藤田幸久 (911陰謀論)
民主党参議院議員の藤田幸久(Yukihisa Fujita)氏は「9.11疑惑関連資料集」なるページを公開している。ここでは
と述べ、自分が陰謀論者であることを否定している。しかし、デヴィッド・レイ・グリフィン、きくちゆみや童子丸開といった自作自演説の扇動者とともに著書「9.11テロ疑惑国会追及」を書いており、国会やテレビ番組等で取り上げている「疑惑」も自作自演説を主題としている。そもそも藤田議員の言っていることのほとんどは、きくちゆみ氏の受け売りである。週刊文春 2008年1月24日号において、『「9・11」陰謀説をブチあげた民主藤田幸久に「あの人ダイジョブ?」』と、書かれましたが、私は誰かの陰謀などと言及したことはありません。
陰謀論でないというのであれば、なぜ、読売テレビの「たかじんのそこまで言って委員会」の「陰謀説ゴングショー」(2009年6月14日)などという番組にわざわざ出演するのだろうか?
よって、藤田議員は陰謀論者であるとみなされても仕方がないだろう。どうも「陰謀であるとさえ言わなければ、陰謀論ではない」という考えのようだ。「誰某の陰謀だ!」とはっきり言ってしまうと、陰謀論だとみなされてしまうため、「真相究明」を謳う陰謀論者は「再調査が必要だと言っているだけで、陰謀とは言っていない」というスタンスを取るのが一般的である。
「自作自演」の削除
藤田議員の「9.11疑惑関連資料集」には以前、以下のような「ある県の知事」からのメッセージが紹介されていた。
ある県の知事からは「私は、9.11テロは自作自演ではないかと思っています。テロとの戦いへの大義が欲しかったのではないかと思います」とのメッセージを頂きました。
ところが、2010年6月に確認したところ、このメッセージは書きかえられ、以下のように「自作自演ではないかと思っています」の部分が消されていた。
ある県の知事さんからは「私は、9.11テロは、テロとの戦いへの大義が欲しかったのではないかと思います」とのメッセージを頂きました。
しかし、ブログのほうにはまだもとの文章が残っているようで、以下のエントリでそれを確かめることができる。(msqさんからの情報)
- 「9.11への取り組みは犠牲者の視点から」 藤田幸久at 2009/9/24 23:29:35
ある県の知事からは「私は、9.11テロは自作自演ではないかと思っています。テロとの戦いへの大義が欲しかったのではないかと思います」とのメッセージを頂きました。
- 「出版1ヶ月、多くのご支援有難うございます」 藤田幸久at 2009/5/08 01:04:12
ある他県の知事からは「私は、9.11テロは自作自演ではないかと思っています。テロとの戦いへの大義が欲しかったのではないかと思います。アイゼンハワー大統領の退任演説で産軍複合体について言及した米国への恐れが何度も出てきているように思えます」とのメッセージを頂きました。
これらの文章もいずれ書きかえられるのであろうか?
