トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

政府・関係機関の対応 6 (東日本大震災)

東日本大震災・デマ・風評被害・陰謀論


ここでは、2011年11月下旬から2012年3月下旬の記事を集めています。

原発防災:電事連も強化反対文書 安全委に「補助金増える」」 

毎日新聞 2012年3月27日 東京朝刊

 電力10社で組織する「電気事業連合会」が昨年1月、原発事故の防災対策強化の方針を打ち出した内閣府原子力安全委員会に反対する文書を送っていたことが26日、毎日新聞が情報公開請求した資料で分かった。理由として、原発は危険という印象がもたらす地域への影響や対策費増大を挙げているが、電力各社が防災を軽視していた実態を裏付けている。(6面に文書要旨)

 

 国の原子力防災指針を策定する安全委は、国際原子力機関(IAEA)が02年に重大事故に対応する防災対策の国際基準を定めたことを受け、06年3月に基準導入に着手。経済産業省原子力安全・保安院が「原子力への不安を増大する」として再三反発し、導入はいったん見送られた。しかし、各国で導入が進み、安全委は10年12月の「当面の施策の基本方針」で再び導入検討の考えを示した。

 

 これに対し、電事連は11年1月13日と同2月3日、国際基準を導入した場合の自治体の反応について「独自に推定した」との文書を安全委に送付。

 

 重大事故時に住民が直ちに避難する原発から半径約5キロ圏のPAZ(予防防護措置区域)の導入の影響について「地価下落や観光客減が出ないとは言い切れない」と強調。半径8〜10キロのEPZ(防災対策重点地域)を、同約30キロに拡大するUPZ(緊急防護措置区域)は「領域内に入る自治体が交付金や補助金を要求する」と反対した。

 

 その後、東京電力福島第1原発事故が発生。安全委は今月22日、国際基準を導入した新指針をまとめた。政府は12年度予算案で「緊急時安全対策交付金」を前年度比で3倍の89億7000万円計上した。安全委側は「事故前は、規制される側の事業者が政策決定に介入することがまかり通っていた」と話す。電事連は「基準導入への協力の一環だった」と釈明している。

 

 原発の防災対策強化をめぐっては、保安院も06年に反対していたことが発覚している。【比嘉洋】

 

==============

 

 ■解説

 

 ◇リスク隠し続けた責任大

 東京電力福島第1原発事故を踏まえ、内閣府原子力安全委員会が今月22日、新たにまとめた国の原子力防災指針では電力各社が防災上、重要な役割を担う。しかし、今回の情報公開で電気事業連合会が原発立地推進のために防災強化を犠牲にしてきた実態が浮かんだ。新指針が実効性を持つためにも、電力各社の抜本的な意識改革が求められる。

 

 新指針では、電力会社が、原子炉格納容器圧力や炉心温度などのデータをもとに事故の深刻度を判断。その報告に基づいて、自治体が原発から半径約5キロのPAZ圏の住民に避難などの被ばく低減策を指示する。

 

 今回の事故は「安全神話」が成立しないことを示した。「混乱を招く」という理由で、リスクを隠し対策強化を先送りすることは許されない。国や電力各社は、どこまで深刻な事故を想定し、その際の対策費はどの程度か、住民や自治体に説明する責任がある。【比嘉洋】

福島第1原発:2号機の水位 底部から60センチのみ」 

毎日新聞 2012年3月26日 21時11分(最終更新 3月27日 1時03分)

 東京電力は26日、福島第1原発2号機の格納容器内を内視鏡で見た結果、水位は底部から約60センチしかないと判明したと発表した。原子炉への注水量から東電が予想していた水位より約3メートル低かった。格納容器下部の圧力抑制プールが破損し、原子炉建屋地下に漏れている可能性が高まった。

 

 内視鏡による調査は今年1月に続き2回目。前回調査では水位が確認できなかったことから、再調査した。格納容器側面にある配管開口部から内視鏡を挿入し、ケーブルを垂らしていったところ開口部から約7メートル下に水面を確認した。

 

 格納容器内の水温は約48.5〜50度で推移していることから、東電は底部に落ちたとみられる燃料は水で冷やされていると判断している。たまった水は透明だったが、黄色い堆積(たいせき)物がもやのように舞っているのが確認された。溶融燃料の可能性は低く、砂やさびとみている。

