NORADとFAA (911陰謀論)
デバンキングには以下のサイトを参照。
各ハイジャック機の飛行経路についてはNational Transportation Safety Board(NTSB、国家運輸安全委員会)の「Electronic Reading Room」で資料が公開されている。
詳細
2003年5月に行われた911委員会の第2回公聴会(二日目)において、NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)のCraig R. McKinley少将やLarry Arnold少将らが証言している。(宣誓供述ではない) ところが、この証言には事実とは異なる内容が含まれており、この食い違いを重く見た911委員会は、同年10月15日にFAA(連邦航空局)、11月6日にDOD(国防総省)に対して召喚状を発行し、関係資料を押収した。さらに2004年6月の第12回公聴会(最後の公聴会)において、NORADのRalph E. Eberhart大将やLarry Arnold少将らを宣誓供述させた。
初期の証言によると、NORADがFAAからユナイテッド93便ハイジャックの一報を受け取ったのは、9時16分のことであった。しかし、実際は9時16分にはまだ93便はハイジャックされてはいなかった。(文献7) その後の調査の結果、NORADがFAAから93便について連絡を受けたのは、93便が墜落した4分後の10時7分だということがわかっている。(文献8)
もし仮に93便がシャンクスヴィルに墜落していなかったとしたら、10時13〜23分の間に93便はワシントンD.C.に到達していただろうと、911委員会は推定している。その時、ワシントン上空にいたのはラングレー空軍基地(Langley Air Force Base)を飛び立ったF-16戦闘機だが、彼らは93便のことを知らされていなかった。FAAから連絡があったあとの6〜16分間に、NORADは93便の位置を特定し、大統領から撃墜許可を取得し、その命令を戦闘機のパイロットに伝達しなくてはならない。撃墜が可能だったかどうか、911委員会は不明であるとしている。実際に副大統領からの撃墜許可がNORADの北東空域防衛管区(NEADS、Northeast Air Defense Sector)に届いたのは10時31分のことである。
2001年9月11日、テロ発生に直接対応したNEADSの指令室で何が起こっていたかは、当日の録音された音声が公開されているので、比較的よくわかっている。その一部をVanity Fairのサイト「9/11 Live: The NORAD Tapes」(文献2)で聞くことができる。NORAD幹部の初期の主張の一部は事実とは異なっていることは明らかである。この録音によると、10時10分の時点でまだ迎撃許可は下りておらず、上層部からの指令は、機種とテール・ナンバーにより旅客機を確認せよ、であった。
911委員会の上級顧問だったJohn Farmer, Jr.は自著「The Ground Truth」(文献9)の中で、NORADとFAAの虚偽の主張として以下の項目を挙げている。
- 9時16分にFAAがNEADSに93便のハイジャックを連絡するのは不可能であった。その時点では93便はまだハイジャックされてもいない。
- 9時24分にFAAからNEADSへ77便のハイジャックの通知がなされたと、2001年9月18日以来FAAとNEADSは主張し、議会と911委員会の前でもそう証言したが、これもウソである。(実際は9時34分)
- 11便がWTC1に突入したことを確認できず、その後もワシントンDCに向けて飛行中であると勘違いしたことを隠蔽していた。
- 911委員会の要請によりFAAが提出した証拠物品は極めて不完全なものであった。
- DODが911委員会に提出した証拠物品も極めて不完全なものであった。
- 911委員会が召喚状を発行し証拠物品を押収した後に、FAAとDODは内部調査が不十分だったことを認めた。
- ところが、911テロの直後にちゃんと内部調査は行われており、事実を知った上でNORADとFAAはこれを隠蔽するために意図的に偽証した。
つまり、国内における複数のハイジャック機による同時多発自爆テロに対して、FAAとNORADの連携が成立しておらず、NORADの本土防衛網もまったく機能しなかった。こうした事実を隠蔽するため、FAAとNORAD(DOD)はウソの証言をしたのである。John Farmerは文献2で以下のようにも述べている。
