E. ミッチェルによるアポロ14号の超能力実験
宇宙飛行士のエドガー・ミッチェルがアポロ14号のミッション中に宇宙で行ったとされる非公式の超能力実験のこと。(NASAの計画とは無関係に行われた) リン・マクタガート著の「フィールド 響きあう生命・意識・宇宙」の第一部で紹介されている。
この本によると、超能力実験で有名なゼナーカードの記号を地上にいる仲間に「伝送」しようとしたらしい。ミッチェルは6回の実験を行う予定であったが、4回しか行えなかった。それにもかかわらず、この実験は成功したとされている。ミッチェルが「送信」したデータと地上にいた仲間のデータの間には、統計的に有意な関連があることが示され、偶然にそうした関連が起こる可能性は3000分の1であると結論されている。しかし、この実験の詳しい内容はこの本からはわからないし、その結果がなぜ成功したとみなされたのかもわからない。3000分の1という数字がどう算出されたのかもわからない。
ジェイムズ・ランディ著の「The Truth about Uri Geller」にこの件に関する記述がある。(第10章「The Persons Behind the Geller Myth」を参照)
ランディの本には、ミッチェル自身の言葉による3つの記事と文献が引用されている。その1つ目はニューヨークタイムズ紙の1974年1月9日版に掲載された「Ex-Astronaut on ESP」という記事であるが、ここからの引用は短い。この記事によるとこの実験は、宇宙飛行中のアポロ14号内で、星、十字、丸、波線、四角の5つの記号をランダムに25個ならべ、この順番をアメリカにいる4人の人物が当てるというものである。やはり、3000分の1でしか起こらない確率でこの実験は成功したと書かれている。
2つ目の引用は、これもニューヨークタイムズ紙1971年6月22日版の「Astronaut Tells of ESP Tests」という記事である。この記事によるとミッチェルは手作りのゼナーカード25枚をアポロ14号に持ち込み、(注:文献3によるとカードは持ち込んでいない) 1日25枚、1枚につき15秒間意識を集中することを行った。これを6日行う予定であったが、実際に行われたのは4日(月に行く期間に2日、地球帰還中に2日)であった。地球上の4人が誰なのか明らかにはされていない。(シカゴの超能力者Olaf Jonssonがそのうちの一人であった) ミッチェルは地球に帰還後、協力者から郵送されてきた記号の順番と自分のものを照合した。これら200の予測のうち、51のものが当たっていた。4人のうち2人が他よりもよく当てていたが、予想の正確さは4人とも「ベリー グッド」とミッチェルは評価している。ただし、少なくとも一人は「送信」されたのよりも多くの記号を「受信」していた。
どうやら、地上の協力者も中止された実験を予測することまではできなかったようだ。そもそも「送信」がいつ始まったか、どうやったらわかるのだろう?実験の内容もよくわからない。記号の順番等を問題にせずに記号だけを当てるというのであれば、当たる確率は5分の1である。200のうち51が当たったということはほぼ4分の1なので、なかなかよく当たっていることになる。ところが、この200という数字がよくわからない。1日25枚なら4日で100枚である。協力者が4人なら、全部で400になるはずなのだが?(よく当たっていたという二人のデータだけ選択しているのだろうか?)
最後の引用はエドガー・ミッチェル著の「Psychic Exploration」からである。これによると、5つの記号に対応した数字を25個並べたものを8列使用したようだ。(これだと記号の数は全部で200になり、一日に2列50個の記号を「送信」した計算になる。そして、4人の協力者からは800個以上の予測がもたらされたことになる) また、ロケットの発射が40分遅れてしまったため、実験を行うと打ち合わせしていた時間よりも「送信」が遅れてしまった。よって実験のいくつかは「テレパシー」によるものではなく、「予知」によるものであるとしている。このように超心理学者の中には時間の流れに無頓着な人がいる。原因と結果の因果律が逆転していても、「予知能力」で説明できてしまうわけだ。
ここには衝撃的な結論が書かれている。この実験の結果は統計的に重大なものであったが、それは「受信者」が偶然から予想されるよりも多くの記号を当てたからではなく、当たりの割合が驚くほど低かったからだ、というのだ! これほど低い当たりを出す確率は予想の3000分の1だそうだ… このような負の超能力「サイ・ミッシング」は超能力の研究で頻繁に起こることであり、理論家はその重要性を説明しようとしている。いずれにせよ、この結果は確率の法則を超越したものであり、サイの実在のよい証拠であるとのこと。普通なら実験は失敗だったという結論になるところだが、超能力研究者の往生際の悪さを見て取ることができる。
ニューヨークタイムズ紙の記事では「よく当たった」ことになっていたのに、なんで「驚くほど当たらなかった」に逆転してしまったのだろう?結局、3000分の1という数字の出所もわからない。この研究成果はJournal of Parapsychology(June 1971)で発表されたらしいが、この文献は入手できていない。なお、「Private Lunar ESP」(文献3)によるとミッチェルは実際のカードを宇宙船に持ち込んだわけではなく、各記号に対応する1から5の数字をランダムに並べて、各数字ごとに記号を頭に思い浮かべたとのこと。
参考文献
- 「フィールド 響きあう生命・意識・宇宙」 リン マクタガート (著)、野中 浩一 (翻訳) 、河出書房新社
- 「The Truth about Uri Geller」 James Randi著、Prometheus Books
- 「Private Lunar ESP: An Interview with Edgar Mitchell」 Fia Backstrom, Cabinet Magazine Online, Issue 5 Winter 2001/02 (このサイトでは実際にミッチェルが使用した数字の表を見ることができる)
- 「Apollo 14 astronaut claims aliens HAVE made contact - but it has been covered up for 60 years」 Mail Online, Last updated at 1:44 AM on 24th July 2008
- 「Astronaut Says Aliens Are Real」 Kerrang Radio!