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美味しんぼ (東日本大震災)

東日本大震災・デマ・風評被害・陰謀論

人気グルメ漫画「美味しんぼ」の原作者、雁屋哲さんがブログを更新し、30年超続いた連載を終了させる意向を表明した。美味しんぼは直近の「福島の真実編」で福島第一原発構内など福島県内を取材した主人公が鼻血を出し、それを被ばくの影響だとする描写が批判され、福島の描き方を巡る議論となった。

一連の問題について「ビッグコミックスピリッツ」編集部は美味しんぼによせられた批判、意見をまとめ、編集部の見解とともに誌面に掲載した。111巻続いている美味しんぼは「福島の真実編」以降、連載を休止している。

 「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号に掲載された「美味しんぼ」の放射線による身体的影響に関する内容について、日本放射線影響学会有志の見解を示します。漫画雑誌に掲載された内容に関して、学術団体がコメントすることの是非に関する議論もしましたが、当該週刊誌の発行部数が直近の2014年1〜3月において188,385部(一般社団法人 日本雑誌協会)と多いことと表題が「福島の真実(・・)編」であることから社会的影響が大きいと考え、表明するものです。

 

 「美味しんぼ」では、低線量放射線の身体的影響に関して、以下のように描かれています。まず、登場人物が東京電力福島第一原子力発電所を視察した後に、鼻からの出血や疲労感を訴える場面が描かれています。また、大阪府・大阪市が実施した岩手県の震災がれき焼却によって身体的不調を訴える人が大勢いたことを専門家が説明する場面も描かれています。

 

 低線量放射線の身体的影響については、これまでに数多くの学術研究が行われており、以下のことが明らかになっています。

 放射線被ばく後、数週間以内に現れる身体的な異常を放射線による早期影響といいます。放射線による早期影響は、ある一定の被ばく線量を超えると現れます。被ばくした100人に1人以上の割合で影響が現れる最低線量をしきい線量と呼び、これまでに数多くのしきい線量に関するデータが蓄積されてきました。成人で最も低い線量で現れる影響は、睾丸への被ばくによる一時的不妊で、しきい線量は100 mGyと推定されています(国際放射線防護委員会2007年勧告, ICRP Publication 103)。これより低い線量の被ばくでは、鼻血や全身倦怠を含めて臨床的に観察可能な放射線が直接原因となる身体的影響は報告されていません。

 

 残念ながら、作品中では登場人物の被ばく線量に関する記載がありません。もし、これはフィクションであると言うのであれば、「福島の真実(・・)」という言葉は不適切ということになります。もし、実測値があるならば公表すべきですし、今後の放射線防護のためにも正確な状況の記述が重要です。

 

 震災がれきは岩手県由来のものであり、福島県のものではありません。がれきを焼却した焼却工場周辺において、住民の被ばく線量が焼却以前に比べて高くなるような測定値は存在せず、大阪市・大阪府は発行元の小学館へ正式に抗議しています (http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000266273.html)。したがって、作中で描かれた放射線の身体的影響に関して、これまでのところ、これらを支持する学術研究結果はありません。

 

 私達、放射線影響学会員は、放射線の生物影響を遺伝子、細胞、動物、及びヒトなど様々なレベルで研究しています。偶然ではなく、再現性をもって放射線が原因となる生物影響とそのメカニズムを明らかにしようと不断の努力を積み重ねています。しかし、生物影響の現れ方は多様で、動物実験が困難な研究もあります。そのため、放射線の人体影響については、未知のことが多く残されています。作中では、放射線がフリーラジカルの生成を通して身体を構成している細胞にあらゆる悪い作用を及ぼすような描写があります。しかし、被ばくして直ぐに生命に関わるような影響でない場合、影響が明らかになるまでに人体では十年単位の長い時間がかかります。したがって、放射線によるフリーラジカルの発生だけが生物影響を及ぼすということでは片付かないことは明らかです。

 事実(・・)と真実(・・)は、明確に分けて描くべきであり、事実を描くのであれば、どのような状況でどのようなことが起こったのかについてできる限りの丁寧な表現をする必要があります。

 「真実」と言う言葉は極めて重く、安易に使うべきものではありません。今回の漫画作品での取り上げ方から、放射線の生物影響を解明することは、私達、日本放射線影響学会員への付託と重く受け止め、今後も益々研究に精進する所存であります。