虚偽の証言には目的があった。FAAと軍部側が犯した間違いを曖昧にし、ユナイテッド航空93便を迎え撃ち、必要ならば撃墜する用意があったことを事実以上に強調することだ。
ところが、最初の証言は宣誓供述ではなかったため、誰も処罰されていない。ただし、混乱する情報の中で現場のNEADSの指揮官らのとった対応は適切なものであったとFarmerも考え、つぎのように述べている。(文献2)
ここで、MarrとNasypanyとはNEADSの戦闘司令官だったRobert Marr大佐とミッション・クルー・コマンダーのKevin Nasypany少佐のことである。(FAAから)彼らが得た情報は不完全なものであったが、彼らは期待通りの対応をとった。MarrとNasypanyの判断は正しかった。
もともとNORADは米ソ冷戦時代、ソビエトのアメリカ本土攻撃に備えて設立されたもので、ソ連崩壊・冷戦終了後、その規模は縮小されていた。冷戦時代は全米で60機程度の戦闘機が常時臨戦態勢で待機していたが、冷戦後、その数はわずか14機に削減されていた。9/11当時、NEADSの指揮下にあった戦闘機は、このうちわずか4機、オーティス空軍基地(Otis Air National Guard Base)の2機とラングレー空軍基地の2機、だけであった。また、当時NEADSに設置されていたレーダースコープもGreen Eyeと呼ばれる時代遅れのもので、必要な時間内にハイジャック機を特定できるようなものではなかった。
9/11以前にハイジャック機を自爆攻撃に使った例はなく、ハイジャック犯は旅客機をどこかの空港に着陸させてなんらかの要求を行うことが想定されていた。ハイジャックが起こった場合、FAAはFBIにすべてをまかせるという手順になっていた。(文献2)
NEADSのNasypany少佐は、文献2を書いたMichael Bronnerに911陰謀論について聞かれると、以下のように答えた。
93便は撃墜されていない。あの航空機にいた個々人、乗客が実際に航空機を墜落させた。彼らがやったことのおかげで、私は何もする必要がなかった。
以上のことをまとめると、
- 日本軍の真珠湾攻撃以来アメリカ本土が大規模に攻撃されたことはなかった。
- 米ソ冷戦は終了しており、アメリカ本土を空爆するような仮想敵国もなかった。
- 複数のハイジャック機を同時に自爆攻撃に利用した例はそれまでなかった。
などの点から考えて、そもそもアメリカの防空体制は911テロのような攻撃に対応できるものではなかったと考えられる。世界一の軍事費を誇るアメリカの本土防衛網は実は空洞化しており、「張り子の虎」でしかなかった。
「Touching History」について
2008年に「Touching History」(文献6)という本が出版され、これは9/11当日FAAとNORADで何が起こっていたかを描いたノンフィクションだという触れ込みだった。しかし、911委員会の最終報告書を引用しているにもかかわらず、その内容の一部はNORADの初期の主張を採用している。さらに、911委員会の公聴会で虚偽の証言をしたLarry Arnold少将が後書を書いている。当時のNORAD幹部はいまだに911委員会の結論を受け入れられないようだ。
この本に対して、John Farmerの著書「The Ground Truth」(文献9)は極めて批判的である。
ラングレー空軍基地からはNORADの指揮下にあった2機のF16戦闘機に加えて、Billy Hutchisonが搭乗していた3機目の戦闘機も発進している。「Touching History」によると、Hutchisonは訓練から戻った直後に、燃料補給もせず非武装で93便を迎え撃つために発進している。Hutchisonはもし自分が93便を撃墜することになるのであれば、まず近距離でエンジンの1つとコクピットに訓練弾を発砲し、もしそれがダメならば自分の機体をミサイルとして利用することを決意したそうだ。
この話が本当ならばHutchisonは極めて勇敢だったことになるが、これは全くのウソであるとFarmerは結論している。911委員会はHutchisonにも事情聴取を行っているが、この件について聞かれると「なにが起こったか知ってるだろ!なんでそんな質問をするんだ?」と荒々しく部屋を出て行ってしまったそうだ。(文献9)
時系列
文献2と8によると、9/11当日、アメリカの空ではつぎのようなことが起こっていた。
時間 | アメリカン航空(AA)11便 | ユナイテッド航空(UA)175便 | AA77便 | UA93便 |
---|---|---|---|---|
7:59 | 離陸 | |||
