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政府・関係機関の対応 8 (東日本大震災)

東日本大震災・デマ・風評被害・陰謀論


ここでは、2012年8月上旬から2013年7月下旬までの記事を集めています。

福島労働局は24日、福島県内で除染作業をする業者388社の68%にあたる264社で、労働基準法や労働安全衛生法違反が計684件見つかり、いずれも是正勧告したと発表した。

 

抜き打ち検査情報が漏洩(3/23)

 1〜6月に立ち入り検査した結果、危険手当を含めた賃金などの労働条件を明示しない、賃金を払わないなどの労基法違反は473件、特別の安全教育の時間不足などの安全衛生法違反は211件だった。昨年4〜12月の前回調査で見つかった法令違反は業者の45%で、大幅に増えた。

 

 東京電力福島第一原発周辺の除染で、業者が作業員に危険手当を払わず、不払いの事実を口止めしていた問題も、労基法(労働条件の明示)違反などと認定し、是正勧告した。

 福島市松川町の手抜き住宅除染問題で、福島民報社は、福島労基署に労働基準法違反で是正勧告を受けた2次下請け業者が男性作業員に解雇を告げる際のやりとりを収めた音声記録を入手した。2次下請け業者の幹部が手抜き除染を認めた上で、表面化をもみ消そうとしたと受け取れる発言もあった。除染を発注した福島市は27日、住宅除染の全業者にあらためてルール順守を通知した。

 汚染土を入れるよう規定された袋に、草木などを混入させた手抜き除染を、元請けの共同企業体(JV)に訴えた男性作業員。その翌日の23日午後1時すぎ、福島市松川町の現場事務所の車内で雇用主の2次下請け業者の幹部から突然、解雇を告げられた。

 音声記録で幹部は、作業員が1次、2次の下請け業者には手抜き除染について知らせず、元請けJVに直接、指摘したことに不快感を示している。幹部は、1次下請けの現場所長の言葉として作業員に、こう語り掛けた。「言ってくれれば、誰も悪者にしないで内々に正しい方向にできたのに…。なんで言っちゃったのかな」

 解雇通告を受けた後、作業員が労基署に連絡すると告げると、幹部は「ここで事を荒立てる必要はないんじゃない?」と持ち掛けた。その時、作業員は「手抜き除染を、もみ消すつもりだったんだ」と思ったという。作業員は取材に「告発すれば現場から締め出される。不祥事は内々で処理される」と話した。

 さらに、幹部は解雇について1次下請け業者の社長からの指示だったと説明。「(解雇理由は)聞いてないけど業務命令違反かな」。作業員にとっては身に覚えのないことだった。

 日本原子力発電(原電)が、敦賀原発2号機(福井県敦賀市)の真下に活断層があると認定した原子力規制委員会の調査チームの専門家たちに、「厳重抗議」と題した異例の文書を送りつけた。専門家からは「個人として抗議されるのはおかしい」など戸惑いの声が出ている。今後、各原発での活断層調査に当たる専門家への影響も懸念される。 (大村歩)

 十七日、議論のやり直しを要請するため規制委を訪れた原電の浜田康男社長は「専門家はわれわれの意見をほとんど無視した。だから抗議文を送った」と報道陣に言い放った。

 専門家たちは規制委の依頼を受け、科学的なデータを基に断層が活断層かどうかを客観的に判断。その報告を基に、原発の運転を認めるのかどうかを判断するのは規制委。抗議するなら、その相手は規制委のはずだ。

 原電は、評価に加わった五人の各専門家の宛名を書いた厳重抗議を規制委事務局に手渡した。

 事務局は、原電への対応は規制委がするとのただし書きをつけ、専門家に郵送したという。

 一方、受け取った専門家側は驚きと不快感を隠せない。

 「非常に嫌な気持ちだ。われわれの結論をどう扱うかは規制委の問題で、個人宛てに出すのはおかしい」。京都大の堤浩之准教授はこう語る。東京学芸大の藤本光一郎准教授も「一般的な諮問会議とかでは、あり得ないのでは。いい気持ちはしない」と話した。

 名古屋大の鈴木康弘教授は「審査された側が、審査に協力した外部の専門家に抗議文を押しつけるのはいかがなものか」と指摘。「研究者個人の勇気や使命感に頼った審査体制ではいけない」と規制委にも注文をつけた。

 記者会見で、専門家が圧力を感じながら議論する問題点を問われた規制委事務局の森本英香次長は「科学的な観点で議論してもらうために、いい環境はつくっていきたい」と語ったが、具体策には触れずじまい。

 こうした抗議が専門家への圧力となる可能性については「コメントを差し控えたい」と述べるにとどまった。

東日本大震災の復興予算から全国の自治体や公益法人の約20基金に配分された約1兆2000億円について、復興庁と財務省は、被災地の再建と関連が薄い事業に使われている可能性があるとして実態調査を始めた。

 

 「流用」が判明すれば、返還請求なども検討する。根本復興相は10日の閣議後の記者会見で「(復興予算の)執行状況を確認し、使途の厳格化を図る。早急に対応したい」と強調した。

 

 復興予算を巡っては、昨年、国の出先機関の庁舎耐震改修費や反捕鯨団体対策費などに流用されていたことが発覚。当時の民主党政権は同11月、被災地との関連が薄く、未執行だった35事業168億円の予算執行を停止した。一方、この時点で自治体などに配られ、基金として積まれていた約1兆2000億円分については、既に国庫から払い出されていたため、執行停止の対象から外れていた。

 東京電力は10日、福島第1原発事故で、東日本大震災発生前後の未解析データを新たに検証し、「1号機の非常用ディーゼル発電機は、東日本大震災後に到来した津波で電源喪失した」と推定する分析を発表した。非常用発電機の電源喪失の原因をめぐっては、国会事故調査委員会は「津波によるものではない可能性がある」とする報告書を発表しているが、これに反論する格好となった。

 

 東電によると、データは発電機の起動状況を示す電流・電圧記録で、これまで未解析だったもの。東電は社内で実施した事故調査報告書で、非常用発電機の電源喪失の原因について今回と同様の見解を示していたが、根拠は運転員の証言や運転日誌などの状況証拠にとどまっていた。

 

 解析では、非常用発電機は地震発生直後に外部電源を喪失すると同時に起動し、地震から約50分後の「2011年3月11日午後3時36分59秒」に電源喪失していたことが分かったとしている。

 

 東電の福田俊彦原子力品質・安全部長は記者会見で「津波が到達した時点では非常用発電機は起動していた」と強調し、国会事故調の見解を否定した。データ解析まで2年以上かかったことについては「重要視した分析をしていなかった。申し訳なかった」と釈明した。【渡辺諒】