 

 水位60センチは、格納容器と圧力抑制プールをつなぐベント管の位置まで水が達していることを意味する。圧力容器には冷却のため毎時約9トンの水を注入しているが、圧力容器下部に開いた穴から格納容器に漏れた水が、圧力抑制プールの損傷部を通じて漏れている可能性が高いという。これまで圧力抑制プールに大規模な損傷はないと主張していた東電は「今の段階で損傷程度を推定するのは難しい」としている。

 

 ◇高濃度汚染水、海に0.08立方メートル流出か

 

 また、東京電力は同日、同原発の放射性汚染水の塩分除去装置の配管から高濃度の放射性物質を含む水が漏れ、海に流出したと発表した。漏れたのは約120立方メートルで、うち約0.08立方メートルが流出したとみている。漏れたのは汚染水から取り除いた塩分や放射性ストロンチウムを含む濃縮塩水で、濃度は1立方センチ当たり約14万ベクレル。【岡田英】

玄海町長の交際費問題

 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町の岸本英雄町長による交際費接待問題で、昨年4〜5月に古川康知事や九電幹部に町産のイチゴや高級牛肉「佐賀牛」などを贈っていたことが分かった。当時は玄海原発2、3号機の再稼働を巡り、知事や九電の動向が注目されていた。

 

 町によると、古川知事には昨年4月20日、イチゴ「さがほのか」(6パック・4725円)を訪問時の手土産として町長交際費から支出したほか、5月26日には「佐賀牛ロース」(1パック・8320円)と「本生ハンバーグ」(4パック・1680円)を郵送代950円と合わせて同様に支出した。

 

 また九電幹部には5月30日、九電訪問時に「佐賀牛ロース肉詰め合わせ」(2万5600円)を土産として購入し贈った。贈った理由はいずれも「玄海町等の特産品のPRのため」としている。

 

 岸本町長は知事への公費での贈り物について「覚えていないが、知事が県産品の輸出に意欲的だったので(町の産品を)知ってもらわなくてはいけないと考えたのだろう」と述べ「原発再稼働の話などしていない」と強調した。古川知事は「いただいたかどうか覚えていない。プレゼントというより宣伝のツールとしてお持ちになっておられると思っている」と話した。九電社長室報道グループは「事実関係を確認している」としている。【原田哲郎、竹花周】

セシウム流出量、東電推計の6倍…海洋研試算」 

2012年3月6日21時29分 読売新聞

 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、原発から海に流出した放射性セシウム137の総量は最大で5600テラ・ベクレル(1テラは1兆)に上るとの試算を、海洋研究開発機構がまとめた。

 

 東電の推計量の約6倍にあたる。6日に開かれた日本原子力研究開発機構の研究報告会で発表した。

 

 海洋研究開発機構の宮沢泰正主任研究員らは、福島県の沿岸など約500地点で採取した海水のセシウム濃度や、潮の流れなどをもとに、昨年5月7日までにセシウムが移動した経路を模擬計算した。その結果から、海に流出した高濃度汚染水のセシウムの総量は、4200〜5600テラ・ベクレルと算出された。このほか、同原発から大気中に放出され、雨などによって海に沈着したセシウムは1200〜1500テラ・ベクレルになった。

保安院「炉心すでに溶融」と分析 事故発生から1週間後」 

北海道新聞, 03/05 20:00

 経済産業省原子力安全・保安院は5日、東京電力福島第1原発の事故が発生してから1週間後、保安院などの分析チームが1〜3号機で「炉心はすでに溶融している」という分析結果をまとめていたと発表した。この報告書は当時公表しておらず、「保安院内で情報を共有するためのものだった」と説明している。

 

 保安院によると、分析チームは昨年3月18日、1〜3号機について「炉心はすでに溶融し、外部から注水を続ける限りは安定した状態が継続していると評価する」とまとめた。4号機の使用済み燃料プールが損傷した場合の影響なども検討し「現在注力すべきは、燃料プールの水位回復」と報告した。

