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聖痕現象

伝説

世にも不思議な現象として「聖痕現象(スティグマータ)」と呼ばれるものがある。宗教上特別な日になると、掌や、わき腹、足の甲等、キリストが負った傷と同じ場所から血が流れるというのだ。

プラシーボ効果での信頼できない説明

人間の体の構造上、掌に釘を打っても体重を支えることはできない。本当のキリストは手首に釘を刺されていたという。また、キリストが突かれたのは右のわき腹だと思い込ませると、聖痕は右わき腹に出現し、左わき腹だと思い込ませると左わき腹に出現する。

つまり、聖痕の位置は本人の思い込み次第で変化するということなのだ。ということは、これが宗教的な超常現象だと考えるのはおかしい。

実は、このような現象を説明する効果が存在する。それはプラシーボ効果である。人間は思い込みだけで病気を治すことだってできてしまう。逆に病気になることもできる。「病は気から」という言葉は正しかったのだ。

思い込みで火傷が生じることや、逆に火傷を防ぐことができるなど、様々な研究が発表されている。このプラシーボ効果こそが、聖痕現象を説明するのに適している。

心理的要因による火傷の研究

イリノイ大学心理学科のゴードン・L・ポールは、1886年から1957年までに報告された
催眠暗示による火傷の誘発実験を検討した。ポールは大半の実験は不備があることを指摘した。[1]

アメリカの心理学者T・X・バーバーは、1955年〜58年にトランス状態下で心理的要因によって火傷(水泡)が生じるかという試験を行ったが、皮膚には何の変化も起こらなかった[2]

聖痕現象の実情

聖痕現象が現れたとされる多くの人物は、それがインチキであると指摘されている。

古くは1543年、Magdalena de la Cruzが、自らのインチキを告白した。Maria de la Visitacionは、1587年に聖痕を作っているところを見つかった。1984年にはGigliola Giorginiが詐欺を行ったとして有罪となった。

トリックが可能な状況のみで聖痕が生じるため、20世紀において最も有名な聖痕の持ち主とされる、Theresa NeumannやPadre Pioも詐欺を疑われている。

基本的に聖痕現象の正体は、心霊手術に見られるようなトリックか自傷であるという考え方が妥当である。

参考

CSICOP:The Stigmata of Lilian Bernas


  • [1]数件の説明できない例があったが、全ての例が説明できなければならないとするのは疑似科学の考え方である。この数件をもって、ポールの研究は心理的要因による火傷を証明する例として引用されることになる。
  • [2]バーバーはビリーバであった。この実験でも自分の信念を曲げず、結果とはうらはらに心理的要因で火傷が起こるのは事実とした。後年の実験で自身の信念通りの結果を出すことに成功した。