WTC1,2の倒壊 (911陰謀論)
ワールドトレードセンターのツインタワー(WTC1:ノースタワー・北タワー・北棟、WTC2:サウスタワー・南タワー・南棟)の倒壊については、米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology、NIST)による合計1万ページにおよぶ詳細な報告書「Final Report of the National Construction Safety Team on the Collapses of the World Trade Center Tower」がある。(文献2) 陰謀論者はこの報告書は「政府側の発表」であるとして一切信用していない。しかし、その実態はそんな単純なものではない。
WTC倒壊の調査には、NISTの技術専門家85人と民間・学術界の125人の主要な専門家がかかわり、1000人以上の事件の目撃者、WTCの設計、建造、管理を担当した人々とのインタビュー、現場にあった236個の鋼鉄の破片の分析、研究室における材質の検査、建物に旅客機が突入してから倒壊が始まるまでのコンピューターシミュレーションなど、が行われた。さらに合計150時間におよぶ7000区分のビデオ画像、その日現場にいた185人の写真家が撮影した7000枚近くの写真も集められた。2005年に発表された報告書には3年の月日と2400万ドルの費用がかけられた。(文献1)
NISTのFAQとしては次のものがある。
- 「NIST’s Investigation of the Sept. 11 World Trade Center Disaster--FAQ」
- 「NIST Investigation of the World Trade Center Disaster FAQs」: (Aug. 30, 2006)
- 「NIST Investigation of the World Trade Center Disaster FAQs - Supplement」: (December 14, 2007)
このうち陰謀論に関するものは2番目のものであり、日本共産党『さざ波通信』の記事「国立標準・技術研究所(NIST)のFAQ(2006年8月30日)」(2006/09/29 澄空)で、その邦訳を読むことができる。
2002年5月に発表されたアメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)による予備調査報告「World Trade Center Building Performance Study」(文献3)もある。ただし、ウィキペディアによると、FEMAは災害救助組織ではなく、民間人の虐殺を目的としているという陰謀論もあるので、陰謀論者はFEMAの報告など信じないのであろう。
また、Purdue大学によるWTC1への旅客機突入のコンピューターシミュレーションのCG動画をYouTubeなどで見ることができる。
- 「Scientists simulate jet colliding with World Trade Center」:YouTube
- 「Purdue University WTC Simulation - Run 18」:YouTube
- 「September 11, 2001 9/11 Attack Simulations Using LS-Dyna」:Purdue大学のオリジナルサイトはこちら
- 「High-Fidelity Visualization of Large-Scale Simulations」:Purdue大学のオリジナルサイト。動画のダウンロードができる。
こうした詳細な報告や分析があるにもかかわらず、陰謀論者は、WTCの倒壊は旅客機の突入が原因ではなく、あらかじめ建物にしかけられた爆発物による爆破解体(制御解体)である、などと主張している。上記のFAQによると、以下のような決定的な証拠があるので、NISTは「爆破解体説」を支持しないとしている。
- 倒壊は旅客機が突入し、火災が発生した階で始まり、それ以外のところでは起こっていない。
- 倒壊が始まるまでの時間(WTC2では56分、WTC1では1時間42分)は、旅客機の突入により生じたダメージと、火災が決定的な箇所まで広がり、構造を弱め、衝突された階より上の質量を 支えきれなくなるまでに要する時間に依存する。
ビデオ画像も倒壊は上から下へと起こっていることを示し、NISTやニューヨーク市警や消防署が集めた証拠の中にも、衝突と火災が起こった階よりも下の階で、爆発などが起こったことを支持するものはない。
