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乳白色の海 (Milky Sea)

「milky sea」(乳白色の海)という現象は、昔から船乗りたちには知られていたが、夜間に見渡す限りの海が均一に白く発光する現象のことである。しかもこの現象は数日間持続し、人工衛星からも観測できる。(文献1) 実際は青白く発光しているのだが、人間の目には白く見える。ジュール・ベルヌの「海底二万海里」にも登場する。ベルヌは当時の船乗り達の体験談を元ネタにしたと考えられる。(文献2)

おそらくこの現象の正体は生物発光だと考えられているが、まだ確かめられたわけではない。ウミホタルなどは刺激を受けた時のみに断続的に発光するので、おそらくmilky seaの正体ではない。考えられるのは発光性のバクテリアの大量発生であり、これだと持続的に均一な発光が可能となる。

しかし、発光バクテリアが発光するには、発光に必要な化学物質を高濃度に蓄積する必要があり、そのためには、バクテリア自身が極めて高濃度になる必要がある。

どの程度の高濃度かというと、10の8乗 cells/ml。ここでcellとは細胞のことで、単細胞のバクテリアが1ミリリットル中に1億匹ということだ。通常、自然界では海中に存在する発光バクテリアはそんな濃度になることはなく、人工培養で高濃度に増殖させた時や、他の生物の体内に寄生した時のみに発光する。水平線の彼方まで光るというのは到底信じられないことである。

そこでMillerらは実際にそんな現象が起こりうるのか、人工衛星からの夜間撮影で検証することにした。(文献1)

近年大規模なmilky seaが発生した記録を検索したところ、1995年にss Limaという船が北西インド洋で目撃した事例が見つかった。ss Limaの航海日誌によると海は水平線の彼方まで乳白色に発光しており、 まるで、雪か雲の上を航行しているようであったとのこと。しかも、これを横断するのに6時間(距離で146km)かかった。

そこで、当時の人工衛星の夜間撮影のデータを検索してみたところ、この大規模な発光現象が写っている写真を発見した、というのが文献1の内容である。「Milky Seas from Space」(文献2)にある写真は、この発光現象をデジタル処理で増幅したのち、昼間の写真と合成して作り上げたものである。

この発光現象は三日間にわたり持続し、最初の日は面積にして15400立方km、最大では17700立方km以上に広がった。推定でバクテリアの濃度は2.8×10^8cells/ml、全バクテリアの数は4×10^22匹。赤潮のように海洋性プランクトンが異常繁殖することもあるので、発光バクテリアが何かの拍子に異常繁殖してもなんら不思議ではない。

しかし、いまだかつて誰もmilky seaからサンプルを持ち帰ったことはないので、その本当の正体はいまだ不明である。

この項目が「カラパイア」で取り上げられた。

8番目に登場。文章はそのまんまパクられてる。


参考文献とリンク

  1. Detection of a bioluminescent milky sea from space」 Steven D. Miller, Steven H. D. Haddock, Christopher D. Elvidge, and Thomas F. Lee, PNAS 102 14181-14184 (2005)
  2. 「The Bioluminescence Web Page」の「Milky Seas from Space
  3. Wikipediaの「Milky seas effect」の項目