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質から子供の健康を守るとして、福島県が実施している甲状腺検査が揺れている。これまでに3人のがん患者が確認され、7人にがんの疑いがあるとされたが、県側は「被ばくとの因果関係は考えにくい」と強調する。「県民の不安解消」を検査の目的に掲げる県だが、情報公開に消極的な姿勢も相まって、保護者の不安と不信はやむ気配がない。【日野行介】

 

 ◇4観察項目省略、公表せず

 

 福島県二本松市の主婦、鈴木麻記子さん(39)は昨秋、長男(6)の検査に付き添った。検査技師はモニターを見つめて何かを測っている様子だったが、結果について何も話さず、2分ほどで終了した。

 

 不安になった鈴木さんは、一般の病院で改めて検査を受けさせた。10分ほどかかった検査で、7ミリの結節(しこり)が見つかった。県の判定基準では2次検査が必要な「B」に当たる。だが、約1カ月後に県から届いた通知は、経過観察にとどまる「A2」だった。

 

 鈴木さんは検査画像とリポートの情報公開を請求した。約3週間後に開示されたリポートには1・6ミリののう胞(液体がたまった袋のようなもの)があると記されていたが、結節は「なし」だった。「県の検査は一人一人の子供を真剣に見ていない。本当に親の気持ちを大事にしているとは思えない」と鈴木さんは憤る。

 

 実は県の検査では、甲状腺検査で一般的に実施される12の観察項目のうち4項目を省いている。だが、県はこのことは公表していなかった。識者からは「精度に疑問がある」との指摘も出ている。

 

 日本乳腺甲状腺超音波診断会議などが編集する「甲状腺超音波診断ガイドブック」は、観察項目として「甲状腺の形状」「大きさ」など12項目を挙げる。検査を委託される県立医科大は住民説明会でこのガイドブックを引用し「高い精度の検査だ」と強調してきた。しかし、実際には「甲状腺の内部変化」「血流の状態」など4項目を実施していない。検査責任者の鈴木真一教授は「短時間の1次検査では見る必要はないと考えた。(内部変化や血流の状態は)一律には見ていないが、必要な場合は見ている」と説明する。検査対象となる事故当時18歳以下の子供は約36万人に上り、検査のスピードアップのために省略したという。

 

 県の検査方法に関し北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は「血流の状態の確認をしないと、小さなのう胞と血管の区別はできにくく、精度が高いとはいえない。大きな病気がないかどうか簡単に見るだけの内容だ」と指摘している。

 東京電力福島第一原発事故に伴い避難を余儀なくされた南相馬市の5カ所の高齢者施設で、入所者の原発事故後約1年間の死亡率が、過去5年間の死亡率と比べて約2・7倍に上ることが、東京大大学院医学系研究科国際保健政策学教室の野村周平氏(24)の調査で分かった。

 原子力委員会委員の秋庭(あきば)悦子氏(64)が設立したNPO法人に、東京電力や電気事業連合会など電力業界側が毎年多額の事業資金を提供していたことが分かった。原子力委員を巡っては東電出身の尾本(おもと)彰氏(64)が福島第1原発事故後も東電から顧問料を受領していたことが判明、安倍晋三首相が「国民の理解を得るのは難しい」と述べ、尾本氏は委員を辞任。秋庭氏が設立したNPO法人は原発事故後、東電や電事連から少なくとも1800万円受領しており、議論を呼ぶのは必至だ。

 

 このNPO法人は「あすかエネルギーフォーラム」(東京都中央区)。消費生活アドバイザーだった秋庭氏が01年に設立し、03年にNPO法人格を取得。10年1月の原子力委員就任に伴って秋庭氏は理事長を退き、顧問となったが、現在もNPO運営の相談にのっているという。

 

 東京都に提出されたあすかの事業報告書によると、09〜11年度に2000万〜4000万円余の事業収入があり、あすか関係者らによると、この多くは東電や、電力10社でつくる業界団体の電事連などからの提供だったという。このうち原発事故後の11年度は2283万円の収入があり、うち600万円余を電事連から受領し、東電から163万円余、日本原子力文化振興財団(原文振)から約250万円受け取っていた。

 

 原文振は原子力の知識普及を目的に、原子力産業界と学会を中心に設立された財団法人で、現在、中部電力出身者が理事長を、関西電力出身者が専務理事を務めている。

 

 あすかは12年度にも電事連から600万円余、原文振から約150万円を受領し、これらを合わせると、原発事故後に電力業界側から少なくとも1800万円を受領していた。非営利のNPOにもかかわらず、11年度末時点で3800万円余の正味財産がある。

 

 これらの資金を元に、あすかは主婦層を対象に原発や放射線などの勉強会開催や機関誌発行などの事業を展開。東電からは消費者アンケート事業を委託され、11年5月まで毎月80万円余受領し、09、10年度は同事業で年間960万円余受け取っていたという。

 

 あすかはこの他、高レベル放射性廃棄物について国民の理解を得るための経済産業相認可法人の事業を下請け受注し、11年度には約1000万円が支払われた。この事業受注についてはある程度公開されているものの、東電と電事連、原文振からの資金受領は公開していない。

 

 あすかの事務局は「相手のある話なのでうちから名前は出せないが、私たちから『こういう事業をしたい』と言って、事業報告書を出している。あくまで中立に勉強する場を作るということで、電力業界の意向に沿った活動ではない」と説明。「秋庭氏は無報酬。情報や人脈があるので困った時に相談している」と話す。原文振は「提供資金の範囲内で活動してもらう『事業委託』という認識」、東電と電事連は「個別取引については回答を差し控えたい」と答えた。秋庭氏には再三取材を申し込んだが、応じていない。【杉本修作、町田徳丈、向畑泰司】

「原子力の図書館」と呼ばれていた「原子力公開資料センター」が昨年9月の原子力規制庁発足に伴って廃止された問題で、旧センターが無料公開していた資料を規制庁が有料化したことに批判の声が上がっている。資料を情報公開法上の「行政文書」に位置付けたための措置だが、開示に時間もかかるようになった。規制庁が発足して19日で半年。目標の「情報公開の推進」は掛け声倒れとなっている。

 

 規制庁が旧センターから引き取った資料は、原発の建設・運転に必要な設置許可申請書や安全審査書など約4万ファイル。旧センターは開架式で資料を自由に閲覧できたが、現在は段ボールに入れて保管されている。

 