進行性崩壊
ツインタワーの「進行性崩壊」のメカニズムについては、以下の論文を参照。
- 「Why Did the World Trade Center Collapse? -Simple Analysis」 Zdenek P. Bazant, F.ASCE and Yong Zhou, J. Engrg. Mech. Volume 128, Issue 1, pp. 2-6 (January 2002)
この論文の結論は、崩壊開始によって生じた運動エネルギーは54.2 GN mで、その直下の構造体で吸収できるエネルギーの8.4倍に上り、崩壊を阻止することはできなかったというもの。 この論文については日本語の解説記事もある。
- 「進行性崩壊のメカニズム」 大井健一 「建築防災」 2004年5月号, p.13-17
以下の論文も参照。
- 「Mechanics of Progressive Collapse: Learning from World Trade Center and Building Demolitions」 Zdenek P. Bazant and Mathieu Verdure, Journal of Engineering Mechanics, Vol. 133, No. 3, March 2007, pp. 308-319
日本における研究
WTC崩壊のメカニズムは日本においても研究されている。たとえば、筑波大学 大学院システム情報工学研究科 構造エネルギー工学専攻 磯部大吾郎研究室の「世界貿易センタービルの飛行機衝突解析」を参照。磯部氏は「スプリングバック説」を提唱している。
また、鹿島建設の月刊レポートの2003年11月のForefront「ニューヨークWTCビル崩壊の解析に驚嘆の声」において鹿島建設が行ったツインタワーの崩壊シミュレーションが紹介されている。鹿島建設の研究については以下の論文も参照。
- 「航空機衝突時の挙動解析」 小鹿紀英、「建築防災」 2004年5月号, p.18-24
ここに書かれている結論は以下のようなもの。
WTC1では柱の破壊がほぼ対称的に発生し、応力の再配分結果による塑性化状況もほぼ対称形分布を呈した。これに対してWTC2では、衝突による破壊と塑性化がややC面寄りに偏った分布を呈した。また、燃料飛散による火災領域もWTC1ではA面側の短スパン部のスラブおよびコア部分が中心であるのに対し、WTC2ではC面側の長スパン部の床トラスと柱付近が中心であった。これらの衝突後の構造部材の応力状態と火災の領域が相まって、WTC2の全体崩壊までの時間がWTC1に比べて短かったものと推察される。
「リダンダンシーに優れた鋼構造建築物のための崩壊制御設計ガイドライン」という業績で「日本鋼構造協会特別賞」(2006年)を受賞した東京工業大学建築物理研究センターの和田章教授は、藤田幸久著の「9.11テロ疑惑国会追及」において、「爆薬をしかけて制御解体をしたのではないかという考え方こそ、科学的根拠に欠ける考え方だと言えます」と述べている。
その他
- 「Why Did the World Trade Center Collapse? Science, Engineering, and Speculation」 Thomas W. Eagar and Christopher Musso JOM, 53 (12) (2001), pp. 8-11
WTCテロの詳細
9月11日当日、午前9時以前にWTC1には約8,900人、WTC2には約8,600人がいたとされる。アメリカン航空11便(American Airlines Flight 11、乗員11人、乗客76人、ハイジャック犯5人)が時速約700キロで北タワー(WTC1)に突入したのは、午前8時46分30秒のことであった。11便は機体が25度程度傾いていたため、その被害は93〜99階におよんだ。
ユナイテッド航空175便(United Airlines Flight 175、乗員9人、乗客51人、ハイジャック犯5人)がWTC2に突入したのは、9時2分59秒のことであった。その速度は約860キロであり、175便は38度傾いていたため、その被害は77〜85階におよんだ。
