発表される。だけど、これをいくらマスコミや学者に話しても耳を貸そうとしない。

●平野貞夫(ひらの・さだお):1935年生まれ。衆議院事務局に務めた後、1992年に参議院議員初当選。自民党、新進党、自由党、民主党を渡り歩いた。

ろくな根拠もなしにそういう与太話をすれば、『いくらマスコミや学者に話しても耳を貸そうとしない』というのが当たり前。『この1月か2月には学術論文が発表される』とのことなので、その論文を楽しみに待つとしよう。さてさて、いつになったら、その学術論文は発表されるのやら?

そして、以下のような新聞発表があった。

 三菱重工業は重水素を使い、少ないエネルギーで元素の種類を変える元素変換の基盤技術を確立した。原子炉や大がかりな加速器を使わずに、例えばセシウムは元素番号が4つ多いプラセオジウムに変わることなどを実験で確認した。将来の実証装置設置に向け、実用化研究に入る。放射性セシウムや同ストロンチウムを、無害な非放射性元素に変換する放射性廃棄物の無害化処理に道を開くもので、原発メーカーとして実用化を急ぐ。

 セシウムはプラセオジウムに、ストロンチウムはモリブデン、カルシウムはチタン、タングステンは白金に変わることを確認した。特殊な薄膜に重水素を透過させる独自技術は日本での特許に続き2013年、欧州でも特許を取得した。

とのことで、まさに「現代の錬金術」

 元素変換は「エネルギー収支が合わず、従来の物理学の常識では説明できない」などの指摘がある。新しい元素の量が少なく「外から混入した可能性も完全には排除できない」との声もある。

もちろん上記のような批判もある。

 元素変換は重工幹部も時折、「おもしろい研究をしているんだ」と口にする。「あんな研究を続けられるのも重工くらいだよねぇ」という外部の声もある。研究を途切れさせなかったのは三菱重工の懐の深さだが、現状の体制で、10年後に大きな成果が期待できるのか。そろそろ企業として腹をくくる時だ。

記事の終わりは上記のような文章で締めくくられており、記者もまだ半信半疑の様子。

 セシウムの元素変換率は、ばらつきはあるものの100%近いものもあるという。元素変換を示唆するガンマ線も微量ながら検出している。同社はセシウムの場合、パラジウム多層膜の内部で4個の重水素が1個のセシウムの原子核に十分近づき、陽子4個と中性子4個が加わりプラセオジウムになったとの仮説を立てている。ただ、詳しいメカニズムや理論は分かっていない。

としているわりには、『放射性元素の変換の実験はまだ始めていないが、例えば放射性のセシウム137はユーロピウムに変換する可能性があるという』とも書いてあるので、セシウムの放射性同位体ではまだ実験していないようだ。

三菱重工の岩村康弘らは、2002年に以下のような地味な論文も発表している。原発事故を受けて、これが復活してきたという流れのようだ。

もちろんこの「原子変換」も常温核融合同様学界のコンセンサスは得られていない。もし万が一これが実現すれば、まさに瓢箪から駒、ウソから出た誠となるが、あまり期待はできない。

息を吹き返す?「常温核融合」

日本経済新聞もどうしてこんな記事載せるんだろうね?

 実は、東北大学に新設された凝縮系核反応共同研究部門は、クリーンエネルギー分野のベンチャーや研究室などに投資するクリーンプラネット(東京・港)が研究資金を出し、東北大学が施設や人材を提供するという形で2015年4月に発足した。

東北大学はいったい何しとんのかね?