 規制庁総務課によると、規制庁が入居する民間ビル(東京・六本木)には、市民が立ち寄れる公開窓口を設置できず、閲覧に応じるために情報公開法による手続きを適用した。このため閲覧請求に対しては、開示請求書に氏名や住所などの記入を求め、手数料として1件当たり300円を徴収している。利用者は資料を特定して請求する必要があるうえ、閲覧までに最大30日かかる場合もある。

 

 規制庁は、発足時に「国民の情報開示請求を待たず、自発的に公開する」との「透明性確保のための方針」を決定している。規制庁総務課の担当者は「有料化は公開窓口がないため、やむを得ないものの、誠に申し訳ない。早く窓口を開設したいが、めどは立っていない」と話す。

 

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「公開方針が言行不一致と言わざるを得ない。速やかに公開できるよう予算と体制を確保すべきだ」と指摘する。【中西拓司】

 環境省は11日、原発事故による被ばくの影響を調べるため、13年度から始める予定だった福島県民対象のゲノム(全遺伝情報)調査を見送ることを明らかにした。「技術的、倫理的に問題が多い」と専門家から批判されていた。環境省は「問題を精査し、今後の対応を決めたい」としている。

 

 放射線は遺伝子を傷つけ、がんなどを引き起こす恐れがある。環境省は「未解明の放射線の影響があるのではないか、という不安に応えたい」として、調査を計画した。

 

 計画では、13年度から5年間で同県内500組の両親と新生児の計1500人に協力を依頼し、血液などを採取。ゲノムを解析し、放射線で親子間の遺伝子に違いが生じていないかを調べるとして、13年度予算案の概算要求に11億9200万円を計上した。

 

 しかし、ゲノムの解読過程で機械的な誤りが生じるため、専門家からは「親子間に違いがあったとしても放射線の影響なのか、他の要因なのかも区別できない」と妥当性を疑問視する声が続出。さらに、実子ではなかったことが解析で明らかになった場合の倫理的な課題も指摘されていた。【比嘉洋】

 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で、11年3月12日に1号機格納容器の水蒸気を外部に放出する「ベント」を始める約5時間前から、放射性物質が約10キロ圏に拡散していたことがわかった。福島県の放射線モニタリングポストに蓄積されていた観測データの解析で判明した。放射線量が通常の700倍超に達していた地点もあり、避難前の住民が高線量にさらされていた実態が初めて裏づけられた。

 

 県が原発周辺に設置していたモニタリングポストは25基。5基が津波で流され、20基は地震による電源喪失でデータ送信できず、事故当時、住民の避難に活用することはできなかった。県は昨年9月下旬までに20基の蓄積データを回収し解析。県のホームページに解析結果を掲載し、関係自治体に連絡した。しかし、ベント前に放射性物質が拡散していたことは周知されておらず、国会と政府の原発事故調査委員会も把握していなかった。

 

 最初のベントは3月12日午前10時17分に試みられ、4回目の同日午後2時半ごろに「成功した」とされる。しかし、観測データによると、主に双葉町の▽郡山地区▽山田地区▽上羽鳥地区▽新山地区−−の4地点でベント前に放射線量が上昇していた。震災前の線量は毎時0.04〜0.05マイクロシーベルトだったが、原発の北2.5キロの郡山地区では3月12日午前5時に0.48マイクロシーベルト、同6時に2.94マイクロシーベルトと上昇。さらにベント開始約1時間前の同9時には7.8マイクロシーベルトになった。西5.5キロの山田地区ではベント直前の同10時に32.47マイクロシーベルトと通常の約720倍を記録した。

 

 国の平時の被ばく許容線量は毎時に換算すると0.23マイクロシーベルトで、各地で瞬間的に上回ったことになる。数値の変動は風向きの変化によるとみられる。国会事故調の最終報告書などによると、1号機では11日夜から12日未明にかけて、全電源喪失を原因として炉心溶融(メルトダウン)が発生。圧力容器などが損傷し、放射性物質が外部に漏出したと推定されている。

 東京電力福島第1原発事故による放射性物質の拡散が、これまで考えられていたより早く11年3月12日早朝から始まっていたことが、福島県の観測データで裏付けられた。しかし、県がモニタリングポストの解析を終えたのは、政府や国会の事故調査委員会が最終報告書をまとめた後。現在進行している県民健康管理調査にも、このデータは反映されていない。被災者の健康に直結する「命のデータ」は事実上、放置されてきた。【神保圭作、栗田慎一】

 

 県によると、津波で流されなかったモニタリングポスト20基のデータ回収を始めたのは、東日本大震災から約1カ月後の11年4月。19基を同7月までに回収し、一部の解析に着手した。しかし、残る1基を回収し全解析を終えたのは、最初の回収から約1年5カ月後の昨年9月下旬だったという。

 

 この間、政府や国会の原発事故調査委員会が相次ぎ発足し、事故原因の究明にあたった。両委員会は昨年夏、最終報告書をまとめたが、県のデータの存在を把握しないまま解散したことになる。政府事故調の元メンバーで同県川俣町の古川道郎町長は「政府事故調で検証されなかった新事実だ。なぜ解析がこんなに遅れたのか。事故の検証は終わったとは言えない。継続的な検証態勢を整備すべきだ」と憤る。

 

 一方、このデータは11年6月に始まった県民健康管理調査にも活用されていない。この調査は、県民から震災当時の行動記録の提出を受け、被ばく線量を推計する。今回明らかになったデータは、事故初期の「実測値」にあたるが、当時の線量はこれまで、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)で予測した線量が使われてきた。県立医大は「県の解析データを使うか使わないかは、議論している最中だ」としている。

 

 県原子力安全対策課の担当者は毎日新聞の取材に「県内全域の放射線調査など他業務に忙殺され、結果的にデータ解析が後回しになった。大変申し訳なく、ただただ謝るしかない」と謝罪している。

 

 これに対し、国会事故調に県民代表として参加した同県大熊町民の蜂須賀礼子さんは「県民の健康を真っ先に考えたならば、急いで解析されるべき『命のデータ』のはずだ。福島県の対応は(原発被害を受けた)県民として恥ずかしい限りだ」と話した。

 東京電力が、福島第1原発1号機の現地調査を申し込んだ国会事故調査委員会に対し、原子炉建屋内が実際には光が差しているのに「真っ暗」と虚偽の説明をしていたことが分かった。国会事故調は、緊急時に原子炉を冷却する「非常用復水器」が地震で壊れた可能性があるとして現地調査を計画したが、この説明で断念した。事故調の田中三彦元委員は7日、調査妨害だとして、衆参両院議長らに再調査を求める要望書を提出した。

 