突入の際に両機は外部と中心の支柱の一部を切断した。WTC1では、35本の外部支柱と6本の内部支柱、WTC2では33本の外部支柱と10本の内部支柱が切断されたと推定されている。さらにその他の支柱の耐火性絶縁材をはぎ取った。11便と175便は、それぞれ1万ガロンと9,100ガロン程度のジェット燃料を積んでいたが、それを何階にもおよぶ広範囲にばらまいた。一部はエレベータ・シャフトをつたわり、地下にも達している。激突直後に建物の外にそのまま飛び出し、火球となって燃え上がった燃料は、そのうち約15%(WTC1)と10〜25%(WTC2)と推定されている。
WTC1の92階以上には1,355人がいたが、生存者はいないとされる。少なくとも111人が火災の熱に耐えきれず、建物の外に飛び降りて死亡した。最初の飛び降りが目撃されたのは8時52分ごろである。91階以下にいた7,545人は助かったが、107人が犠牲になった。
旅客機突入時、WTC2の77回以上には637人おり、旅客機突入の破壊をまぬがれたA階段をつたって脱出できたのはそのうちわずか18人であった。76階以下にいた4800人のうち11人が犠牲になった。
燃料は1100〜1200℃で燃焼するが、この温度は鋼鉄が融解する温度の1510℃よりも低い。しかし、鋼鉄はその強度の約50%を600℃で失い、980℃で90%以上を失う。ジェット燃料はすぐに燃え尽きたと考えられているが、それ以外の可燃物に引火し、燃焼温度は最高で1000℃に達したと推定されている。
YouTubeの動画「9/11 Debunked: World Trade Center Fires Were Sufficient」では、火災により弱まった床を支えるトラスがたるみ、外壁を内側に引っ張り込んでいる様子を見ることができる。
文献9によると、タワー内に閉じ込められた人々からも電話がかかってきており、南タワー倒壊の直前には、105,106階から「床が崩れ落ちている」といった連絡があた。93階のグレッグ・ミラノウィッツ(Greg Milanowycz)は「天井が落ちてくる」と連絡している。
このようにしてツインタワーは旅客機が突入して火災が発生した階よりも上の自重を支え切れなくなり、WTC2は午前9時59分、WTC1は午前10時28分に倒壊した。
ドキュメンタリー
ツインタワーの倒壊を扱ったドキュメンタリーとしては、「9・11生死を分けた102分」(ジム・ドワイヤー, ケヴィン・フリン 著、三川 基好 訳、文藝春秋、2005/9/13)がある。この本の要約を「2001年9月11日、ワールドトレードセンタービルの102分間」(A Successful Failure, 2008-10-19)で読むことができる。
DVDとしては以下のようなものもある。
- 「9.11 ~N.Y.同時多発テロの衝撃の真実~」 監督: ジュール・ノーデ;ゲデオン・ノーデ;ジェイムズ・ハンロン、パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン、2006/08/25
- 「アメリカ911」 J.V.D. 2002/09/11
- 「102 Minutes That Changed America」 A&E Home Video、2008/10/14
爆破解体説
WTCの「爆破解体説」をとなえている文献としては、Eric Hufschmid著の「Painful Questions」や、物理学者のスティーヴン・ジョーンズ(Steven E. Jones)がネット上で公開している「Why Indeed Did the WTC Buildings Completely Collapse?」などが有名である。ただし、通常の爆破解体は建物の自重を利用して押しつぶすので、爆破は建物の下から上へと行われる。これに反し、ツインタワーは上から下に向かって崩壊している。多くの爆破解体の専門家は、WTCの爆破解体説には否定的であり、たとえば、ImplosionWorld.comの「WTC Q&A」でも爆破解体説を否定している。(同じサイトで公開されている文献5も参照)
ジョーンズ博士はサーマイト(thermite、テルミット法)、HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)やRDX(Research Department Explosive、トリメチレントリニトロアミン)といった高温切断爆薬が使われたことの根拠として、ジェット燃料の燃焼では生じるはずのない融解した鋼鉄が現場で発見されたと主張している。
しかし、この主張に対して、(1)爆破解体では熔融した鋼鉄は発生しない、(2) WTCの現場に熔融した鋼鉄の痕跡は見つかっていない、と2重に矛盾していることが指摘されている。爆破解体が行なわれたという根拠はどこにもない。