 岩村特任教授は、東北大学への移籍を機に、研究のターゲットを放射性廃棄物の無害化から、「熱の発生」に切り替えた。凝縮集系核反応の応用分野には、発生した熱をエネルギー源に活用する方向性と、核変換によって放射性廃棄物の無害化や希少元素の生成を目指す方向性がある。現在、クリーンプラネットなど多くの企業、ベンチャーは、実用化した場合の市場規模が桁違いに大きい、エネルギー源の利用を優先して研究を進めている。

おいおい、あっさり「放射性廃棄物の無害化」を諦めとるやんけ。言うことがころころ変わる。

特許取っても商品化できなければ、単に権利を死蔵してるだけ。特許は発明の有効性を保証するものではなく、発見者の権利を保護するための制度である。無効なものでも申請書をうまく書けば取れてしまうこともある。よって、科学的な正しさを担保するものではない。

常温核融合の問題点としてよく言われることが、割と簡単に実験はできてしまうということ。しかし、厳密に検証するには莫大な金がかかる。ないということを証明するのは悪魔の証明だから。だから、いつまで経っても、あるかないか、はっきりしない状況が続く。
 
さらに、常温核融合は「夢のテクノロジー」なので、ものすごいバイアスがかかる。たとえ、成功する確率がゼロに近くても、成功すれば莫大な利益を生むので、ダメでもともとで資金投入したり、人生かけたりするヤツが出てくる。そういう理由で、いつまで経っても信者は諦めず、一攫千金や一発大逆転を狙いたい連中も山ほどいるということ。

まず第一に、仮に「常温核融合」が本当に起こっているとしても、それで本当に「核のごみを無害化」できるかどうかは別問題である。第2に、「常温核融合」が本当に起こっているというコンセンサスはいまだ存在しない。

 だが笠木研究教授は「核科学の常識ではあり得ないデータが出ているのだから、メカニズムを解明する必要があると思った」と研究を続けてきた理由を説明する。岩村特任教授も「当時は原子力事業に携わる人たちからも信じてもらえなかったが、放射性廃棄物を安全な物質に変える技術は必要だ」と意気込む。

「核科学の常識ではあり得ないデータが出ている」のであれば、まずはそのデータを疑うべき。「放射性廃棄物を安全な物質に変える技術は必要だ」という意気込みには敬意を払うが、できないものはできない。これが「核のごみを無害化」する技術になりうるという根拠はこの記事のどこにも示されていない。

まず第一に、まだ擬似科学のレッテルが外れたわけではない。フライシュマンとポンスの主張はあまりに突飛で、その実験もいいかげんなものだった。今後仮に、なんらかの核反応が本当に起こっていることが確認されたとしても、彼らの研究が高く評価されることはないだろう。

 2010年頃から、ベンチャー企業がニッケルと軽水素を使った電解法で、メガワットクラスの過剰熱を発生させたという成果がインターネット上で話題となるなど、より低コストの反応系での成果が出てきた。ベンチャー企業の実験結果は、正式な論文にならないため、真偽は明らかでないが、商用化を見据えた研究が進んでいるのは確かだ。水野氏の研究でも、ニッケルを主体にするなど、パラジウムの使用量を減らせる可能性を見出している。

「インターネット上で話題」になっているからなんだというのだ? そんなことはなんの根拠にもならない。この記事の信ぴょう性を疑わざるをえない。

 すでに三菱重工では、重水素の濃度や圧力を高めることで、1cm2(平方センチメートル)当たりの新元素の収量がナノグラムからマイクログラムへと、2〜3ケタ増やすことに成功したという(図2)。こうした成果もあって、内閣府による革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」に東北大学との共同研究の形で採択された。

過去にも日本は常温核融合の研究に莫大な予算を投じ、なんの成果も得られなかったことがある。今回もその二の舞にならなければいいのだが…

なお、この記事に登場する元北海道大学の研究者水野忠彦氏は、以下のような人物。

常温核融合がオカルトだとは思わない。ただ、ものすごくスジの悪いサイエンスだと思う。物理学者ってものすごく頭のいい人ばかりだと思っていたのだが、そうでもないのかもしれない。なにか燃やせば熱ぐらい出るさ。常温核融合はちっとも核反応ぽくないんだよね…