 国会事故調関係者によると調査の中で、下請け作業員が、11年3月11日の地震直後に1号機原子炉建屋4階で「水が噴出していたのを見た」と証言。4階には非常用復水器の配管などがあり、国会事故調の事故原因究明チームのメンバーは、非常用復水器が地震で破損した恐れがあるとみて、4階を現地調査する方針を決め、東電に申し入れた。

 

 これに対し、東電の玉井俊光・企画部長(当時)は12年2月28日、国会事故調で事故原因の究明を担当する田中元委員らメンバーを訪問。1号機原子炉建屋4階を撮影した映像を見せた。映像では建屋内に光が差していたが、玉井部長は撮影日が、建屋が放射性物質の飛散を防ぐためのカバーで覆われる前だったとしたうえで「現在はカバーに覆われて真っ暗」と説明。放射線量が高い区域もあり、建屋内に入って調査するのは危険であることを強調し同行を拒んだ。

 

 東電によると、映像の撮影日は11年10月18日で、1号機原子炉建屋がカバーで覆われた同月14日の4日後だった。照明も10月28日には使用可能になっていた。東電広報部は玉井部長の説明について「カバー設置前だから明るく、設置後は真っ暗というのは事実誤認だった。正確に確認しないまま答えた。でも意図的にやったことではない」としている。

 

 国会事故調は、昨年7月に報告書をまとめた後、解散している。【岡田英】

 原子力規制委員会は1日、事務局の原子力規制庁の地震・津波担当の名雪(なゆき)哲夫審議官(54)を、日本原子力発電敦賀原発(福井県)の断層調査の報告書原案を、有識者による評価会合前に原電に渡していたとして、訓告処分にしたと発表した。規制委は名雪氏を更迭し、同日付で出身の文部科学省に出向させた。規制委の田中俊一委員長は「信頼回復に努める中での不適切な行為で誠に遺憾」と規制庁に再発防止を指示した。

 

 規制庁によると、名雪氏は会合前の1月22日、庁内の執務室で、原電の市村泰規(たいき)常務ら3人と約30分間、面会した際に報告書原案を手渡した。規制庁側の同席者はなく、1人で電力事業者と面会するのを禁じる内規に違反する。名雪氏が同23日に申し出て、職務を外された。名雪氏は文科省や内閣府原子力安全委員会で原子力行政を担当してきた。

 

 面会は原電からの要請で、内規で記録を残すことを義務付けていない「儀礼上のあいさつ」との名目。途中から敦賀原発の話題になったという。名雪氏は規制庁の聴取に「評価会合を実りあるものにする意識で渡した。金品の授受もなかった」と説明したという。一方、原電によると昨年12月以降、名雪氏と市村氏らは5回面会。原電側は初回の同21日、報告書案に反論しやすいよう評価会合前に内容を教えてほしいと要請した。名雪氏は「委員と相談する」と答え、1月22日に渡された。原電は「委員の了解が得られたと考えた。非はない」と説明した。

 

 規制庁の森本英香(ひでか)次長は「原案に未公表情報はなく修正指示もない。著しく軽率だが、個人の問題」と原電側に事情を聴かないまま調査を終結させた。評価会合メンバーの鈴木康弘名古屋大教授は「報告書の内容への影響はないが、誤解を与える恐れがある」と語った。 規制委の有識者による評価会合は昨年12月10日、敦賀原発2号機直下を通る断層を「活断層の可能性が高い」と認定。廃炉の公算が大きくなっている。1月28日に議論を文書化した報告書案を示した。【岡田英】

 東京電力福島第一原発事故を受けて国が直轄で進める本県の除染で請負業者の一部が除染土壌や草木を川に捨てたり、汚染水を回収せずに流したりしている可能性があるとされる問題で、環境省福島環境再生事務所は7日、除染を受注している4共同企業体(JV)の現場責任者に対して行った聞き取り調査の結果を発表した。同事務所は楢葉町と飯舘村の2件の除染で汚染水を回収しないなど仕様書に違反する行為があったことを明らかにした。

 同事務所によると、同日までの調査で違反行為が発覚したのは楢葉町の民家のベランダと飯舘村の郵便局敷地内の舗装面で行った高圧洗浄による除染作業。いずれも昨年12月中旬に実施された。作業で生じた汚染水を回収する工程で一部不備があり流出したという。同事務所は汚染水の流出量について「少ない」とする一方、具体的な量については「不明」としている。

 同事務所は7日午後、田村市、楢葉町、川内村、飯舘村で除染事業を受注した4JVの現場責任者を福島市の事務所に呼び出して調査についての報告を受けた。

 環境省福島環境再生事務所の大村卓所長らが7日、福島市の除染情報プラザで会見した。大村所長は「汚染水の流出は極めて少なく、ペナルティーを与えるというレベルではないという認識だ。ただし、再発防止策を講じるよう求めるとともに最終的な調査結果を公表したい」と述べた。

 東京電力福島第一原発周辺で「手抜き除染」が横行している問題で、住民から環境省に除染作業への苦情が殺到していたことが分かった。ところが、環境省は苦情内容や件数を記録・分析して業者の指導に活用することをしていなかったという。住民からの苦情に場当たり的な対応を重ねたことが、手抜き除染を見逃す一因になった可能性がある。

 

 除染事業の現地本部である環境省福島環境再生事務所によると、建物や道路から20メートル以内の本格除染を始めた昨夏以降、住民から「草がきちんと刈り取られていない」「洗浄に使った水が漏れている」といった苦情が多数寄せられるようになった。これらは環境省が定めた作業ルールに違反する可能性があるが、担当者の一人は「ひっきりなしに電話がかかってきて、いちいち記録をとっていられなかった」と打ち明ける。

 

 同事務所は朝日新聞の取材に「苦情があるたびに契約に基づいてきちんとやるよう作業現場に注意してきた」と説明。一方で具体的な内容や業者名、件数などは記録せず、苦情の多い業者を厳しく指導するなど効果的な対応をしていなかったことを明らかにした。個別の苦情にどう対応したのかは検証できないという。

 東京電力福島第一原発周辺で実施されている国直轄の除染を巡り、受注業者が福島県内の現場で手抜きをしているとの指摘があり、環境省は4日、業者が同省の定めた適切な手法で除染しているかどうかの調査を始めた。

 

 同省によると、指摘があったのは、福島県の田村市、楢葉町、飯舘村の約10か所の現場で、いずれもゼネコンの共同企業体(JV)が国から事業を受注して行っている。除染で集めた土壌や落ち葉を、本来なら袋詰めにするなどして回収しなければならないのに、川や崖に投棄したとの内容で、このうち一部のケースでは、業者側が事実を認めているという。