さらに付け加えれば、9月11日以前に、誰が、いつ、どうやって、爆破解体用の爆薬を仕掛けたのか?という疑問には誰も答えられない。
ナノサーマイトの項目も参照。
(注)
スティーヴン・ジョーンズ博士はWTCの制御解体説だけでなく、「常温核融合」の発見(?)者としても有名である。また、「キリストが古代アメリカを訪れた証拠」と称する記事「Behold My Hands: Evidence for Christ's Visit in Ancient America」(ブリガムヤング大学のウェブサイトに2005年11月24日に掲載されたもの)も書いていたりなんかする。
制御爆破解体を否定する論文
- 「What Did and Did Not Cause Collapse of World Trade Center Twin Towers in New York?」 Zdenek P. Bazant, Jia-Liang Le, Frank R. Greening, and David B. Benson, J. Engrg. Mech. Volume 134, Issue 10, pp. 892-906 (October 2008)
Mark Robertsのサイトから、この論文の原稿のpdfファイルをダウンロードできる。
爆破解体用の爆発物では鋼鉄は融解しない。
Popular Mechanics誌のインタビューに答えて、「Controlled Demolition Inc.」社のMark Loizeaux氏は、Jones博士は爆発物の特性を理解していないと証言している。こうした爆発物は高温をもたらすが、爆轟の速度は秒速8キロ以上になり、物理的な力によって鋼鉄を爆切する。熱により融かして切断するのではない。(文献1) ウィキペディアの「成形炸薬弾」の項目を見てみると、成形炸薬弾では液体金属の超高速噴流(メタルジェット)が起こるらしい。ただし、以下のように述べられている。
成形炸薬の装甲侵徹原理で「高温のガス・メタルジェットによって装甲を融かして穴を開ける」というような誤解をされる事があるが、前述した通り、装甲が液体として振舞うのは主として温度ではなく圧力によるためである。メタルジェットは液体として挙動するが固相の金属その物であり、断熱系のため、ジェットの発生しているような短時間に爆発の熱が装甲に伝導し溶融するほどの高温になることは無い。
サーマイトなら、鋼鉄を融かすのかもしれないが、ふつう爆破解体には使われない。爆破解体の場合も、成形爆薬による爆切が一般的なようだ。サーマイトは軍事的には焼夷弾に使用され、第2次世界大戦では、米軍の日本爆撃に使われた。なお、サーマイトを改良した「thermate」というものも存在する。
鋼鉄よりもアルミ合金のほうが融点は低い。
融解した鋼鉄が存在する証拠として、火事の発生した階の亀裂からオレンジ色の融けた金属のようなものが流れ出ている映像をよく陰謀論者は参照する。しかし、鉄の融点は1535℃(1808 K)であり、これよりも融点の低い物質は鉄よりも簡単に融けるということを陰謀論者は無視している。たとえば、アルミニウムの融点は660℃(933 K)であり、航空機の機体にはアルミ合金が使われている。
ところが、アルミの放射率は0.12と鉄の0.4よりも低いため、融点付近のアルミは銀色に見える可能性がある。ただし、融点よりも高温になればオレンジ色になる。さらに、燃焼の際にアルミが酸化し、一部が酸化アルミニウムに変化していれば、酸化アルミの放射率は0.44と鉄と同程度である。よって、酸化アルミが融けたアルミに混じっていれば、オレンジ色に見える可能性がある。
しかし、アルミの比重は2.7であるのに対し、酸化アルミの比重はα-Al2O3が約4.0、γ-Al2O3が約3.6と、アルミよりだいぶ重い。つまり、普通ならば酸化アルミは比重の軽い融けたアルミの中に沈み込んでしまう。ただし、流れ落ちる融液に関しては、比重の違いによる重力の差は生じないので、オレンジ色に発光する酸化アルミが見えてもおかしくない。
板ガラスも730℃程度で融けて流れ出すが、その放射率は0.94程度である。よって、WTCで目撃された融けた金属のようなものが、高温の熔融アルミ、もしくは、アルミと酸化アルミ、融けたガラス、その他いろいろな不純物の混合物であれば、オレンジ色に見えてもおかしくない。(文献4)
サウスタワーから流れ出るオレンジ色の溶融金属らしきものの動画と、それがアルミであろうという解説をYouTubeの「9/11 Debunked: "Molten Metal" Explained」で見ることができる。