SPEEDI予測「公表できない」 文科省文書に記載」 

47NEWS, 2012/03/03 02:23 【共同通信】

 東京電力福島第1原発事故5日目の昨年3月15日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測について、当時の高木義明文部科学相ら政務三役や文科省幹部が協議し「一般にはとても公表できない内容と判断」と記した内部文書が作成されていたことが2日、同省関係者への取材で分かった。

 

 文科省は「事務方が作ったメモだが不正確。公表の具体的な判断はしなかった」と内容を一部否定している。

 

 事故直後のSPEEDIの試算公表をめぐる文科省の議事録などは公表されていなかった。

福島原発事故独立検証委員会報告書

報告書の入手方法につきまして

記者会見後、多くの方々から、報告書の入手方法についてお問い合わせを頂戴しております。当プロジェクトにご関心をお寄せ頂き、本当にありがとうございます。

当財団は非営利で運営しておりますことから、今回の報告書は非売品として限定部数作成致しました。会見後に在庫が払底している状態です。皆さまからリクエストを頂戴しておりますところ、すぐに報告書をお手元にお届けすることができず誠に申し訳ございません。

「国民の視点からの検証」という報告書の性質上、広く皆さまにお読み頂きたく思っておりますので、なるべくお求めやすい価格での出版や、ウェブでの公開など、様々な方法を現在検討中です。

追って、本ウェブサイトで詳しい情報をご案内致します。 

ということだったが、3月1日で以下のようになった。

記者会見後、多くの方々から入手方法についてお問い合わせをいただきました。当初は、非売品として部数を限定して作成しておりましたが、できるだけ多くの方に読んでいただけるよう株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンから書籍・電子書籍として実費にて緊急出版させていただくことにいたしました。

発売日 3月11日(日曜日)

価格 書籍 1575円

※全国の書店でお求めいただけます。

電子書籍 1000円

※主要なオンライン書店でお求めいただけます。

東京電力福島第一原子力発電所の事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会が、28日、日米の政府関係者など、およそ300人からの聞き取りをもとにした報告書を公表し、政府の危機管理の課題のほか、適切な対応を行えなかった官僚機構や東京電力の問題についても指摘しました。

報告書の中では、事故直後の政治家や官邸スタッフ、それに専門家などの当時の心境が赤裸々に語られています。

 東京電力福島第一原発の事故原因を民間の立場で調べる「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)がまとめた報告書は、官邸の初動対応が「場当たり的で泥縄的な危機管理だった」と指摘した。

 

 委員長の北澤宏一・科学技術振興機構顧問は28日会見し、「官邸主導による目立った現場への過剰介入があった。そのほとんどは有効ではなかった」などと述べ、当時の菅直人首相ら官邸主導の介入による混乱が事態を悪化させたとの見方を示した。会見後、報告書を野田佳彦首相に手渡した。

 

 報告書によると、官邸中枢は震災直後から東電や経済産業省原子力安全・保安院に強い不信感を抱いていた。3月11日夜、福島第一に電源車を手配したが、接続コードがないなど東電の能力に不信感が募った。

 福島第一原発に代替バッテリーが必要と判明した際、菅首相は自分の携帯電話で「必要なバッテリーの大きさは? 縦横何メートル? 重さは? ヘリコプターで運べるのか?」などと担当者に直接質問して熱心にメモをとった。同席者の一人は「首相がそんな細かいことを聞くというのは、国としてどうなのかとぞっとした」と述べた。

 

 原子力安全委員会の班目春樹委員長は第一原発に向かうヘリで菅首相から「おれは基本的なことはわかっている。おれの質問に答えろ」と一喝された。班目委員長は「私としてはもっと色々伝えたかった」「菅首相の前で大きな声で元気よく言える人は、相当の心臓の持ち主」と述べた。

 枝野幸男経済産業相は28日、東京電力福島第1原発事故の際、当時官房長官だった枝野氏が「原発被害が拡大する『悪魔の連鎖』を懸念した」と、民間事故調査委員会の報告書に記載されたことについて、「当時の心情を話した」と述べ、専門家の分析を踏まえた政府の見解ではないと強調した。閣議後会見で述べた。

 枝野氏は「(昨年3月)14日から15日にかけては、(原発被害の連鎖の)可能性もあるのではないかという強い危機感を持ちながら仕事をしていた」と説明。当時、そうした懸念を話さなかったことについて「専門家でもない私が個人の印象として、『私はこう思う』と申し上げる立場ではない」と述べた。