 

日本放射線影響学会員有志

同 代表

  福本 学

 東京電力福島第一原子力発電所の事故による被ばくにより、確定的影響の1つとされる疲労感や鼻出血といった症状が多数の住民にあらわれているのではないかとご不安の声をいただきましたので、このような不安による、不当な風評被害が生じることを避けるとともに、福島県内に住んでおられる方々の心情を鑑みて、環境省としての見解を以下のようにお示しいたします。

 

・国連(原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR(アンスケア))が、これまでの知見に基づき公表した「2011年東日本大震災と津波に伴う原発事故による放射線のレベルと影響評価報告書」(平成26年4月2日公表)によれば、住民への健康影響について、「確定的影響は認められない」とされています。

・東京電力福島第一原子力発電所の事故の放射線被ばくが原因で、住民に鼻血が多発しているとは考えられません。

 福島県相馬郡医師会は30日の自民党環境部会で、東京電力福島第1原発事故後に鼻血の症状を訴える患者が増えたかを管内の医療機関に尋ねたアンケート結果を報告した。回答した52医療機関のうち、49件は「増えていない」と回答。残りの3件は、「増えた」あるいは「『鼻血の回数が増えた』と訴える患者がいた」と答えたが、血小板が減るなどの放射線被ばくとの因果関係が疑われる診断結果はなかったという。

 調査は、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の漫画「美味しんぼ」で事故と鼻血を結び付ける描写が波紋を広げたことを受け、同部会が依頼。今月下旬、相馬市▽南相馬市▽新地町▽飯舘村−−の4市町村の66医療機関を対象に実施された。

 また、4市町によると、2011〜13年度に実施した健康診断の受診者延べ3万2110人の中には、事故前と比べ鼻血が出るようになったと訴える人はいなかったという。【阿部周一】

美味しんぼの問題は「鼻血が出るか出ないか」に矮小化されがちだが、これ以外にも不確かな情報をちゃんと検証もせずに流布いることを忘れてはいけない。

上記の山本弘氏のブログに、この話の問題点がよくまとめてある。

その後の動き

 雁屋哲が日本に戻ってきたらしい。

 あの、昨年春頃に連載された時点で、すでに周回遅れの陰謀論ばかりをぶん回し、多くの人に批判された、あの『美味しんぼ「福島の真実編」』の原作者である雁屋哲である。

 いまさら一体何をしに戻ってきたかといえば、美味しんぼの件を書いた本の宣伝らしい。雁屋は朝日新聞の取材に対して「大事なのは、議論すること。私の意見が間違っているというのなら、一緒に議論しましょうよ」と主張しているそうだ。(*1)

 こうしたコツコツと積み上げた現実から離反した「放射性物質の害が!」という大声は、もはやマジメに放射性物質の問題とぶつかり合っている人たちにとっては、ただの耳障りな騒音でしかなく、被災者たちの今後にとっても全く役に立たないどころか、有害でしかない。

 その騒音を今更もって震災復興の現場に持ち込んで「議論!議論!」と騒ぐことに、雁屋の本の売上以外にいったい何の意味があるのか。

 福島の現実は、雁屋の認識よりも遥か先を行っている。周回遅れの雁屋と議論することなど、今さら何も存在しない。雁屋はもう十分稼いだのだから、さっさとオーストラリアに帰って、静かに余生を送ってほしい。それが彼にできる、唯一の被災者たちに対する正しい態度である。

雁屋哲氏には是非、ウナギやマグロを食いつくし、それでも飽き足らずホッケやサバやアジまで乱獲を続ける「日本の食文化」についてどうお考えなのか、日本の調査捕鯨は本当に科学的な調査なのか、日本の「捕鯨文化」とはなんなのか、是非お教え願いたい。バブル経済に乗っかりグルメブームをけん引した「美味しんぼ」の原作者なのだから。

 主人公が医者と話す場面では「(鼻血は)原発内での外部被ばくが原因ではありませんね」と因果関係を否定する表現に変更。実在の有識者が「福島がもう取り返しのつかないまでに汚染された」と話していた場面も、「震災前の政府の基準に従えば、住んではいけない所に多くの人が住んでいる」に変わった。

 一方、政府に詳細な調査を求める発言が加わったり、実際の放射線量のデータを注として提示したりもしている。(2014/12/10-13:04)