NISTの報告書(NCSTAR 1-5A)によると、午前9時52分、サウスタワー(WTC2)の80階の窓の上から、白熱した液体が約4秒間流れ出た。その後、タワーが崩壊するまでの7分間に同様の箇所から融けた金属のような液体が流れ出るのが観測されたが、WTC2のほかの箇所やWTC1からは観測されていない。(文献2) それが観測されたのは、衝突によって生じた建物と旅客機の破片が積み重なった場所であり、そこでは火災が発生し、建物が倒壊するまで燃え続けた。
融けた金属の正体は、475〜640℃で融ける旅客機のアルミ合金と考えるのが合理的なようだ。NISTによると、部分的に燃焼する有機物と混ざっており、そのためオレンジ色に発光していたと考えられる。また、表面に形成されたスラグもその色に影響を与える。
この件については、「PULL IT (ボーイングの行方)」の「(参考) 流れ落ちる物質についてのNISTの説明」も参照。
斜めに切断された鉄骨
サーマイトが使われた証拠として、陰謀論者がよく参照する写真のひとつに、WTCの瓦礫の中に立つ、斜めに切断された鉄骨の写真がある。ところが、「Debunking 9/11 Conspiracy theories」のこちらのページ「Rethinking Thermite」によると、WTCの跡地で建物の残骸の解体作業中に、溶接器により鉄骨を斜めに切断している作業員の写真が存在する。サーマイトには指向性がないため、切断面がこれほどきれいになることはない。
鉄骨が9月11日のテロ当日に、爆破解体で切断されたものだという証拠はどこにもない。以下のYouTubeの動画では、解体作業中の作業員が、鉄骨を切断したと証言している様子が紹介されている。
- 「9/11 Debunked: Columns Cut not by Thermite」
- 「WTC: Thermite or Thermic Lance?」 (Thermic Lance:鋼鉄切断機)
倒壊は自由落下ではない
陰謀論者は、爆破解体だったことの根拠として、ツインタワーの倒壊速度が異常に速いことをあげている。ウィキペディアの「アメリカ同時多発テロ事件陰謀説」の項目では、「崩壊速度は真空での自由落下速度に匹敵する」という記述がある。ツインタワーの屋上の高さから何かを落とした場合、地球の重力加速度のもとで真空を仮定すると、地上に落ちるまでにかかる時間は9.22秒である。
旅客機の衝突より上の部分(WTC1で12階、WTC2で28階)が下部の構造の上に落下したが、その構造は上階の静的な重量を支えるようにしか設計されておらず、動的な力には無力であった。落下の進行にともない、落下物の質量も増加するので、下部の構造にはさらに大きな負荷がかかるようになり、高速の崩壊が起こった。(文献19)
しかし、建物の倒壊自体は自由落下でないのは明白である。なぜなら、建物自体よりも、剥がれた外壁やその他の破片のほうが先に落ちているのが、崩壊時に撮られたどのビデオや写真からも明らかだからだ。たとえば、「The towers did not fall at or below free fall speeds」や「Freefall」を参照。
NISTのビデオ検証による推定では、外壁が地上に落下するまでかかった時間は約11秒(WTC1)と9秒(WTC2)である。(文献19) 建物自体が崩れるには、もっと時間がかかっている。ビデオ画像などの証拠から、倒壊開始後、ツインタワーの核の部分(WTC1の約60階分とWTC2の約40階分)は15秒から25秒、倒壊せずに立っていたことがわかっている。
当時のビデオ画像を見てみると、実際の倒壊には10秒以上かかっているようだ。こちら「Freefall? Video evidence」(写真をクリックすると動画が見れる)では、WTC2の倒壊に12.5秒以上かかっているとしている。YouTubeのこちらの動画「9/11 Debunked: World Trade Center - No Free-Fall Speed」では、外壁が崩れ落ちた後も、建物の核の部分がしばらく煙の中に立っているのが示されている。こちらによると、サウスタワーとノースタワーが倒壊するのにかかった時間は、それぞれ約15秒と約22秒だそうだ。
ツインタワーが崩壊したように見えた後も、内部の鉄骨コア構造がしばらくの間、そのまま建っている様子を見ることのできる映像は他にもいくつかある。
- 「Dramatic video evidence proves NIST, FEMA correct.」 WTC2