 「福島原発事故独立検証委員会」が27日、民間の立場から公表した東京電力福島第一原子力発電所事故に関する報告書では、菅首相(肩書は当時、以下同)の指揮の問題点や、政府の危機管理の不十分さが数多く指摘されている。

 

 報告書は首相官邸の初動対応について、「(昨年3月)15日に対策統合本部が設置されるまで、菅氏に対する原子力災害時のマニュアルや関連法制について事務的な説明が一度も行われなかった」と指摘。首相秘書官らが六法全書のページを慌ただしくめくりながら、原子力災害に関する基本法制を一から確認していたことを明らかにした。

 

 菅氏の官僚に対する対応のまずさも記されている。

 

 菅氏が「全然俺のところに情報が来ないじゃないか」といら立ちを表明するたびに、関係省庁が大急ぎで説明資料を作成し、報告に上がろうとするが、説明を開始してまもなく、「事務的な長い説明はもういい」と追い出されるパターンの繰り返しだったとしている。

 

 菅氏は官僚不信を強め、個人的な人脈を頼って携帯電話で外部有識者から情報を収集。官邸スタッフには菅氏とブレーンの携帯電話でのやりとりの内容が明かされず、スタッフの1人は「何の責任も権限もない人たちが、密室の中での決定に関与するのは問題だ」と証言。枝野官房長官も「常に(任命を)やめた方がいいですよと止めていた」と明かしている。

 報告書は、東電による原発からの撤退申し出を拒否したことや、東電本店に乗り込んで対策統合本部を設置したことを例に、菅氏の行動力や決断力について、評価もしている。

去年3月の原発事故で、放射性物質の広がりを予測するシステム「SPEEDI」が住民の避難にいかされなかったことについて、菅前総理大臣ら、事故の対応を中心となって行った政治家たちが「所管する文部科学省などから説明を受けず、事故から数日たってもその存在すら知らなかった」と民間の事故調査委員会に対して証言していることが分かりました。

原子力事故が起きた際に放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」は、開発・運用に120億円の費用が投じられながら、去年3月の原発事故で住民の避難に生かされず、政府の対応に批判が出ています。

これについて、28日に公表される民間事故調の報告書の中で、事故対応を中心になって行った菅前総理大臣ら5人の政治家が「所管する文部科学省などから説明がなく、事故から数日たってもその存在すら知らなかった」と証言していることが分かりました。

調査の対象となった5人のうち、当時の枝野官房長官と福山官房副長官は、2号機から大量の放射性物質が放出された去年3月15日ごろ、マスコミからの指摘で初めてSPEEDIの存在を知ったと話しているほか、当時の海江田経済産業大臣は「存在すら知らなかったので、データを早く持ってこいと言うことができなかった。本当にじくじたる思いだ」と述べたということです。

SPEEDIの説明がなかったことについて枝野前官房長官は「予測の計算に必要な放射性物質の放出に関する数値が得られなかったためデータの信頼性が低く、説明の必要はないと判断した」と文部科学省から報告を受けたと話しています。

これについて民間事故調は、28日公表する報告書で「SPEEDIは原発を立地する際、住民の安心を買うための『見せ玉』にすぎなかった」と厳しく批判したうえで「住民の被ばくの可能性を低減するため、最大限活用する姿勢が必要だった」と指摘しています。

また、災害時の情報発信に詳しい東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授は「原子力災害が起きている最中に指揮官である官邸の政治家が存在さえ知らないというのは通常は考えられない。SPEEDIの存在を政治家に報告しなかった官僚も問題だが、官邸にも危機管理能力がなかったと言わざるをえない」と話しています。

東京電力福島第一原子力発電所の事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会が、28日、報告書を公表します。

この中では、政府内部で事故直後から被害拡大への危機感が強まり、当時の枝野官房長官も「東京でも避難が必要になる『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った。そうならないよう押さえ込まなければいけないと考えていた」と心境を明かしていることが分かりました。