時系列
- 2008年1月:国会における質疑応答で、911陰謀論について取り上げた。(文献1) なお、このときの藤田議員の発言の問題点については、「PULL IT (ボーイングの行方)」の「参議院外交防衛委員会 2008年1月10日 藤田議員の指摘の問題点」を参照。週刊文春の2008年1月24日号には9・11」陰謀説をブチあげた民主藤田幸久に「あの人ダイジョブ?」』という記事が掲載された。
- 同年2月:EU議会訪問
- 同年6月:藤田議員のブログ「世界一の予言者、ジュセリーノさんと会食」(2008/6/09)によると、的中率90%の予言者と自称するジュセリーノ・ダ・ルース氏と会食し、「9.11などについても貴重なお話」をうかがったそうな。ジュセリーノ氏と握手してる写真もブログには掲載されている。はたして、予言者に意見をうかがう政治家ってどうなのだろう? どうも2008/6/09のエントリは消されてしまったようなので、全文を引用しておく。
今世界で最も注目されている予言者である、ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルースさんと数名の国会議員で夕食をとりながらお話をうかがう機会を得ました。
ブラジルで英語教師のジュセリーノさんは、スマトラ沖大地震、阪神・淡路大地震、東京地下鉄サリン事件、中国四川省大地震、イラクのサダム・フセイン元大統領の逃亡先の所在、アメリカの9.11テロなど数多くの予言を的中させ、的中率90%という、テレビ・雑誌等で話題の人です。
今後の自然災害の可能性、9.11などについても貴重なお話をうかがいました。
ひげ面の変わった人相の人ではなく、極めて2枚目のさわやかな人柄に感銘を受けました。
- 同年9月:911真相究明講演会で講演
- 同年11月:「第2回911真相究明国際会議」に出席。パネルディスカッションで、グリフィン博士と同席する藤田氏を「第2回911真相究明国際会議の写真」(ハーモニクスライフギャラリー)で見ることができる。
- 2009年3月:著書「9.11テロ疑惑国会追及」を刊行した。共著者はデヴィッド・レイ・グリフィン、きくち ゆみ、童子丸開と千早である。この本に対する批判は「PULL IT (ボーイングの行方)」の「藤田幸久編著『9.11テロ疑惑国会追及』について」を参照。
- 同年4月:藤田氏のブログの「藤田幸久出版記念会&特別委員長就任報告会」(2009/4/10)によると、民主党を代表しての挨拶は鳩山由紀夫幹事長が行い、鳩山氏は、このテロとの戦いの原点の追求の意義を述べると共に、「命をかけても取り組む覚悟はありますよね!」と、藤田氏の決意を確認したとのこと。
- 同年6月:読売テレビの「たかじんのそこまで言って委員会」に登場
- 同年12月:「12月5日(土)朝10時から東京お茶ノ水の全電通ホールで開催される、「911真相究明建築家講演会」でご挨拶します」(藤田幸久Blog at 2009/12/03 10:02:45)とのこと。きくちゆみのブログ「真珠湾攻撃の日に「新しい真珠湾攻撃(と呼ばれる911事件)」を日本の国会で検証」(2009/12/08)によると、8日には参議院議員会館にて藤田議員の呼びかけで、国会議員に対するリチャード・ゲージのブリーフィングが開かれた。その結果、衆議院議員の齋藤勁も陰謀論に感化されたようだ。「齋藤勁(さいとうつよし)議員のメッセージ「911の真相究明のために立ち上がろう」」(きくちゆみのブログ, 2009/12/25)を参照。
- 2010年1月:週刊朝日1/22号に「WTCビルは爆破解体された」というリチャード・ゲイジのインタビュー記事が掲載されたが、藤田議員も「公式説明は説得力を欠く」というタイトルの記事を寄せている。ここでも『こういう話をすると、すぐに「陰謀論者」というレッテルを張られますが、私は再調査が必要だと言っているだけで、陰謀とは一言も言っていません』と述べている。
- 同年3月:米紙ワシントン・ポストで「日本の指導的な政治家が9/11ファンタジーを支持」(A leading Japanese politician espouses a 9/11 fantasy, Monday, March 8, 2010)として紹介される。