- 「Dramatic video evidence proves NIST, FEMA correct.」 WTC1
- 「North Tower Collapse」 WTC1
Scott Forbes氏の証言について
WTCに、いつどうやって制御解体用の爆薬が仕掛けられたかは、911陰謀論支持派の誰も、きちんと説明することができない。ところが、総合投資銀行フィデュシャリー・トラスト(Fiduciary Trust)社のデータ・ベース管理部長スコット・フォーブス(Scott Forbes)なる人物が、9/11直前に怪しげな工事がWTC2内部で行われていたと証言している。(文献10〜13) フォーブス氏はWTC2の97階で働いていたそうだ。しかし、彼の証言も信憑性の低いものだということはすぐわかる。(文献14〜16) フォーブス氏の証言をまとめると次のようになる。
- 4〜6週間にわたって98階からドリルやハンマー等の重機を使うようなすごい騒音が聞こえ、振動も感じた。
- その階のテナントのAonの人々はいなくなり、事務所は完全に空になっており、そこらじゅう埃だらけだった。
- 港湾当局による“パワーダウン”(停電)の通達があったので、9/11直前の週末もその対応のために働いていた。
- パワーダウンがあったのは、50階あたりから上の階。開始が9/8の土曜(朝もしくは昼)で、終了したのが9/9の日曜(午後)。(時間帯の記憶ははっきりしていない)
- 土日にはバッジも付けていない見慣れぬ作業員がビル内を行き来していた。あの日、出勤していた全員が彼らを見た。
しかしフォーブス氏の証言に反して、こうした証言をしているのは彼だけである。実際に工事が行われていた98階のテナントだった企業の社員からの証言も、彼の同僚からの証言もない。また、こうした工事が行われたということを示す文書も残っていない。WTC2の50階より上で停電があれば、当然大勢の人が憶えていてもいいはずなのだが、フォーブス氏以外の証言はないのだ。もし仮に停電が本当だったとすると、土曜の晩にはWTC2の上半分の灯りは消えていたはずで、外から見ても停電だったということがわかるはずだが、そのような目撃証言もない。
停電のあった期間も文献12の36時間から文献13の26時間まで証言を変えている。また、文献13「Interview with Scott Forbes」のインタビューでは次のように述べており、本当に大規模な停電があったのか、彼自身の証言もはっきりしない。
下の階で停電があったか、はっきりと私には確認はできない…私に言えることは、我々は停電があることを知らされていたということだ。そのため、我々はすべてのシステムを停止し、つぎの日にすべて立ち上げ直さねばならなかった…
また、上層階へのエレベーターも稼働していなかったとのことだが、この話も信憑性はない。Color International Productionsの「September 11, 2001...」(文献18)では、『今日興味深いメールが届いた。2001年9月8日の日付が着いた世界貿易センター最上階へのチケットの半券のスキャンが添付されていた。ほんの3日前、友達の友達があそこの上まで行っていたんだ』として、その半券の写真を公開している。これはWTC2の107階にあった展望階(Top of the World Trade Center Observatories)へのエレベータのチケットである。つまり2001年9月8日もエレベータは稼働しており、観光客が107階まで登っていたのである。
パワーダウンがあったというフォーブス氏の証言は、陰謀論に肯定的な9-11 Reviewの「UNLIKELY: 'The South Tower Was Powered Down Before the Attack'」でも、信憑性が低いとされている。その理由として以下の4つが挙げられている。
- 攻撃の直前にタワーの半分を停電させる、といったあからさまなことを犯罪者がやるとは思えない。そんなことをすれば、たくさんの会社のビジネスを大いに妨害することになり、何千人もの人に気付かれるだろう。 停電の準備のために、多数のメールが送信され、多くの社員がたくさんの仕事をこなさねばならなくなる。
- さらにおかしいのは、タワーの半分のためだけにそんな過激な行動をとるということだ。なぜ、南タワーの上階のためだけにそんな停電が必要だったのか。 なぜその他の箇所の似たような停電は誰にも気づかれずにすんだのか?