各自治体からの抗議

大阪府

 平成26年5月12日に発売された小学館の週刊ビックコミックスピリッツに掲載された「美味しんぼ」に本府の災害廃棄物処理に関連する記述がありましたが、下記のとおり、作中の記述にあるような状況は認められず、災害廃棄物の処理は全て安全に終了していますので改めてお知らせします。

 

作中の記述について

「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、放射線だけの影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています。」「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が約800人もあったのです。」

 

これについては、大阪市が、処理を行った焼却工場の存在する此花区役所、同保健福祉センター、此花区医師会に確認をしましたが、処理中においても、その後においても、そのような状況は認められませんでした。

 

災害廃棄物受け入れの安全性について

大阪府、大阪市が行った、災害廃棄物の広域処理は、岩手県からの要請を受け、岩手県宮古地区(宮古市、岩泉町、田野畑村)の災害廃棄物を受け入れました。

受け入れに際しては、宮古地区において放射性物質の濃度を測定するなど安全を確認し、運搬、焼却など処理の各過程でも空間放射線量率などを測定し安全を確認しています。

その結果各過程の空間放射線量率については全て受け入れの前後で値に変化はなく、安全に処理していることを確認しています。

 

また、今回の記述については、大阪府及び大阪市は事前の取材は一切受けていません。

 

災害廃棄物の受け入れに関する測定結果などの詳細は下記をご参照ください。

 

なお、大阪府及び大阪市は、平成26年5月12日、雑誌発行元の小学館に対して抗議を行いました。

 本日発行の週刊ビッグコミックスピリッツに掲載された漫画「美味しんぼ」において、大阪府、大阪市で行った岩手県の災害廃棄物の処理に関して、下記のとおり事実と異なる極めて不適切な記述がありました。

 そのため、発行元の小学館に対して、大阪市とともに5月9日に該当する箇所の削除・訂正の申し入れを行った上で、本日、厳重に抗議を行いましたので、お知らせします。

                   記

1 漫画における記述

「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、放射線だけの影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています。」「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が約800人もあったのです。」

2 大阪府の見解

 大阪府・市は、岩手県宮古地区の災害廃棄物を受け入れましたが、運搬や焼却などの各段階において放射線量を測定しており、受入れによる影響はありませんでした。従って、漫画に記述されているような健康影響(鼻血が出るなど)は考えられません。

 また、大阪市が保健センター、医師会等に確認したところ、作中に表現のある状況はありませんでした。

 以上のことから、漫画の記述は、大阪府民に無用な不安を煽るだけでなく、風評被害を招く恐れのある極めて不適切な記述であるため、小学館に対し厳重に抗議しました。

 週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の漫画「美味(おい)しんぼ」で、東日本大震災による岩手県のがれきを受け入れた大阪市の住民が健康被害を訴えたとする調査が紹介された問題で、この調査をしたとする市民団体が16日、「作者や小学館から事前に接触はなく、困惑している」とのコメントを発表した。

 

 この日は別の市民団体が市役所で記者会見し、コメントを代読した。団体によると、調査は昨年2〜4月、がれき受け入れで体調変化がないかをインターネット上で呼びかけ、約800人の回答を集計、市などにデータを提供したという。

 

 小学館は「編集部が、情報源へ直接連絡を取っていなかった点については遺憾」としている。【茶谷亮】

噂によると、「大阪のガレキ焼却場の近くに住む住民1000人のうち、鼻血、眼、のどや皮膚などに不快な症状を訴える人が約800人もあった」との情報源は上記の「大阪おかんの会」の調査らしい。

「806名様の症例」とのことで人数は合っているが、「報告エリア」を見てみると、大阪府のみならず、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県と関西圏全体に渡っており、とても「焼却場の近くに住む住民」とは言えない。

雁屋哲氏は情報源を明らかにするべきだろう。それができないのなら、これはデタラメと言っていいレベルの問題である。不確かな情報に基づくデマの流布は行ってはいけない。

岩手県

1 『美味しんぼ』の記述について

 

 本日(平成26年5月12日)発売された小学館の週刊ビックコミックスピリッツに掲載された『美味しんぼ』に、大阪府、大阪市が行った災害廃棄物処理において処理施設周辺住民800人に不快な症状があったとの記述がありました。

 