ワシントン・ポストによる批判
- 「 A leading Japanese politician espouses a 9/11 fantasy」 The Washington Post, Monday, March 8, 2010
2010年3月、米紙ワシントン・ポストで藤田氏は「日本の指導的な政治家が9/11ファンタジー(空想、幻想)を支持」と批判される。これを受けて以下のような報道が日本でもなされた。
- 「米紙、9・11陰謀説の民主・藤田議員を酷評」(リンク切れ) 読売新聞, 2 010年3月9日13時36分
【ワシントン=小川聡】米ワシントン・ポスト紙は8日付の社説で、民主党の藤田幸久国際局長が同紙のインタビューに応じ、2001年9月11日の米同時テロがテロリストの仕業ではなかったという「陰謀説」を示唆したとして、「民主党と鳩山政権に広まる反米的思考の気質が反映されたものとみられる」と批判した。
社説は、藤田氏が米同時テロについて「株取引のもうけを狙った陰謀」の可能性を提起したと紹介。「こうした正気を失った過激派の空想に影響されやすい人物が、世界第2位の経済力を誇りにしている国の統治機関の中で重要な地位を占めている」として、民主党政権の反米気質と関連づけて解説した。
そのうえで鳩山首相について、「日米同盟が安全保障の礎石だと再確認しているが、首相と民主党政権の行動は、そうした約束について疑問を提起している」と分析し、「首相が藤田氏のような向こう見ずで、事実を無視する党分子を大目に見るかどうかで、日米同盟が厳しく試されるだろう」と指摘した。
藤田氏は9日昼、「ワシントン・ポストの記者に雑談で話したことだ。内容がきちんと伝わっておらず、誤解がある。党の見解を述べたものではない」と述べた。
藤田氏は、民間活動団体(NGO)をへて1996年衆院選で初当選した。2005年に落選後、07年参院選で茨城選挙区から立候補して当選した。
- 「Wポスト紙、民主・藤田議員を酷評 同時多発テロ発言で」(リンク切れ) 朝日新聞, 2010年3月9日12時55分
【ワシントン=伊藤宏】米紙ワシントン・ポストは8日付の社説で、民主党の藤田幸久国際局長(参院議員)が同紙に対し、2001年9月11日の米同時多発テロの犯人像に疑問を挟む発言などをしたとして「突拍子もなく、いい加減で、偽りがあり、まじめな議論に値しない」と酷評した。鳩山由紀夫首相が容認すれば、日米関係に影響するとも警告した。
同紙は、藤田氏が最近の同紙による取材に対し、▽テロリストの犯行かどうかに疑問を挟んだ▽世界貿易センタービルの倒壊が(飛行機の衝突による)火災ではなく、起爆装置で起きた可能性があると示唆した、と紹介。そのうえで、こうした「幻想」は鳩山政権の「反米傾向」を反映していると指摘した。
さらに「藤田氏のような無謀で事実に反した考え方を鳩山氏が容認するなら、日米関係が厳しく問われることになるだろう」と断じた。
藤田氏は、野党時代の08年4月の参院外交防衛委員会で、国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者の関与に疑問を挟む内容の質問をした。今年1月発売の週刊朝日でも、同様の持論を展開。米国の対日専門家らは「ありえない話だ」と批判しており、日米間の新たな問題に発展する可能性もある。
◇
藤田氏は9日、朝日新聞の取材に「インタビュー後の懇談で、一議員としての考えを話したもので、社説は私の肩書を含めて間違った記述もある」と、党や鳩山政権の考えではないことを強調した。
- 「藤田・民主国際局長:「9・11、テロリストの仕業か疑問」 米紙が非難」 毎日新聞 2010年3月10日 東京朝刊
- 「「見解はインチキ」米紙が民主・藤田参院議員の「9・11発言」を批判」 MSN産経ニュース, 2010.3.9 18:41
- 「民主・藤田参院議員 米紙の批判に「発言を歪曲され心外」」 MSN産経ニュース, 2010.3.9 18:38
- 「民主・藤田国際局長米紙に反論 「同時テロ陰謀論言っていない」」 J-CASTニュース, 2010/3/ 9 20:56