エネルギー問題の専門家や元検事総長ら6人の有識者が委員を務め、国から独立した立場で原発事故の調査を進めていた民間事故調=「福島原発事故独立検証委員会」は、去年の9月から半年間にわたって日米の政府関係者らおよそ300人に聞き取りなどを行ってきました。

28日に公表される報告書によりますと、事故の3日後の去年3月14日には、福島第一原発の当時の吉田昌郎所長から「炉心の溶融が進み、燃料が溶け落ちる可能性が高まった」との情報が当時の細野総理大臣補佐官に伝えられ、官邸や専門家の間に強い危機感が広がったということです。

福島第一原発では、3月14日から15日にかけて2号機の核燃料が冷却水から露出して破損し、圧力抑制室から大量の放射性物質が外部に放出されたとみられています。

当時、官房長官として政府のスポークスマンを務めた枝野経済産業大臣は、このころを振り返り「核燃料が露出する状態が続けば、多くの放射性物質が漏れて作業員が立ち入れなくなる。近くの福島第二原発など、ほかの原発にも影響が広がって最終的には東京でも避難が必要になるという『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った。そうならないよう事故を押さえ込まなければいけないと考えていた」と心境を明かしていることが分かりました。

そのうえで、「こうしたシナリオは官邸で共有されていた」と述べているということです。

官邸が描いていた最悪のシナリオが当時、表に出ることはありませんでした。

政府の情報発信について民間事故調は報告書の中で、「迅速な情報開示と、正確性の確保という2つの要請のせめぎ合いの中で試行錯誤していた様子がうかがえる」と分析し、今後、議論を進める必要があると指摘しています。

米原子力規制委員会(NRC)の会議記録公開

 【ワシントン時事】米原子力規制委員会(NRC)は21日、米情報公開法に基づき、昨年3月の東京電力福島第1原発事故後の会議記録を公表した。米政府が発令した事故現場の半径50マイル(約80キロ)圏内からの米国民への避難勧告をめぐる緊迫したやりとりを記載。情報不足にいら立つ中で同原発4号機の使用済み核燃料プールの損傷などを理由に、日本政府が設定した20キロ圏内よりも広範囲の避難勧告を決めたことが分かった。

 公表された資料には、東日本大震災が発生した昨年3月11日から10日間、NRC内部で行われた会議での委員やスタッフの発言が記録されており、全体で3000ページを超える。

 それによると、NRCは事故翌日から、ルース駐日米大使からの照会などを受けて避難勧告の範囲を検討。当初は太平洋側に吹いていた風向きが東京方面へと変わったことや同原発で火災や水素爆発が発生したことで危機感を強めた。

 特に水素爆発で建屋が激しく損傷した4号機の使用済み核燃料プールに「(冷却用の)水がない」などの情報に基づき、16日にNRCのボーチャード運営総局長が「米国で発生していれば50マイル圏外に避難するだろう」と指摘、ヤツコ委員長も了承した。その後の日本側の調査では同プールには当時、水があったことが判明している。

 関係者らの一部は来日して東電本店での会議に参加。会議では水の代わりにプールに砂を入れる意見が出たというが、「明らかに必要なのは水、水、水だ」と感じたと報告した。

 「日本政府からの情報提供が限られている。協力要請もないままだ」「東電の発表文は古すぎる」

 

 発生当日の11日の会議では、日本政府や東電の情報発信の不手際にいらだつNRCメンバーの様子が浮き彫りになった。日本の関係当局に直接支援を申し出たが、「必要ない」と断られたと憤るメンバーの声も取り上げられている。ヤツコ委員長は電話会見で、「事故直後、(状況判断が)難しい状況に置かれていた」と振り返った。

 NRCの会議記録は、事故を検証する一級資料の価値を持つ。当事者の日本政府が原子力災害対策本部会合の議事録を作成していないのに比べ、情報公開や国民の知る権利に対する意識の格差までが鮮明になった。

 