2 本県の災害廃棄物の大阪府等での処理について

 大阪府等では、本県宮古地区(宮古市、岩泉町、田野畑村)の災害廃棄物のうち木くずを中心とする可燃物約15,300トンを平成25年1月から9月までの間(平成24年11月から12月にかけて試験処理)に焼却処理していただきました。

 

3 当該処理の安全性について

 当該災害廃棄物については、宮古地区において放射性物質の濃度を測定するなど安全を確認し、運搬、焼却など処理の各過程でも空間放射線量率などを測定し安全を確認しております。その結果各過程の空間放射線量率については全て受け入れの前後で値に変化はなく、安全に処理していることを確認しており、測定結果について、大阪府、大阪市はホームページにて公表しております。

福島県

 週刊ビッグコミックスピリッツ4月28日発売号の「美味しんぼ」の内容につきまして、県内外の多くの皆様から、出版社に対して県として対応すべきであるとの多くのお声をいただいております。

 

 「美味しんぼ」において、作中に登場する特定の個人の見解が、あたかも福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない表現があり、県内外の多くの皆様に不安と困惑を生じさせており、県としても大変危惧しております。

 

 県では、これまで全ての県民を対象とした「県民健康調査」「甲状腺検査」「ホールボディカウンター」等により、県民の皆様の健康面への不安に応える取組を実施してまいりました。

 また、県産農林水産物については、「農地等の除染」「米の全量全袋検査などの徹底したモニタリング検査」等により安全性の確保と、正しい理解の向上に取り組み、市場関係者や消費者の理解が進むとともに、観光分野においても、観光客入込数が回復傾向にあるなど、ようやく本県への風評も和らぎつつある状況に至ったところです。

 

 このような中、「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号の「美味しんぼ」の表現は、福島県民そして本県を応援いただいている国内外の方々の心情を全く顧みず、深く傷つけるものであり、また、本県の農林水産業や観光業など各産業分野へ深刻な経済的損失を与えかねず、さらには国民及び世界に対しても本県への不安感を増長させるものであり、総じて本県への風評被害を助長するものとして断固容認できず、極めて遺憾であります。

 

 「美味しんぼ」及び株式会社小学館が出版する出版物に関して、本県の見解を含めて、国、市町村、生産者団体、放射線医学を専門とする医療機関や大学等高等教育機関、国連を始めとする国際的な科学機関などから、科学的知見や多様な意見・見解を、丁寧かつ綿密に取材・調査された上で、偏らない客観的な事実を基にした表現とするよう強く申し入れております。

 

 また、これまでの経過を次のとおり併せてご報告させていただきます。

 

 4月30日に出版社より本県に対して、「[5月19日発売号]において、漫画の誌面では掲載しきれなかった様々な意見を紹介する検証記事を掲載する」として、次の3点に関する取材又は文書回答を求める依頼があり、さらに、5月1日には[5月12日発売号]に掲載する「美味しんぼ」原稿の送付がありました。

 

 (出版社から取材依頼のあった事項)

  ・「美味しんぼ」に掲載したものと同様の症状を訴えられる方を、他に知っているか。

  ・鼻血や疲労感の症状に、放射線被曝(※依頼原文では「被爆」)の影響が、要因として考えられるかどうか。

  ・「美味しんぼ」の内容についての意見

 本県においては、上記に対して5月7日に出版社あて以下のとおり県の見解を示し、申し入れしております。

本日双葉町は、小学館に対し厳重抗議を行いましたので、お知らせいたします。

スピリッツ

こちらもすぐ消えるのかな?
「EM菌が放射能に効く」などとするNPO法人「チェルノブイリへのかけはし」代表の野呂美加氏等が意見を寄せている。岡山大の津田敏秀教授は、ここでも「『低線量放射線と鼻血に因果関係はない』と言って批判をされる方には、『因果関係がない』という証明を出せと求めればいいと思います」との主張をしている。

こちらが以前のスピリッツの釈明(既にリンク切れ)。

スピリッツのHPからこの画像(文字情報なし)にはJavaScriptで飛ばしており、まるで検索に引っかからないようにしているようだ。

なお、この釈明はその後以下のように書きかえられ、「厳密な取材に基づき」等の表現が消えている。

両方とも2週間程度でリンク切れになった。

 漫画雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」の連載「美味おいしんぼ」(作・雁屋哲、画・花咲アキラ)で、福島県を取材してきた登場人物が、28日発売号で鼻血を出すなどの表現があったことからインターネットで議論が広がり、発行元の小学館は同日、風評被害を助長する意図はないとして、理解を求めるコメントをホームページに発表した。