上記の記事によると、ワシントン・ポスト紙は、民主党の藤田国際局長が9/11米同時テロがテロリストの仕業ではなかったという「陰謀説」を示唆したとして、「民主党と鳩山政権に広まる反米的思考の気質が反映されたものとみられる」と批判した。 以下がワシントン・ポストの記事翻訳の一部。
「こうした正気を失った過激派の空想に影響されやすい人物が、世界第2位の経済力を誇りにしている国の統治機関の中で重要な地位を占めている」
「本当に公表されたテロリストの犯行かどうか疑わしく、別の陰の勢力が株の利益を得るために実行したとして、19人の『実行犯』のうち8人はまだ健在だとする妄想的な話を(藤田議員は)広めている」
「藤田議員の見解は激しい嫌米傾向に根ざし、その傾向は民主党や鳩山政権全体にも流れているようだ。鳩山由紀夫首相が藤田議員のような無謀で事実に反する要員を自党内に許容するとなると、日米関係は深刻な試練を受ける」
全文和訳はたとえば、以下のリンクで読める。
- 「日本の先頭に立つ政治家が911の幻想を支持する!」 sometimes a little hope, 2010/03/11
鳩山首相はこの件に関して、「藤田議員の個人的な見解であって、党の見解でもないし、ましてや政府の見解でもない。これに尽きる話だ」と述べた。
- 「密約「日米関係に影響与えぬよう対処」9日の鳩山首相(2/3ページ)」 asahi.com、2010年3月9日19時33分
ワシントン・ポストの記事を受けて発表された藤田氏のコメント文書によると、自分は9.11が陰謀だと結論したこともなければ、ビル爆破などと断定したこともないとのこと。インタビューは「移民受け入れ」というテーマで行われ、同時テロについては、「取材外の質問として応対していた」とのこと。記事では肩書きも間違っており、「事実を歪曲した扇動的報道と断ぜざるを得ない」と、編集委員への不信感を露わにしている。
藤田議員自身による反論を、そのブログで読むことができる。
- 「ワシントンポスト(3月8日付)の批判的な社説に対しての私のコメント」 藤田幸久 Blog at 2010/3/09 18:13:55
また、藤田議員がワシントン・ポスト紙に投稿した抗議文を以下のリンクで読める。
- 「An ‘inflammatory' and partial view of a Japanese statesman」 Letters to Editor, The Washington Post, Saturday, March 13, 2010
- 「ワシントン・ポスト私の反論を掲載」 藤田幸久 Blog, at 2010/3/14 00:59:28
ところが、「事実を歪曲した」という藤田議員の主張に対し、ワシントン・ポストは「社説には根拠があり、歪曲や間違いはない」と反論している。
- 「「9・11インチキ発言、歪曲してない」Wポスト、藤田議員に反論」 【ワシントン=古森義久】 MSN産経ニュース, 2010.3.10 22:50
藤田議員に取材したワシントン・ポストの論説委員は産経新聞の取材に対し、8日付の藤田議員批判の社説には歪曲や誤認はなく、訂正の必要はなにもないと強調した、とのこと。藤田議員の主張がおかしいという根拠として以下のものを挙げている。
- 自身が東京で3月はじめに藤田議員にインタビューした際、9・11テロについて述べた同議員の発言
- 藤田議員が出版した本での主張
- 藤田議員のインターネットなどでの主張
こうした米紙の批判を受け、南雲和夫氏はブログで以下のように嘆いている。
- 「米紙が「9.11陰謀論」を批判ー藤田幸久(民主党)議員を酷評」 南雲和夫の非理法権天, 2010年03月09日
「9.11自作自演説」のような陰謀論にはまるような政治家を党内で野放しにすれば、米国紙にたたかれれるだけでなく、結果としてその主張自体も「反米的」と受け止められ、普天間基地移設についても民主党の政策路線をより一層「対米従属」にしかねない。そればかりか、「日本の政権党はこんなナンセンスな主張をする政治家を党内に抱えているのか?」との評判を内外にかもしかねないだろう。
このことが、あとあと日本の平和運動に対して、マイナスの役割を果たすことになっても、陰謀論を取り上げる政治家・もの書き・自称「平和活動家」・学者たちは、目をつぶるのであろうか?