 NRCのスポークスマンは米CNNに、「歴史の決定的瞬間でNRCがどう動いたかを伝える貴重な内部資料だ」と胸を張った。

まったく日本政府は情報公開や国民の知る権利に対する意識が低すぎる

このNRC議事録については、日米報道の微妙な論調の違いが興味深いです。たとえばNHKが「米当局 メルトダウン想定して対応」と伝えたように、危機を最大限に想定して(結果的にはそうではなかった事態に対応して)避難圏を大きくとったアメリカを賢明だと評価することもできますが、米側ではたとえば『ウォール・ストリート・ジャーナル』が、事故直後の混乱と情報不足の中でNRCが「日本の設定を大きく上回る範囲からの米国人の避難を命じて、世界を驚かせた。これが同盟国の日本に恐怖と混乱の種をまいた」と、やや否定的な論調で書いています。34年ぶりに原発新設を決めたアメリカにおいて、経済界寄りの経済紙なだけに……という見方もできますが、けれども米紙『ニューヨーク・タイムズ』も「米当局は最悪を想定して見事だった」ではなく、「事故直後の米側を覆っていた混乱の度合いが明らかになった」という論調です。

 

(ちなみに誤解のないように。「議事録をきちんととってあったからこそ後日こうして点検できるのであって、そもそも記録をとっていませんでしたではお話にならない」という日本政府批判は、まったくその通りだと思います)

「東日本大震災に関する特別調査」の概況(第 1 回) 〜震災で日本人の心理や行動はどう変わったか〜

(pdf) 2012年2月15日, 慶應義塾大学プレスリリース

核燃料コスト隠蔽:聴取せず調査終了 経産省の職員証言」 

毎日新聞 2012年2月5日 2時35分(最終更新 2月5日 10時21分)

 経済産業省の安井正也官房審議官が04年、使用済み核燃料を再処理せずそのまま捨てる「直接処分」のコスト試算の隠蔽(いんぺい)を指示した問題で、当時の内部調査で事情を聴かれたとされる25人のうち2人が取材に対し「事情聴取を受けずにいきなり処分された」と証言した。真相解明すべきなのに、ずさんな調査で早期幕引きを図った疑いがある。しかし、経産省は「既に徹底的な調査をした」として再調査しない方針で、隠蔽体質の根深さが浮かび上がった。【核燃サイクル取材班】

 

 直接処分のコスト試算を巡っては、04年3月、参院予算委員会で社民党の福島瑞穂党首が「再処理しない場合のコストはいくらか」と質問し、経産省資源エネルギー庁の日下一正長官(当時)が「コスト試算はない」と答弁した。しかし同7月、直接処分の方が安価であるとの試算の存在をマスコミが一斉に報じたため経産省が職員25人を事情聴取し、同8月までに安井氏を含む計13人を処分(厳重注意など)した。

 

 この際、経産省側は「(安井氏らが)試算の存在を知ったのはマスコミの取材を受けた7月。(部下が)報告したのにとどまった(隠した)ということもなく悪質ではない」と説明した。

 

 しかし毎日新聞の報道で、実際は同4月、部下から試算の存在について報告を受けたエネ庁原子力政策課長(当時)の安井氏が「見えないところに置くように」と指示したことが判明している。当時の内部調査について、25人のうち1人は「夏休みに那須高原(栃木県)にキャンプに行っていたら携帯に電話があり、呼び戻され処分された。聴取は受けていない」、もう1人も「発覚当時海外にいた。帰国したらすぐ処分された。聴取された記憶はない」と話した。また聴取を受けた職員も「7月中旬に1回、30分程度。『試算の存在を知っていたか』など簡単な内容で真相を突き止めようという感じではなかった」と証言した。

 

 当時の中川昭一経産相は記者会見で「多くの人に1人1時間以上かけて(聴取した)」と強調した。枝野幸男経産相はこれを踏まえ1月6日の閣議後の記者会見で「徹底的な調査と処分が行われている」と語った。

 

 ◇「再処理へ力ずく」政府審議会メンバー怒り

 使用済み核燃料を直接処分する際のコスト試算の隠蔽問題が広がりを見せ始めた。04年当時「再処理継続か、直接処分に政策転換か」について論議していた国の審議会メンバーからは怒りの声が上がり、社民党の福島瑞穂党首は再調査や経済産業省の安井正也官房審議官の更迭を求め、国会質問を行う予定だ。

 

 経産相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会」は、直接処分のコスト試算は存在しないという前提で審議を重ね、同6月、青森県六ケ所村の再処理工場稼働に伴う費用約19兆円を国民が負担する制度を取りまとめた。