 

 同省は、現場責任者から事情を聴取し、放射性物質環境汚染対処特別措置法に基づいて処分も検討する。特措法では、放射能に汚染された廃棄物やはぎ取った土壌を、みだりに捨ててはならないとされている。違反した場合、5年以下の懲役や1000万円以下の罰金などの罰則も設けられている。

 原子力規制委員会の専門家調査団が、日本原子力発電敦賀原発の敷地内を走る破砕帯を活断層と判断したことを受け、同原発の廃炉の公算が大きくなったことは、これまでの事業者任せの原発安全審査のほころびが露呈した格好だ。

 

 規制委の評価会合における判定結果について、経済産業省幹部は「短期的には電力需給に影響があるかもしれないが、中長期的なエネルギー政策への影響はないのでは」と指摘する。

 

 確かに、敦賀原発は現在、稼働停止中で、電力会社の供給力にすぐに影響が出るわけではない。規制委は稼働中の大飯原発3、4号機(福井県おおい町)でも断層調査を実施中で、ここで活断層と判定され、一時的に運転停止となれば計236万キロワットの電力が失われ、来夏の電力需給に影響を与える。

 

 ただ、今回の結果の影響はそれにとどまらない可能性も高い。従来、事業者任せだったすべての原発の安全審査に疑念の目が向けられかねないからだ。

 

 規制委の田中俊一委員長は先月28日の会見で、断層調査を実施・検討中の原発や核燃料サイクル関連施設以外への調査について「そこまでの計画は具体的には持っていない」と述べた。

 

 一方、原子力行政に詳しい藤井聡・京都大大学院教授は「敦賀原発をつくるときも徹底した調査をしており、それが否定されれば、すべての原発で同様の調査をしなければいけなくなる」と指摘。エネルギー政策の大幅な見直しにつながる可能性を指摘した。

 「ポンプは全台起動中で、(放射性汚染水を)現在放出中」(吉田昌郎第1原発所長)。東京電力が30日、報道関係者限定で公開した第1原発事故直後の社内テレビ会議映像は、5、6号機などの低濃度汚染水の放出(昨年4月4日夜)について、吉田所長が「ゴーサイン」を出した映像が含まれている。しかし映像には放出に至る経緯は含まれておらず、政府や東電の協議の中身は不明のままだ。(肩書はいずれも当時)【中西拓司】

 

 「(汚染水の)水位を考えると、心臓が止まりそうだ。心臓と胃がキリキリになる最大の原因だ」。吉田氏は3月30日夜のテレビ会議で本店に迫った。

 

 当時は5、6号機や集中廃棄物処理施設で汚染水が急増。各タービン建屋地下でも高濃度汚染水がたまっていた。「汚染水処理で手足を縛られた中、(事故収束で)頑張れと言われても頑張りようがない」(4月4日午前)。吉田氏はそう不満を伝えた。

 

 2号機取水口からは高濃度汚染水が流出しているのが見つかり、政府と東電は同4日午後7時以降、5、6号機などから出た約1万立方メートルをポンプで海洋放出した。細野豪志首相補佐官が「漁業関係者からはさまざまな厳しい声をいただいているが、我々は結果を求められている」(同5日午前)と述べたが、政府の事故調査報告書では諸外国に放出開始の連絡がなかったことが分かっている。

 

 結果的に「見切り発車」の放出となったが、今回公開分では政府と東電の詳細な協議は含まれていない。3月28日には吉田氏が本店を訪れ、放出を本店に求めたことが国会事故調の報告書で明記されているが、肝心の同23日未明以降、30日未明までは未公開のまま。一方、東電は11月30日の会見で「放出を判断したのは(テレビ会議回線がない)本店6階で、ビデオ映像には含まれていない。判断の瞬間の映像はない」と述べており、放出の経緯を示す検証は困難な状況だ。

 

 一方、ぎりぎりの状況で作業に当たる社員の肉声も残る。

 

 本店社員が、4号機使用済み核燃料プールについて「(真水の代わりに)塩水を入れるとまずい」と指摘したのに対し、武黒一郎フェローが「今死なない(溶融しない)ようにしてから、あとで死ぬか考えよう」(3月16日午後)と、海水注入を容認する場面も。物資不足のため、第1原発社員が「朝昼兼用の食事の用意ができた。1人にクラッカー1個と缶詰1個。スプーンが不足しているのでマイスプーンを使ってほしい」(同正午ごろ)と呼びかける場面もあった。

 東京電力は30日、昨年の福島第1原発事故後の対応を記録した社内テレビ会議のうち、未公開部分だった約336時間分を報道関係者に公開した。昨年3月16〜23日と、30日〜4月6日で、3号機の使用済み核燃料プールへの放水作業や低濃度の放射性物質を含む汚染水の海洋放出などの対応が記録されている。現場では消防車による地上からの放水を優先したい意向だったが、政治判断でヘリによる放水が優先されていたことが明らかになった。

 

 公開は、事故直後から昨年3月15日までの約150時間分の前回(今年8月)に続き2回目。東電本店の対策本部に詰めた政治家の肉声も初公開された。

 

 映像では3月16日、4号機の使用済み核燃料プールの水位の低下が心配されたが、本店からの明確な放水指示がないことに、吉田昌郎(まさお)・第1原発所長(当時)が「爆発したら死んじゃうんだぜ」と反発。本店の対策本部にいた細野豪志首相補佐官(同)が「リスクをできるだけ少なくするため、継続して努力します」となだめた。

 

 自衛隊ヘリによる3号機への海水投下は17日午前9時48分に始まった。この様子をテレビで見た社員は「おー、いった。よし。もう一発か」と歓声を上げるが、直後には「届いてねーや」「霧吹きやなあ」と失望感をあらわにするなど一喜一憂した。それに先立ち、細野氏は「現場は下からの放水を優先したいか」と尋ね、吉田氏は「取り急ぎやってみたい」と主張。だが、最終的に細野氏が「菅直人首相らと緊急協議した結果」と突っぱね、ヘリによる放水が決まった。

 

 国内外から批判された4月4日の低濃度汚染水の海洋放出では、吉田氏が「水槽を作っていては間に合わない。水の処理が喫緊の課題」と訴えるなど、現場のいらだちが目立った。

 

 東電は、336時間分のうち、汚染水の海洋放出などの場面を抜粋。社員のプライバシー保護を理由に、個人が特定できる音声部分4009カ所、映像部分203カ所を処理して視聴できないようにした上で、約1時間50分の映像をウェブサイト(http://photo.tepco.co.jp)に掲載した。