 

 この号では、福島の食の現状を取材してきた登場人物が福島第一原発を見学した後、鼻血を出したり、疲労感を訴えたりする。その一方で「放射線とこの鼻血とは関連づける医学的知見がありません」とする病院の見方も紹介している。

 

 同社のコメントは「鼻血や疲労感が放射線の影響によるものと断定する意図は無く」、すでに作中で「きちんと検査が行われ、安全だと証明されている食品・食材を、無理解のせいで買わないことは、消費者にとっても損失であると述べております」としている。

それなら、「意図が無ければなにをやってもいいのか?」という話にならないか?

↓これに対する反応。

雁屋哲

  • お知らせ」 2014-12-10, 雁屋哲の今日もまた

例の 「鼻血問題」に対する私の意見は、本にして来年の一月に発行します。

まずは単行本第110巻と111巻をお読み頂いてから、ご意見を賜りたいと存じます。

一部分だけ読んで、あれこれ言うのは反則でしょう。

「私を批判したいのなら、私の本や漫画をあれこれ買って読んでからにしろ」というのは本当に商売上手だと思う。

で、ここで、私は批判している人たちに反論するべきなのだが、「美味しんぼ」福島篇は、まだ、その23,その24と続く。

その23、特にその24ではもっとはっきりとしたことを言っているので、鼻血ごときで騒いでいる人たちは、発狂するかも知れない。

なんで漫画読んでいちいち発狂せなあかんのか?

 まず、他人の批判を「発狂」と表すことは、ハッキリとした侮蔑である。批判に対して正面から対応するのではなく、嘲り笑うその態度は、言論人(今回の美味しんぼで行われていることは完全に言論である)として全く不適切であることは言うまでもない。  次に、あまりに偏った取材意図を「2年も時間をかけたのだ」と期間でごまかした。いくら時間をかけて取材をしようと、その意向が事実から目をそらすよこしまな気持ちに染まっているであれば、雁屋にとって都合のいいことを言ってくれる取材対象しか見つからないのは当たり前だ。色眼鏡で2年間かけるよりも、フラットな立場でネットで2時間、問題調べたほうが、ちゃんとした事実を掴み取ることができる。

騒動以前

これは私自身の体験ですが、取材から帰って夕食を食べている時に、突然鼻血が出て止まらなくなったんです。なんだこれは、と。今までの人生で鼻血なんて出すことはほとんどなかったので驚きました。その後も夜になると鼻血が出るということが何日か続きました。ですが、病院に行っても『鼻血と放射線は今の医学では結びつけることはできない』と言われ、鼻の粘膜の毛細血管をレーザーで切ることになりました。また、取材後にすごく疲労感を感じるようになった。取材に同行したスタッフも双葉町の村長も、鼻血と倦怠感に悩まされていましたよ。低線量だから被害はないと言いますが本当でしょうかね

石井孝明氏の「リンチ呼びかけ」ツイート

 石井氏はこうした双葉町の対応を評価し、「福島を嘘、デマで貶める『日本人とは思えない人たち』に対して、立ち上がり、言葉の面で批判を」などと訴えた。その後、批判は次第にヒートアップし、

「美味しんぼの件は、見せしめにぴったり。(略)祭りは『血祭り』の方が興奮するし。嫌いな人民裁判に、私も乗ろう。風評被害撲滅の大義のため」

「私は漫画という文化に敬意を持つが、社会に意味のない漫画なら見せしめのためにリンチをして、吊るし上げても、影響はないだろう。だから心置きなくリンチして木に貼付けにしてやりましょう」

などと、比喩とはいえ、やや物騒なツイートを繰り返した。

 発言はさらに続き、ついに雁屋氏にも「リンチ」という言葉が向けられた。

「放射能ママも電波系放射能デマッターも、今が戻るチャンス。『騙されていました。スピリッツのバカ』と抗議して知らぬ顔しましょう(略)きっかけのため雁屋哲をリンチしましょう」