以下の記事の解説も非常にわかりやすい。
- 「「9/11陰謀論」を与党要職にあって展開する外交感覚」 加藤祐子, goo ニュース(ニュースな英語)、2010年3月10日(水)15:00
国会議員が何を考え何を発言するのかは、民主国家なのですから自由です。ただし「9/11はアルカイダによるものではないのではないか」という現時点で通説とはとうてい言い難い内容のことを参議院外交防衛委員会などで発言する議員を、自党の外交関係の要職に置き、国際局長とすることはどうなのだろうか。与党としての外交感覚はいかがなものだろうと。上述したように、外交駆け引きの真っ最中にこんなことで足をすくわれている場合か、そんなスキがあっていいのだろうか。そんなことは強く思います。
こういう場合、相手の立場に立って考えると分かりやすいかと思います。たとえば、地下鉄サリン事件はオウム真理教による犯行じゃないんじゃないかと、米与党要職にある議員が日本の主要紙に大まじめに語ったら、日本のマスコミはその人とその党を、どう扱うでしょうか?
藤田議員は反省したらしい
- 「民主、藤田国際局長を“注意” 米中枢同時テロ「陰謀」発言で」 MSN産経ニュース, 2010.3.18 21:17
- 「藤田国際局長を注意=民主・奥村氏」 時事通信, 2010/03/18-20:42
上記の記事によると、この件について、奥村展三党総務委員長は18日に藤田議員と党本部で会い、「国際局長ポストには対外的重みがある。日米関係は微妙とされており、言動に注意してほしい」と指摘し、口頭で“厳重注意”したとのこと。(なお、今回の対応は党倫理規則に基づく厳重注意ではなく、正式な党の処分とは異なるそうな) これに対し、藤田議員は「反省している」と応じたという。いったいなにをどう反省したのだろう?
The Ground Truth
藤田議員はJohn Farmerの著書「The Ground Truth」(Riverhead, 9/8, 2009)について、自分のブログ「911公式報告書草稿責任者による内部告発」(2009/10/05 11:21:10)で、次のように述べている。
現在は、ラッツガー大学法学部長であり元ニュージャージー州検事総長も務めたファーマー氏は、かつて911委員会の上級スタッフで、委員会報告書草稿作成の責任者でした。彼は本著の中で、911委員会による正式な説明が偽りの証言と文書に基づいており、ほとんど偽りであると断言しています。
そして、911委員会に対して、FBIやCIA、ホワイトハウス、NORADは偽りの情報を提供した、このことを証明する文書も存在すると言います。
しかし、この本でファーマーは911委員会の最終報告書が「ほとんど偽りであると断言」しているわけではない。FBIやCIAについてはあまり述べられておらず、おもにFAAとNORADがウソの証言を911委員会に対して行ったことを取り扱っている。そのウソを暴いたのは911委員会であり、そのことはちゃんと報告書に書かれてある。ファーマー自身は911委員会の報告書は正確で事実に基づいたものだとしている。もちろん自作自演説のような陰謀論を支持する話は一切出てこない。
2003年5月に行われた911委員会の第2回公聴会(二日目)において、NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)のCraig R. McKinley少将やLarry Arnold少将らが証言している。(宣誓供述ではない) ところが、この証言には事実とは異なる内容が含まれており、この食い違いを重く見た911委員会は、同年10月15日にFAA(連邦航空局)、11月6日にDOD(国防総省)に対して召喚状を発行し、関係資料を押収した。さらに2004年6月の第12回公聴会(最後の公聴会)において、NORADのRalph E. Eberhart大将やLarry Arnold少将らを宣誓供述させている。詳しくはNORADとFAA (911陰謀論)を参照。
藤田議員は自分で本当にこの本をちゃんと読んだ上で感想を述べているのであろうか?