 東京電力の原発でミスやトラブルが相次いでいるため、原子力規制委員会の田中俊一委員長は28日の記者会見で、「東電の安全対策の取り組みに疑念がある」として、東電経営陣から事情を聴く方針を明らかにした。規制委事務局の池田克彦・原子力規制庁長官が29日、広瀬直己社長らに面会する。

 

 田中委員長は「東電では、制御棒脱落事故(07年発覚)など福島事故前からいろいろな問題が発生している。どこかおかしいのではないか。(作業を)下請けに任せっぱなしにしていないか」と指摘。「次々と際限なく繰り返す体質にメスを入れなければならない」と述べた。

 

 28日の規制委の定例会では、柏崎刈羽原発の燃料集合体変形問題のほか、同原発2〜4号機の保安規定違反が約3500件に上ったことが報告された。全議題が東電のミスやトラブルに関係する内容だった。【中西拓司】

 野田内閣は27日の復興推進会議(議長・野田佳彦首相)で、東日本大震災の復興予算の流用問題について、2011、12年度予算の11府省35事業、168億円分の執行を止めることを正式に決めた。

 

 復興予算を見直すための新たな基準「基本的な考え方」も決めた。被災地の復興と被災者の生活再建に限り、事業ごとに厳しく精査する。被災地以外の全国防災事業は内容を見極め、河川の津波対策や学校の耐震化などに限り、そのほかは原則として盛り込まない。

 

 新基準は13年度予算から適用する。被災地の復旧・復興に直結する事業の財源を確保するため、予算案の編成に合わせ、復興財源の枠組みを見直すことも打ち出した。また、11年度の補正予算の中で、被災地で使い切れていない分を13年度に繰り越す手続きを簡単にする。

 

 首相は会議で「被災地の復興に最優先で使ってほしいとの声に真摯(しんし)に耳を傾けなければならない」と強調。関係大臣に被災地最優先の対応を指示した。

 東京電力福島第1原発事故を受け福島県が実施している県民健康管理調査の検討委員会を巡る一連の問題で、県は19日、情報公開請求後に一部の議論を削除して公開した検討委の議事録を修正し改めて請求者に開示した。内部被ばくの検査で精度が高いとされる尿検査の実施を国側から提案されながら県側が難色を示すやりとりが追加された。修正前の議事録に全くなく、専門家は「被害を低く評価するため(少しの内部被ばくでも検出する)尿検査をやりたくないとの本音を見せたくなかったからでは」と批判している。【日野行介】

 

 尿検査を巡るやりとりがあったと修正されたのは、昨年6月18日に開かれた第2回検討委(非公開)の議事録。

 

 この検討委では同県浪江町と飯舘村、川俣町山木屋地区の住民約2万8000人を対象とする被ばくの先行調査について議論した。修正された議事録によると、ホールボディーカウンター(WBC)と呼ばれる大型機器と尿検査による内部被ばく検査を巡り、オブザーバーとして出席した内閣府幹部らが「尿検査を本流に位置づけるべきだ」と指摘。だが、県側は「尿検査よりWBCとみんなが言っている状況で、尿に舵(かじ)を切れない」などと難色を示していた。

 

 結局、検討委後の昨年6月末から、県は百数十人のみを対象にWBCと尿検査による内部被ばく検査を行い、健康に影響が出るレベルの放射線量は測定されなかったとした。その後、県は一部住民を対象にWBCでの内部被ばく検査を続けているが、尿検査については一貫して導入に慎重な姿勢を示している。

 

 議事録を巡っては第1〜3回の検討委について、県民からの情報公開請求時に実際には作成していなかったのに、職員の手持ちメモに基づき急きょ作成し開示していたことが発覚。県が先月公表した内部調査では「職員の手持ちメモから一部を除いて作成し開示したという不適切な処理があった」と、議論の一部を削除していたことを明らかにしていた。

 

 県によると、公開請求時には既に、今回改めて開示したのと同じ内容の「議事メモ」が作成されていたにもかかわらず、部分的に削除して議事録として開示していたという。県健康管理調査室の佐々恵一室長は「元々の議事メモはここ(調査室)にあったが、誰がどういう意図で(情報公開時に)削ったかは分からない」と話している。

中部電力は19日、静岡県御前崎市の浜岡原子力発電所1号機に保管されている使用済みの破損燃料棒1本に、幅0・5ミリのひび割れがあったことを明らかにした。

 

 1995年4月に確認し、国には報告していたが、県や地元自治体には17年間報告していなかった。

 

 同1号機で94年に微量の放射能漏れ事故があり、中部電は当時、原因について「燃料棒にピンホール(微小な穴)が開いていたと推定される」と公表していた。その後、調査で燃料棒を移動させた際、ひびがあるのを確認し、95年5月に通産省(当時)に報告した。穴により燃料棒の強度が低下したとみられる。

 

 中部電は同県や地元自治体と安全協定を結んでいるが、ひび割れによる新たなトラブルはなかったため、報告義務の事項には該当しないと判断したという。

 

 取材に対し、長尾一郎・県危機管理監代理は「ゆゆしき事態で、正しい情報を常に開示してほしいと苦言を伝えた」と語った。

 東京電力福島第1原発事故で、東電は12日、事前の津波対策について「対処は可能だった」とする見解を明らかにした。外部有識者などでつくる「原子力改革監視委員会」の初会合で東電が示した。シビアアクシデント(過酷事故)対策が進まなかった点についても「経営陣の油断があった」と自らの問題点に言及。6月に公表した社内事故調査委員会の報告書では、事故の直接的な原因を「想定外の津波」としており、これまでの見解を一転させ、事実上の不作為を認めた。

 

 見解は同委員会の監視下で、実務を担う「原子力改革特別タスクフォース」がまとめたもので、事故に対する問題点として、(1)津波に対する必要な対策は取れた(2)外国の対策を取り入れていれば事故の影響を緩和できた(3)事故対応を想定した訓練が行われていなかった−の3点を挙げた。

 

 津波の想定が不十分だった点については、巨大津波の痕跡や記録がないことだけで津波は来ないと判断した点を問題視し、「未成熟な確率論で発生頻度を過小評価した」と説明。炉心損傷など過酷事故対策が不足していた背景については「経営層に過酷事故は極めて起こりにくいという油断があった」と認めた。過酷事故対策の必要性を認めることで、訴訟リスクが高まることを懸念した点も明らかにした。