 もちろん本当に雁屋氏への集団リンチを呼びかけているわけではないが、不適切な表現とみる人は少なくなかったようで、「ジャーナリストを称する人間が、言論ではなくてリンチという、制裁を許容するのですね」との反応も寄せられた。これに石井氏は「言論による市民による私的制裁という意味ならリンチとして使うけどね」と釈明したが、それでも発言が拡散すると「批判とリンチの区別ぐらいはつけましょう」「リンチといってますが、テロです。言論によるとか後付していますが、前段は暴力なわけです」などと批判的な声はあがり続けた。

 「バクネヤング」などで知られる漫画家の松永豊和氏も、リンチ発言を問題視し「なんというバカ。なんという無知。作家というものは放っておけばなんでも書くキチガイであり、そこにこそ作家の価値がある。その倫理を見極め、世に送り出す判断を担うのは編集者だ。全責任は小学館にある」と、ツイッターで石井氏の主張に異議を唱えた。

 すると8日、石井氏は「リンチ」を辞書でひいたところ、自身が考えていた「最大限で皆で糺弾する(文化大革命の軽いやつ)」ような語感ではなく、「頭筋肉の危ないプワーホワイトが殺人、私的絞首刑」というようなイメージだったとして、反省し、「みっともないが消そう」と前出のツイートを削除した。

あのね… 辞書をひくのが遅過ぎたんではないかな? いくら「美味しんぼ」が気に入らないからといって、攻撃を過度に煽ってはいけません。

井戸川克隆

問題となっているビッグコミックスピリッツ22・23号(4月28日発売)では、主人公の山岡と海原雄山たち一行が福島第一原発を見学した。途中、一行は3号機の前で1時間当たり1680マイクロシーベルトを数秒間浴びた。すると帰宅後の山岡にひどい疲労感と鼻血の症状があらわれた。のちに同じ症状が雄山や同行者にもあったことがわかる。取材の過程で、前双葉町長の井戸川克隆氏と岐阜環境医学研究所所長の松井英介医師のもとを訪れた山岡は、町長の口から「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と告げられる。今週分の話はここまでで、欄外には「耐え難い疲労感と原因不明の鼻血―――!?山岡や雄山たちの体になんらかの異変があるのか?次号。」とのアオリがついていた。なお、山岡が訪ねた両名は実在の人物で、井戸川氏は放射性廃棄物中間貯蔵施設の受け入れを巡って町長職を辞任、松岡医師は『見えない恐怖 放射線内部被爆』などの著書がある。

前双葉町長の井戸川克隆氏の「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」に対しては以下の返しが秀逸だろう。

言わないのにどうしてわかるんですか?

 東京電力福島第1原発を訪れた主人公らが鼻血を出す漫画「美味しんぼ」の描写で小学館に抗議が寄せられている問題を巡り、作品に実名で登場した前福島県双葉町長の井戸川克隆さん(67)が9日、東京都内で記者会見し、「実際、鼻血が出る人の話を多く聞いている。私自身、毎日鼻血が出て、特に朝がひどい。発言の撤回はありえない」と述べた。石原伸晃環境相が同日作品に不快感を示したことについて「なぜあの大臣が私の体についてうんぬんできるのか」と批判した。

井戸川氏は自身のFacebookページ(5月10日 18:52)で鼻血の様子を公開しているが、鼻血のついたちり紙を広げる等しているため、なんかちょっとグロくて変なことになっている。

 原発の健康被害を声高に訴え続ける井戸川氏とはどんな人物なのか。2期目の任期中に見舞われた原発事故当初は、行動力のあるリーダーとして一躍、脚光を浴びた。

 

 「事故発生直後に埼玉県加須市への役場引っ越しを決断し、1300人強の町民を連れて行くという大技をやってのけ、リーダーシップが高く評価された」(地元関係者)

 

 だが、常にワンマン首長として批判が付きまとった。国の中間貯蔵施設建設に反対し、2012年に双葉郡8町村の意見交換会を土壇場で欠席したことから「町政の混乱を招いた」と町議会が反発。町議会の不信任決議を受け、13年2月に町政を追われたのだ。

 

 同年7月の参院選に「みどりの風」から比例区で立候補したが、みどりの風は議席を獲得できずに落選した。

その井戸川氏、2013年の参院選に「みどりの風」より立候補しているのだが、街頭演説で

 

「2011年の3月3日に、地震津波があることを日本政府は知っていた」

 