 

 分科会の委員だった八田達夫・大阪大招聘(しょうへい)教授(公共経済学)は「(試算がないなんて)おかしいと思ったが、力ずくでやってしまうんだなという雰囲気だった」と振り返り、「再調査すべきだ。その間、少なくとも安井氏を(原子力安全規制改革担当審議官から)外すべきだ」と批判した。

 

 分科会に委員を送っていた日本生活協同組合連合会の小熊(おぐま)竹彦政策企画部長も「直接処分のコストの方が安いことが分かると、19兆円を負担させる制度導入に支障が出るから故意に隠したのではないか。経産省には説明責任がある。けじめをつけないと同じことが繰り返されかねない」と話す。

東電の値上げ問題

 古川経済財政相は31日、内閣府に東京電力の西沢俊夫社長を呼び、工場やオフィスなどの電気料金の平均17%値上げについて「景気への影響を危惧している」と伝えた。

 

 西沢社長は、政府が検討中の家庭向け料金の算定基準見直しを企業向けにも反映し、値上げ幅を圧縮する意向を示したが、4月からの値上げは予定通り行う考えだ。産業界からも批判の声が出ており、東電の今後の経営を巡る論議にも影響しそうだ。

 

 ◆対談

 

 古川経財相は、昨年末に西沢社長が値上げ方針を発表した際、「値上げは(電力会社の)権利」と述べたことについても説明を求めた。西沢社長は「至らないところがあった」と謝罪した上で、「(経営)状況を説明し、顧客に(使用時間帯で単価が変わるなど)いくつかの料金メニューを提示して理解を得たい」と述べた。

 

 今回の値上げ対象は料金が自由化された部門で、政府に指示する権限はない。古川経財相も値上げ幅抑制などの要請はしなかった。

 

 一方、東電は今秋をめどに家庭向けの料金も値上げしたい考えで、これには政府の認可が必要だ。政府は東電のコスト削減を徹底させ、電気料金をなるべく抑えようと、原価を厳しく見積もる新たな算定基準を検討している。西沢社長はこれを企業向けにも適用して値上げ幅を圧縮する方針だが、4月からの17%値上げは「現時点で変えるつもりはない」と強調した。

 

 ◆打撃

 

 値上げは企業のコスト増に直結する。ホンダの池史彦・取締役専務執行役員は31日の決算発表記者会見で「我々だって原材料が上がっても、いきなり車を1〜2割値上げしない」と不満をあらわにした。富士通の山本正已社長も「グループ全体として10億円弱の影響が出る」と強調した。

 

 SMBC日興証券の試算では、平均17%値上げされると、2012年度の上場企業の経常利益の合計が、値上げしなかった場合に比べ1・5%減る。電気を大量に使う業界は特に危機感が強く、「鉄鋼業界全体のコストが年200億円増える。電炉業界は赤字になる」(日本鉄鋼連盟の林田英治会長)との悲鳴が上がる。

 

 中小企業はさらに深刻で、中小企業が加盟する大田工業連合会(東京都大田区)の舟久保利明会長は「中小は電気代の値上げを製品に転嫁できるかどうかわからない。廃業するところも出るかもしれない」と不安を口にする。

 

 ◆影響

 

 枝野経済産業相は31日の記者会見で、「(値上げの)根拠となる情報などの開示、誠実な交渉については必要があれば指示をしたい」と説明した。東電と政府の原子力損害賠償支援機構が3月に共同で策定する総合特別事業計画の認可に際しては、「東電の体質も評価する」と指摘。「『値上げは権利』と勘違いする感覚は電力の安定供給主体として適切ではない」と批判した。

 「我々を無視しておいて、こんな値上げを許すわけにはいかない」。東京電力が企業向け電気料金平均17%値上げを発表してから1週間後の今月24日、政府の原子力損害賠償支援機構が入居する東京・虎ノ門のビル。機構側が急きょ呼び出した常務クラスら東電幹部6人を前に、運営委員4人が怒りをぶちまけた。

 

 委員らは料金値上げを発表当日の17日に知ったという。出席者によると、「不意打ち値上げ」と憤る委員らが「平均17%」の根拠を求めると、東電側は08年の料金原価の数字をもとに説明。委員らは「なぜ古い数字を使ったのか。これまでの合理化策が含まれていない」と詰め寄ったが、東電幹部は沈黙するだけだったという。