 誰のための「復興」なのか−−。11日に流会となった東日本大震災の復興予算を巡る衆院の小委員会。被災地と直接関係のない予算措置が次々と明らかになる中、過半数を占める民主党委員が欠席したことで、被災者からは「選挙前の政党間の争い」「各省庁の予算の奪い合い」といった怒りや諦めの声が飛び交った。【宮崎隆、高尾具成、金森崇之、泉谷由梨子、蓬田正志】

 

 岩手県大槌町の無職、佐々木テルさん(83)は「震災から1年半が過ぎても私たち被災者はどこに家を建てられるかさえ分からない。被災地から遠く離れたところにお金を使うのは、本末転倒ではないか」と憤る。同町の無職女性(61)も「各省庁が拡大解釈して、予算の争奪合戦をしたのだろう。純粋に被災地のために使ってほしいと願わずにはいられない。多くの一般市民はみんな驚き、絶句している」と嘆いた。

 

 自宅を津波で失った仙台市青葉区の無職、山下隆平さん(64)は「国会議員なら、国会で議論することが仕事のはず。偉い人たちが何を考えているか分からない。がっかりするのにも慣れてきた」とつぶやいた。

 

 東京電力福島第1原発の事故で避難生活を送る福島県の被災者も怒りをあらわにした。大熊町から南相馬市に避難中の元タクシー運転手、佐々木久さん(52)は「ここらはまだ田んぼの中に車が落ち、ガードレールもさびたまま。民主党が私利私欲のために動いていることがよく分かった」とあきれた様子。

 東京電力福島第1原発事故を受けた福島県の県民健康管理調査について専門家が意見を交わす検討委員会で、事前に見解をすり合わせる「秘密会」の存在が明らかになった。昨年5月の検討委発足に伴い約1年半にわたり開かれた秘密会は、別会場で開いて配布資料は回収し、出席者に県が口止めするほど「保秘」を徹底。県の担当者は調査結果が事前にマスコミに漏れるのを防ぐことも目的の一つだと認めた。信頼を得るための情報公開とほど遠い姿勢に識者から批判の声が上がった。【日野行介、武本光政】

 

 9月11日午後1時過ぎ。福島県庁西庁舎7階の一室に、検討委のメンバーが相次いで入った。「本番(の検討委)は2時からです。今日の議題は甲状腺です」。司会役が切り出した。委員らの手元には、検討委で傍聴者らにも配布されることになる資料が配られた。

 

 約30分の秘密会が終わると、県職員は「資料は置いて三々五々(検討委の)会場に向かってください」と要請。事前の「調整」が発覚するのを懸念する様子をうかがわせた。次々と部屋を後にする委員たち。「バラバラの方がいいかな」。談笑しながら1階に向かうエレベーターに乗り込み、検討委の会場である福島市内の公共施設に歩いて向かった。

 

 県や委員らはこうした秘密会を「準備会」と呼ぶ。関係者によると、昨年7月24日の第3回検討委までは約1週間前に、その後は検討委当日の直前に開かれ、約2時間に及ぶことも。第3回検討委に伴う秘密会(昨年7月17日)は会場を直前に変更し、JR福島駅前のホテルで開催。県側は委員らに「他言なさらないように」と口止めしていた。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は26日の定例記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故について、「(事故が)収束というのは正しくない」と述べた。

 

 昨年12月、原子炉の安定化の目安とされる「冷温停止状態」を達成した際、野田首相は記者会見で「事故そのものは収束した」と述べており、政府とは食い違う認識を示した。

 

 3号機の使用済み核燃料一時貯蔵プールで起きた鉄骨落下事故を踏まえた発言で、田中委員長は「まだまだリスクが残っている。収束というのは一般的な意味で正しいとは思わない」と話した。

 [東京 19日 ロイター] 古川元久国家戦略相は19日、閣議後の会見で、「革新的エネルギー・環境戦略」の内容を踏まえた今後の方針について閣議決定されたが「2030年代に原発稼働ゼロが可能となるよう、あらゆる政策資源を投入する」との文言が閣議決定文書に盛り込まれなかったことに関して、全文を閣議決定しない事例は過去にも事例があると釈明。

 

 閣議決定は「政府一体となって、戦略を踏まえて政策を遂行していくことを明確にしたもの」と述べ、「脱原発」を目指す時期を明示できなかった理由についての明確な説明はなかった。

 

 閣議決定内容について古川担当相は、14日に発表した「革新的エネルギー・環境戦略」で今後のエネルギー政策の方向性を提起し、「この戦略を踏まえて、今後グリーン政策大綱、地球温暖化対策の計画、エネルギー基本計画、原子力人材や技術維持強化策といった、エネルギー環境政策の具体化を図るなど、実際の政策決定プロセスを見据え、政府一体となって、戦略を踏まえて政策を遂行していくことを明確にしたもの」と説明。「実際の政策決定プロセスを見据えたもので、何ら決定内容を変えたということではない」と繰り返した。

 

 しかし、政府方針を全文閣議決定することができず、「30年代に原発稼働ゼロ」を目指す方針の拘束力は乏しくなった。年限を明記できなかった理由や、閣議決定できなかった理由を再三問われたが、古川担当相は、「確かな方向性を示すと同時に、状況に応じて柔軟に(対応すること)がこの戦略だ。大きな方向性を定めたわけで、そこに向けて足元から、ひとつひとつ具体的な政策を詰めていくことが極めて重要なことだ」と繰り返した。

 政府の「エネルギー環境会議」でまとめた方針に「30年代に原発稼働ゼロ」を目指す方向性を明記しながら閣議決定できなかったのは国民に対する背信行為ではないかとの厳しい質問にも、「戦略を踏まえて、実際の政策遂行プロセスを行っていくことを決めた」とし、本文をそのまま閣議決定しないやり方は、原子力政策大綱など過去にも事例があるなどと釈明した。

 

 古川担当相によると、閣議決定の文言は「今後のエネルギー・環境政策については、革新的エネルギー・環境戦略を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性をもって不断の検証を行いながら遂行する」となった。

 

 <日銀には、強力な金融緩和期待>

 

 18日から開催されている日銀の金融政策決定会合に関連して、物価目標の早期実現に向け結果を出すことが重要だとし、日銀には「デフレ脱却が確実になるまで強力な金融緩和を期待する」と述べた。

(ロイターニュース 吉川 裕子)

 経済産業省原子力安全・保安院は14日、北陸電力志賀原子力発電所(石川県)の敷地内で活断層の確認を怠ったと疑われる問題について、国の評価の経緯に関する調査報告書を公表した。

 

 報告書では、保安院の担当者が2006年以降に行った耐震安全性評価で、「活動性はない」とする北陸電力の報告をうのみにしたほか、敷地内の断層を調査していた他の原発の状況を保安院内部で情報共有しなかったため、評価が必要との認識に至らず、対象から漏れたと結論づけた。