8:14 | 最後の定期連絡 | 離陸 | ||
8:19 | 搭乗員(Betty Ong)がAA社の南東部予約オフィスにハイジャックを連絡 | |||
8:20 | 離陸 | |||
8:21 | トランスポンダ停止 | |||
8:25 | FAAのボストンセンターがハイジャックを認識 | |||
8:38 | ボストンセンターがNEADSにハイジャックを通知 | |||
8:42 | 最後の交信 | 離陸 | ||
8:46 | NEADSが11便探索のためオーティス基地のF15ジェット戦闘機をスクランブルするが、8:46:40に11便はWTC北棟に突入 | |||
8:47 | トランスポンダのコード変更 | |||
8:51 | 最後の定期連絡(この後、ハイジャックが起こったと考えられる) | |||
8:52 | 男性の搭乗員がサンフランシスコのUAオフィスにハイジャックを通知 | |||
8:54 | UAがコクピットに連絡を試みる | 77便は無許可で南に向きを変える | ||
8:55 | ニューヨークセンターがハイジャックを疑う | |||
8:56 | トランスポンダ停止 | |||
9:03:11 | 175便はWTC南棟に突入するが、ほぼ同時に第2のハイジャックが起こった可能性を、ニューヨークセンターがNEADSに連絡 | |||
9:05 | AA本部が77便ハイジャックを認識 | |||
9:15 | 175便がWTCに突入した2番目の飛行機だと、ニューヨークセンターがNEADSに通告 | |||
9:16 | AA本部が11便がWTCに突入したことを認識 | |||
9:20 | UA本部が175便のWTC突入を認識 | |||
9:21 | ボストンセンターは、11便がワシントンDCに向かっていると、間違った情報をNEADSに伝達 | |||
9:24 | NEADSは11便探索のため、ラングレー基地のジェット戦闘機をスクランブル | 93便はUA社からコクピットへの侵入の可能性に警戒するよう警告を受ける。 | ||
9:25 | FAAのハーンドン指令センターが全国規模の離陸中止を発令 | |||
9:27 | 最後の定期連絡 | |||
9:28 | おそらくこのころ93便はハイジャックされた。 | |||
9:32 | ダラス管制塔が高速で移動する飛行機をレーダーで確認(のちに77便と判明) | |||
9:34 | FAAがNEADSに77便が行方不明であることを伝達 | ハーンドン指令センターがFAA本部に93便がハイジャックされたことを連絡 | ||
9:36 | 搭乗員がUA社にハイジャックを連絡。UA社はコクピットとの連絡を試みる。 | |||
9:37:46 | 77便がペンタゴンに突入 | |||
9:41 | トランスポンダ停止 | |||
9:57 | 乗客による反撃開始 | |||
10:03:11 | シャンクスヴィルに墜落 | |||
10:07 | クリーヴランドセンターがNEADSに93便のハイジャックを連絡 | |||
10:15 | UA本部が93便墜落を認識、ワシントンセンターがNEADSに93便墜落を連絡 | |||
10:30 | AA本部が77便のペンタゴン突入を確認 |
FAAが犯した第一の失敗はAA11便のWTC突入を確認できなかったことだ。ボストン・センターのミリタリー・リエゾンColin Scogginsは8時55分に、ツインタワーに突入したのは11便だと確認しかけた。しかし、当時タワーに突入したのは小さなセスナだったという噂が流れていた。NEADSが再確認を求めるとボストン・センターは確認できず、11便はまだタワー突入直前の飛行コース(ワシントンD.C.の方角)のまま飛行中だと想定しなくてはならなくなった。
ボストン・センターのScogginsは、こうした混乱の原因のひとつは、AA社が数時間にわたってタワーに突入したのが11便であることを認めなかったことだとしている。
しかし、FAAの犯した最大の失敗は、9時34分にハーンドン指令センターからFAA本部に93便がハイジャックされたとの連絡が入ってから、クリーヴランドセンターがNEADSにそのハイジャックを連絡するまで30分以上の時間がかかっていることだろう。この遅延のせいでNEADSが93便を迎え撃つチャンスは最初からなかった。
こうした失策を隠蔽するため、FAAとNORADは結託して911委員会と国民に対してウソをついたとJohn Farmerは結論している。(文献9)
その他
ハイジャック機がテロ攻撃に使用されることを想定した軍事演習をNORADは行っていた