と語っている。3・11の8日前、政府や東京電力、東北電力や日本原燃はわかっていたのに発表を止めたのだという。そのときの動画も『Youtube』にはアップされている。

その後、井戸川氏は福島県知事に立候補しているが落選している。

<福島県知事選開票結果>(選管最終)

 

当490,384  内堀 雅雄  無新(1)

 129,455  熊坂 義裕  無新 

  29,763  井戸川克隆  無新

そばもん

 5月10日発売の「ビッグコミック」第10号掲載話から、作者が主人公を通して語らせた主張を簡潔にまとめると以下のようになる。

 

・人々が福島の食品を避ける背景には「福島産=放射能」という単純な図式があるのではないか。

 

・震災から3年、そろそろ単純なイメージから脱却して“数値に基づいた選択”をしてほしい。

 

・国土を汚した原発事故を許すつもりはないし、放射能は怖い。だが“福島産をその恐怖のスケープゴートにすべきではない”。

 

 これらの主張が理路整然と語られ、キャラクターが唐突に鼻血を出したりといったショッキングな場面もない。上記の意見も主人公の思いとして描かれるだけで、それを他人に押し付けるつもりではないとも発言させている。同行する若いライターが率直に福島産食品への恐怖を漏らしても、とがめたり否定したりはない。放射能への恐怖は人それぞれという前提に立ち、食品の安全性が心配な人は「例えば検出限界値を1ベクレル/kgに設定して、『検出せず』の食品を選べばいい」と話すなど、アドバイスは極めて具体的で実用性に富む。その気になれば今日からだって個人レベルで実行可能だろう。騒動となった“福島の真実”編に限らず、マクロな観点(この問題は我々日本人すべてが未来のために取り組まなければならない…など)で話を締めくくることが多い近年の『美味しんぼ』とは好対照だ。

漫画「美味しんぼ」の表現をめぐって、福島の風評被害につながると議論を呼んだ問題に関連して、同じ小学館の雑誌で連載されている「そばもん」の最新回が無料で公開されている。期間限定で6月9日までダウンロードできる。

 

「福島産をスケープゴートにするのでなく、データを調べた上で納得する行動を選ぶべき」と作中で主張されており、「美味しんぼ」とは大きく表現の方向性が異なっている。

福島をどう描くか

毎日新聞

その他の報道

先日の「HAPPY福島版」に関する記事は大きな反響をいただき、たくさんの方にツイートやシェアをしていただいた。

 

ファレルの「HAPPY」福島版を作ってわかった、地域コンテンツの新たな可能性

 

この記事でも触れたが、このHAPPY福島版を作ったきっけの一つは、例の「美味しんぼ問題」だった。

あのとき町や県から抗議文なども出されたが、そのわりに私のまわりの福島の人たちは「またか」という感じであまり話題にもされてなかったように思う。

 

でも、私自身は憤りを感じ、もやもやしていた。

 

そのもやもやの理由を、福島市出身の弁護士石森 雄一郎氏が昨日の記事でうまく表現してくれていたので引用したい。

福島に行ったら鼻血が出た――。原発事故以降の福島県を描いた漫画『美味しんぼ』の表現が、大きな論争を巻き起こしている。漫画そのものは「福島の真実編」と題した一連のエピソードが終わったところで休載に入ったが、その後も論争は続いている。福島生まれの弁護士は『美味しんぼ』の表現をどう受け止めたのだろうか。福島県出身で、現在は広島市で開業する石森雄一郎弁護士に話を聞いた。

問題となった『美味しんぼ』の回を読んで、私が率直に思ったのは、『こんなに簡単に結論が出せるはずがない』ということです。作中の『意見内容』が問題なのではなく、一つの意見にすぎないものを、ほとんど悩みを見せずに、いとも簡単に客観的事実として『断定』する表現姿勢が問題なのです。

 

福島県民ですら、いまだに悩み続け、判断できないことがらについて、いとも簡単に『福島は危険』と『断定』した作者の姿勢が、騒動の大きな原因です。作者はそのことに気付くべきです」

 週刊ビッグコミックスピリッツの人気漫画「美味しんぼ」(小学館)に登場する荒木田岳(たける)・福島大准教授(地方行政論)が「除染しても福島には住めない」という自らの発言を作品で使わないよう求めたにもかかわらず、編集部が「作品は作者のもの」と応じずに発行したことがわかった。編集部が取材に事実関係を認めた。