 

 問題視されているのは原発の敷地内にある「破砕帯」という断層。動くと地盤がずれ、建屋が傾いて原子炉などに損傷を与えると懸念されるが、国は志賀を含む各原発の設置許可段階で「問題なし」としていた。

 

 報告書によると、保安院は耐震安全性評価の際、07年の新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発に近い活断層が動いたことを踏まえ、周辺活断層の評価を優先させる一方で、破砕帯の取り扱いは決めなかった。

 

 このため、志賀原発については、北陸電力からの報告書に、敷地内にある破砕帯の図面も含まれていたが、保安院担当者は「活動性はない」とする報告書の記述や、当時は破砕帯を危険視する文献がなかったことなどから、破砕帯を評価対象に含めなかった。

 環境省が福島県内でゲノム(全遺伝情報)調査を計画していることに、専門家から「被ばくの健康影響は分からず、意味がないのでは」と疑問視する声が出ている問題で、同省は6日、13年度予算の概算要求に11億9200万円を計上することを明らかにした。細野豪志環境相は記者会見で「さまざまな低線量被ばくのリスクに備える意味で有効な手段」と述べた。

 

 来年度から5年間に、県内500組の父母子計1500人に協力を依頼。血液やさい帯血を採取し、専用の装置でゲノムを解読する。さらに、スーパーコンピューターでゲノムデータを解析する。了解が得られれば、祖父母からもゲノムデータを収集する。環境省は「原発事故の放射線の影響で遺伝子が変異しているかを調べる」としている。

 

 計画を巡っては、中村祐輔シカゴ大教授ら複数の専門家から、「遺伝子に変異があっても放射線の影響かどうかは分からない」「通常の変異が原発事故と結びつけられ、差別や偏見を生む恐れがある」などと、批判する声が相次いでいる。【比嘉洋】

 原発直下に地盤をずらす「断層」があっても原発の運転を一律に禁止せず、継続の可能性を残す新たな安全評価基準の導入を、経済産業省原子力安全・保安院が検討していることが28日、分かった。

 

 保安院は従来「活断層の真上に原子炉を建ててはならない」との見解を示していた。新基準では、これまでは活断層と判断される可能性があった一部の断層について原発の直下にあっても、ずれの量が小さく原子炉建屋などに影響が生じないと評価されれば原発の運転継続も可能になるとみられる。

 

 だが「ずれの量の正確な評価手法はまだ完全ではない」(保安院)など課題も多い。

 東京電力福島第1原発事故で、東電の勝俣恒久会長(当時、以下同)が3号機が水素爆発する可能性を指摘されながら、「国民を騒がせるのがいいかどうか。社長会見で聞かれたら否定する」と発言していたことが9日、東電のテレビ会議の映像で分かった。混乱を理由に情報開示を回避する発言は他の幹部にも見られ、改めて東電の消極姿勢が浮き彫りになった。

 映像によると、昨年3月13日夜、武黒一郎フェローから本社の勝俣会長に電話があった。勝俣会長は3号機原子炉の爆発を防ぐため、格納容器の蒸気を外部に放出する「ベント」について楽観的な見通しを語った。

 その後、武黒フェローが水素爆発の懸念を伝えたとみられるやりとりがあり、勝俣会長は「水素の問題?それは確率的には非常に少ないと思うよ」などと発言。「国民を騒がせるのがいいかどうかの判断だけど。社長会見で聞かれたらそれは否定するよ」と述べた。3号機原子炉建屋は翌14日午前、水素爆発した。

 一方、計画停電の対応を協議していた藤本孝副社長は14日未明、枝野幸男官房長官らから、実施を先送りするよう要請されたと社内で説明。予定していた同日午前の停電は中止することになった。

 しかし話が記者会見に及ぶと、藤本副社長は「今のままだったら、やるとかえって混乱する」と強調。「社長室で、広報するのはやめようということにしたんだよ」と言い切った。

 福島第1原発3号機で昨年3月14日に起きた水素爆発の直後、福島県が東京電力に「健康被害の心配はない」とする文言を報道発表資料に記載するよう要請していたことが8日、東電が報道関係者に公開している社内テレビ会議の録画映像で分かった。

 映像によると、昨年3月14日午後1時20分ごろ、東電広報班が同社福島事務所からの依頼として「3号機の爆発に関するプレス(報道発表)文に、福島県知事から『いま北西の風が吹いており、観測された放射線量から健康に被害が出る心配はない』という文言を入れたい、入れてほしいという話があった」と東電本店非常災害対策室に連絡した。

 対策室は健康被害に言及することに難色を示し、「(放射性物質が風に)揺られて戻ってくることもある。拡散作用で薄くなっているとは思うが(健康被害の心配はないと)言い切るのはリスキー(危険)だ」と指摘。「(首相)官邸に県知事からこういう意見が出てますと言ってほしい」と回答して結局、報道発表資料に記載されなかった。

 3号機の水素爆発は14日午前11時ごろ発生。文部科学省所管の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の拡散予測データでは、14日は午前中から太平洋方向への西風が吹いていたが、同日深夜に風向きが南に変わり、翌15日昼すぎには西や北西など内陸方向に吹いていた。

 県原子力安全対策課は「当時の状況や経緯は分からないが、根拠にした線量は東電の測定データだと推測される。一般的に東電の報道発表の表現について助言したり、感想を述べたりすることはある」と話している。

 経済産業省資源エネルギー庁の吉野恭司原子力政策課長が昨年12月、政府の原子力委員会に対して「脱原発シナリオの分析を行うことは、慎重派を勇気づける材料にはなっても、原子力を維持する材料にはならない」などとする文書を示し、脱原発の検討を当面控えるように要請していたことが3日分かった。枝野幸男経産相が同日の閣議後記者会見で明らかにした。枝野経産相は文書について「個人的に作成されたメモ」としながらも「政府が原発維持を画策していると受け止められてもやむを得ない」と指摘した。経産省は同課長を厳重注意処分とした。

 

 経産省によると、同課長は昨年12月、原子力委員会の近藤駿介委員長を訪問。東京電力福島第1原発事故を受けて、原子力委が設置した核燃料サイクルに関する検討小委員会の議論の進め方を話し合った際、同課長は政府が将来の原発依存度をどうするかの方針を決定する前に、原子力委が「脱原発」シナリオを前提に核燃料サイクルのあり方を分析・議論することを控えるように求める文書を渡した。同課長は経産省の内部調査に対し、「大変反省している」と話しているという。【小倉祥徳、種市房子】