USA TODAY の記事「NORAD had drills of jets as weapons」(文献1)は、911テロ事件以前の2年間に、NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)は、ハイジャックされた航空機がテロ攻撃に使用されることを想定した軍事演習を行なったことがあった、と伝えている。テロリストが飛行機を武器として利用する脅威を、NORADが1990年代後半には認識していたことは秘密ではなく、911委員会の最終報告書にもそのことが記されている。
しかも、その仮想ターゲットのひとつは世界貿易センターだった。化学兵器を積載してアメリカ国内の標的に向かうジェット機を大西洋上空で撃ち落とす訓練も行った。ただし、ペンタゴンを標的にする演習は非現実的過ぎるという理由で、実行されなかったそうだ。
NORADはこうした訓練が実際に行われていたことを文書で認めた。しかし、これらの訓練は地域限定のもので、定期的に行われる北米全域にわたる訓練ではないとしている。
ホワイトハウスのスポークスマンによると、ブッシュ政権はこうしたNORADの訓練を把握していなかった。しかし、実際にジェット機を使って訓練が行われていたことは事実で、こうした攻撃の可能性は低いが吟味しておく必要はある、と考えた人が政府の一部にはいたようだ。
ただし、これらの訓練は、実際に起こった911テロとは重要な点で異なっていた。訓練では、ハイジャック機は外国から飛来することが想定されていたのだ。NORADの使命はアメリカ合衆国とカナダを海外からの攻撃に対して防衛することだったのだ。(旧ソビエトの爆撃機から北米を防衛するため、1958年にNORADは設立された)
NORADは大規模な訓練を年間4回行っており、その中にはハイジャック機を武器として使用することを想定したものも含まれていた。しかし、「残念なことに、9/11に起こった悲劇的な出来事は懸念されたことも訓練されたこともなかった」とNORAD司令官だったRalph Eberhart将軍は述べている。
音信不通で着陸予定の空港を通りすぎてしまったノースウェスト機へのNORADの対応
- 「Northwest Plane That Flew Past Airport Out of Contact for Longer Than Reported, Sources Say」 Fox News, Thursday, November 05, 2009
FAAはテープを消去した?
- 「FAA destroyed tapes」 911 Myths
その他
- 「Fighting terror in America's skies」 By Gavin Hewitt, BBC News, Friday, 30 August, 2002, 21:33 GMT 22:33 UK
参考文献
- 「NORAD had drills of jets as weapons」 By Steven Komarow and Tom Squitieri, USA TODAY, Posted 4/18/2004 10:22 PM, Updated 4/19/2004 3:08 PM
- 「9/11 Live: The NORAD Tapes」 by Michael Bronner August 2006、Vanity Fair、Politics & Power
- 「The NORAD Response Revisited」 Gumboot, JREF Forum, 10th December 2006, 10:50 PM
- 「NORAD, FAA, NTSB, Aircraft Capabilities, Piloting Issues, War Games」 by Mark Roberts
- 「FAA Managers Destroyed 9/11 Tape」 By Sara Kehaulani Goo, Washington Post Staff Writer, Thursday, May 6, 2004; 6:16 PM
- 「Touching History」 by Lynn Spencer、Free Press (June 3, 2008)
- 「The Commission」 by Philip Shenon, Twelve (January 31, 2008)
- 「9-11 Commission Report」:911委員会の最終報告書
- 「The Ground Truth」 John Farmer, Riverhead, 9/8, 2009