ファーマーはFAAとNORADが結託して意図的に真実を隠し偽証したと考えている。ところが、2006年9月に公開されたDODと米国運輸省(DOT)の監察総監の報告書は、意図的な偽証の可能性を否定している。ファーマーの著書はこれらの報告書の結論に抗議する目的で書かれたものだ。911テロ事件当時もその後もアメリカの官僚的な政府機関は危機管理がまったくできておらず、しかもそのことを隠し通そうとしていると本書は批判している。最終章はハリケーン・カトリーナ(Hurricane Katrina)がニューオーリンズにもたらした災害について、ブッシュ政権が911テロ事件の教訓を活かさず無策だったことを批判している。
以下のリンクも参照。
- 「The Ground Truth (John Farmer) と「倒壊する巨塔」(ローレンス・ライト)」 kikulog, 2009/10/17
- 「The Ground Truth (John Farmer) を読みました」 kikulog, 2009/10/27
- 「「9.11委員会以外は、皆ウソをついている」」 PULL IT (ボーイングの行方), (2009/09/25)
そこまで言って委員会 「陰謀説ゴングショー」
2009年6月14日、読売テレビの「たかじんのそこまで言って委員会」に登場し、911陰謀論について語った。この件については、以下のリンクも参照。
- 「藤田幸久氏「たかじんのそこまで言って委員会」に出演」 2009/06/28、「PULL IT (ボーイングの行方)」
この際、番組パネラーの一人だったデーブ・スペクター(Dave Spector)氏に、藤田議員は以下のように罵られた。
あなたの話アホらしいと思ってるんですよね。はっきり言ってね。頭悪いと思ってる、あなたのことね。悪いけど、失礼だけど。頭悪い人としか思えない。参議院で給料もらってる、国からもらってて、こんなくっだらないことよくやってられるな、と思って。
でもね、こんなくだらないことでね、藤田さん。こんなくらだらないことで、その亡くなられた日本人の魂をあなたがバカにしてるんですよ。はっきり言って。誰も疑問視してないんですよ。誰も疑問視してないんですよ。あなただいたい暇すぎるよ、こんなことやって。年金でもやってろよ。ほんとに暇だよね。
そのために、その目的で何千人も殺して貿易センターまでやって、そんなことやると思い込んでんの?あなたバカじゃないの、はっきり言って。答えてくださいよ。頭悪いんじゃないの?はっきり言って、はっきり言ってくださいよ。頭悪いんでしょ、あなた?はっきり言って。はっきり言って、単純な話なんだから。ほんとイライラするよ。
スペクター氏の態度があまりにひどいので、コラムニストの勝谷誠彦氏は、スペクター氏について、『それよりね、僕が今確信したのは、この人やっぱりCIAだわ。こんなムキになるの初めて見た。いつもと全然違う』と述べた。
なお、8人いたパネラーのうち、911陰謀論を「信じる」としたのは田嶋陽子のみであり、藤田氏の話が終わっても考えを変えるパネラーは一人もいなかった。
さらに「きくちゆみのブログとポッドキャスト」の「「たかじんのそこまで言って委員会」がYouTubeに/お金のあり方を変えよう」(2009/06/17)では以下のように、スペクター氏はCIAどころか「天使」になった。
今日、初めて番組を観させていただきましたが、デーブ・スペクターさんに感謝です。これを観た良識ある人は、意味のない罵声を発し続けるデーブさんより、藤田議員をより信頼するでしょう。引き立て役をどうもありがとう(これを彼がわざとやっていたとしたら、天使ね)!