 

 企業向け料金は、90年代後半からの電力の部分自由化を受け、東電が顧客と個別交渉で決める仕組みとなったが、同じ地域で大規模な発電をできる電力会社はなく「東電の言い値で決まる」(機構幹部)のが実態。政府の有識者会議で料金体系の抜本見直しが進むが、結論は出ていない。

 

 「値上げありき」の東電の姿勢には「東電は殿様商売でいばっている」(猪瀬直樹・東京都副知事)、「値上げの算定根拠や合理化目標を説明すべきだ」(経済同友会の長谷川閑史代表幹事)など不満は強いが、東電の西沢俊夫社長は「(値上げは)事業者の権利だ」と言い切る。

 

 政府は1兆円規模の公的資本注入で実質国有化し、経営権を掌握して「東電解体」と抜本的な電力自由化を狙う。東電の強硬姿勢は、これを阻み、主導権を維持して経営再建にこぎつけたい東電側の生き残り策でもある。

保安院 明確な指示は事後 凍結対策野ざらし」 

東京新聞, 2012年1月31日 朝刊

 福島第一原発で相次ぐ凍結による水漏れ問題。東京電力は夏ごろから凍結対策の必要性を認識していたのに放置した結果、無駄な労力を割く事態に陥っている。事故後にめぐらされたホース、配管類の総延長は十数キロに及び、野ざらし状態のものが多い。今後も水漏れが連日起きる可能性は高い。 (深世古峻一、片山夏子)

 これまで確認された二十三件の水漏れ場所を見ると、保温材を巻くなどの対策がなされていなければ、凍結は原発のどこででも起きることが分かる。

 さすがに原子炉に冷却水を送るメーンの配管や、高濃度汚染水を流すホースだけは昨年末から対策工事がスタート。塩化ビニール製のホースをポリエチレン製に変えたり、保温材を巻きつけたりしたという。

 しかし、その他の大部分はあまり進んでいない。保温材を巻いたつもりでも、出っ張りのある接続部などは、保温材を巻くのが難しく、こういった場所で水漏れしたケースもある。抜本的には、ヒーターの設置や仮設の囲いが必要になる。

 だが、これらは一朝一夕ではいかず、同社幹部は「当面はパトロール態勢の強化と、保温材の設置を徹底するしかない」と話す。

 東電の対応の遅れも問題だが、東電の姿勢をチェックし、先を予測して指導するはずの経済産業省原子力安全・保安院の対応にも問題が多い。

 保安院の森山善範原子力災害対策監は「凍結対策は、東電が当然すべきこと。指示しないとやらないようでは困る。敷地内のあちこちでたまり水が見つかった時もそうだが、凍結対策も東電がきちんと計画を作り実施していたら…」と、東電を責める。

 だが、保安院は、東電に寒さ対策を口頭で注意喚起してきたと強調しているが、明確な形で指示したのは、既に二十件も凍結が起きた二十九日のこと。

 現地に配置されている原子力保安検査官が漏えい状況を確認したというが、どれも事後対応。水漏れが起きないとやらないようでは、何のための保安院なのか分からない。

 配管設置に携わってきた作業員は「配管はむき出し。最初から凍結してこうなることは予測できていた。何をしているのか」とため息をついた。

原発の「審査お手盛り」と批判 安全評価で2委員」 

47News, 2012/01/27 18:16 【共同通信】

 政府が原発再稼働の条件としている安全評価(ストレステスト)について、経済産業省原子力安全・保安院の専門家会議委員を務める井野博満東京大名誉教授と元原子力プラント設計技術者の後藤政志氏が27日、東京都内で記者会見し「(事業者による評価の)内容はごく部分的で、審査もお手盛りだ」などと批判した。

 

 井野氏は「過酷事故が起きたときに住民の被害がどのぐらいか、放射性物質による汚染の評価もするべきだ」と指摘。さらに「(安全評価で解析を担当した)三菱重工の関連会社から寄付金などを受けている人が(専門家会議委員に)いる。国民の信頼を得られない」と述べ疑問を呈した。