 

 荒木田氏は12日発売号に載った「美味しんぼ」に実名で登場。「福島はもう住めない、安全には暮らせない」「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」などと述べた場面が描かれている。

 

 編集部によると、荒木田氏は2年前に原作者の雁屋哲氏らと出会い、取材を受けるようになった。体験や持論を伝えるなかで、こうした発言もした。

 取材に対し、編集部は一連の事実関係を認め、「同じ土地に住んでいても個々人によって判断が異なり、それぞれが被曝(ひばく)について考えることがある。広く『福島』とする表現を作者が採用したことには意味があると考えた」としている。

「意味があると考えた」というのなら、そう考えたうえで、どう結論したのかを述べるべきだろう。この回答は単にお茶を濁しているだけにすぎない。

 併せて、美味しんぼを次号からしばらく休載することが明らかにされた。編集部によると、休載は以前から決まっていたという。

「休載は以前から決まっていた」のに、なぜこれがニュースになるのか?別に「自由な言論への弾圧」に屈して休載になったわけでもない。そもそも「美味しんぼ」はそれ以前から不定期連載だった。

 一方で、岡山大の津田敏秀教授(疫学、環境医学)は「チェルノブイリでも福島でも鼻血の訴えは多いことが知られています」「『低線量放射線と鼻血に因果関係はない』と言って批判をされる方には、『因果関係がない』という証明を出せと求めればいい」と擁護。「こんな穏当な漫画に福島県の放射線のことが描かれたからといって文句を言う人のほうが、むしろ放射線を特別視して不安をあおっているのではないでしょうか」とつづった。

「『因果関係がない』という証明を出せと求めればいい」?普通、疫学を専門とする大学教授がそういうこと言いますかね?

 個人的見解を取り上げたことで、本県の実情が誤って伝わる恐れが生じている。復興への努力を台無しにしかねない。風評という暗黒の海に投げ出され、光の見える海面近くまで懸命に浮き上がってきたところを金づちでたたかれたようなものだ。12日に県が科学的な根拠を示して反証し、偏らない客観的な事実を基にした表現とするよう強く申し入れたのは当然だ。

 そもそも作品の意図が分からない。編集部は議論を深めるためと説明する。県民と支援者の心を傷つけ、復興に使うべき貴重な時間と労力を抗議や反論のために浪費させて何が議論か

 小学館(本社・東京)の週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」の漫画「美味(おい)しんぼ」に、東京電力福島第1原発を訪れた主人公らが鼻血を出す場面が描かれた問題について、石原伸晃環境相は9日の閣議後記者会見で「その描写が何を意図して、何を訴えようとしているのか全く理解できない」と不快感を示した。

 

 この問題を巡っては、地元自治体の福島県双葉町が小学館に抗議文を送るなど波紋が広がっている。石原環境相は、昨年末に3年ぶりに出荷を再開した福島の特産物「あんぽ柿」に触れ、「地元の産品の販売に協力してもらっている。(風評被害が発生すると)取り返しがつかない」と述べた。【渡辺諒】

 小学館が28日に発売した週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」5月12、19日合併号の人気漫画「美味(おい)しんぼ」(雁屋哲作・花咲アキラ画)で、東京電力福島第1原発を訪れた主人公らが鼻血を出す場面が描かれ、読者から問い合わせが相次いでいることが分かった。同誌編集部は「綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載した」などとするコメントを発表した。【川口裕之、狩野智彦、黒田阿紗子】

 ◇被ばくと関連ない

 

 野口邦和・日本大准教授(放射線防護学)の話 急性放射線障害になれば鼻血が出る可能性もあるが、その場合は血小板も減り、目や耳など体中の毛細血管から出血が続くだろう。福島第1原発を取材で見学して急性放射線障害になるほどの放射線を浴びるとは考えられず、鼻血と被ばくを関連づけるような記述があれば不正確だ。

 

 ◇ストレスが影響も

 

 立命館大の安斎育郎名誉教授(放射線防護学)の話 放射線影響学的には一度に1シーベルト以上を浴びなければ健康被害はないとされるが、心理的ストレスが免疫機能に影響を与えて鼻血や倦怠感につながることはある。福島の人たちは将来への不安感が強く、このような表現は心の重荷になるのでは。偏見や差別的感情を起こさない配慮が必要だ。