つぎにこの番組における藤田氏の主張を見ていこう。
不自然なプットオプション
ドイツの連邦銀行総裁だったというエルンスト・ヴェルテケ(Ernst Welteke)なる人物の話を根拠に、9.11直前に不自然なプットオプションなどで株のぼろ儲けをした人物がいたと発言。
プットオプションというのは、要するに匿名じゃなくて、具体的に実名、実際の会社がどうかかわかったということを、ドイツ連邦銀行が調査した結果、そういうことがあったと。だからその事実は間違いないということを去年私におっしゃっておられます。
もし、それが本当なら真犯人につながる重要な情報だろう。それなのになぜ、そのぼろ儲けしたという人物や会社の具体的な名前を出さないのだろうか?直接関係のないドイツの連邦銀行総裁だったヴェルテケとかいう人物の名前を出すのは、単なる権威主義にしか聞こえない。
プットオプションについては911 Mythsの「Put Options」を参照。当然アル・カーイダもこうした事前の株の売買を行う可能性があるので、911独立調査委員会もプットオプションを含め、怪しげなインサイダー取引が9/11直前になかったか調査している。その結果、不正な取引はアメリカ内外を含めて、なかったと結論している。911委員会の調査結果は以下のリンクを参照。
- 「Notes」(pdfファイル):9/11 Commission Reportの第5章フットノート130
- 「Terrorist Financing Staff Monograph」(pdfファイル):Commision's Terrorist Financing Staff MonographのAppendix B
- 「Pre-September 11, 2001 Trading Review」 SEC Report, pdfファイル
藤田議員はこうした資料を読んだことはあるのだろうか? このうち第5章フットノート130は「疑問点:UA、AA、メリルリンチ他についてのプットオプション」(PULL IT (ボーイングの行方))で和訳されたものを読むことができる。
ヴェルテケ氏について検索すると以下のような記事が見つかる。
- 「EU Searches for Suspicious Trading」 FOXNEWS.COM, Saturday, September 22, 2001
- 「`Insider trading' by terrorists is suspected in Europe」 BY WILLIAM DROZDIAK, The Miami Herald, September 24, 2001
しかし、これらの記事は、テロリストによる「インサイダー取引」が行われていないか、ヨーロッパにおいて調査されているという内容のものであり、陰謀論を支持するような内容ではない。911委員会のStaff Monographでは、ヴェルテケ氏が主張するような9/11以前に航空会社や保険会社の株、石油や金の価格で不正な取引があった、という事実が確認されたことはないとしている。
ハイジャック犯は生きている。
19名のハイジャック犯のうち8名が生きていると証明されていると発言。BBCとかCBSとかロサンゼルス・タイムズがインタビューしたそうな。しかし、そんな話は他で聞いたことない。何を根拠にこんなことを言っているのであろうか?ハイジャック犯が生きているなら、是非その姿を見てみたいものだ。具体的な映像やインタビューの内容を見せないのはなぜなのか?
これについては911 Mythsの「Hijackers still alive」を参照。FBIが全ハイジャック犯の写真リストを公開したのは9月27日のことであり、それ以前には間違った人物の写真がハイジャック犯として報道されてしまったこともある。もし、こうした誤報を根拠に藤田議員が「ハイジャック犯は生きている」と主張しているのであれば、なんとも情けない話である。
主犯格のモハメド・アタについては、その父親が「息子は犯人ではない。今もきっと、どこかで生きている」と主張している。9月24日の記者会見では「テロはモサドのしわざに違いない。息子のパスポートを使ってやつらがやったんだ。息子はどこかで監禁されている」と主張した。(文献3) モサド陰謀説はイスラム圏では人気のある説であるが、もちろん根拠はない。
911 Mythsでは、生きているとされる9人のハイジャック犯について詳細に検討している。
- 「Mohamed Atta still alive?」
- 「Mohand al-Shehri still alive?」
- 「Salem al-Hazmi still alive?」
- 「Ahmed al-Nami still alive?」
- 「Khalid al-Mihdhar still alive?」
- 「Abdulaziz al-Omari still alive?」
- 「Saeed al-Ghamdi still alive?」
- 「Wail al-Shehri still alive?」
- 「Waleed al-Shehri still alive?」
犯人をだれも訴追もしていない、と意味不明なことも言っているが、「20人目のテロリスト」ザカリアス・ムサウイ(Zacarias Moussaoui)や、9.11テロ発案者のハリード・シェイク・モハンメッド(Khalid Sheik Mohammed, KSM)が逮捕され、裁判にかけられていることを知らないのだろうか?