- 制御解体の準備作業のための偽装工作として、ケーブル拡張のための停電とは笑える話だ。データ帯域のためのケーブルの拡張は、交流電源の遮断をまったく必要としない。 交流配線の拡張が行われたとしても、古い配線と並行して、新しい配線を取り付け電源を投入することが可能だ。どんな停電であっても、数分間に抑えることが可能だろう。タワーの大部分を36時間にわたって停電させようとしたら、テナントから猛抗議を受けるはずだ。
- (フォーブス氏の)e-メールの主張に反して、警備カメラは停電しない独立した電源を使用するよう設計されている。警備システムへの電源が停止したとしても、多くの扉は閉鎖されたままで、鍵なしでは開けられなかっただろう。
アスベスト
ウィキペディアの「アメリカ同時多発テロ事件陰謀説」の項目には、なぜWTCが爆破されたかという理由の一つとして、以下のようなことが書かれてある。
- ビルには有害なアスベストが多く使われており、それを除去するだけでも10億ドル以上かかると言われ、頭の痛いお荷物となっていた。
しかし、10億ドル払うのが嫌で、再建費が推定60億ドル以上かかる建築物を壊し、さらに2602人もの人間を巻き添えにして殺したという主張は、もはや正気の沙汰ではない。
その他
ウィリアム・ロドリゲス氏について
ウィリアム・ロドリゲス (911陰謀論)を参照してください。
「純粋水爆説」という珍説
純粋水爆説 (911陰謀論)を参照してください。
スーパーナノサーマイト(?)の発見
ナノサーマイト (911陰謀論)を参照してください。
爆発音について
- 「Space, Earth and the Sounds of Explosions」 Debunking 9/11 Conspiracy Theories
- 「What they actually described hearing in & around the towers」 JREF Forum
- 「The Sept. 11 Records」 The New York Times, 消防士らの証言記録
エンパイア・ステート・ビルディングへのB25爆撃機の衝突
- 「Empire State B-25」 911Myths... Reading between the lies
- 「B-25 Empire State Building Collision 」 Aerospaceweb.org
- 「1945 B-25 bomber crash」 Debunk 9/11 Myths
175便の「ポッド」
- 「Analysis of Flight 175 "Pod" and related claims」 by Eric Salter with contributions by Brian Salter, questionsquestions.net, 9 September 2004
- 「Where's The Pod?」 Popular Mechanics, Published in the March 2005 issue.
重力で破片は水平方向に飛ばない?
- 「Explosive force」 911Myths
- 「力はベクトル量」 PULL IT (ボーイングの行方)
ノーデ兄弟
- 「ノーデ兄弟のディラン=エイブリー氏への書簡について」 PULL IT (ボーイングの行方), 2008/02/27
消防隊員の交信テープ
- 「オリオ・パーマー大隊長の最後の声」 PULL IT(ボーイングの行方)、2010/03/22
- 「オリオ・パーマー隊長の最後の声 その2」 PULL IT(ボーイングの行方)、2010/03/23
事前情報
- 「Stories of prior knowledge of 9/11 more than urban legend」 Insight on the News, Oct 1, 2002 by Jeffrey Scott Shapiro
参考文献
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- 「NIST and the World Trade Center: Publications」 米国標準技術局(NIST)のサイト
- 「World Trade Center Building Performance Study: Data Collection, Preliminary Observations, and Recommendations」(FEMA 403) アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)のサイト
- 「Molten Metal」:「Debunking 9/11 Conspiracy theories and Controlled Demolition Myths」のサイト
- 「A CRITICAL ANALYSIS OF THE COLLAPSE OF WTC TOWERS 1, 2 & 7 FROM AN EXPLOSIVES AND CONVENTIONAL DEMOLITION INDUSTRY VIEWPOINT」 By Brent Blanchard. August 8, 2006. c-2006 www.implosionworld.comna
- 「9/11 Commission Report: Final Report of the National Commission on Terrorist Attacks Upon the United States」 National Commission on Terrorist Attacks, W W Norton & Co Inc (2004/8/1)
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- 「WTC Power Down」 911 Myths.com
- 「September 11, 2001...」 Color International Productions, Calgary, Alberta, Canada
- 「Answers to Frequently Asked Questions (August 30, 2006)」 NISTの2番目のFAQ