ブッシュ大統領弾劾決議案
2008年、デニス・クシニッチ(Dennis Kucinich)議員のブッシュ大統領弾劾決議案が下院を通過したことを述べている。ここでの議論は、イラク戦争と911陰謀論をごっちゃにしている。
「陰謀論を否定するかしないか」ということと、「アメリカのイラク侵攻を支持するかしないか」は別問題であり、切り離して考えなくてはいけない。陰謀論は否定するが、その後のアメリカ合衆国政府の対応は支持しない、という立場をとることには何も問題はない。
ブッシュ大統領の弾劾決議案についてはWikipediaに「Movement to impeach George W. Bush」の項目もある。
ペンタゴンの穴は小さすぎる。
これも語りつくされたような典型的な陰謀論。詳細は「ペンタゴンへの攻撃 (911陰謀論)」を参照。藤田議員は、アメリカ土木学会の調査報告書「Pentagon Building Performance Report」に目を通したことはないのだろうか? 77便が突っ込んでないなら、77便はどこに行ったのだろう?残骸とか遺体だとかそういったものがほとんど出てきていない、と述べているが、これはウソ。ペンタゴンにおける法医学的な捜査は2001年11月16日に終了し、189人の犠牲者のうち、184人の身元を特定している。さらに、遺族から提供された犠牲者のDNAサンプルと一致しなかった5人がハイジャック犯とされた。(遺体が確認された犠牲者:184人、未確認の犠牲者:5人、ハイジャック犯:5人)(文献4)
WTC7は6.5秒でストンと落ちた?
東京工業大学の和田章教授に「爆薬を仕掛けて制御解体をしたのではないかという考え方こそ科学的根拠に欠ける考え方だ」とはっきりと否定されたのに、ほんの少しの火災でWTC7は「6.5秒で真空状態のようにストンと落ちた」としている。
ここで藤田議員が見せているWTC7のビデオは、47階建てのWTC7を地上から屋上までを全部写したものなのだろうか?NISTは18階が5.3秒で崩壊したとしている。47階全部が崩壊するにはもっと時間がかかっただろう。詳細は「WTC7の倒壊 (911陰謀論)」を参照。
WTC7が倒壊するのにかかった時間は、倒壊が始まる時間をどう設定するかに依存する。屋上のペントハウスの東側が沈降して、しばらくしてからWTC7の全体的な倒壊が始まるが、陰謀論者の見せるビデオの大部分は、最初の東側の沈降を省略して途中から始まるものばかりである。藤田議員が番組で見せた動画も途中からのものである。WTC7倒壊の全行程は以下のYouTubeの動画で見ることができる。
- 「Collapse of WTC7」 YouTube
屋上のペントハウスの東側の沈降をWTC7倒壊の開始とみなすと、全体で明らかに10秒以上の時間がかかっている。この事実は、目に見える倒壊が始まる前に、建物の内部などの目に見えない部分では、すでに崩壊が始まっていたことを示唆している。
藤田議員はグリフィンやきくちゆみの主張をそのまま鵜呑みにして言っているだけのようだ。これに対し、宮崎哲弥氏はよく勉強しているようで、911委員会はNORADとFAAに召喚状を送りつけて機密文書を出させたことに言及している。
その他
- 「単行本を雑誌と間違える人」 山本弘のSF秘密基地BLOG, 2009年11月03日
リンクと参考文献
- 藤田幸久議員のサイトの以下のページで、国会で行われた911陰謀論の質疑応答の内容や映像を見ることができる。
- 「外交防衛委員会における藤田幸久の質疑議事録」 2008年1月10日
- 『参議院外交防衛委員会「9.11同時多発テロの検証」についての質疑映像』 2008年1月10日
- 「米国同時多発テロに関する質問主意書」 平成20年1月24日
- 「米国同時多発テロに関する再質問主意書」 平成20年2月12日
- 「米国同時多発テロに関する第3回質問主意書」 平成20年3月27日
- 『外交防衛委員会における藤田幸久の質疑議事録「クラスター爆弾/ 思いやり予算 /911真相究明問題」』 2008年4月24日
- 『「クラスター爆弾問題/思いやり予算問題/9.11真相究明」についての質疑映像』 2008年4月24日
- 「9.11陰謀論by藤田議員@「そこまで言って委員会」(追記あり6/19)」 kikulog, 2009/6/18
- 「テロリストの軌跡」 朝日新聞アタ取材班 (著)、草思社 (2002/04)
- 「Forensic feat IDs nearly all Pentagon victims」 Christopher C. Kelly, Stripe, Thursday, November 29, 2001 (dcmilitary.com)